第2話 楽天家の父と娘
さて今日は、つい半年前にへんてこ島から帰ってきた親子の、不思議な話をしましょう。
ピーノは6歳の元気な女の子。
鼻ぺちゃが少し悩みだけど、大きな目がいつも好奇心でくるくる動いています。
足は近所で一番速いし、あいさつも大きな声でできるしっかり者です。
ピーノのお母さんは、ピーノが4歳の時に病気で亡くなりました。その日からピーノは父親のダッフルさんとこの小さなアパートで暮らしてきました。
ピーノは毎朝、夜明けとともに起きて冷たい水で顔を洗い、お湯を沸かしてパンをトースターにセットしてからダッフルさんを起こします。
ぼーっとしているダッフルさんをベッドから落っことして、ベッドメイキングもします。
それから、2人でささやかな朝食を食べ、ダッフルさんはそのあと仕事に出かけます。テーブルに散らかったパンくずを集めてベランダで待つ小鳥たちに分けてあげるのも、ピーノの仕事でした。
ダッフルさんは道ばたで手品を見せて、通行人にお金をもらう大道芸人で、日によって稼ぎが違います。
雨の日は、まったく稼ぎがないし、たまにたくさん稼いでも飲みに行って全部使ってしまうこともあります。隣町に来たサーカスに出ることもあれば、怖い人にお金を取られるときもあります。
まあ、かんたんに言ってしまえば、2人は“かなり”お金持ちではありませんでした。
でも、ダッフルさんはいつもニコニコ、のんびりしていて、明日のご飯のことも冬に着るコートがないのことも気にしません。
「生きていれば、きっと何かいいことがあるさ」
というのが口癖でした。
お母さんが生きていた頃は、ダッフルさんが仕事に行ったあと、ピーノはお母さんが働いているパン屋さんについていき、お手伝いをしたり近所の公園で水遊びしたり町の図書館で本を読んだりしていました。
ピーノはたまに楽しかった昔を思い出して、お母さんと手をつないで歩いた道を1人で歩いてみます。
でも、お母さんと話したたくさんのことや、お母さんの優しい声、絡ませた腕の柔らかさなどが思い出されて、涙がこぼれてきそうになってあまり楽しくありません。
いまは、昼間は上の部屋に独りで住むバローナおばあちゃんと一緒に遊んだり、道路に出て絵を描いたり、市場で残り物の魚や野菜をもらったり、夕食の支度をしたりして過ごします。
ピーノはたった6歳なのに、とてもしっかり者です。だってピーノがしっかりしないと、ダッフルさんはあっというまに飢え死にか凍え死にしてしまうでしょうからね。
そうそう、楽天家のダッフルさんとピーノは仲良しなので、天気のよい日は何もかも忘れて遊びに行ってしまうこともありました。
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