第12話 島で眠る人
「ははーん。君は何かを隠しているね。この島に僕らがいられると困ることがあるとかかな」
ダッフルさんの何気ない指摘に、驚くほど大きな反応をしたパルは、今度は懇願するような顔をしました。
「なあ、頼むから願い事を言ってくれよ。ごちそうでも金でも釣られないっておまえらなんなんだよ! って、あっ!」
思わず漏らしてしまった本音に、パルは一人でアワアワしだしました。まるで百面相みたいです。
ピーノは笑いながら言いました。
「なるほどー。あれはパルのしわざなのね。なぜあんなことをしたのか教えてくれたら、願い事をいうわ」
「う、、それは……」
「言えないなら、私たちはこのまま探検を続けるよ」
ダッフルさんまでパルを責めはじめました。
「ああー、それは困る。じゃなくて、こんな島何もないんだってば……。
わかった。少しだけなら話す。この島を作ったさるお方はこの島でずっと眠っているんだ。俺たちは安眠を守るために作られた番人だ。もし万が一、ムッコ雲の結界をすり抜けて上陸した人間がいたら、眠りを妨げないように速やかに帰ってもらう。そのためには怖がらせたり、はたまたほしいものを与えてこの島を探索しないように、ちょっとした力を与えられている」
2人の船がすり抜けてきたあの濃い霧はムッコ雲というみたいです。
「俺たち、って言ったよね。パルの仲間は何人もいるの
「うん。おまえらには見えないだろうけど、この周囲に100人ばかりいるぞ」
え! と言うなり2人は驚いて首をすくめ、周りをそっと見回します。しかし、広場はたださわやかな風が草をなでていくだけ。
生きものの気配さえしません。
「なっ、だ・か・ら、早く帰ってほしいわけ。これ以上この島を踏み荒らして、あの方の眠りを邪魔しないでくれ」
パルは必死です。
ピーノは腕を組んで考えました。
「わかった。あなたたちの島に勝手に入ってごめんなさい。別に願い事を叶えてもらわなくてもいいから、帰るよ」
「そうだね。いろいろありがとう。帰り方を教えてもらえるかな」
ダッフルさんもピーノと同じことを言います。
パルはさらに挙動不審になり、困り果てています。
「あ、いや、それはもっと困る。えと、そうだ。オ、オレが叱られるんだ。そう、そうだ! お客さんを手ぶらで帰すのはダメなんだよ」
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