一人暮らしを始める息子の手紙

息子が大阪で独り暮らしを始める事になりました。

引っ越した当日、空っぽになった部屋に手紙が一枚置かれていました。


「26年間世話になった。

言葉にするのは最初で最後『ありがとうございました』

まぁ 先になると思うけど恩返しも考えてるから長生きしろよ」


彼の人生の節目に、けじめとして私達に言葉を残してくれました。

ぶっきらぼうで無愛想な彼には、照れもあって 精一杯の文なのでしょう。

親冥利につきます。

彼の人生に幸あれと祈るばかりです。

…それにしても、26歳にもなるのに子供が書く字のよう。間違いなく父親似。


子育てを振り返れば、幼児の頃は、喘息を繰り返し、箸で喉をついて救急に走り、鉛筆の芯が足裏に刺さって外科に走り、転んで頭から血を流し┅、まだまだ延々思い浮かぶ程、医者通い。

ギャングエイジ(小学3年~4年生)の頃は、外で毎日いたずらを繰り返し、親も「すいません」と、謝罪通いの繰り返し。

友達と一緒なら、遊びもエスカレート。深い側溝を歩いた、と言うのにはぞっとしたものです。「もし、鉄砲水でも流れてきていたら┅」。

大学生の頃は、大型バイクを乗り回します。家に電話がかかるたび、ドキドキ。「もし、警察から事故の連絡だったら┅」。

幸い?スピード違反の繰り返しで、支払い金額が「どんだけ~」。

会社員になると、人が変わったように4つタイヤの自動車は安全運転。

男子の死亡が女子より多いのは頷けます。

よくぞ、ここまで無事に生きてきました。


後日談です。

結婚した娘が時々帰ってくるのですが、この手紙を読むなり、目から涙が。

「こんな手紙書かれたら胸が熱くなる…ううう」と、嗚咽します。


「まるであんたが、弟を育てたみたいやな」

と私も、もらい泣きしながら笑っていました。

彼女も4歳の子供がいますので、親の気持ちになるのでしょう。

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