第6話




 


 初めての特別実技の授業はお寺の掃除と言う拍子抜けな内容だったが、初日からとんでもない方向へと転がった。

 突如、何者かが寺の巫女であるアウラを狙い襲撃して来たのだ。

 それを斗真たちは迎え撃つが得体の知れない敵を相手に戸惑いを隠せない。

 

「何なの? こいつら」


 美雪は物陰に隠れて相手の様子を伺う。

 鷹虎は建物内に吹き飛ばされてから動きは無い。

 いつの間にかアウラも姿を消していた。

 アウラは自分で身を隠したのか、4人目の敵がいたのかは分からないが、3人目の男をどうにかしないといけない。

 

「向こうも水の魔法を使うみたいだけど、手数が違い過ぎるわ」


 美雪は実戦は初めてだが、不思議と落ち着いていた。

 落着き、相手の力を見定めようとしている。

 相手の魔法は自分と同じ水の魔法なのだろう。

 先ほどから周囲に水の弾を作り出して撃ち込んでいる事からも明らかだろう。

 周囲に複数の水の弾を作り出して撃っている為、攻撃時に一々弓を射なければならない美雪とは手数が圧倒的に違う。

 だが、幸いにも威力はさほど高くは無く、美雪も物陰に隠れて攻撃を防ぐ事が出来ている。

 単純な攻撃力だけなら美雪の水の矢の方が強いのだろうが、ここまで手数が違えば美雪も反撃する事が出来ない。


「他の連中は当てには出来ないし……これだけ派手に暴れているから時間さえ稼げれば……」


 美雪自身は単独での戦闘が苦手なのは自覚している。

 斗真たちと合流しようにも、男を相手にしながら合流するのはリクスが高い。

 そうなって来るとこのまま時間を稼ぐしかない。

 向こうでも斗真たちが戦っているのか、激しい戦闘の音が聞こえる。

 風雲寺が寂れた寺と言っても時間が経てば、戦闘の音を聞きつけて、近隣住民が警察や魔法管理局に通報するだろう。

 そうなれば、いずれは自分達とは違いきちんと訓練を積んだ魔導師の増援が見込める。

 だが、相手もいつまでも隠れている美雪に付き合うつもりはないらしい。

 今までは小さい水の弾を複数作って撃って来ていた男だが、今度は大きい水の弾を作りだした。

 大きい分、数は一つだけだが、美雪を物陰ごと押しつぶすには十分な大きさだ。

 男は特大の水の弾を撃ちだし、美雪は物陰から飛び出して避ける。

 同時に水の矢で反撃を行う。

 水の矢は男に直撃するが、男にはダメージがないようだ。


「何なの……」


 先ほどもだが、男は攻撃が直撃してもダメージを受けているようには見えない。

 幾ら、実戦が初めてとは言っても、魔法の直撃を受ければ当然ダメージは受ける筈だ。

 しかし、魔法で防いだ様子もない男は直撃を受けてもダメージを受けていない。

 そんな美雪の疑問を余所に男は再び小さい水の弾を周囲に作り始める。

 物陰から出て来た美雪は良い的でしかない。

 多少は水の矢で迎撃できるが、一度の攻撃で叩き落とせる水の弾は限られている。

 男は同時に水の弾を撃ちだして来る。

 全ての迎撃が不可能である為、美雪は半ば諦めていた。

 だが、水の弾が美雪を襲う前に、人影が飛び出して来ると突風と共に水の弾を全て弾き飛ばした。


「大神君」

「大丈夫か? 氷川」


 それは先ほど、男に吹き飛ばされた鷹虎であった。

 鷹虎の手には美雪は知らないが、昆となったアウラが握られているが、美雪が昆の事を問い質している時間はない。

 男は再び水の弾を撃って来る。


「させるかよ」


 鷹虎はアウラを回して風を盾のように使って水の弾を弾き飛ばす。


「……凄い」


 美雪はただ驚くしかない。

 鷹虎はアウラを構えると男に接近する。

 男も水の弾で応戦するが、鷹虎はアウラで弾きながら距離を詰めて、アウラを思い切り振り男を殴り飛ばした。

 男は高く舞い上がり飛ばされるが、地面に叩き付けられた男はゆっくりと立ち上がる。


「マジかよ……」


 ライラの一撃を受けて尚、平気だったが、アウラの一撃をもってしても男はダメージを受けていない。


(アレは人間じゃないから普通の攻撃じゃ意味はないわ)


 鷹虎の頭の中にアウラの声が聞こえて来る。

 鷹虎も流石に普通の相手ではないと思っていたが、アウラには相手の正体が分かっているようだ。


「人間じゃないって?」

(そっ。アレは多分、水の魔法で作りだした水人形。水の魔法は命を司るとも言われているから、魔導師によっては水の魔法で簡易的な生物を作る事も出来るのよ)

「そんなのアリかよ」


 アウラが言うには男が人間ではなく、魔法によって造られた水人形と言う事だ。

 水の魔法は美雪のように水を使って攻撃や防御に使って戦う事が一般的だが、水は命の象徴として水の魔導師の中では水の魔法の応用で簡易的な生物を作りだす事も可能なようだ。

 鷹虎自身、そんな水の魔法を見た事は無いが、男が人間ではなく水人形だとすれば結愛やライラの攻撃を初めとした攻撃が効かないのも理解できる。

 体が水である為、結愛の火や美雪の水の矢は衝撃を水が吸収して無力化し、無効化しきれないライラの攻撃でははじけ飛んだが体が水で出来ている為、はじけ飛んだ水が再集結する事


で再生したのだろう。


「じゃあコイツを倒す手段はないって事かよ」


 攻撃を無力化するカラクリは分かった。

 分かったからこそ、水人形である男を倒す術が現状ではないと言う事もだ。


(無いって事もないんだよね。今の鷹虎には私がいるっしょ)

「お前が凄いって事は分かるけどさ」

(単純に再生出来ないレベルの一撃を入れれば倒せる)

「言うのは簡単だけどな」


 アウラの言う事は分かる。

 だが、実際にやるとなるとライラの大剣以上の攻撃力が必要となる。

 鷹虎もアウラが普通の武器ではないと言う事は分かるが、一撃でライラ以上の攻撃力を出せるとは思えなかった。


(簡単だよ。私は最強の武器である神器。そんじょそこらのなまくらと一緒にして貰っては困るんだよね)

「……やるしかないか」


 アウラは水人形である男を倒せる満々である。

 鷹虎もそれに乗るしかなかった。


(そんじゃ少し本気を出しちゃうからしっかり集中しなよ)


 アウラがそう言うと周囲に突風が吹き荒れる。

 そして、アウラに膨大な魔力を風が集中する。

 鷹虎も今まで扱った事のない膨大な魔力を何とか制御しようとする。

 一瞬でも集中を切らしてしまうと、たちまち制御を失い暴走しかねない魔力の出力だが、アウラが補助する事で何とか扱えている。


「本当に何なんだよ……」


 鷹虎は戸惑いながらも、アウラを構える。


「そうなったらやるしかないだろ!」


 鷹虎は覚悟を決めて男に突っ込む。

 男は水の弾で迎撃して来る。

 多少はアウラに集中している風の余波で当たりはしないが、それでも全ての水の弾が弾かれる訳ではない。


「っ! この程度なら!」


 鷹虎は水の弾を受けながらも真っ直ぐ男に向かって行く。

 小さい水の弾の威力なら受ける事を覚悟しておけば耐えられない程の威力は無い。


「コイツで吹き飛べ!」


 鷹虎は渾身の力でアウラを振り下ろす。

 鷹虎とアウラの一撃は男に直撃する。

 それと同時に鷹虎を中心に周囲に暴風が吹き荒れる。

 幸いにも美雪のところまでは美雪が吹き飛ばされる程の風量ではないが、それでも何とか吹き飛ばされないように耐える事が精一杯だった。

 やがて、暴風が収まるとそこには、鷹虎だけが残されていた。

 攻撃の直撃を受けた男の姿はどこにも無い。

 

「……やったか?」


 鷹虎は倒れそうにもなるが、何とか堪える。

 少ししても男が再生する様子はない。


「はぁ……死ぬかと思った」


 男を倒して鷹虎は気が抜けたのかその場に座り込む。

 だが、すぐにまだ他に男が2人いた事を思い出して、立ち上がろうとするが、思うように体が動かない。


(無理はしない方が良いわよ。面白半分で契約はしたけど未熟な魔導師が私を使ったんだからこの辺りが限界ね)

 

 アウラはそう言うが、限界だからと言って倒れている余裕はない。

 しかし、鷹虎は動けそうに無かった。


「大神君。大丈夫なの?」

「何とかな」


 そんな鷹虎に美雪が近づいて来る。

 鷹虎は軽く手を振って自分が大丈夫だと言う事を示すも立ち上がる事は出来ない。


「とにかく、安全な場所に避難するわ」


 鷹虎が動けないと知った美雪は鷹虎に肩を貸す。

 美雪はライラのように見た目とは裏腹に力がある訳ではなく、鷹虎に肩を貸すもゆっくりとしか進まない。

 鷹虎も美雪が体力がない事を知っている。

 そして、基本的に班員だろうと他人との関わりを避けている事もだ。

 そんな美雪が自分に肩を貸すと言う事自体に少し驚いているが、自分もそうだったように美雪もそこまで薄情な人間ではなかったと言う所だろう。


「氷川! 大神!」


 美雪に肩を借りて歩いていると、斗真たちが駆け寄って来る。


「無事だったんだな!」

「まぁ……てか、そっちはどうなったんだ?」


 斗真は鷹虎と美雪の無事を喜んでいるようだが、鷹虎からすれば、斗真たちがこうして無事だと言う事の方が驚きだ。

 鷹虎はアウラの力を借りて何とか一人倒したところだが、斗真たちは3人いたとはいえ敵も2人いたはずだ。


「それがさ、いきなり消えたんだよ」


 斗真たちも攻撃の効かない相手に苦戦を強いられていたが、突如男たちは姿を消したのだ。

 敵が急に姿を消した事は不可解だが、鷹虎たちが逃げた方向からとんでもない衝撃があって急いで駆け付けて来た。


「取りあえず大神はアタシが背負う」

「お願いするわ」


 美雪も自分に力がない事は分かっている為、素直に動けない鷹虎を結愛に渡す。


「一端、本堂に戻って体勢を整えよう。大神が動けないのでは不用意に移動する事も出来んだろうからな。それに情報の共有も必要だ」


 ライラが提案し、斗真たちは本堂へと一度戻る事にした。




 




 風雲寺での戦闘が一段落した頃、風見市のオフィス街のビルの屋上に水人形の男を作った女がいた。

 女は両手を上げてまるで降伏をしているようだ。

 その視線の先には炎龍寺総真がいた。

 総真は相変わらずの仏頂面で女を見ている。


「いやぁ……ドンパチになればその内来るとは思っていたけど、早すぎでしょ。総ちゃん」

「どういうつもりだ。アクア」


 総真は女……アクアを問い詰めているようだ。

 その様子から二人は知り合いのようでもある。

 総真の問いに対してアクアは大して悪びれた様子もない。


「だって欲しかったんだもん。神器」


 アクアは口をとがらせて答える。

 欲しかったと余りにも子供染みた答えだが、総真はアクアならその程度の理由で動くと十分に知っている。

 変に色々と理由を並べられるよりもよっぽど信用のおける回答でもある。


「けど……何か先を越されたみたいだし、私も総ちゃんとやり合おうとは思ってないよ」


 アクアには向こうの状況が分かっている口ぶりだ。

 同時にアクアはこれ以上、事を荒立てようとすると総真も実力行使で出ると分かっている。

 そうなった時の危険性はアクアも良く知っている。

 だからこそ、アクアは自分で作った水人形を消した。

 

「今回の事は俺の方ですでに手を打ってある。お前は大人くしていろ」

「相変わらず仕事が早いね。さっすが総ちゃん」


 総真をおちょくるような口調だが、総真は一々アクアの言動に揺さぶられる事もない。


「でもさ……凄いよね。神器。あの程度の魔導師でも私のお人形を一人倒しちゃんだから」


 アクアの作った水人形は直接的な戦闘能力は低いが、耐久制度は非常に高い。

 それを一撃で倒せるだけの力を神器は秘めていると言う事だ。

 それもアクアから見れば取りに足りない実力の魔導師が使ってだ。


「だから欲しかったんだよね。手に入れてばらしてあんなところからこんなところまで徹底的に調べ尽くしてさ。そんで、同じ物を大量生産するの」

「下らん。神器は所詮は武器に過ぎない」


 総真は次第に熱を帯びて語るアクアを一蹴する。

 アクアにとっては研究対象として高い価値を持つ神器だが、総真にとってただの武器でしかない。

 そこは総真とアクアの考え方の違いで、そこだけはどちら分かり合う事は出来そうにない。


「とにかくこれ以上、この町で騒ぎを起こすな」


 総真はそれだけ言うと去って行く。

 釘を指した以上、アクアもこれ以上は行動を起こす気が無いと言う事を総真も分かっており、アクアも総真を敵に回す気はない。


「何でまた学校になんて通ってんだろうね。総ちゃんは学生相手に俺TUEEEEしたがる程子供でもないのにね」


 総真が去りアクアは一人零す。

 アクアが知る限り総真は風見ヶ岡学園に入学する必要はない。

 学園で習うような知識は総真が幼い頃に炎龍寺家が叩き込んでいる。

 風見ヶ岡学園魔法科卒と言う肩書も炎龍寺家次期当主と言う肩書の前では意味を成さない。

 学園に通う事で3年間は学園生活で拘束される為、総真にとっては時間の無駄にしか思えない。

 

「まっ。総ちゃんには総ちゃんの考えがある事だし、私には私の次の玩具があるから今回は総ちゃんの顔を立てて神器は諦めるとしますか」


 総真の考えは付き合いの長いアクアも分からない事は多いが、忠告を受けた以上は風見市で動きまわる事は総真に睨まれる。

 アクアは総真の忠告に従い風見市でこれ以上行動する事は止める事にした。

 今回は目的の神器を手に入れる事が出来なかったが、アクアにとってはもう終わった事でしかない。

 アクアは次の目的の為に風見市を後にした。









 総真がアクアに話しを付けた事を知らない斗真たちは敵が引いた事で一度寺の本堂で体力を回復させようとしていた。

 本堂は戦闘時に鷹虎がガラスや障子を突き破り居間の机も鷹虎が叩き付けられて破壊され、鷹虎がアウラを契約した際の突風で無残な状態となっていたが、まだ日も高く、体を休める


には十分だ。


「もう動けるか?」

「何とかな」


 体を休め1時間程度で鷹虎も動ける程に体力は回復していた。

 この1時間で周囲を警戒していたが、怖いくらいに敵が襲ってくる気配もない。

 それどころか、あれだけの騒ぎにも関わらず、誰も気づいていないかのように静かだ。

 管理局に通報しようにも寺の電話は使えず、斗真たちの携帯電話もなぜか繋がらない状態が続いている。

 これはアクアが外部に連絡を取れないように事前に細工をしている事等、斗真たちは知るよしもない。


「で、そろそろ説明して欲しいんだが? アウラ」

「仕方が無いな」


 鷹虎が動けるようになった事で、アウラに状況の説明を求める。

 他の4人もアウラの所在は気になっていたものの、鷹虎が動けず思わぬ事態にそこまで考える程の余裕はなかった。

 鷹虎がそう言うと昆の姿になっていたアウラは風と共に元の巫女の少女へと姿を変える。

 いつの間にか、武器を持っていた事は気になりながらも、今まで鷹虎の昆の事は誰も聞かなかったが、昆がアウラの姿になりそれを知っていた鷹虎以外は誰もが驚いている。


「まずどこから良いものか……」

「まずはアウラが何者かってところから頼む」

「分かった。私は神器。以上!」


 アウラは簡潔に答える。

 だが、誰もアウラの言う神器の事などは知らない。


「アレ……ああそうか。私達の存在は公にはされてなかったんだっけ」


 アウラは鷹虎たちが神器の存在を知っている事を前提に話したが、神器の存在は一般的には知られてはいない事だと思いだした。


「神器ってのはSクラスの魔道具の事よ」

「ちょっと待ってくれ。魔道具ってのはAクラスまでだろ?」


 斗真も今朝知った事だが、魔道具のクラス分けは最上がAクラスでそれ以上は存在していない筈だ。

 どんなに強力な魔道具も最上位はAクラスとなっている。


「表向きはね。でも、その上にはSクラスの魔道具が存在し、それらを総称した物を神器って言うのよ。私のようにね」

「つまりアウラは魔道具って事か?」

「その通り」


 にわかには信じ難いが、アウラは神器に分類される魔道具だと言う事らしい。


「噂では聞いた事はあったが、実在していたのか」


 5人の中でライラは噂だけなら聞いた事はあるらしい。

 

「総称って事はお前みたいなのがまだいるのかよ」

「神器は全部で7つ。各属性に一つづつ存在しているわ。制作者が同じだから人間で言う所の姉妹ね。ちなみに私は風の神器」


 アウラと同じ神器がアウラ以外にも6つは存在している。

 それが多いのか少ないのかはよくわからない。

 そしれ、アウラが姉妹と言っている事からその神器たちもアウラと同様に人の姿になれるのだろう。


「それが何でこんな寺に?」

「別にこれと言った理由はないわね。私は結構気まぐれだからここでグータラしたかっただけよ」


 風雲寺に居ついた事には重大な秘密も何もないようだ。

 

「それでアウラはこれからどうするつもりだ?」

「どうするって私は鷹虎と契約を交わしたからね。鷹虎が死ぬか私が飽きて鷹虎を見限るまでは私は鷹虎の物になるわけよ」

「俺に拒否権とかは……」

「契約が成立した時点でないわ」


 すでにアウラと鷹虎の間で契約が交わされている。

 契約が完了した時点でアウラは鷹虎の物になったとの事だ。


「契約ってより呪いだな」

「諦めなさい」


 状況的に仕方が無かったとはいえ、鷹虎はあの場でアウラと契約した事は早計だったかも知れないと軽く後悔しているが、今更後悔しても遅い。

 拒否権の無い鷹虎には同情するものの、斗真の持つAクラスの魔道具以上の力を持った神器の存在は心強い。

 すると、不意に斗真の携帯が鳴りだす。

 携帯が繋がらない事を確認していた為、急に携帯がなり斗真はびくりとする。

 斗真はすぐに携帯に出る。


「火神先生!」


 電話の相手は火凜であるらしく、学園との連絡が付いた事で誰もが一息つく。

 斗真は火凜と電話越しで話すが、少し戸惑ったように返事を繰り替えす。

 やがて、電話が終わる。


「で、先生はなんて?」

「安全は確保されたからすぐに戻って来いってさ」


 斗真は戸惑いながらも、火凜からの指示を伝える。

 学園側でもこちらの事態は把握しているらしく、すでに脅威は去った為、すぐに寮まで帰って来るようにとの事だ。

 斗真たちは襲撃して来た敵の事すら碌に分かっていない。

 そんな状況で返って来いと言われても戸惑うのは無理はない。


「どうだって良いさ。とにかく、今は帰って休みたい」

 

 状況は完全に呑み込めないものの、火凜は安全だから帰って来いと言う。

 動けるようになったものの5人の中で最も体力を消費している鷹虎は早いところ戻ってきちんと体を休めたかった。

 鷹虎の消耗が激しい以上は、斗真たちも指示通りに動くしかない。

 斗真たちはすぐに荷物をまとめると行きと同じように2時間かけて寮へと帰って行く。

 初めての特別実技の授業は謎の襲撃と共に腑に落ちない結末を持って終わった。

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