03 アフターバースデー(上)

 瓜子の誕生日の翌日、十二月の第一日曜日。

 その日もユーリはボイトレおよびスタジオ練習が入っていたため、それを完了させてから、再び横浜のドッグ・ジムを訪れることになった。


 前回の来訪からは、一週間が過ぎている。犬飼京菜のご機嫌は回復しただろうかと、おそるおそるお邪魔してみると――最年少の道場主は、本日も一心不乱にサンドバッグを蹴っていた。


「よう。待ってたよ、お二人さん」


 いっぽう大和源五郎のほうは、前回よりもさらに気さくに瓜子たちを迎え入れてくれた。


「お嬢も、昨日からそわそわしてたよ。お前さんがたが来てくれることを、心から喜んでるんだろう。……ま、そんな本音を表に出すような性格じゃないんで、それは察してくれや」


「押忍。本当に犬飼さんが喜んでくれてるなら、こっちも嬉しいです」


 瓜子がこの場を訪れたのは立松からのお願いであったが、瓜子自身もドッグ・ジムと赤星道場の対立には心を痛めていたし――そして今は、犬飼京菜個人に対する思い入れというものも生じていた。


 犬飼京菜は、サキと浅からぬ因縁を持つ相手であったのだ。それならば、瓜子にとっても他人事ではなかった。

 さらに、そういった事情を抜きにしても、瓜子はもはや犬飼京菜を放っておけない心境であったのだった。


(あんな泣き顔を二回も見せられたら、そりゃあ放っておけないよな)


 そうして瓜子とユーリは、その日も充実した稽古を積むことになった。

 この日は大和源五郎ばかりでなく、マー・シーダムも瓜子たちの面倒を見てくれたのだ。いつも穏やかに微笑んでいるこの若者は、ごく真っ当なムエタイ選手としてもかなりの実力者であるようであった。


「こしきムエタイにかんしては、キョウナにしかおしえられません。だから、きんだいムエタイのはんちゅうで、ふたりにコーチさせていただきますね」


 独特のアクセントを持つ日本語で、マー・シーダムはそんな風に言ってくれた。

 プレスマン道場にはジョンというムエタイの熟練者がいるし、MMAへの応用という面では、ジョンのほうが上回っているだろう。しかしマー・シーダムはユーリよりも三センチばかりも小柄であったため、女子選手が実際に手を合わせるにはやりやすい面もあった。


「シーダムさんは、ご自分も試合に出られてるんですか?」


 稽古の合間に瓜子が尋ねてみると、マー・シーダムはちょっとさびしげな笑顔で「いえ」と言った。


「ぼく、こどものころから、タイでしあいをしてましたけど……もうまくはくりで、いんたいすることになりました。それで、いきるもくてきをみうしなったときに、タクヤとであったんです。……タクヤ、すばらしいひとでした」


「そうでしたか。ぶしつけなことを聞いてしまって、すみません」


「いえ。あなたたち、ドッグ・ジムにきてくれて、うれしいです。どうかキョウナと、なかよくしてあげてください」


 ドッグ・ジムのコーチたちは、誰もが犬飼京菜を大切にしていた。冷徹で内心を覗かせないダニー・リーも、犬飼京菜に対しては忠実な騎士のごとき態度であったのだ。犬飼京菜は小学生の頃からロクに学校に通わず、世間との繋がりを拒絶しているかに見えるが――その分、ジムの中では深くて重い絆を育んでいるように見受けられた。


(そういう部分は、弥生子さんと似てるんだよな)


 赤星弥生子もまた、人生のすべてを格闘技に捧げてきた身なのである。

 ただ異なるのは、両者の父親のありようであった。

 かたや格闘技界のカリスマで、かたや不遇の敗残者で――まるきり正反対の父親を持ちながら、赤星弥生子と犬飼京菜は非常によく似た呪縛にとらわれているように感じられるのだった。


(弥生子さんは父親の築いた栄光を守るため、犬飼さんは父親の分まで栄光をつかむため……でもだからって、二人が対立する必要はないはずだよな)


 瓜子はそんな思いでもって、二人の和解を願っていたのだった。

 が、そんなおせっかいな目的のためだけに、犬飼京菜に取り入ろうとしているわけではない。瓜子はそんな、小器用な人間ではないのだ。だから、犬飼京菜がどのような人間であるかを知るために、体当たりでぶつかっているだけのことであった。


 そして、稽古中には純然と稽古を楽しんでいる。大和源五郎もマー・シーダムも外連味のない素晴らしいコーチであり、犬飼京菜も沙羅選手も身に余るほどの強敵であったため、瓜子もユーリも非常に実のある時間を過ごすことがかなったのだった。


 そうして、午後の五時ぐらいに差し掛かったとき――先週と同じように、稽古場のドアが無造作に開かれて、先週と同じ二人の姿を覗かせたわけである。


「よう。サキと嬢ちゃんまで来てくれたのか」


 大和源五郎がしわくちゃの笑顔で迎えると、サキは「へん」と鼻を鳴らした。


「今日はこっちのタコスケにおねだりされて、しかたなくだよ。場所代として、おめーらにも立派なディナーをふるまってやらあ」


「場所代? ……ほう、今日はそっちで食材を準備してきたってことか」


 サキは両手にスーパーの袋を抱えていたのだ。理央が松葉杖で荷物を運べない身であるため、なかなかとてつもない量になってしまっていた。


「しかし、事情がさっぱりわからんな。お嬢ちゃんのおねだりが、なんだって?」


「昨日はそこのチビタコの誕生日で、盛大なパーティーが開かれたんだよ。アタシらもそれに招待されてたんだけど、このタコスケが遠足前のガキみてーに知恵熱を出しちまったもんだから、それがおジャンになっちまったわけだなー」


 理央は真っ赤になりながら、サキのスカジャンの袖を引っ張っていた。


「で、今日はそのリベンジ戦ってわけだ。こっちは勝手に盛り上がるから、部外者のおめーらはめぐんでやったディナーをすみっこで食ってろや」


 言いたいことを言いたいだけ言い捨てて、サキはさっさと歩み去ってしまった。

 理央は申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げ、最後に瓜子へとおずおず微笑みかけてから、ドアを閉める。

 こちらでは、大和源五郎と沙羅選手が苦笑していた。


「まったく、憎まれ口を叩かせたら天下一品だな。お前さんと、いい勝負だ」


「いやぁ、ウチもあのねえちゃんにはかなわんわ。傍若無人が具現化したようなふてぶてしさやね」


 それでもサキは二週連続でドッグ・ジムに通い、料理の腕をふるおうとしているのだ。毒舌を撒き散らすのは、おそらく照れ隠しの産物であり――そして大和源五郎たちも、それを察してくれているはずであった。


(サキさんもサキさんで、本腰を入れてドッグ・ジムの人らと和解しようとしてるんだな)


 犬飼京菜は素知らぬ顔で、ダニー・リーとスパーに励んでいる。

 赤星弥生子とは、また一風異なる頑迷さを持った少女であるが――きっとこれだけの人間をひきつける魅力があるのだろう。瓜子がこの場に足を運ぶのも、何割かはそれが理由であるはずであった。


                  ◇


 そうして午後の六時となったら、充実した稽古も終了である。

 平日は夜遅くまで稽古に励んでいるため、日曜日は早めに切り上げるのが通例であるのだそうだ。それでも昼から開始して、およそ五時間の稽古であるという話であった。


「先週と今週は、ウチもたまたま休みやったけどな。普段は土日にプロレスの試合が多いから、稽古は平日がメインなんよ」


「ああ、沙羅選手は《シトラス》って団体に移籍したそうですね。前に小笠原選手が、そちらの所属選手と対戦してましたよ」


「マキねえやんやろ? あのねえやんを一ラウンドでKOするんやから、小笠原はんの実力はほんまもんやな。とにかくフィジカルが尋常やないで、マキねえやんは」


 そんな言葉を交わしながら、身支度を済ませた瓜子たちが食堂に向かってみると――そこには先週よりも豪華なディナーが並べられていた。


 豚バラと白菜のクリーム鍋に、スパイシーな芳香を放つ手羽先のハーブグリル、エビとアボガドとトマトのサラダ、サーモンとタマネギのカルパッチョ、ベーコンとパプリカとエリンギの洋風炊き込みご飯などなど――誰の試合も近くないため、糖質も脂質も遠慮のないラインナップであった。


「うわー、ほんまにパーティーやんか。一時間かそこらで、ようもこれだけのご馳走を準備できるもんやなぁ」


「はん。三人がかりなら、何も難しいこっちゃねーだろ」


 サキはそんな風に言っていたが、本日も料理の手伝いをしたのは理央と榊山蔵人のみであるのだ。理央などはまだ右半身が不自由であるのだから、やはりサキの技術が卓越しているのだろうと思われた。


「お、ノンアルのシャンパンまで準備されてるやん。うり坊かて、そろそろオトナんなったんと違うんか?」


「そうっすね。でも、今のところお酒に興味はないっすよ」


「ほんなら、うちらは勝手にやらせてもらおかぁ。こんだけのご馳走でアルコール抜きやなんて、生殺しやからなぁ」


 沙羅選手は嬉々として、瓶ビールを運んできた。ただし、そちらのグラスは本人と大和源五郎の二名分のみである。


「サキはんは、飲まへんの? 先週の話から逆算すると、ウチとタメかそこらやろ?」


「うるせーよ。尻を四つに割られてーのか?」


「ああ、記憶は消去ちゅう話やったか。ったく、プレスマンは難儀な人間ばっかやなぁ」


 そうしてやいやい騒いでいる間に、シャワーを終えた面々が次々に着席した。

 犬飼京菜は、いつも以上の急角度で口をへの字にしている。しかしその顔は、笑顔をこらえているときのメイと似たものを感じなくもなかった。


「じゃ、勝手に盛り上がらせていただくか。牛、開会の挨拶だ」


「はいはぁい。牛じゃないけど、承りましたぁ。……えー、ドッグ・ジムの方々には恐縮の限りですが、本日もうり坊ちゃんの記念すべき二十回目のバースデーをお祝いさせていただきまぁす。ドッグ・ジムの方々も自由参加で、乾杯をお願いいたしますねぇ」


 犬飼京菜たちの前にも、沙羅選手の手によってシャンパンのグラスが配られていたのだ。それを手にしたのはマー・シーダムのみであったが、沙羅選手と大和源五郎はビールのグラスを掲げていた。


「ではでは、うり坊ちゃん、おたんじょーびおめでとー! かんぱーい!」


「乾杯」と、グラスを持った人々が控えめな声で唱和してくれる。瓜子はありがたいやら気まずいやらで、なかなかに情緒が安定しなかった。


 ともあれ、ディナーの開始である。

 犬飼京菜やダニー・リーも素知らぬ顔で食事を始めたので、瓜子もほっとしながら食器を取り上げることにした。


「でも、熱が下がってよかったですね、理央さん。前日の夜にいきなりだったから、心配してましたよ」


 瓜子がそのように呼びかけると、理央は赤くなってうつむいてしまった。そして遠慮のないサキが、そのやわらかそうな髪に包まれた頭をぽんぽんと叩く。


「さっきも言った通り、知恵熱だから伝染の心配はねーよ。死ぬほど楽しみにしてたパーティーを台無しにしちまって、ざまーねーぜ」


「そんな風に言ったら、可哀想っすよ。見知らぬ人たちもたくさんいたから、きっと余計に緊張しちゃったんでしょうね」


 理央は白い頬を染めたまま、「あい」と小さくうなずいた。

 そして、テーブルの下に隠していたものをおずおずと瓜子のほうに差し出してくる。


「うりこしゃん……プレゼントでしゅ」


「わ、ありがとうございます。開けてみていいっすか?」


 中身は、ツイードの手袋であった。可愛らしすぎることのない、瓜子の好みのデザインだ。


「本当は手編みの手袋なんざを目論んでやがったけど、まだそこまでまともに指が動かなかったってこったなー。そもそも女同士で手編みのプレゼントってのもどうかと思うけどよー」


 理央はいっそう真っ赤になりながら、サキの腕をくいくいと引っ張る。本当に、遠慮のなさではサキにまさる者もなかった。

 そこに、ユーリの「あーっ!」という声が響きわたる。


「そうだそうだ! ユーリも牧瀬理央ちゃんにプレゼントがあったのでした! 料理の素晴らしさに魂をつかまれて、すっかり忘却しておったわい」


「え? なんでユーリさんが、理央さんにプレゼントをあげるんすか?」


「いやー、たまたまのタイミングかにゃ? お金は一円もかかっていないので、よかったら受け取っておくんなまし」


 ユーリは壁際に放り出されていたボストンバッグから引っ張り出したものを、理央のほうに差し出した。さして大きくもない、平べったい包みである。ブランドファッションのロゴが入ったビニール袋で、特別に封などはされていない。


「包みは関係ないから、お気になさらずね。そんなかしこまったプレゼントじゃないから、適当な袋に入れただけなのです」


 ユーリはにこにこと、無邪気に笑っている。それを不思議そうに見返しながら、理央は両手で包みを受け取った。

 果たして、その内から現れたのは――明日発売となる『ユーリ・トライ!』のDVD特装版に他ならなかったのだった。


「ユ、ユーリさん! それは関係者用のサンプルでしょう? 何を勝手に、プレゼントしてるんすか!」


「えー? だって、おうちにはうり坊ちゃんがもらったのもあるから、別にいいかなーと思って。牧瀬理央ちゃんも、購入の予約とかしてなかったでしょ?」


「あい」とうなずく理央は、まだきょとんとした面持ちである。どうしてユーリがこのようなものをプレゼントしてくれるのか、理解できていないのだろう。

 ユーリは「にゅふふ」と笑いながら、理央の手に渡ったソフトのパッケージを裏返した。


「こちらをご覧あれ! ユーリのお歌にご興味を持っておらずとも、牧瀬理央ちゃん垂涎の特典映像が封入されているのです!」


 パッケージの裏側は、ユーリたちのライブ画像で飾られている。その最下段に、特典映像の画像も小さく掲載されており――そこでは、水着姿でタンバリンを叩く瓜子の姿まで載せられてしまっていたのだった。

 ぱあっと顔を輝かせる理央に、ユーリはさらにたたみかける。


「なおかつこちらには、うり坊ちゃんの水着姿がどっさりのフォトブックも封入されておりますぞ! うり坊ちゃんファンの牧瀬理央ちゃんにはたまりますまい!」


「へえ、そいつは聞き捨てならへんな。嬢ちゃん、ウチにも見してくれへん?」


「だ、駄目っすよ! ご興味があるなら、ご購入をお願いいたします!」


「なんや、ケチくさい。うり坊の貧乳がどんだけ育ったかチェックしたろ思うたのに」


 にやにやと笑う沙羅選手のかたわらでは、大和源五郎がうろんげな顔をしていた。


「そっちのユーリさんは、アイドルとして活動してるって話だったよな。もしかしたら、猪狩さんも同じグループか何かだったのかい?」


「ち、違いますよ。カメラマンさんや上司の気まぐれで、自分は巻き込まれただけっす」


「気まぐれちゃうやろ。うり坊は幼児体型やけど、妙に色気があるんよなぁ」


 と、沙羅選手は右手で料理を食しつつ、左手で携帯端末を操作し始めた。


「そら、『瓜子 水着』で検索しただけで、この有り様や。……んー、貧乳は相変わらずやけど、色気がぐんぐん増しとるなあ」


「どれどれ。……おお、こりゃ目の毒だ」


「や、やめてくださいってば!」


 昨日に引き続き、いわれのない辱めを受ける瓜子であった。

 沙羅選手は携帯端末をポケットに戻しながら、「ふん」と鼻を鳴らす。


「なんやら白ブタちゃんは、えろう歌のほうに力を入れとるみたいやな。この前のシングルも、たいそうな売り上げやったみたいやんか」


「そうですねぇ。ここ最近は、お歌の練習でスケジュールがパンパンなんですよぉ。今日もスタジオで怒鳴られまくりでしたぁ」


 本日は『ワンド・ペイジ』との練習日であり、ユーリの歌の出来に納得のいかなかった山寺博人が噴火することに相成ったのである。


「あ、そうそう。それで来週の日曜日はライブのお仕事があるんで、こちらにお邪魔できないんですよねぇ。せっかくお招きいただいたのに、残念な限りですぅ」


 その言葉に、犬飼京菜がぴくりと反応した。

 そしてその目は、憤然と瓜子をにらみつけてくる。


「……もしかして、あんたも来れないってこと?」


「はい。自分はユーリさんのマネージャー補佐を仕事にしてるんで、同行しないといけないんすよ。あと、実は再来週にも用事があって――」


「何それ! 二週間も、勝ち逃げするつもり!?」


 犬飼京菜はたちまち激昂して、座ったまま地団駄を踏み始めた。

 その姿に、サキが「はん」と鼻を鳴らす。


「スパーに勝ちも負けもねーだろ。ていうか、やっぱおめーでもこのタコスケにはかなわねーか」


「うるさいなっ! こいつ、スパーの最中にいきなり動きがよくなるんだもん! まるで別人みたいにさ!」


 これが、一週間ぶりとなるサキと犬飼京菜の会話であった。

 サキはいつもの調子で「へー」と気のない声をあげる。


「おめーはスパーで、こいつの本気を引き出せるってわけか。そいつは大したもんだ。十七歳のクソガキとは思えねー手腕だなー」


「……あたしのこと、馬鹿にしてるでしょ?」


「めいっぱい褒めちぎってやってるだろうがよ。あー、偉い偉い。これでこのオンボロジムも安泰だわなー」


 瓜子はハラハラしてしまったが、三名のコーチ陣は慌てる素振りも見せなかった。むしろ、マー・シーダムなどは嬉しそうに微笑んでいるぐらいである。慌てているのは、新参の榊山蔵人ただひとりであった。


(それじゃあ二人は、昔からこんな感じだったのかな?)


 サキが毒舌を吐いて、犬飼京菜がギャンギャンとわめきたてる。それはいかにも殺伐とした様相であったが――しかし確かに、かつて試合会場で出くわした際のように、張り詰めた空気は感じられなかった。


 サキがドッグ・ジムに通っていたのは、十六歳になる直前まで。

 逆算すると、犬飼京菜は十一歳前後ということになる。

 中学生のサキと小学生の犬飼京菜が、このようにけたたましく交流を深めていた場面を想像すると――瓜子は何だか、やたらと涙腺を刺激されてしまった。

 そしてそんな瓜子の頭を、サキが理央の頭ごしに小突いてきたのだった。


「おめーなあ、妙な想像してんじゃねーぞ?」


「な、なんすか。サキさんは、エスパーか何かなんすか?」


「おめーは考えてることが、ぜーんぶ外にだだもれなんだよ」


 サキのしなやかな指先が、瓜子の頭を引っかき回してくる。

 しかし、間にはさまれた理央や隣のユーリが楽しそうな笑顔であったため、瓜子もついつい笑ってしまった

 そして、そんな瓜子たちのありさまを、ドッグ・ジムの半数ぐらいのメンバーも微笑ましそうに見守ってくれていたのだった。

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