第7話 豪華な食事
森の中は意外に明るく、木陰からたくさんの光が差し込んでいます。動物の姿は見えませんが、鳥の声なら時折聞こえます。
楽しい気分の2人は、大きな声で歌を歌い出しました。
♪俺たちは どこにでもいる 楽しい音楽家
仲間は世界中にいるのさ 路地裏の猫 庭先の子犬 電柱のスズメ 池のカメ
いつでもその気になれば 演奏するさ ドゥーダッダ デンダッダ ガーラガラ
歌っていれば 幸せが向こうからやってくる♪
♪俺たちは どこにでもいる 愉快な道化師
どんな芸もできるのさ 猛獣ダンス 火の輪くぐり 逆立ちシーソー 宙返り
君が一緒にやりたいなら 歓迎するさ ピョンタッタ ヒョイサッサ ポーイポイ
踊っていれば 友達は自然にやってくる♪
どんどん歩いて行くと、どこからかサラサラという音が聞こえてきます。
「あれ? 水の音じゃない」
ピーノは言いました。
「しめた、川があるのかもしれない」
2人は足を速めて進みました。10分も歩くと水の音はどんどん大きくなって、ザアザアというと音に変わり、とうとうゴウゴウという音になったのです。
「ピーノ! 滝が見える。すごい水だ。こんな島の一体どこから水が出ているんだろう」
かけだして、水を手ですくい少し匂いをかぎ、ひとくち飲むと、ダッフルさんは嬉しそうに振り向きます。
「飲めるみたいだよ。冷たくて、少し甘い。最高だ!」
「本当? じゃあ、私も飲む」
水をひとくち飲むと、自分がどんなに喉が渇いていたか思い出しました。2人は息を吸うのも惜しいほど、ごくごく飲み干しました。
あまりに美味しかったので、水筒に入れておくことにしました。
「今度はお腹が空いてきたね、この川にはお魚がいるのかな?」
ピーノが川をのぞき込みます。川はものすごく澄んでいて、川底の石まで全部見えましたが、なぜか魚の姿はありません。
「うーん、残念。釣り竿ならあるのに。水がきれいすぎて、魚が住めないなんてことなんてあるのかな」
ピーノは首をかしげます。
「そういえば、こんな水辺なのに鳥も虫もいないな。おかしなことだ」
ダッフルさんも、ようやく何かがおかしいことに気づきました。
2人はとにかく川に沿って歩いてみることにしました。水があるからには生き物が集まってくるはずです。どこかで生き物を見るかもしれないし、果物や木の実を探せるかもしれません。
はたして5分くらいあるくと、ぽっかりと開けた広場のような所に出ました。広さは近所の公園くらい。ピーノがかけっこをするのにちょうど良い程度です。
しかし、不思議なことに広場の真ん中には白いテーブルクロスを掛けた丸いテーブルがあり、2脚の椅子とお皿、ナイフ、フォーク、ほかほかと湯気の立った2人分の食事がセットされていたのです。
ダッフルさんもピーノもしばらく言葉が出ませんでしたが、そっとそばに歩いて行きました。
平べったい白いお皿には、黄金色に透き通ったスープ。横の小さなボウルには水の玉が光ってこぼれそうなみずみずしいサラダ、その横にはバターの匂いで胃がキュウッと跳ねそうなくらい美味しそうなバターロールとちょっと焦げ色のついたフランスパンが山盛り。
テーブルの真ん中には銀色のお皿があり、よく焼けた鶏が丸ごと1羽乗っています。お腹の中にはいい匂いのする薬草や炒めたご飯が入っているようです。
見ているだけで口の中につばが溜まってきて、涙も出てきそうです。
さっきから鼻と胃は一緒になってクークー、フンフン鳴っています。
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