第4波【再会】

どの位の時間が過ぎたのか・・・


潮の香りを感じ、2度目の目覚めを感じると


目に入ってきたのは見覚えのある小さな入り江。




あの日触れてしまった【さざ波】の住みか。




足元を見ると、かすかに砂に埋もれた足の小指から


いたずらな子供のように顔を出した滴が青白く光っている。


満月は既に新月へと形を移し


海はその僅かな月光で薄化粧を纏い、淡く浮き出ている。


ふと何か・・・違和感を感じ、神経を絞り込む。


静寂が辺りを包み込んでいるのを感じ・・・


・・・・・静寂・・・・


夜目になれたまなこで海を凝視すると・・・




打ち寄せる波が全く無い事に気づく。


それはまるで湖のように・・・眠っているかのように・・・




そして何かを待ち望むかのように・・・




不安と好奇心が入り交ざる中


滴にいざなわれるがままに海辺に歩を進め


微光する小指をそっと海に浸す・・・


ほどなくあの日触れてしまった【さざ波】の


初々しく優しい・・・包み込むような甘美を小指が覚え


それは真綿に水が浸み込んでいくように全身を浸す。


もはや僅かに残された自制心は剥ぎ取られ


何かを求めるように沖へと歩を進め始めていた・・・




気がつくと胸の辺りまで浸かりながらも


飽くなき欲求を満たそうと、更なる深みへ足を運ぼうとした時


青白き波が目の前に姿を現し


瞬く間に火照った肉体を飲み込んだ。




しかし恐怖や不安よりも官能が上回り


優しくも激しい波の波動に全身を愛撫され


ついには肉体から搾り出される快楽を感じながら


果てていく自分を波に委ねた・・・




薄れゆく意識と戦いながら・・・今度は目線をそらさずに


淡く輝く青白き滴に真意の返事を呟く。





「・・・・・・・・・・・・・・。」






すると滴は薄桃色ピンクの輝きに変わり


照れ笑いしているかのように震えだした・・・




愛しい思いを胸に・・・波に委ねた体はそのままに・・・


意識だけが遠くへ逃へげて行った・・・

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