第4話 海へ
港に着くと、ダッフルさんは顔見知りの漁師さんに小さな船を借りました。あちらこちらの街頭やお店に出入りしているだけあって、ダッフルさんはとても顔が広いのです。
どこを歩いていても、いろいろな人に声をかけられますし、時には取れすぎた魚や野菜を分けてくれたりもします。
そのたびにダッフルさんは「やあやあ、これはありがとう。どうもありがとう!」と言ってちょっとした手品見せて笑わせます。
そんな町の人気者であるダッフルさんを、ピーノは自慢に思っています。
「今日は波もなくて穏やかだ。少し遠くまで漕いで行ったらどうだい。ピーノちゃんにもきっと大物が釣れるぞ」
港にいた漁師さんはニコニコ笑います。
2人はお礼を言って船に乗ると、かなり沖までボートを進め、釣り糸を垂らします。
波はほとんどなく、風も暖かくやわらかです。
ピーノは釣り糸を垂らしながら、昨日バローナおばあちゃんに教えてもらった数の数え方や裏の庭で生まれた猫の赤ちゃんのこと、向かいのトロン兄弟とのケンカ、夕飯の献立のことなど、たくさんたくさん話をしました。
ダッフルさんはそのたびに笑ったり、怒ったり、困ったりしながら楽しそうに話を聞いています。
話疲れると、しりとりやなぞなぞをして遊びます。ダッフルさんの出すなぞなぞはいつも難しくて、ピーノはすぐに降参してしまいます。たとえば、こんな問題です。
「きっちり1時間で燃え尽きるヒモがある。このヒモを2本使って、45分はかるにはどうすればいいかな」
「お父さんが自転車の運転をしているよ。そのとき、横道から買い物をさげたおばさんが飛び出してきて転んだ。道路にはミカン、リンゴ、シャンプー、サンダルが散らばった。さて、お父さんが最初に踏んだのはなんだろう」
そのうち疲れてきたピーノは、眠くなってきました。ダッフルさんの肩に寄りかかって、すうすう寝息を立て始めました。
幸せそうな顔をして眠るピーノを見ているうちに、ダッフルさんも少しずつまぶたが重くなっていくのでした。
そういえば、こんなに天気がいいのに、魚が1匹も釣れないなあ、とダッフルさんは思いながら、夢の中に落ちていきました。
「お父さん起きて!」
先に目が覚めたのは、ピーノでした。
急に風が強くなってきて、襟元に冷たい手を差し込まれたような気がしたからです。見上げると、空がごうごう鳴っています。
雲もグルグルとすごい勢いで流れていきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます