第7話 あの青空の下で
アイス、アクア、スーチーの三人が旅路を急いでいる。
「夜は町の宿に泊れ」という鉄則に従い次の町までの道のりを急いでいるのだ。
「モンスターに襲われたら怖いです」
「あ、あたしの水系魔法がモンスターに効くかな・・・」
「いざとなったら私がモンスターを氷漬けにして差し上げますわ」
アイスは強気な発言をしているが声は震えていた。誰もが実戦を経験したことがないのだ。
「なんであたし達は女三人なんだよ。ローズなんてランスにガンツという超強力
コンビに囲まれているじゃないか」
旅の仲間の人選方法は秘密にされている。アクアはローズが特別扱いされていると思って不平を言っているのだ。
「クリスタル家のお嬢様だからってあんまりだよな」
「アクアちゃんローズちゃんの悪口言わないでください。不愉快です」
「ふん、特別扱いいいなあ」
「アクア、不平不満ばかり言っているとシワが増えますわよ」
「こちとらピチピチの15歳だ。シワなんて出来てたまるか」
「おまえなんかガンツ好きの悪趣味じゃないか」
「悪趣味?」
「悪趣味とか言い過ぎです。アクアちゃんは乱暴です」
「だいたいガンツなんてどこがいいんだよ。ああっ?」
アイスは自分の思いを吐き出して、アクアに叩きつけたいと思ったが堪えた。
ガンツを好きになった理由なんて他人に言っても下らないことなのだ。
分かってもらえるとも分かって欲しいとも思わない。
あの青空の下で一緒に泣いてくれたから・・・ただそれだけの理由なのだ。
しかし、とても大切な思いなのだ。それをアクアに言って理解されるだろうか。理解されなければ、この思いは下らなく意味のないものなのだろうか。
「乙女の秘密は教えてあげません」
アイスは透き通るような笑みを浮かべてそう答えるのみだった。
「ふん、乙女の秘密かよ。せいぜい大事にしろよ」
「だいたい、アクアちゃんは女子力足りてません」
乙女の秘密に共感したスーチーがアクアを攻撃した。
「けっ、そんなの興味ないね」
ぷいっと横を向いた。しかし三人の足は速さは変わらなかった。
モンスターには彼女等の大嫌いな虫の大きな奴もいた。
そんな物を目の当たりにしたら、魔法攻撃どころの騒ぎではないだろう。
「私、腰を抜かす自信がありますわ」
アイスが自分の気持ちを隠さずに言った。一番嫌いな虫は「カマドウマ」
台所で漬物を取りだそうとしたら、床下からカマドウマがぴょん。
ワラワラと虫が飛び出してきた。カマドウマの集会日だったのだろうか。
「★△◎♯♪・・・・・」
「あの時は白目を剥いて倒れたわ。家族が見つけなければ一日目を覚まさなかったでしょう」
「虫の話かい?いいだろう聞いて驚くなよ。わたしは短パンがお気に入りだ。家ではいつも短パンだ。で、家族ですき焼きを食っていたんだ。もちろん肉は豚肉だぜ。
で、右の太ももに違和感がする。何かなって見ると5センチはあろうゴキブリ野郎が
あたしの太ももの上を這っていたのさ・・・・」
アクアの顔は真っ青だ。アイスとスーチーは半分気絶しかかっている。
「あたしは大声あげて泣き叫んだ。家族は気が狂ったかと思ったそうだ・・」
アクアは青い顔して苦笑い。
「ふふふふ・・・私は食べるのが趣味。特にお好み焼が好きでよく通っていた
のよ。で、お金がないからいつも一番安い天かすの奴を頼んでいたの。食べ
終わって奥歯に違和感が・・・何か挟まっているのを取ってみたら・・・」
「と、取ってみたら」
ライムが聞き返す。アイスは耳を塞いでいる。
「ギザの付いたゴキブリ脚だったわ・・・」
アイスとライムが口を抑える。
「ほ、本体は食べちまったのか?」
「言わないで・・・それ以来天かすが食べられなくなったのを付け加えておくです」
辺りは日が傾いて段々と暗くなってきていた。
「あと少しで町に着くはずです。頑張りましょう」
アイスが皆を励ましつつ小走りが続く。
ガサガサと草陰から大きなモンスターが現れた。長―い触覚で辺りをうかが
っている虫(バグー)のモンスターだった。1メートルくらいのカマドウマである。
「うおっ!!出やがった」
アイスが「ああっ」と小さな声を出して倒れこんだ。
「ちくそー、こんな時にローズの奴がいたらな。虫は火で殲滅に限るだろ。あ
たしの水系だとだとずぶ濡れになった虫がズルズルと寄ってきそうで嫌だ」
「羽が濡れると奴らは飛べなくなるです。少なくても飛びかかられることはな
いはずです」
「スーチー、お前は石とか岩とかぶつけろ」
「潰すと見たくない物が出ますですよ」
「うえっ、想像しちまった。潰すの無しの方向で」
「アイス頼む一番良いのは凍らせることだ。このままじゃ町にたどり着く前に
虫に喰われちまう」
「わ、わかりましたわ。気分が幾分悪いですが。凍らせましょう」
アイスが虫のモンスに手をかざして軽く息を吐いた。
スターダストが広がる。ぴょんと虫が避けた。
「ひゃ、避けやがった。ウォーター」
アクアの水魔法炸裂。氷魔法と反応して氷の柱になって虫をどついた。
「砂塵の法です」
スーチーが砂塵を巻き上げ虫をひっくり返す。更に氷と水で虫は完全に氷塊になった。
「あたしたちは虫をやっつけたよな」
「氷が解けると復活するかもしれません。とにかく走りましょう」
アイスが言うが早いか猛ダッシュをかけた。でだだだだだ。
「あうっ、待ってください」
「うおっ、置いて行くなよな」
ローズ達三人は宿で地図を広げている。
「ガンツのおかげて宿や食事に困らなくなった。ありがとう」
ローズがガンツにお礼を言った。
「ガンツ殿ばかりに苦労をかけ誠に申し訳ない。あの力闘がなければ今日も腹を空かせてウロウロしていただろう」
ランスもガンツに深く頭を下げた。
「いや、いいよ。そんなの。格闘技大会は俺が出るしかないじゃないか」
ガンツが照れる。
「地図で確認すると大体半分くらいは目的地に近づいたという所かしら」
ローズは現在位置を指差した。
「このエナジーストーンを北の国に納めたら目的は終了。後はお気楽極楽で
国に帰るだけね。」
ローズはショルダーバックの中に入っているエナジーストーンを叩いた。
エナジーストーンというのはエネルギーを充填させた特殊な石で、定期的に交換をしないといけないものなのだ。
「北の国のエネルギーをなんでこんなに苦労して運ばなきゃならないのよ」
「ローズ、気持ちは分かりますが、それは今回の任務を請け負った時に覚悟したはずです」
「ランスも・・・・仕方がないわね」
ローズは言いかけたが止めた。言っても是非もないことなのだ。
「この峠を越えるのが今回の旅のいちばんの難所ですね」
ランスが峠を示して言った。
「ここは宿屋もなく、またモンスターも多いとても危険な場所です。私達の戦
力の要であるガンツも戦士の休息で8時間の硬直があるでしょうし・・・」
「その8時間をどうやってやり過ごすかよね」
「うう・・・すまない。あればかりは抵抗のしようがないのだ」
巨人族はその強大な力の代償に「戦士の休息」という行動不能時間があるのだった。無論この時を敵に襲われれば一溜まりもない。
「叩き起こされると敵味方なく大暴れしちまうし・・・・」
「ぷっ」
ローズが吹いた。
「どうしたローズ」
「いやあ、あたしが子供の頃さあ、「眠った巨人族は起すな」という諺を
本当かどうか試そうとしてさ、戦士の休息中のガンツのお尻にファイアを
撃って、大騒ぎになったことがあってさ・・・ぷぷぷぷ」
「うう・・・それは」
「覚えていますよ。国中の戦士が抑え込もうとしてポイポイとぶん投げられて
いましたね・・・」
回想シーン
戦士の休息中のガンツのそばにまだ幼いローズとスーチーがいる。
「ローズちゃん、止めた方がいいよ」
ローズの友達のスーチーが止めている。
「スーちゃんだって気になるでしょ。あの諺。もしかしたら都市伝説かもしれないよ」
「寝ている巨人を起こすな」
つまり余計なことして大事にするなの意。
「でも、せっかく寝ているガンツちゃんを起こすの可哀想だわ」
「ちょびっと起こすだけだからさ・・・・大丈夫だよ」
「お尻のほっぺにファイア・・・」
ローズの指先からライターのような小さな火が出た。
ガンツはピクリとも動かない。
「あれっ?・・・ちょっと弱いかな」
「お尻のほっぺにファイア!!」
ちょっと大きめな火が出た。
ガンツのお尻がビクンとなった。
「効いてる、効いてる・・・うふふふふ」
「やっぱり起きないよ。もう止めようよ」
「いいから、いいから。」
火力の調整って難しいのよね。とブツブツとローズが独り言を言っている。
「どうしてもビクン止まりだわ」
「そうだ!!いいこと思いついた。小っちゃい火を連続的にやったらどうかしら」
「ダメだよ。ガンツちゃんがお尻やけどしちゃうよ」
スーチーがローズをガンツから引き離そうとした。
「最後に一回だけ・・」
「お尻のほっぺにファイア!!!」
ちょーと、大きめの火球がガンツのお尻のほっぺを直撃した。
ガンツが起き上がり今まで見たこともないような顔でローズと眼があった。
ローズが憶えているのはそこまでである。気が付いた時は腕に包帯を巻いてベットで寝ていた。
「ううう・・・ごめんなさい」
ガンツが背中を丸めて小さくなった。
「いや、ガンツが謝ることはない。元凶はローズである」
ランスがローズを睨みつけた。ビクッとなるローズ。
「だって、子供の頃だししょうがないじゃない・・・そ、それにあれ以来ガンツをから
かったりいじめたりする奴らがいなくなったんだから・・・そのなんていうの・・・怪我
の功名?」
「ああっ?ローズ。本気で言ってるのですか」
「その、調子に乗ってすいませんでした」
「人それぞれの事情があるんです。余計なことをしない様にしてください」
同い年のランスに説教を食らってしまった。
「それで、ガンツの戦士の休息の対策なんだけどさ・・」
話題を変えるようにローズが提案した。
「うーん、最終的にローズとガンツを守るために私が剣を使うしかありますまい」
ランスは幼い時から父に剣の指導を受けているので、普通の戦士以上の腕前が
ある。しかし、今回の旅は白魔導士の修行の旅なので極力剣は振るいたくない。
「剣を振るうと白魔導士の修行が台無しじゃない」
「私が下らない意地を張って全滅などということになったら、目も当てられませんから
ね」
「いつも下らない意地ばっかりはっているくせに」
「何か言いましたか?」
「別に・・・」
「私達は北の国にエナジーストーンを無事届けること。それが最優先されます」
「ローズ、俺寝ないように頑張る」
「無茶言わないの。あんたのことはあたし達に任しときなさい」
「うーん、どんなに急いでも頂上付近で一泊することになりそうですね」
地図を眺めながらランスがつぶやいた。
「浄化のカーテンを張るとしても、山の夜の闇は深いですからね。この間ミャウと
野宿した時のように交代で歩哨に立つしかないでしょう」
「山だと山火事の心配があるから大きな焚火はできませんしね」
「意志のある火(魔力による火)なら平気じゃないかな」
「ローズ・・・魔力の調整はあなたの一番苦手とすることじゃないですか」
「俺が眠りに就く前に周辺の魔物を蹴散らしておくというのはどうだろうか」
「邪魔な森を一部焼いてしまえば・・・」
「目的のために手段を選ばない態度が気になります・・・」
「両手剣の使用が許可されないのが痛いな・・・」
「そういえば、カーズはどうしたんですか」
「魔物退治の仕事でおいしいのがあるとか言ってたけど」
「元々三人で旅をしていくものなのだ、誰かに頼ろうとするのは良くないぞ」
「カーズの持っていた両手剣を振らしてもらったのだが、何とか扱えそうだっ
た。しかし、剣の修業をしていないので石斧の様な使い方になりそうだな」
「ガンツ、今回は仕方がないが国に戻り次第、格闘技や剣技の修行を開始した方がよいな」
「うん、力任せでは通じない相手もいることも分かったしな」
彼らが峠越えの作戦を立てつつ夜は更けて行くのだった。
巨人族の女 カーズ・ダイヤはモンスター退治の賞金稼ぎに精を出していた。
「ダーリン達はトライアルツアーの最中だから一緒に旅をすると不正と思われ
かねんからな」
クリスタル王国に帰ったら挙式かな・・・・うぷぷぷ
「こっぱずかしい・・・新婚さんいらっしゃいだよな」
カーズが妄想全開中
「ねえちゃん、静かにしてくんねえか。獲物が逃げちまう」
「ああん?」
カーズの外数人が今回のモンスターハントに参加している。
「一人で大丈夫だって言ってんのにさあ」
「失敗して町に逃げ込まれでもしたら厄介ですからな」
依頼者に釘を刺されていたのだ。
「こんなおっさんたち足手まといなのにな」
「あのな、お姉ちゃんが巨人族なのは知っている。もちろん戦力も並外れていることもな。でもこんなに町から近い場所で奴らが巣食っているのは異常なんだ。今回の作戦は殲滅。一匹たりとも逃さない。大体あれだけの数をどうやって始末するつもりなんだい」
「うーん、この両手刀・鬼切丸をブン回すと全周囲の敵は転がっているけどな」
「おいおい、無茶言うなよ。俺達のことも一緒にやっちまうつもりかよ」
「だ・か・ら 足手まといだって言ってんじゃん」
「あたしは17歳だけど場数は踏んでいるんだ。そんなヘマはしないよ」
そばにいた男が腹を立てたようだ。
「おう、姉ちゃん。そんなに自信があるなら。こんなことできるかい」
男は加えていた煙草をヒョイと放り投げると、落ちてくる煙草を居合抜きで
二つに切った。
「・・・わかったよ。おっさん。じゃあ投げてみなよ」
男が新品の煙草を一本取り出すと空に向かって投げた。
ヒュッ、ヒュウと風切り音が聞こえた。
足元には投げたままの新品の煙草が落ちた。
「でっはははははは、姉ちゃん口先ばかりじゃしょうがねえな。大人しく・・」
「その煙草の横腹を見てみなよ」
細い煙草の横腹に十字の切れ目が入っていた。
「あうっ・・・・そんなどでかい両手剣を振り回してどうしてこんなことが」
「あたしにとってはナイフを振り回すみたいなもんだけどな」
夜の戸張も下りて月が雲に隠れると辺りはまっ暗になった。
「もう、いい加減待ちくたびれたぜ。さっさと奴らの巣に入って方を付けようぜ」
短気なカーズが仲間のハンターに言った。
「あいつ等は夜にならないと集まらないんだよ。依頼主の依頼は全部殲滅せよだ」
ふと、背後に唸り声が聞こえた。どうやら奴らに気配を感づかれたようだ。
「姉ちゃんの実力は分かったが、熱くなって巻き添えとかは勘弁してくれよな」
さっきカーズを試したハンターが声をかけて狩りに出て行った。
「それじゃ、みんな行きますよ。運よく今日は月明かりだし、仲間同士切り合
うこともないでしょう。では気を付けて。生き延びていたら町に帰って一杯
やりましょう」
モンスターハントのリーダーは場慣れしているのか、ゆっくり、はっきり落ち
着いた声で戦闘開始の号令を出した。
今回の相手は獣人のトロールだ。町の近くにコロニーを作るつもりなのか、続々と仲間を増やしつつあった。本来は王国の軍隊が来てくれてもよさそうなのだが、王都より離れた田舎町に軍隊が派遣されることはなかった。
トロールが棍棒を振るってくる。棍棒と言ってもちょっとした大木のサイズだ
った。無論人間が叩かれれば骨が砕け致命傷になることもあるだろう。
「ふん、馬鹿力が自慢かね。巨人族だって力じゃ負けていないよ」
カーズが振り降ろしてきた棍棒を鬼切丸で一刀両断にした。スカッ!!
直径30センチはあろう棍棒が音もなく切り落とされた。
「うおっ?」
獣人は何が起きたが分からないという感じだった。
獣人達が騒ぎを聞きつけて集まりだした。月夜の草原が大騒ぎになる。
「おまえは・・・巨人族だな」
人語を喋る一際大きいトロールだった。
「俺はトロールの中でも力自慢だ。一度巨人族と力比べをしたかったのだ」
トロールは持っていた棍棒を捨てると拳で胸をどんと叩いた。
「いいだろう。必ず巨人族に会うと力比べを挑む奴がいるからな」
カーズは構えていた両手剣を地面に突き刺すと獣人と手四つで組み合った。
「うおっ、我らの長が力比べを始めたぞ」
戦闘中にカーズとトロールの力比べに気づいた者が言った。
「ありゃ、巨人族姉ちゃんじゃねえか・・・面白いこと始めやがったぞ」
「ちょっと、休戦にしねえか?」
「それ、いい考え。こんな面白いもの見ないと損」
いつの間にか二人の周りに車座の観客が集まった。
「あの女は巨人族なのか?」
「ああ・・伝説のな」
「我らトロールは力自慢。力の一番強いものが群れの長になる決まり」
カーズとトロールの力比べはもう10分ほど続いている。
トロールは歯を食いしばっているが、カーズは顔色一つ変わっていない。
カーズがボソボソと囁き始めた。
「あのさあ・・・物は相談だけど。引き分けってことにしないか」
「なに・・・を言う・・・ぐおおおおお」
「仲間の前で負けると形が悪くないか。あんた」
「うくぐぐぐぐ・・・ぐほぉ」
「アタンの力は分かった。でも私にはもう一段階上があるんだよな」
「でもそれをやると一時的に見境がなくなっちゃうからなあ。」
「見境がなくなるとどうなるのだ・・・・」
カーズはチラリと辺りを見た。
「ここにいる奴らを敵味方なく殲滅しちゃうかもしれない」
「・・・・条件を聞こうではないか」
トロールの長にはハッタリでないことが手のひらを通して分かった。
「ここは人間の町から近すぎる。もう少し離れた所に移動してもらえないだろ
うか。町の連中が怖がってあたし達にあんたらの討伐依頼があったのさ」
「ううむ・・・わかった。条件を飲もう」
「よかった。殲滅せよとのお達しだったが・・・どうやら子供もいるようだし
な。そういうことはしたくないんだよな」
「伝説の巨人族は随分とお優しいんだな」
「あたしら巨人族は戦士としての誇りを忘れない。これは先祖から受け継いだポリシーだからな」
「みんなー、この勝負は引き分けだ。これ以上の闘いは無意味だ」
カーズが皆に聞こえるように叫んだ。
「むう・・・トロールと力比べで対抗するとかどうなるかと思ったが・・」
「トロール討伐隊はこのまま引き揚げる。トロール一族はこの地から離れると
いうことで話が付いた。お互いこの場から去ってくれ」
「ええっ・・・」
「うおっ・・・」
討伐隊のリーダーにカーズが事情を説明した。
「依頼内容はこの土地からトロールを追っ払うことだったから問題ないだろ」
「うむ、こちらの損害も軽微なので、ここで引くということも悪い条件ではないが・・・」
「あいつらも家族がいるんだぜ。必死にもなるだろう。あの小さいトロールはまだ子供だぜ」
「町の人間に被害が出ている分けてもないし、ここから離れてくれればいいだろう。よし、わかった。町の町長には私から話を付けよう」
「すまないね。子供は巻き込みたくないんでね」
「一つ確認しておくが、トロールの方は約束は守ってもらえるんだろうな」
「約束を破るのは人間だけさ」
カーズは頭上の満月を見上げながらそう言った。
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