第三章 終わりのはじまり
第22話
兵輝使用者を倒した後に襲いかかってきた輝械人形だったが、難なく巴たちは撃破し、パーティー出席者たちの避難の誘導を終えてから気絶している兵輝使用者たちを抱えて外へと脱出した。
輝械人形に襲われた兵輝使用者たち以外、パニックになって転んで軽傷を負った出席者たちはいたが、迅速な避難誘導のおかげで重傷を負った出席者たちはいなかった。
外に出て待っていた救急隊たちに適切な処置を受けている出席者たちや、大悟やエレナに鳳グループ本社から出て映像機器が使えるようになるや否やマスコミたちは取材を行っていた。
まだ騒動の裏にいるアルバートたちが捕まっていないため、騒動は完全に解決していないが、それでも騒動の渦中から逃れて安堵の空気が流れていた。
しかし、そんな空気をぶち壊すかのように今度は、鳳グループ本社からすぐ隣にある教皇庁本社が爆発をはじめた。
再びパニックになり、何も考えずに散り散りになって離れようとする人たちや、危険を承知で爆発する教皇庁本部に近づくマスコミたちをエレナや大悟や、アカデミーの人間が避難の誘導を行って教皇庁本部から離れさせた。
「教皇庁本部内はまだ爆発してるわ。このまま爆発が続けば倒壊する可能性は大きい。だから、早急に七瀬君たちを探すわよ」
「まあ、俺たちは輝石使いだから、爆発でどうにかなるってわけじゃないが、降ってきた瓦礫のせいで身動きが取れなくなる場合がある。だから、各自連絡を怠るんじゃねーぞ」
ヴィクターから幸太郎たちが教皇庁本部に向かったという情報を聞いた巴と刈谷は非難の誘導を終えてすぐに人を集めて教皇庁本部へ突入する準備を整えていたが――「突入は待ってもらう」と、険しい顔の克也が割って入って制止させた。
教皇著本部にはアルバートたちがいる可能性があるのに、幸太郎たちがいるのに、突入を許可しない父を巴は、刈谷を含んだ周囲にいる人間を凍りつかせるほどの威圧感を持つ射貫くような鋭い目で睨んだ。
「教皇庁本部には七瀬君たちがいるのに、黙って見ていろって? そんなのできるわけない!」
「ガキじゃないんだ、一々噛みつくな」
「ま、まあまあ、克也さん。落ち着いてくださいって。お嬢さんの気持ちもわかるでしょう?」
父親の余計な一言で険悪ムードになりそうな父娘の間に恐る恐る入る刈谷。刈谷が間に入ったおかげで、克也は一度軽く深呼吸して自分を落ち着かせて冷静に状況を説明する。
「教皇庁本部はいまだに爆発が続いてる。それに、情報によると最上階付近の天井が抜け落ちているそうだ。このまま爆発が続けば、倒壊するだけじゃなくて上階にある瓦礫の重みで一気に天井が抜け落ちる可能性があるんだ。今から突入すれば被害が無駄に拡大する可能性がある」
「だったら、私だけでも七瀬君たちを救出しに向かうわ。それなら文句はない?」
「俺が許さん」
「こんな時に特別扱いするのはやめて!」
「娘の心配をして何が悪いってんだ!」
「嬉しいし、ありがたいけど、こういう状況ではいい迷惑だから」
「少しは冷静になって考えろ、この単純バカ!」
「――はいはい、ストップストップ! こういう状況で父娘喧嘩はやめてね?」
徐々にヒートアップしてくる父娘の間に今度は刈谷ではなく、マスコミとパーティー出席者たちの対応をしていた大悟とエレナの手伝いに向かっていた萌乃が割って入った。
「今回は巴ちゃんが悪いわ。幸太郎ちゃんたちを心配しているのは十分にわかるけど、二次被害を避けるためにもこういう時こそ冷静になって考えないとダメ。それに、克也さんもせっかく祥ちゃんが間に入ったのに、熱くなっちゃ意味ないでしょ」
「……ごめんなさい」
間に入って諫めてくれた萌乃のおかげですっかり冷静になって反省した巴は、不承不承ながらも素直に自分の非を認めて父に謝罪をする。
娘の謝罪に熱くなった自分を静めるように軽く深呼吸をした後、「――それで、どうなっているんだ」と萌乃に視線を向けた。
「もちろん、克也さんの指示通り急いで探してたら、ちょうどいいのが近くにあったの。簡単に許可も取れたし、ドレイクちゃんが動かせるみたいだから、すぐにでも動かす準備はできているわよん♪」
キュートにウインクをして説明する萌乃に、満足げに頷いた克也は巴と刈谷に視線を向けた。
「巴、刈谷、お前たちはホテルの屋上にいるドレイクの元へ向かえ。俺と萌乃は残ってこっちは大悟たちのフォローをする」
「何を準備したのか、ちゃんと説明をして」
「七瀬たちを助けたいんだろう? 行けばわかるから、さっさと行ってこい」
焦る娘の気持ちを十分に理解している克也は、詳しい説明をすることなく巴たちをドレイクの元へと向かうように急かした。
説明不十分な父の態度に不満と不安を抱きつつも、崩れ行く教皇庁から幸太郎たちを救出しに向かいたい巴は、刈谷とともにドレイクの元へ――教皇庁本部や鳳グループ本社に近い場所にある、高級ホテルの屋上へと向かった。
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