03 最後の稽古

 レクリエーションの海水浴を終えたのちは、ランチと休憩時間をはさんで、稽古の開始である。

 ただし二日目の今日は、昨日といささかスケジュールが異なっていた。

 午後一番には、地元の人間を招いたMMAの体験スクールというものが開催されたのである。


 これも赤星道場の合宿では、定番の行事であるらしい。彼らは遥かな昔から、こうしてささやかながらもMMAというスポーツの普及活動を行っていたそうなのだ。

 もちろんパラス=アテナが企画しているMMAスクールに比べれば、取るに足らない規模であろう。年に一回、二十名や三十名の人間を相手に体験入門をさせたところで、さしたる効果は望めないのかもしれない。


 だけど瓜子は、彼らのそういった心意気に深い感銘を受けていた。

 パラス=アテナなどは、しょせん商売でやっていることなのだ。もちろんそれは悪いことではないし、業界にとっては非常に有用な行いなのかもしれないが――利益など度外視で、ただMMAの面白さを世に広めたいと願う赤星道場のほうが、瓜子にとってはかけがえのない存在であるように思えるのだった。


 だがしかし、本年はその体験スクールにおいても、多少のハプニングが生じることになった。

 なんとその日には、百名を超える人々が体育館に集まってしまったのだ。


 端的に言って、その原因はユーリであった。

 どうやらこのたびの合宿にはユーリも参加するらしいという風聞がインターネット上に駆け巡り、これだけの人間を集めてしまったようなのである。


「もしかして、わたしたちのせいでしょうか?」


 と、不安げな顔をしていたのは、昨晩ユーリに協力を願い出てくれた保護者の面々であった。千駄ヶ谷と話をつけた彼女たちは、それぞれのブログやSNSにおいて、週刊誌の記事がデマであることを発信していたのだ。その際に、合宿稽古で出会ったユーリ本人から聞いた話として説明していたのである。


「いやいや、ご心配なく。全部、こいつのせいッスから」


 そのようにのたまうレオポン選手がヘッドロックを極めていたのは、後輩の竹原選手であった。どうやら彼は前々からユーリが合宿に参加することをSNSで吹聴しており、大きな反響を集めていたようであった。


「うちの門下生が、とんだ不始末を犯してしまった。申し訳ないが、プレスマンの面々にもご協力を願いたい」


 赤星弥生子からの懇請を受けて、プレスマン道場および外来の女子選手たちも、体験スクールの実施に協力することに相成った。

 そして驚くべきことに、瓜子も立ち技の講師役に抜擢されてしまったのだった。


「女性や子供の場合は、やはり講師も女性であるほうが安心感を与えることができる。猪狩さんは講師として過不足ない実力を持っているので、どうかよろしく願いたい」


 赤星弥生子にそうまで言われては、瓜子もとうてい断りきれなかった。

 それに、ユーリですら寝技部門の講師に任命されてしまったのだから、瓜子ばかりが楽をするわけにもいかなかった。


 同じように立ち技部門の講師役として選任されたのは、サイトー、小笠原選手、オリビア選手で、手空きのサキや小柴選手たちにも補佐役として手伝ってもらうことになった。寝技部門はユーリと鞠山選手がメインで、魅々香選手と多賀崎選手が補佐役である。

 もちろん他のコーチ陣も、総出で任務にあたっている。また、その中にはアギラ・アスール・ジュニアも含まれていた。十年ばかりもMMAから離れている彼であるが、やはり講師役を務められるぐらいの実力は有しているということなのだろう。


 この体験スクールでもっとも注目を集めていたのは、やはりユーリとアギラ・アスール・ジュニアであった。ユーリはその美貌と知名度で、アギラ・アスール・ジュニアはその肉体美とレスラーマスクで、たいそう周囲を賑わせていたのである。


 中には、最近スキャンダルまみれであるユーリの姿をひと目見てやろうという、不逞の輩もまぎれこんでいたかもしれない。

 しかしどのような輩でも、ユーリがどれだけ無邪気な人柄で、どれだけ寝技の技術に長けているかは痛感できたはずであった。


 そうして二時間ていどの体験スクールはあれよあれよという間に終了し、百名からの人々は名残惜しそうにしながら体育館から出ていったのだった。


「いやあ、本当に桃園さんはコーチとしての素質があるみたいだな。いつか現役を退いても、そっちで食っていけるんじゃないか?」


 立松コーチがそのように評価すると、ユーリは「にゅわー!」とわめきながら身悶えることになった。


「それはあまりに過大すぎる評価でありますよぉ。ユーリはいつご不興を買ってしまうものかと、ビクビクものでしたぁ」


「いやいや、子供や女性相手だと、本当にさまになってるんだよな。たぶん桃園さん自身が楽しんでるから、それが相手にも伝わるんだろう。なかなか適性があると思うよ」


 そう言って、立松は快活に笑った。


「しかしまだ二十歳じゃあ、引退後の話なんて考えられんだろうな。お次はぞんぶんに、自分のトレーニングに励むといい」


「はいぃ。了解いたしましたぁ!」


 そんなこんなで、ようやく本格的なトレーニングの開始である。

 キッズクラスの子供たちは体験スクールの生徒たちと一緒に稽古をしていたのですでに中休みだが、それ以外の門下生はここからが本番であった。


「今日の夜は合宿の打ち上げとなるので、稽古はこれからの五時間弱で締めくくりとなる。各自、思い残すことのないように」


 赤星弥生子のそんな宣言によって、まずは立ち技の稽古が開始された。

 ユーリは再び大江山師範代の指導で、個別練習だ。そのパートナーに選出されたのは、小笠原選手とオリビア選手であった。


 瓜子たちは軽くスパーをこなしてから、赤星弥生子やジョンの指導でそれぞれのメニューが取り決められる。瓜子に与えられた課題は組み技ありの打撃スパーで、同じチームとなったのは魅々香選手とマリア選手であった。


 ちなみに、青田ナナは本日も男子選手の輪に加わっている。

 コーチ陣と本人の協議によって、そのように取り決められてしまったのだ。赤星弥生子は申し訳なさそうにしていたが、けっきょくその理由や原因が語られることはなかった。


 しかしまあ、瓜子としては魅々香選手とマリア選手にご協力を願えるだけで、不満など持ちようもなかった。

 何せ相手は、ひとつ上の階級のトップファイターたちである。しかも魅々香選手は豪腕で、マリア選手は軽妙なるアウトタイプだ。なおかつどちらも組み技を得意にしているため、これほどの難敵はなかなか他に想像できないぐらいであった。


「御堂さんやマリアにとっても、これは有意義な稽古となるだろう。猪狩さんほど立ち技の技術が完成していて、小回りがききつつ攻撃力もある相手というのは、同じ階級にもそうそういないはずだ」


 赤星弥生子は、そのように語らっていた。

 自分の存在が彼女たちの糧になるなら、光栄な限りだが――ともあれ瓜子は、自分の稽古に打ち込むばかりであった。


 現在の瓜子が対戦相手として想定しているのは、チーム・フレアの三名。一色選手とイリア選手、そしてメイ=ナイトメア選手となる。一色選手はアウトタイプであり、メイ=ナイトメア選手は豪腕と言っていい破壊力の持ち主であるのだから、魅々香選手やマリア選手とのスパーは得難い経験になるはずであった。


(もちろんメイ選手はもっと素早いし、一発の重さよりも連打が厄介なタイプだけど……魅々香選手の豪腕をかいくぐるのは、かなり有効なトレーニングになるはずだ)


 そんな思いを胸に、瓜子は九十分ほどの稽古を駆け抜けることになった。

 インターバルになると、ユーリの代わりとばかりに灰原選手が「どひー!」とのしかかってくる。


「つかれたよー! コッシーもガキンチョもだんだん手ごわくなってくるし、もうイヤんなっちゃう!」


「きっと相手も、同じ風に思ってますよ。あと、暑苦しいっす」


「でもさ、うり坊のほうがしんどいよね! 何せ、ミドル級のあいつらが相手なんだから! やっぱ同階級のあたしやコッシーじゃ、うり坊の相手は務まらないとか思われてるんだろうなー」


「そんなことないっすよ。ただ自分の課題にはマッチしなかったってだけで……」


「いいのいいの! コーチ陣にどう思われようと、大事なのは試合だからね! いつかあたしに倒されるまで、うり坊は連勝街道をバク進してよー?」


 灰原選手はけらけらと笑いながら、瓜子の頭に頬ずりをしてきた。

 そこに、汗だくの多賀崎選手が舞い戻ってくる。多賀崎選手もまた、本日は最初から男子選手のグループに割り振られていたのだ。


「よ、マコっちゃん! そっちはどうだった?」


「しんどいよ。男子選手が相手じゃあ、殴っても殴ってもビクともしやがらないからね」


 どかりと座り込んだ多賀崎選手は水分補給をしてから、不敵に微笑んだ。


「でも、ああまで相手が頑丈だと、逆に開き直れるもんだね。この感触を忘れないうちに、同階級の相手と殴り合ってみたいな」


「おおー! マコっちゃんも、燃えてるね! 昨日とは目つきが全然違うもん!」


「うるさいよ」と苦笑してから、多賀崎選手は瓜子に向きなおってきた。


「ところでさ。猪狩は昨日、男相手に何回もダウンを奪ってたよね」


「え? ああ、はい。ちょっと頭に血がのぼっちゃってたもんで……」


「だからって、普通はなかなか男相手にダウンなんて奪えやしないよ。あたしも、同じ人……たしか、竹原だったっけ? その人とやりあわせてもらったけどさ。あんたより二十センチ以上も大きくて、十キロ以上も重そうだったじゃん」


 そんな風に語りながら、多賀崎選手はいきなり瓜子の上腕を握りしめてきた。


「いい筋肉してるけど……あたしよりは、明らかに細いよね。いくら骨密度が高くたって、筋力そのものはあたしのほうが上のはずだ」


「はい。骨が重いなら、そのぶん肉は薄いはずですからね」


「だけどあんたは男相手にダウンを奪えるし、試合でも連続KOの記録を作ってる。……筋力とパンチ力はイコールじゃないし、KO率のすべてでもないってことか」


 瓜子の腕を離した多賀崎選手は、ふいに口もとをほころばせた。


「あたしも何か、自分なりの持ち味でKOを狙ってみたくなったよ。これも大怪獣ジュニアのおかげだね」


「いいねいいね! マコっちゃんはこんなに鍛えてるんだから、その気になったらいくらでもKOを狙えるって!」


 そうしてインターバルを終えたならば、次なるは寝技のトレーニングであった。

 ここで見物役に回っていたアギラ・アスール・ジュニアが、復活する。しかも彼は嬉々として、女子選手の一団に接近してきたのだった。


「ワタシ、おテツダいしたいです! オッケー、もらえますか?」


 コーチ役として参じてくれていたのは、立松と青田コーチだ。両名は顔を見合わせてから、アギラ・アスール・ジュニアに向きなおった。


「別にかまわんが、お前さんがそんな熱意をみなぎらせてると、ちっとばかり心配になっちまうな。だいたい、お前さんみたいなでかぶつが女子の相手をするのは不相応だろ」


「そんなコトありません! ワタシ、ヤヨイコからイッポン、トれませんし!」


「弥生子ちゃんはちょっと特殊だから、あまり参考にならんよ。……まあいい。役に立つかどうかは、見てから判断させてもらおう」


「ありがとうございまーす!」と元気よく応じながら、アギラ・アスール・ジュニアはジャージを脱ぎ始めた。

 その下から現れたのは、ボディビルダーのような筋骨隆々の肉体である。現在は北米でプロレス選手として活躍しているという話なので、いわゆる見せる筋肉というものも重視しているのだろう。それにしても、身長は百九十センチ強、体重は百キロていどという見込みであるから、圧巻であった。


 そして驚くべきことに、彼は顔を覆っていたレスラーマスクにまで手をかけた。

 その下から現れたのは――映画俳優もかくやという、彫りの深い端整な素顔である。褐色の髪はマスクから解放されるなりくるくると渦を巻き、口もとには朗らかな微笑がたたえられていた。年齢はすでに三十代の後半という話であったのに、そうとは思えない若々しさだ。


「ワタシ、グティです。よければ、そうヨんでください」


「あはは。マスクまで取るなんて、すっかり本気じゃないですかー」


 マリア選手はにこにこと笑いながら、そのようにはやしたてていた。

 マリア選手も彫りの深いほうであるし、黄褐色の肌をしていたが、黒髪黒瞳であるし、顔立ちも似ていない。ただ、無邪気な笑い方だけはよく似ていた。


「どうせジュニアは、ユーリさんがお目当てなんでしょー? そんな浮ついた気持ちだと、痛い目を見ますよー?」


「マスクをトったから、グティでいいですよ。ジュニアだと、ヤヨイコとまぎらわしいですからね」


 あくまでも屈託のない笑顔で、アギラ・アスール・ジュニアことグティはそう言った。


「それに、ユーリだけがメアて、チガいます。もうヒトリ、ヤヨイコがカてなかった、キきました」


「鞠山選手のことですかー。でも、体格差がひどいですよー」


「わたいは、別にかまわないだわよ。百キロ級の相手からタップを奪ったことだって、一度や二度じゃないんだわよ」


 鼻息も荒く、鞠山選手はそのように応じた。身長差は四十センチ以上、体重差はほとんど倍近くである。


「ピンク頭も、ロシアの巨人女からタップを奪ってただわね。ま、あれはほとんどローキックの恩恵だわけどね」


「うわぁ、だわけどねって、初めて聞きましたぁ。まりりん語って面白いですよねぇ」


「やかましいだわよ! 自信があるなら、この大男からタップを奪ってみせるだわよ!」


「はぁい。タップを奪えるかは天のみぞ知るですけれど、グティさんとスパーができるなら光栄ですぅ」


 そんなやりとりを経て、ユーリとグティのグラップリング・スパーが始められてしまった。

 こちらはこちらで、体格差がおびただしい。何せ相手は、卯月選手よりも遥かに大柄であるのだ。それよりも巨大なリュドミラ選手はもともと膝を故障していたようなので、あまり参考にはならなそうであった。


「では、始め」


 青田コーチの合図で、膝立ちになった両者が組み合う。

 いや――真正面から組み合うと見せかけて、ユーリは相手の両腕をかいくぐり、大木のような胴体に組みついた。

 そうして思わぬ素早さで、相手のバックに回り込んでしまう。グティもすかさず身体をよじったが、ユーリは膝立ちのまま移動をして、相手の背後をキープし続けた。


 いくぶん慌てた顔をするグティの広大なる背中に、ユーリがべったりとへばりつく。

 気づけばそのロングスパッツに包まれた足が、グティの胴体にからみついていた。そして、ラッシュガードに包まれた両腕が、グティの首にしゅるしゅると巻きつく。

 グティはチョークを極められまいと、下顎をぴったり胸もとに密着させたが――ユーリはかまわず両腕をロックして、グティの首を横合いにねじ曲げた。チョークスリーパーではなく、フェイスロックである。


 膝立ちの体勢でユーリをおんぶしたグティは、やがて観念した様子で相手の腕をタップする。

 ユーリはすとんとマットに下りて、またグティの前に膝をついた。


 今度はグティも警戒して、かなり体勢を低くしている。

 ユーリは再び横合いに回り込もうとしたが、それは長いリーチでさえぎられてしまった。

 ユーリの右肩が、グティの左手につかまれる。

 それと同時に、ユーリは相手の左腕をとらえながら、マットに背中をつけた。


 グティは熊のように、ユーリにのしかかる。

 が、ユーリはグティの左腕に両足をからめて、相手の重圧を横合いに受け流しつつ、半身を起こした。ブラジリアン柔術の妙技、オモプラッタである。


 肩関節を極められそうになったグティは、前方に転がって窮地から脱する。

 その頃には、ユーリがグティの上体にのしかかっていた。

 グティは凄まじい勢いでブリッジをして、ユーリの圧迫を跳ね返す。

 体格差と、それにレスリングの力量であるのだろう。瓜子にとっては牛のように重いユーリの身体も、その一発のブリッジであえなく跳ね飛ばされてしまった。


 今度こそとばかりに、グティがユーリにのしかかる。

 しかしユーリは、まだグティの左腕をとらえたままであった。

 そうしてその左腕ごと、グティの頭を両足ではさみこむ。ユーリの得意な、三角絞めだ。

 グティは下半身を起こして、力ずくでその拘束から逃げようと試みたが――途中でがくりと膝をつき、ユーリのしなやかな足をタップした。


 一分足らずで、二度目のタップである。

 そして残りの一分強は、グティも懸命にユーリの猛攻をしのいでいたが、最後の最後で腕ひしぎ十字固めを極められてしまった。


「ふふん。想像以上の実力差だったな」


 立松が嬉しそうにつぶやいたが、青田コーチの視線に気づくとそれをごまかすように咳払いをした。


「というか、二分で三本は取られすぎだろ。MMAを引退したお前さんにどうこう言っても始まらんが、ずいぶんなまっちまったもんだな」


「いや。グティにポジションキープをさせなかった桃園さんが上手かった。途中でちょっとでも動きを止めてたら、時間いっぱい塩漬けになっていたはずだ」


 細い目に鋭い輝きをたたえつつ、青田コーチはそう言った。


「もともとグティは、せわしなく動く相手に弱いしな。ま、妥当と言えば妥当な結果だろう」


「ふん。サブミッションの防御もザルだっただわね。この男前は柔術を学んでないんだわよ?」


 鞠山選手の言葉に、青田コーチは「ああ」とうなずいた。


「グティは現役の頃から、レスリングの技術だけでMMAに取り組んでた。父親の影響でMMAを始めたものの、プロレスのほうが肌に合ってたってことだろう」


 そんな言葉が交わされている間、グティは子供のようにきらめく瞳でユーリを見つめていた。


「でも! サイショのイッポン、バックをトられた、オドロきです! スピード、パワー、テクニック、スベてスバラしいです! ユーリ、もうイッポン、おネガいしたいです!」


「はあ……でも、グティさんほど大きな御方と試合をすることはないので……ユーリとしては、他の方々とのお稽古に取り組みたいところなのですが……」


 と、ユーリはもじもじしながらグティの申し出を拒絶した。きっと今のスパーリングに、手応えを感じなかったのだろう。

 しかしグティはめげた様子もなく、にこやかに笑っている。


「はい。フツウのスパー、チガいます。ワタシのポジションキープからニげるスパー、ユウイギ、オモいます」


「はあ。限定スパーというやつですかぁ」


「はい。ワタシ、ポジションキープ、イチリュウです。ワタシからニげられれば、たいてのジョシセンシュ、コワくありません。……ヤヨイコも、ヤクにタつ、イってくれていました」


「そりゃあ百キロ級で、しかもオリンピックに出場経験のあるレスラーに重し役をやってもらえる機会なんて、そうそうないだろうな」


 苦笑しながら、立松はそう言った。


「まだまだ時間はたっぷり残されてるし、少々つきあってもらったらどうだ? 案外、いい経験になるかもしれんぞ」


 ユーリは浮かぬ顔であったが、他ならぬ立松の言葉であったので、最後には了承することになった。

 そうして合同合宿の最後の稽古も、粛々と進行されていったのだった。

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