第5波【伝言】

淡く滑らかな朝日がゆっくりと


砂浜とくさむらの境に打ち上げられた


無防備な身体を静かに暖めているのを感じる。




静かに目蓋まぶたを開け、目線を海へ向ける




そこには昨夜、切なさと官能を共有した


あの青白く優しい海の面影は消え去り


ただ機械のように


寄せ返し続ける波の姿があるだけ・・・




足元には薄青いガラスに戻った滴が


そこがもう自分の居場所かのよう小指に収まり


やさしい朝光を受け、小さく輝いていた。




温まりつつある身体に五感が戻ると


何かが手に収まっている感覚を感じ


そっと広げた手を覗き込む・・・




いくつもの小さな突起を身に纏った青い巻貝がひとつ。


それはガラス細工のように滑らかな光沢を称え


洗練された受話器のように、手のひらに収まっていた。




引き寄せられるように耳に這わせると、


聞き覚えのある、小さく優しい声が耳に注ぎ込まれ


甘く愛しい想いを呼び覚まし・・・


気付くと巻貝を壊し兼ねない程強く


充血した耳に押し当てていた。




耳から剥がした巻貝を


まるで宝物を貰った子供のように


そっと両手に包み込む




脱力感が残る体をゆっくり起こし


裸足で砂地を踏み締めながら海に背を向け


ゆらゆら家路へと歩き出す・・・




次の約束を伝えてくれた、綺麗な巻貝を眺めながら・・・

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