独女の葛藤と日常
さとごん
新しい扉
2月10日
今日は水曜の夜。
でも明日は祝日。お休み前日なので今日はご機嫌で、一人暮らしのマンションには戻らず外食をすることにした。
気分としてはマクドナルドのフィッシュバーガーが無性に食べたい。
でも我がホームタウンでは駅の反対側に二軒もマックがあるのに帰り道にはない。
帰り道の道すがら、ちょうど駅前の図書館の前にモスバーガーがあった。
モスは値段が高いのと待ち時間が独女の一人暮らしには堪える。
店の前で数秒迷うが、図書館で本でも借りて読書をしながら優雅に待とう。
予算オーバーは休前日なので自分を甘やかすことにする。
早速図書館に入り、お気に入りの作家さんの棚で物色を始める。
いつもの書架にはお目当てはなかったので気分を変えてエッセイの棚へ。
そこで敬愛する宮城谷昌光先生の著書を見つける。
しかも大好きな過ぎて大学で研究までした三国志についてだ。
その他に三浦しおん先生のかなり笑えるエッセーがあった。
それらを借りて道向かいのモスバーガーへ入った。
注文でも迷う。フィッシュバーガーと決めていたが、いざメニューを見ると期間限定のとびきりハンバーグサンドのベーコンも前から気になっていた事を思い出した。
メニューを交互に見比べてうんうんと悩む。
店員も長期戦を覚悟したのか待機中。後ろにはお客さんが並びだした。
焦ってとりあえずフィッシュバーガーを選択。
飲み物を聞かれてパッと目についたルフナティーとやらを頼んでみる。
飲み物だけ先に渡され席で待つことに。
奥のソファー席に落ち着くとルフナティーが何なんか気になりググって見る。
何か分からないと恐くて飲めない。
どうやら渋みの少ない紅茶らしい。ルフナはスリランカの地名で産地らしい。
なーんだ。
変な名前だから新手の健康にはいいけどキワモノな飲み物かと思ってちょっとワクワクしちゃったぜ。
一口飲むと、検索に時間がかかりすぎてティバックを浸けすぎた割りには苦くなく紅茶の濃厚さが堪能できた。
ホッとしたところで図書館で借りた本をおもむろに取りだし読み始めた。
気軽に読めそうなので三浦しおんさんのエッセーを選択。
笑いながら楽しく待っているとオニポテのみ持って店員さんが登場。
フィッシュバーガーはまだ時間がかかるとのこと。
エッセーを楽しんでるので今日の私は寛大。
別にいいですよと快く許す。
しばらくしてバーガーが登場。
やれやれ、食べ始めますかね。
本を置く為にしおり代わりになる物をトレーの中で探し始めた。
丁度良いものを見つけた。
お客様感謝祭スクラッチカードだ。
1等だとてりやきバーガー2等はオニオンリング3等はポテトSが当たるらしい!
これはスクラッチせずにはいられない。
ポテト食べたい!!3等当たれ!
ご飯も本もそっちのけで100円を取りだしスクラッチを削った。
文字がうっすらと出てきた。もしや当たり??
全部削り終えるとなんと1等だった。
眼中に無かったてりやきバーガーだ。
ボーゼンとした。
そのまま適当なレシートを本に栞代わりに挟みフィッシュバーガーを食べながら悶々と考えた。
私は人生33年生きていて,てりやきバーガーをお金を払って注文したことが無かった。
その事実に気づかされたからだ。
私の友人なら大抵知っていると思うが私は無類のハンバーガー好きである。
ファーストフードもグルメバーガーも好きでよく食べに行く。
アボカド、サルサ、チリコンカンベーコンエッグ・・・様々な味を日本でも海外でも食べ歩いて来た。
ではなぜテリヤキを頼まなかったのか?
まず第一に生野菜が嫌いだから。
レタスの入ったバーガーは極力除外して注文してきた。
でもテリヤキは大好きなガッツリ系のお肉だ。
レタスぐらい抜けば好みの味のはずだ。
ではなぜ・・・・・?
次に思い出したのが母のテリヤキ味嫌いだ。
あんな甘い味嫌だ!と母が言っているのを30過ぎてから聞いた。
思い起こせば我が家の食卓にテリヤキ味のものが並んだことは無かった。
そう私にはテリヤキ味を食べる習慣が無かったのだ。
給食とかバイキングでは食べたことあったけどわざわざ注文したことは無かった。
もしかしてこれは人生初の体験になるのではないか!
そう私は確信した。
気づけば30過ぎてからというもの冒険しなくなったいた。
レストランに行っても必ずいつものものを頼むし、仕事でも新しいことをするのはしんどいしやりたくない。
何事も現状維持がモットーに変わりつつある。
このてりやきバーガーは神様から新しいものにチャレンジしろというメッセージなのかもしれない。
ならばポテトに交換してもらおうかと思ったけど、ここは正々堂々とテリヤキバーガーを堪能してやろうじゃないか!!
そう意気込んだ。
いざ現実に頼もうと決めるとまた振りだしに戻って悩む。
この機会だから通常の味を堪能するべきか・・・・・
イヤせっかくの機会だからテリヤキを好きになりたい。苦手なレタスを減らせばそのチャンスが上がる気がする。
いっその事レタス抜けば好きな味なんじゃね!?
ってかトマトなら生野菜でも好きだし変えてもらっちゃう??
結論は出なかった。
バーガーと引き換えできるのは来月から。
その時までの宿題にしよう。
そっとカードを財布にしまい席を立った。
トレーを片付け店を出た。
表のメニューを振り替えって見た。
テリヤキバーガーには肉が見えないほど緑のレタスが青々と鎮座していた。
新しい扉は閉ざされた。
新しい一歩を決断出来ず寒空の下店を後にした。
チャンスの神様の前髪をつかめなかった。
三十路に染み入る寒さだった。
独女の葛藤と日常 さとごん @satogon1022
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。独女の葛藤と日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
和と紘希ー解離性同一性障害者の日々ー最新/紘希
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 8話
私の小説、あなたの小説最新/風
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます