第3波【目覚め】

肌寒さを覚え、静かに眠りから覚めた。


いつの間にか寝ていたようだ。


部屋は静寂を保ち、ぼんやりとした淡い明るさを感じる。


「今夜は満月かな・・・」と目線だけを窓辺に向ける。




カーテンは閉まっていた。




覚めきれていない意識の中、部屋の輪郭を目で追うと、


淡い光は、冷たい足先から感じ取れた。


悲しげで・・・小さく・・・消え入りそうなのに


確かな意思を感じさせる青白き滴の輝きを・・・




頭の中で、昨日聞き取ってしまった言葉が蘇える。


体はそのままに、輝きに目線を合わせる事も無く


語りかけるように静かに返事を呟く。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」





そして口に出したその言葉を自分の耳で聞いた途端


滴はフラッシュの如く強い光を放なち・・・


一瞬後、部屋は深い闇に包まれた。




動悸どうきを感じながら手探りで足の小指に手を這わす。


そこに滴の存在は感じられず


滑らかな爪の感覚だけが残っていた。




途端に切なさと後悔が同時に押し寄せ


寒気となり体を震わせた。


貪るように小指をさすりながら、


声にならない呻き声を発し


海の底に沈んでゆくような感覚が呼吸をも支配し・・・




もがきながら目を開けると・・・




乱れたシーツに胎児のような格好で目覚めを覚えた。


部屋は静寂を保ち、ぼんやりとした淡い明るさを感じ・・・




満月の光が部屋に差し込んでいた。




濡れたまなこで足先に目線を向けると


滴は何も無かったかの様に小指の爪に収まっており


月の光を受け取りながら、淡い輝きを放っていた。


冷たい足先に手を伸ばし、そっと小指をなでると・・・


滴の部分だけが、ほのかに温かさを感じさせた。




安堵あんどと驚きを抱えながら、2度目の睡魔に身を委ねる。




聞き取ってしまった言葉を噛み締めながら・・・

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