Monologue 2
誰も居ない礼拝堂で少年はただ一人歌っていた。しかし、礼拝堂の入り口の扉の蝶つがいが軋む音で少年は歌うことをやめて振り返る。
礼拝堂の入り口に立っていたのは金髪の少年と少女だった。双方とも肩で息をしていることから、どうやらそこら辺を駆けずり回っていたらしい。金髪の少年の方は歌っていた少年よりも年が一つか二つが上といったところ。金髪の少女の方は七つか八つほど上といったところだろう。少年少女は少年を見つけるや否や、すぐさま駆け寄ってきて金髪の少女が少年を抱き締める。
――良かった、急に居なくなっちゃったから心配したのよ……っ。
金髪の少女はそう言っていた。
――ホントだよ全く……。
金髪の少年は呆れた感じで言う。
少年は、年上の少年少女に怒られる。確かに自分勝手な行動をしたことは悪いことなのだが、どうしてこんなにも強く責められなくてはならないのだろう、と思っていた。
少年が泣くのを堪えている姿が愛らしかったのか、先ほどまで叱責をしていた少女はにんまりと笑って少年を抱きしめていた。
――ねぇ、何のための叱責だったの?
もう一人の少年が半ば呆れた感じで言っていたが、少年の方にも笑みがこぼれていた。
取りあえず少年の無事を確認が出来たので良しとした二人は、少年の手を引いて礼拝堂を後にした。
――なんで礼拝堂で歌ってたの?
少女がそう問いかけると、少年は穢れの無い、無垢な笑みを浮かべて言った。
――だって、讃美歌だもん。神様に感謝しながらお歌を歌えば、きっと良い事があると思ったんだ。
年上の少年少女らの予想の斜め上の発言だったので、しばらくキョトンとしていたが、少しして笑みをこぼしてしまった。そんな年上の態度が気に食わなかったのか、少年はムッとしている。
そんな姿も愛らしいのだが、いつまでもご機嫌斜めで居られては困る。少年少女らは露店でジェラートを一つ買い、少年に与えた。すると少年はたちまち笑顔になる。コロコロと表情を変える少年を慈愛に満ちた目で見る少女と少年。
この少年と少女は、ジェラートを食べている少年の姉であり兄であった。国籍や肌の色が違えど、ジェラートを食べている少年はこの二人を実の姉、実の兄のように慕っていた。『家族』だと思っている。
金髪の少年と少女は、黒髪の少年と共にフランスの路地を歩く。
三人の笑顔は太陽にも勝るとも劣らない、晴れやかなものだった。
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