06 ゆらぎの狭間

 レフェリーが再び、「ファイト!」の声をあげる。

 それと同時に、イリア選手はまたMMA風のスタイルで接近してきた。


 視界の揺れている瓜子は、足を踏まえてそれを待ち受ける。この状態でステップを踏んでも、足がもつれるだけだと判断したのだ。意識こそはっきりしているものの、瓜子は大きく揺れる船の上で相手と対峙しているような心地であった。


「一分経過! フェンスの位置を確認しろ!」


 立松は、そんな風に言っていた。

 瓜子が動かないので、ダメージのほどを察してくれたのだろう。ステップが踏めないなら壁レスリングで時間を稼げ、という指示だ。


 しかし瓜子の見る限り、いずれのフェンスも遠かった。

 今さら後ろに逃げようとも、フェンスに辿り着く前に追撃をくらってしまうだろう。ならば、この場で迎え撃ったほうが、まだしも危険は少ないはずであった。


 イリア選手は瓜子を試すように、また遠い距離から前蹴りを放ってくる。

 瓜子はステップを踏むのではなく、前足を下げることによって後退した。

 遠い距離であったので、なんとかそれだけで間合いの外に逃げのびる。そうして瓜子が左足を下げたままサウスポーにスイッチすると、イリア選手は警戒した様子で動きを止めた。


 サウスポーにしたのはなるべく動きたくないという苦肉の策であったが、それでもこれは小柴選手や小笠原選手から学んだ、武魂会流のスイッチである。瓜子は攻撃の幅を広げるために、スイッチングを習得中であったのだった。


(これで一秒でも時間を稼げたら、ラッキーだな)


 瓜子はそのように考えたが、やはりイリア選手はそこまで甘くなかった。

 いったん動きを止めたイリア選手は両腕を下ろすと、上体を大きく前に倒し、両腕を大きく振るようにして、横方向にステップを踏み始めた。これぞカポエイラ流のステップ、ジンガである。


 瓜子も黙って立っていたら、すぐにサイドを取られてしまう。

 瓜子はなるべく頭を揺らさないように気をつけながら、今度は右足を引きつつ身体をねじって、イリア選手と正対してみせた。


 そんな瓜子の動きで、何を悟ったのか――イリア選手は、大きく前側に踏み込んできた。

 その右足が、半円を描いて瓜子に襲いかかってくる。正面を向いたまま蹴り足を半月のように旋回させる、「ケイシャーダ」である。

 瓜子はまた左足を引くことで後退した。


 するとイリア選手は、執拗に前蹴りを繰り出してきた。

 これは後退が間に合わず、瓜子は右腕で腹をガードする。

 イリア選手の前蹴りは足の裏で押すような形であるので、威力のほうはどうということもなかったのだが――今の瓜子には、簡単にこらえられるような衝撃ではなかった。結果、バランスを崩して後方に倒れかかってしまう。


 そうと見て、イリア選手が躍りかかってきた。

 瓜子が見た目以上のダメージを負っていることを、ついに確信させてしまったのだ。


(落ち着いて対処しろ。イリア選手は動きが大きいから、どんな攻撃でもかわしきれないことはないはずだ)


 イリア選手がどのような動きを見せるか、瓜子は揺れる視界の中で目を凝らす。

 イリア選手は瓜子の手足が届かない位置で前進を止め、その勢いのままに右足を振り上げた。

 足を横から回して相手の胴体を狙う、ごく尋常なミドルキックである。

 イリア選手がカポエイラ以外の蹴り技を使うのも、これが初めてであるはずだった。


(だけどこれなら、ガードできる)


 そんな風に考えながら、瓜子の左腕は咄嗟に頭をガードしていた。


(馬鹿! ミドルキックなのに、なんで頭を――)


 瓜子のそんな想念は、左腕に走り抜けた衝撃によってかき消された。

 イリア選手の細長い足は、途中で軌道を変えて瓜子の頭を狙ってきたのである。

 それはまったくただのミドルキックではなく、中段から上段に変化するブラジリアンキックであったのだった。


(もしかしたら――)


 ブラジリアンキックを放つには、通常のミドルキックと異なるモーションが必要になる。腰や軸足を大きく返したり、重心を落としたりしなければならないのだ。瓜子は無意識の内にそのモーションを読み取って、頭をガードしたのかもしれなかった。


 何にせよ、瓜子はそのトリッキーな蹴りをガードできていた。

 ただでさえ揺れていた視界がいっそう揺れてしまっているものの、意識ははっきりしている。

 そして瓜子は蹴りの威力に押されてバランスを崩しつつ、いつの間にか大きく踏み込んでいたのだった。


 揺れる視界が、下方に下がっていく。

 気づけば目の前に、イリア選手の細い腰が迫っていた。

 瓜子はわけもわからぬまま、その腰に右肩をぶちあてて、イリア選手の左足を抱え込む。

 まだ蹴り足の戻りきっていないイリア選手は、そのまま後方に倒れ込むことになった。


(まただ。考えるより先に、身体が動いてる)


 これは、メイとの試合で現出する忘我の状態が、断続的に発露しているような感覚であった。

 身体は無意識に動いており、その隙間にふっと我に返った自分が驚いているという、なんとも奇妙な心地である。

 脳震盪を起こした瓜子の肉体は本能的に危険を察知して、こんな状態に陥ったのかもしれなかった。


(なんでもいいや。これはチャンスだ)


 瓜子は左足を取られたハーフガードの状態で、イリア選手の上にのしかかった。

 相手に体重をあびせつつ、右腕で内側から相手の頭を抱え込む。その体勢で、しばし休息させてもらうことにした。


 イリア選手はなんとか脱出しようと身をよじるが、瓜子は最低限の体重移動でそれについていく。また、パウンドや肘打ちを狙われないように、相手の右手首を捕獲する。オリビア選手や小笠原選手とも寝技の修練を積んだ瓜子は、相手がどれだけ長身でも抑え込むコツをつかんでいた。


(あんたなんかは、同じウェイトだしね。寝技の稽古も足りてないみたいだし、抑え込むだけなら難しくないよ)


 ただ瓜子は、自分の下で蠢くイリア選手の肉体のしなやかさに驚かされていた。

 オリビア選手や小笠原選手はもっとゴツゴツとした硬い印象であり、小柴選手や灰原選手ならばもっとやわらかい。この、びちびと跳ねる巨大な魚のような感触は――鞠山選手やサキを思わせる躍動感であった。


(で、鞠山選手はもっと小柄で肉厚だから――一番近いのは、サキさんか)


 巨大な魚というたとえが悪ければ、革鞭の束である。手足も胴体も革鞭でできた人間が、自由を求めてもがき苦しんでいるような――そんな奇妙な感覚であったのだった。

 だけどやっぱり瓜子には、魚のほうが正しいように思える。海の中では誰よりも優雅に動ける生き物が、地上に引きずり出されてしまったがために、このように苦しんでいる、といった印象であるのだ。瓜子はそこに、寝技に苦しむストライカーの姿を重ねているのかもしれなかった。


(だったらサキさんもその気になったら、ものすごいダンスを踊れたりするのかな)


 瓜子の想念がそんな阿呆な方向にそれたとき、レフェリーから「ブレイク」を命じられた。

 瓜子はほとんど三十秒ばかりも、いっさい攻撃を仕掛けずポジションキープに努めたのである。それで寝技の技術の甘いイリア選手もまったく反撃できなかったため、絵に描いたような膠着状態が生まれてしまったのだった。


 瓜子は深く息をついてから、身を起こす。

 視界の揺れは――きっちり治まっていた。

 三十秒ばかりの休息で、脳震盪のダメージから脱することがかなったのだ。


「二分半経過! 勝負はここからだぞ!」


 立松の切迫した声が聞こえてくる。

 本当は、瓜子のダメージのほどを確認したくてたまらないのだろう。

 言葉で説明できない瓜子は、動きで表明するしかなかった。


「ファイト!」


 レフェリーの声に従って、瓜子は前進する。

 勝負は、まさしくこれからだ。

 グラウンドで上を取ることはできたが、その後があの体たらくではジャッジの印象もよくないだろう。「シバータ」をクリーンヒットさせたイリア選手のほうが、ポイントで勝っている公算が高かった。


 そして瓜子は、勝敗をジャッジにゆだねるつもりはない。

 時間いっぱいまでKOを狙うというのが、キックの時代からつちかってきた瓜子の流儀であるのだった。


 瓜子が前進すると、また「ケイシャーダ」で牽制される。

 それをすかして、瓜子は大きく踏み込んだ。

 するとイリア選手は、上体を横合いに倒していく。四度目の「シバータ」だ。


 しかし瓜子には、その動きがよく見えていた。

 なんとなく――忘我の状態の余韻を引きずっている心地である。


 頭の中身が妙に静まりかえっており、歓声などは聞こえないのに、セコンドの声は聞き取れる。なおかつ心持ち、自分や相手の動きがスローモーに感じられるのだった。


 思考と感覚が、奇妙なゆらぎを見せている。

 そのゆらぎの中で、瓜子はミドルキックを繰り出した。


 側転の途中であったイリア選手の胴体に、右のすねがヒットする。

 角度が悪いので、さしたるダメージはないだろう。しかしバランスを崩したイリア選手は蹴りを放つことができず、そのまま側転を完遂するしかなかった。


 そうして身を起こそうとするイリア選手のもとに、瓜子はさらに踏み込んでみせる。

 瓜子が前のめりで相手の足もとに手をのばすと、絶妙のタイミングで膝蹴りが発射された。


 やはりイリア選手も、足へのタックルを存分に警戒しているのだ。

 しかし瓜子のタックルはフェイントで、本命は右のオーバーフックであった。

 身体をねじることで膝蹴りを回避して、視界の外にあるイリア選手の頭部に右拳を叩きつける。

 拳ではなく、親指側の側面がどこかにヒットしたようだった。


 さらに瓜子は上体を起こす挙動にあわせて、左のボディアッパーを放つ。

 それは、バックステップでかわされてしまった。オーバーフックのダメージも、それほど深くはないようだ。


 そうして瓜子が身を起こすと、イリア選手が背中を向けていた。

 カポエイラの後ろ回し蹴り、「アルマーダ」を放とうとしているのだ。


 この蹴りもまた、上段と中段のどちらに振るわれるか、予測が難しい。

 それに、この技が繰り出せるほどに間合いが開いていることに、瓜子は驚かされた。瓜子の攻撃をかわすためのバックステップで、それだけの距離を取られてしまったのだ。


 そんな驚きを噛みしめつつ、瓜子は前進する。

 前進しながら、頭部のガードを固めた。

 上段にせよ中段にせよ、間合いを詰めればヒットするのは足首やふくらはぎだ。ならばボディは筋肉を固めて、それだけで踏ん張ってみせる所存であった。


 完全に背中を見せてから足を振り上げるという、通常の後ろ回し蹴りとは異なる奇妙なタイミングで、「アルマーダ」が発射される。

 その狙いは――頭でもボディでもなく、足であった。

 これはイリア選手が初めて見せる、下段の「アルマーダ」であったのだった。


 完全に虚を突かれた瓜子は、前に踏み出した左足を真横から蹴り払われてしまった。

 おたがいのふくらはぎが衝突した形であるので、ダメージは軽微だ。骨密度の分、あちらのほうがより痛いぐらいだろう。

 ただそれでも、予想外の攻撃であったため、瓜子はバランスを崩してしまう。

 そしてイリア選手の攻撃は、ここからが本番であったのだった。


 蹴り足を下ろしたイリア選手は、逆足の膝を振り上げてくる。

 回転の余韻で、凄まじい勢いだ。

 その鋭く曲げられた右膝は、真っ直ぐ瓜子の腹を狙っている。

 大きく体勢を崩した瓜子は、なんとか右腕でそれをブロックしてみせた。


 そして背筋に、悪寒が走る。

 また瓜子の感覚が、頭より先に窮地を察知したのだ。


 瓜子の目の前に迫るのは、イリア選手の左肘であった。

 きっとカポエイラでも何でもないのだろう。生粋のムエタイ選手であるリンを思い出させる、鋭い肘打ちであった。


 もはや、腕によるガードは間に合わない。

 なおかつ、瓜子の肉体はすでにこの窮地を脱するためのアクションを起こしていた。

 まだバランスの整いきっていない不自由な体勢のまま、亀のように首を突き出したのだ。


 勢いの乗り切る前にぶつかれば、ダメージは半減される。

 ただし、肘を頭で迎え撃ったら、出血の危険は否めない。肘ではなく、前腕に頭をぶつけるのだ。


 普段であれば、この一瞬の間にそんな判断を下せるはずもない。

 これはイリア選手が瓜子を追い詰めたからこそ可能になった、反撃のすべであった。


 頭突きというのは反則に見なされるので、あくまで瓜子は待ちの体勢で、ヒットポイントをずらすのみである。

 首をのばして、角度を調整すると、狙い通りにイリア選手の前腕が瓜子の額に衝突した。

 ダメージは半減したものの、目が眩むような衝撃だ。


 しかし、そこで息をつくいとまはなかった。

 放っておけば、次なる攻撃が繰り出されるかもわからない。

 瓜子はようやく足を踏みしめて、膝蹴りをふせいだ右腕で再びのボディアッパーを射出した。


 イリア選手の細い胴体に、瓜子の右拳がめりこむ。

 今の瓜子には、グローブ越しにもその腹筋のしなやかさが知覚できた。


 イリア選手は大きく息を吐いて、身体をくの字にする。

 しかしまだその目は死んでいない。

 そして瓜子も、攻撃の手を止めていなかった。


 右の拳を引きながら、左の拳を振りかぶる。

 左フックが、イリア選手の横っ面をまともに撃ち抜いた。


 そしてコンビネーションの最後の一発、右フックである。

 左フックによって押し出されたイリア選手のテンプルに、渾身の右フックを叩きつけた。


 イリア選手は糸を切られた人形のように、ばたりと倒れ伏した。

 ダンスの際にもそういったパフォーマンスを見せることは多かったが――こればかりは、演技ではなかった。


 瓜子は両膝に手をついて息をつき、レフェリーは両腕を交差させる。

 追撃の必要がないことを、レフェリーも認めてくれたのだ。

 瓜子の聴覚が自然な状態に戻り、客席の大歓声が鼓膜を脅かしてきた。


『一ラウンド、四分三十三秒、猪狩選手のKO勝利でェす!』


 レフェリーは瓜子の腕を上げるより早く、イリア選手のもとに駆け寄った。

 仰向けにされたイリア選手は、弱々しいながらも右手をあげてサムズアップする。ヒットしたのがテンプルであったため、意識を飛ばされるのではなく三半規管をやられたのだろう。今のイリア選手はさきほどの瓜子と同じかそれ以上に視界が揺れているはずであった。


 ケージの扉が解放されて、リングドクターやセコンド陣がなだれこんでくる。

 立松は切迫しきった面持ちで、瓜子の両肩をがっしりとつかんできた。


「おい、頭は大丈夫か? 最初の一発で、朦朧としてただろう?」


「押忍。視界がぐわんぐわん揺れてました。でももう何ともありませんよ」


「何ともないって、お前なあ……」


 瓜子の肩をつかんだまま、立松は深々と息をついた。

 柳原は笑顔で、瓜子の頭にタオルをかぶせてくる。

 そしてメイは、妙にじっとりとした目で瓜子を見つめてきた。


「ウリコ、素晴らしい試合だった。……まだ勝てないの、わかってるけど、対戦相手が僕じゃなかったこと、悔しい」


「あはは。いつかまた試合でやりあえる日を楽しみにしてますよ」


 するとレフェリーが「失礼」と近づいてきて、瓜子の右腕を掲げてくれた。

 あらためて、歓声が爆発する。今回は瓜子も無酸素ラッシュを仕掛けたりもしていなかったので、まだまだ余力も十分であったが――それでも、過酷な試合をやりとげた肉体が、新たな活力を得る思いであった。


 そこに、「あ、ちょっと――」という男性の声が聞こえてくる。

 レフェリーから腕を解放された瓜子が振り返ると、リングドクターの制止を振り切ったイリア選手がひょこひょことこちらに近づいてくるところであった。


 そうしてイリア選手は瓜子の正面に回り込むと、くずおれるようにして膝をつき、両手の先を瓜子のほうに差し出してきた。

 その顔は覆面に隠されているので、表情もわからなかったが――ただ、小さな穴から窺える目は、穏やかに細められている。あの、のほほんとした笑顔を容易に想像できる目つきであった。


 イリア選手がチーム・フレアの所属である以上、なれあう気持ちはこれっぽっちもなかったが――もとより、私怨のある相手ではない。瓜子は胸もとに差し出されたイリア選手の手の先を、両手で握ってみせた。


「お疲れ様でした。イリア選手、ものすごく強かったですよ」


 イリア選手は瓜子の手を支えにして、立ち上がった。

 しかしまだダメージが抜けきっていないのか、ふらりと倒れかかってしまう。瓜子は慌てて、それを抱きとめることになった。


「大丈夫っすか? きちんとドクターに診てもらったほうがいいっすよ」


「はい。だけど、猪狩さんにひと言伝えておきたかったんですよぉ」


 イリア選手は瓜子の身体をくにゃりと抱きしめつつ、囁き声を返してきた。これだけグロッキーの状態であっても、観客の前では喋らないというキャラを徹底しようとしているのだ。


「猪狩さんこそ、ものすごく強かったですぅ。半年やそこらの特訓じゃあ、これっぽっちも差が縮まらなかったですねぇ。一ラウンド目でやられちゃうなんて、不甲斐ないばかりですぅ」


「そんなことありませんよ。試合時間なんて関係なく、今日のイリア選手は四月よりも遥かに手ごわかったです。……ただ、自分もその期間、遊んでたわけじゃないっすからね」


「はい。お見それいたしましたぁ。……またいつか、ボクの挑戦を受けてもらえますかぁ?」


「おたがい真面目に活動を続けてたら、きっとどこかでやりあうチャンスが巡ってくると思いますよ」


 そう言って、瓜子はイリア選手の背中を軽く叩いてみせた。

 が、イリア選手は軟体動物のように絡みついたまま、離れようとしない。


「あのぉ、このまま和やかに終わっちゃうと、ボクのキャラが壊れちゃうので、ちょっぴりパフォーマンスにおつきあい願えますかぁ?」


「え? パフォーマンスって――」


 そんな風に言いかけたとき、瓜子の身にとてつもない悪寒が走り抜けた。

 その悪寒の震源地は、左耳である。瓜子の身に絡みついたイリア選手が、瓜子の左耳にねっとりと舌を這わせてきたのだった。


「な、何やってるんすか!」


 反射的に、瓜子はイリア選手を突き飛ばしてしまった。

 マットに尻もちをついたイリア選手は、自分の頭を小突いて舌を出す。その姿に、観客席から笑い声が広がっていた。


 ともあれ――瓜子はイリア選手という難敵を下して、トーナメントの決勝戦に進出することがかなったのだった。

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