第15話 Down,down,down


「ねえ、どこまで下りるの」


さすがに疲れてきました。

真っ暗な階段をもうかれこれ20分も下りたでしょうか。いっこうに終点は見えません。

見えるのは、パルがどこからか出してきた小さなろうそくのような明かりだけ。パルの頭の上でゆらゆら揺れるけど、絶対に消えない不思議な光です。

光源は小さな虫だというのですが、ピーノにはさっぱりわかりません。


「俺だってわからないよ。地下に下りたら、そこは魔法の支配する空間だ。おれたちも怖くてほとんど入らない。入ったら帰ってこられるかわからないから」


「え、そんなところなの! 早く言ってよ。じゃあ、どうやって魔法使いさんを探したらいいのよ」


ピーノは膝が痛くて文句たらたらです。


「だから、イヤだったんだよなぁ、子どもを連れてくるのは……。まあ、愚痴っても仕方ないから俺が知っているだけのことは話すから、これ食べながら歩け。体力が回復する」


パルが差し出したゼリー状の液体が入った袋は、ひんやりしていました。ストローから恐る恐る吸い込むと、冷たさが体中に染み渡っていくようです。ピーノはチューチュー音を立てながら、ほんのり甘い果汁のようなゼリーを夢中で吸います。


「この島の地下世界は、青のエリア、緑のエリア、銀のエリアの3つに分かれている。俺のご主人はこのどこかにいるんだけど、気まぐれに移動するし、ちょくちょく作り替えたりするから、どういう風になっているのか行ってみないとわからないんだ」


「模様替えが好きなの?」


「かもしれないな。あの方は自分と世界に飽きて、きっと暇をもてあましてるんだ。だから、おまえ、じゃなかった。ピーノに会うと言ったのも気まぐれだと思う。願いを叶える気があるのかどうかもわからないぞ」


ピーノは少し考えました。どうしたってもう戻れないなら、希望をもつしかありません。


「いいよ。でも行くしかないんでしょ? だったら、前に進むよ」


まさに、楽天家のダッフルさんの娘です。

この言葉が終わらないうちに、とうとう明かりの先に階段の終わりと小さな木の扉が見えてきました。

そのせいでしょうか、足の痛みが不思議と楽になり、体に力が戻ってきました。

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