高等部1年R組(丑班) 天橋京弥 第2話
2020年の4月6日
二日間、夜通しで行われた歓迎会の疲れも取れないまま月曜日となり、今日は再びボクの家に集まって学園について説明を受けることになった。
「つまりは、この学園は軍事国家でいろいろな異世界を治めているって言うわけ」
「……はぁ?」
入学早々、ボクの扉に細工していた先輩…
「室山先輩、意味が分かりません」
「京弥君、そんなことでは君は生き残れないよ。もっと柔軟な思考を持たないと」
「今のをきちんと理解するのは聖徳太子でも無理ですよ」
「馬鹿を言っちゃいけないよ、聖徳太子なら私が言うまでもないに決まっているよ!」
それって事前に知っていたってことでは?
「それに君以外の2人はちゃんと受け入れているんだから君も受け入れなさい!」
「いや、これ完全にポカーンのフリーズ状態ですよ!!」
ボクと同じくこの班に入った
「ほら、二人は納得してくれたようだよ」
「えっ、そんなファンタジーみたいなこと受け入れちゃったの!?」
「「まぁ異世界ぐらい…」」
「あんたらあれか?炎とか氷とか出す魔法もあるとか思っちゃてる厨二病か!?」
「えっ、そういうの見せたら信じるのね。松下君」
「承知した…」
室山先輩に呼ばれた小柄長髪寡黙な松下先輩は右手を庭に向けると
「ばーん…」
そんな気の抜けた声を上げた次の瞬間、庭には2m級の大きな氷の華が咲いていた。
「………」
「あっ、京弥君の顎が外れてちゃってる」
「つまり、異世界が存在する上にこの学園は能力やら魔法やらがあって、その力で異世界を治めて技術や資源を吸収していると」
「うん。やっと理解してくれたんだね」
「……あんなもの見せられたら信じるしかないでしょう…」
まだ庭に融けずに残ってるよ。いや、まずあれは融けるのか?
「そしてこれが能力を開花させる薬ね。これを飲む前にちゃんと注意事項を読むようにしてね」
そういってボクと柏田君に薬やらなんやら渡して説明会はお開きになった。時任さんにはなぜか薬が渡されなかった。
かなりヤバそうな赤い丸薬の注意事項には
『必ず、以下の事を守って服用すること
・これは人間の能力を無理やり開花させる薬です
・これを服用する前に付属の装置で周囲から空間を遮断してください。これを守らないと酷い目に遭います
・これを1回以上服用したからといって複数の能力が開花するわけではありません。というか死にます
・就寝前に噛み砕いたりせずに服用するとよりよい効果が望めます。そうしてください
・起床後は無暗に能力を使用せず、上の者の指示に従いましょう』
「…うん、いろいろヤバいな」
というかこれ、ボクが飲んで大丈夫なのか?一応、姉ちゃんの意見を聞いておいた方がいいだろう。
ボクは携帯を取り出し、実家にいるであろう姉に連絡を入れる。
ツーツーツー……————————————————プルルルッ
ちょっと電波が悪いのかいつもより発信まで長い気がしたが、ちゃんと繋がった。
「はーい。どちら様ですかぁ?」
「いや、携帯なんだから誰か分かるでしょ」
「さぁ?いきなりいなくなって連絡のひとつも寄越さない弟を持った覚えはないからなぁ~」
「こっちについてから入学式やら歓迎会やら色々忙しかったんだよ」
「はて?言い訳をする弟を持った覚えもないんだけどぉ?」
「……ごめんなさい」
「あっ、京くんかぁ。どうしたのぉ?」
「ちょっと訊きたいことがあって」
「相談?だったらちょっと待ってねぇ………」
「もしかして忙しかった?」
「いやいや、もう終わったよ。京くん、なにか重要なことを話すときはその部屋で、その携帯を使ってねぇ」
「…もしかして」
「まぁ、学園だからねぇ。それで何ぃ?」
「この学園でいう能力と僕達が持っている力って別物?」
「う~ん、あんまり詳しくは知らないから断定はできないけど、おそらく別物だねぇ」
「わかった、それじゃあ」
「でも、学園が能力を作るために使っている薬が私達に悪影響を及ぼさないとも限らないから、止めといたほうがいいよぉ」
果たして彼女はどこまでこの学園について知っているのだろうか?たぶん、聞いても教えてはくれないだろう。
「私たちの力も能力も見た目あんまり変わらないから飲んだってことにして黙っておけばいいと思うよぉ~」
「わかった、そうするよ」
そうして、ボクは飲まずに寝ることにした。
能力は一人一つが保有する力で、発動させるにはただ思うだけで良いらしい。先輩は「強いて言えば精神力を消費して使っている」と言っていた。今だ咲いている氷も能力によるもので『氷を生み出す』能力だとか。
それとは別に魔法もあるらしいが、こちらは魔力を消費して発動するので元々の魔力保有量に依存して、しかし大した攻撃魔法があるわけでもないので、治癒と防御、肉体強化の魔法だけを覚えておくのが主流らしい。
明日から特訓が始まるらしいが、これまでの常識が壊されるのは想像に難くないことだった。
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