第5話

「三十分程車で走らせた先には旧本部のある町・ルミナエールに到着します。そこから更にまた三十分で目的地です。約一時間の道程ですが、その間に寄り道などはしないで真っ直ぐと目的地へと向かいます」


 優輝たちと別行動を取ることになった幸太郎とティアは、教皇庁が用意した車がある駐車場へと向かいながら、アトラは今後の予定を説明していた。


「目的地へ到着したら、七瀬さんは旧本部で行う会議に参加してもらいます。そこで護衛である自分とティアさんは一旦幸太郎さんから離れます」


「どんな会議を開くつもりだ」


「すみません、末端の輝士である自分にはそこまでの話は聞いていません」


 冷たく、鋭い視線を向けられながらのティアの質問に気圧されながらもアトラは答えると、「……そうか」とティアは深く会議について尋ねることなく、アトラの説明を聞くのに集中するが、彼女の感情を感じさせないほどの冷静な表情の中にも僅かな不安が生まれていた。


「会議が終われば今日の予定は何も入っていません。もちろん、急遽何か予定が入る可能性が高いですが――以上が今日の予定になります。何か質問はありますか?」


「アトラ君って、何歳?」


 予定のことを聞かれると思っていたアトラは、想定外の質問をされ、「うぇっ?」素っ頓狂な声を上げて戸惑ってしまう。


「歳は十四でサラサと同じ。十二歳という最年少で輝士の称号を得た、人格と実力が伴っている輝士。半年前、旧本部で発生した事件をリクトともに解決し、好きな食べ物はアップルパイ。周囲の期待に圧し潰されることも、その期待に鼻にかけることなく日々修練を重ねている優秀な輝士だ」


「ど、どうしてティアさんがそんなに自分のことを……」


 スラスラとアトラについて説明するティアに、幸太郎はだらしなく口を開けて「へぇー」と素直に感心していた。一方のアトラは自分のことをよく知っているティアに驚くとともに、無理矢理大人びた顔を綻ばせて年相応の顔で喜んでいた。


「さっきも言っただろう。お前の噂はよく耳にしている」


「じ、自分もティアさんや優輝さん、セラさんたちの噂は聞いています! アカデミー都市で起きている数々の事件を解決して、その過程で数多の強敵たちを下してきたと。さすがは伝説の聖輝士である久住宗仁くすみ そうじんさんの弟子の方々です! 自分もあなたたちのようになるために修行を続けています! あなたたちは自分の憧れであり、目指すべき目標です! それと――あ、え、えっと……す、すみません……」


 自分の役割を忘れて興奮気味にティアたちへの憧れを捲し立てるアトラだが、我に返ったアトラは顔を気恥ずかしさで紅潮させ、すぐに年相応の顔つきから、大人びたものへと変える。


「アトラ君、ティアさんたちのこと大好きなんだね」


「え、あ、そ、その……は、はい……」


「アトラ君、かわいい」


「か、かわいいって言わないでください! 自分は男です!」


「それでも、かわいい」


 せっかく大人びた顔に戻したというのに、幸太郎の正直な感想のせいで、気恥ずかしさで顔を赤くさせ、俯いてしまうアトラ。


 そんなアトラを見て再び正直な感想を述べる幸太郎に、失礼だと言わんばかりに反論するアトラだが、怒っている彼の顔は小動物のような愛らしさがあった。


「アトラ君、かわいいって言われるの嫌?」


「自分は男だから当然でしょう!」


「リクト君はかわいいって言われて嬉しがるよ。それに、たまにティアさんも」


「……お前、私が男だと思っているのか?」


「冗談です。ごめんなさい」


 冗談のつもりだが、抜身の刃のような目でティアに射貫かれた幸太郎は即座に謝った。


「とにかく! 自分は嫌です!」


「そうなの? かわいいのに……」


「さあ、時間が押しているので急ぎましょう!」


 これ以上幸太郎と話しても埒が明かないと判断したアトラは、足早に用意された黒塗りのリムジンへと向かい、扉を開くと――


「おお、遅かったの。待ちくたびれたではないか」


 扉を開けると、社内には尊大な態度で深々とシートに腰かけ、アイスクリームを美味しそうに舐めている、ツインテールの幼女がいた。


 車内にいる古めかしい口調で、老獪な雰囲気を纏う幼女見て、ティアとアトラは驚いていた。


「アトラ君の妹さん? かわいいね。僕、七瀬幸太郎。君のお名前は?」


 フレンドリーな笑みを浮かべ、軽くしゃがんで少女と視線を合わせて挨拶する幸太郎に、幼女は頬を軽く膨らませて仏頂面を浮かべる。


「イリーナ・ルーナ・ギルトレートじゃ。お主のことはよーく知っているぞ、七瀬幸太郎。それとワシはアトラの妹ではない。これ、重要じゃぞ」


「それじゃあ、もしかして迷子かな? 大丈夫?」


「ワシは迷子でもない。というか、ワシを子供扱いするな! ワシはお主よりも遥かに年上、おねーさんなのじゃ!」


 幼く、ぺったんな胸を偉そうに張って、年上であると主張する幼女・イリーナに、幸太郎は信じられなかったが――「事実だ」と、僅かに動揺が含んだ声音でティアはそう告げた。


「持っているティアストーンの欠片と輝石の力を常時発動し、その力で若さを保っている。現在教皇庁で最古の枢機卿だ」


「おお、ティアリナか。お主と会うのは随分久しぶりじゃな」


「……ええ、お久しぶりです」


「相変わらず愛想のない小娘じゃが、最後に会った時よりも一段と強くなっているな。これほど強くなれば、お前の両親は誇りに思うじゃろう」


「もったいない言葉ですが、私はまだまだ修行不足です」


「何を謙遜しているのだ。お主が修行不足ならば、ワシらは修行すらしていないのと同然じゃ」


 冗談を滅多に言わないティアの説明を受け、イリーナが自分よりも年上であることを認識する幸太郎は、ティアと軽く挨拶をしているイリーナを興味津々といった様子で見つめた。


「それじゃあ……俗に言うロリババア?」


「ロリババア抜かすな」


「ババア幼女?」


「せめて、『大人のれでー』と言ってくれ」


「イリーナさん、かわいい」


「か、かわいい? ――ッ! だ、だから、子供扱いするなと言っているじゃろう!」


 精一杯背伸びして大人びる子供のような雰囲気をイリーナから感じ取り、正直な感想を述べる幸太郎に、イリーナは癇癪を起した子供のように怒る。


 怒るイリーナから更なる愛らしさを感じる幸太郎が、イリーナの怒りに更なる火をくべる前に、「――そんなことよりも」とアトラが割って入った。


「どうしてイリーナ様がここに? 会議室で待っているはずではなかったのですか?」


「どうしても早く会いたかったのじゃ。賢者の石の力を持つ少年に、な……」


 アトラの質問に答えたイリーナは、賢者の石の力を持つとされている幸太郎に視線を向けた。


 頭から爪先まで幸太郎を見つめるイリーナの視線は値踏みするようないやらしさを持ち、それ以上に油断も隙もない老獪さを感じさせるものだった。


 それに気づいたティアは教皇庁幹部の枢機卿にもかかわらず、明確な警戒心をぶつける。一方の幸太郎はそんなイリーナを、一回り以上離れている妹を見るような目で見つめていた。


 一瞬の膠着状態が続いた後――イリーナは満足そうに、そして、意味深な笑みを浮かべて、


「さあ、早く車に乗るがよい。遅れてしまえば旧本部にいる連中がうるさいぞ」


「誰のせいで時間が押しているんですか、まったく……」


「ヌハハハハハッ! ワシも一緒に怒られてやるから安心しろ。さあ、お主たち、さっさと出発するぞ! 幸太郎、お主はこれからワシの話に付き合ってもらうぞ」


 想定外のイリーナの登場に、幸太郎の会話で押していた時間が更に押してしまったことに不満を感じているアトラに、イリーナは豪快に笑って誤魔化した。


 押している時間を取り戻すため、すぐに幸太郎たちは車に乗り込んで旧本部へと出発する。


 一時間以上という長い道程だったが、自分に関して深く尋ねてくるイリーナの質問攻めと、窓の外に映る見慣れぬ異国の景色を眺めていたので、幸太郎は退屈しなかった。


 そんな幸太郎とは対照的に、ティアはずっとイリーナに対して警戒心をぶつけ続けていた。


 和気藹々としながらも、どこか刺々しさが存在する雰囲気のまま、何も変わることも起こることはなく、高層ビルなどがいっさいない、白を基調とした建物が立ち並ぶルミナエールの町の中心に建つ、町の中一番大きな建物、というか城である――教皇庁旧本部へと到着する。




―――――――――




 幸太郎さん、大丈夫かな……慣れない場所で突然会議だなんて……


 旧本部内にある会議室で行われている会議のことを思い、会議室の傍にある控室にいるリクトは、座っているソファに深々と腰かけて会議の中心にいる人物である幸太郎を心配して憂鬱そうなため息を漏らした。


 恋煩いをしている乙女のようなリクトの様子を、窓際に立っているクロノと、リクトの隣に座るプリムはやれやれと言わんばかりに眺めていた。


「七瀬なら何も心配はないだろう。教皇エレナがついている」


「エレナ様だけではなく、母様もついているのだ! 何も問題はないと断言できるぞ!」


 この部屋に到着してから、いや、その前から何回もついたリクトのため息を聞いて、まだ何も言っていないのにクロノとプリムはリクトの気持ちを理解して、彼を元気づけた。


 気遣ってくれた二人に「ありがとう、クロノ君、プリムさん」と心からの感謝の言葉を述べ、二人のおかげで暗かった表情が僅かに明るくなるリクトだが、それでも不安は消えない。


「幸太郎さんが賢者の石の力を持つかもしれないと知られた今、教皇庁が何を仕掛けようとするのか、わからないのが不安です……今回の会議を急遽開いたのは、イリーナ様だから」


「おばあさまは昔から我らの味方をしてくれたのだ。信用してもいいだろう」


「もちろん、わかっています……でも……」


 枢機卿イリーナに対して全幅の信頼を寄せているプリムだが、リクトは違う。


 もちろん、幼い頃からの付き合いで、何度も世話になっているのでプリムと同じくイリーナのことを信頼しているが、リクトの中には確かな不安があった。


「イリーナ様は昔から教皇庁を第一に考えていましたから。幸太郎さんの存在を教皇庁にとって得だと考えた場合、何か嫌な予感がするんです。それに……問題は母さんです」


「……そうだったな。エレナ様とおばあさまの仲は悪かったな」


「ええ。二人の意見が衝突した場合、大きなことに発展しそうな気がするんです」


 暗い表情を浮かべたリクトの言葉に、イリーナとエレナの関係を思い出したプリムは憂鬱なため息を深々と漏らす。


 エレナとイリーナ――二人はリクトやプリム、幼い頃からの付き合いであるアリシアよりも付き合いは長く、母娘のような間柄なのだが、仲は最悪だった。


 そのせいで、先日の煌王祭で旧本部にいる枢機卿たちを集めて行われた会議は、二人の意見が対立して話し合いは何も解決しなかったと、リクトは他の枢機卿から話を聞いていた。


「なあ、リクトよ。母様とおばあさまの仲は悪くないのに、どうしてエレナ様とおばあさまの仲は悪いのだ? 母様に聞いても教えてくれないのだが、リクトは何か知っているのか?」


「僕もそれは知らないんです。母さんの前でイリーナさんの話をするといつも機嫌が悪くなるか、流されるのかのどちらかなんで」


「フム……二人とも教皇庁を思う気持ちは同じはずなのだが、どうしてだろうな……」


 確かに二人とも教皇庁のことを考えているけど、本当に同じなのだろうか……

 何か、決定的に違うものが二人の間にあるような気がする。

 でも、母さんがイリーナ様を嫌っているのは、それだけじゃない気がする……


 母とイリーナの関係について考えていると、扉を控え目にノックする音が響き、「どうぞ」とリクトは入室を促すと――開かれた扉から、アトラ・ラディウスが現れた。


「お久しぶりです、リクト様、プリム様。お二人がお戻りになられたと聞いたので、いても立ってもいられずにここに来てしまいました」


 丁寧に深々と頭を下げて挨拶をするアトラにリクト、プリムの表情は明るくなるが、クロノだけは無表情でありながらもどこか複雑そうな顔をしていた。


「おお、アトラではないか! 久しぶりだな! コータローの奴をここまで連れてきたと聞いたが、相手をするのが大変だっただろう! とにかく、ゆっくり話そうではないか」


「そうしたいのは山々ですが、仕事の途中で抜けてきたので、すぐに戻ります」


「フフン、そんなことは気にするな! 我らの護衛として一緒にいたことにすればよい」


「そうですよ。さあ、今お茶を用意しますから、待っていてくださいね」


「り、リクト様! 末端の輝士である自分を気遣わないでください!」


「遠慮なんてしないでください。クロノ君とも久しぶりでしょう? お茶の用意をしている間ゆっくり話していてください」


 早々に立ち去ろうとするアトラを引き留めるために、リクトは彼のためにお茶を用意しようとして、時期教皇最有力候補であるリクトに気を遣わせる前に帰ろうとしていたアトラだが、リクトの口からクロノの名前が出ると、フレンドリーだったアトラの雰囲気が一気に変化する。


 室内の空気が一気に張り詰め、アトラは窓際に立つクロノに視線を向ける。


 その目はリクトやプリムに向けられていたフレンドリーで温かなものとはまったく対照的で、冷たく、激しい怒りを宿していた。


 そんなアトラの視線に、クロノは居心地を悪そうにしながらも見つめ返した。


「……久しぶりだな、アトラ」


「よく俺の前に顔を出せたな、クロノ……裏切者め!」


 しばらく見つめ合ったまま沈黙する両者だが、その沈黙に耐え切れなくなったクロノはリクトとプリムと同じように挨拶をした瞬間、アトラの全身に怒気が溢れた。


「多くの人を巻き込み、アカデミー都市だけではなく世界に混乱を招いているアルトマンにお前が協力していたことはもう知っている! 純粋だと思っていたお前があんな大罪人に協力しているなど思いもしなかった! お前には失望したぞ!」


「今は我らの仲間なのだ! お前ならばクロノがどんな性格をしているのか理解しているだろう! 怒りに支配されてそんなこともお前は忘れたのか」


「しかし、クロノのせいで不幸になった人間はいます。仲間になったのかもしれませんが、いつ裏切るのかわからないし、そんなことで過去の罪は消えません! 過去のことだと言って流すことはできない!」


 激情を溢れさせてクロノに詰め寄るアトラを諫めるプリムだが、アトラは止まらない。


 そんなアトラの罵声をクロノは反論することなく、ただただ無表情で黙って受け入れた。


 かつて自分や姉であるノエルが所属していたアカデミー都市を守る制輝軍の面々や、リクトたちは自分を受け入れてくれたが、普通ならアトラのように自分に裏切者だと罵声を浴びせるのが当然だと思っていたからこそ、クロノは黙って彼の罵倒を受け入れていた。


 そんなクロノに、苛立つアトラは激情のままに彼の胸倉を掴んだ。


「何とか言ったらどうだ、この裏切者め!」


「ええい! いい加減にするのだ! やめろと言っているだろう、アトラよ!」


「いいんだ、プリム――オレはオマエたちを裏切り続けた。半年前、リクトとともにここに訪れたのもティアストーンの在り処を探すのと、リクトから信頼を得ることが目的だった。オマエやプリムと出会い、コミュニケーションを取ったのも目的を果たすための過程に過ぎなかった。だから、オレはオマエに反論する権利は何一つない」


 プリムの制止を振り切ったアトラの罵倒を黙って受け入れる覚悟を示すクロノを、アトラは歯噛みして忌々しく、それでいて嘲るように一瞥して、鼻で笑い飛ばした。


「……もういいでしょう、アトラ君」


 プリムに続いてリクトもアトラを止めようとするが、彼は止まらない。


「殊勝な心掛けだが、お前は『人間』じゃないんだろう? 作られた存在で心があるのかも定かではないお前の言葉は何もかもが薄っぺらく――」


「……それ以上言ったら、僕はアトラ君を許さない」


 クロノがアルトマンの持つ、生命を操るとされている賢者の石によって、輝石から生み出されたイミテーションと呼ばれる存在だと知りながら放たれるアトラの冷たい言葉を、それ以上に冷たく、ドスの利いた声でリクトは遮る。


「自分の父親も同然のアルトマンさんを裏切るのに、クロノ君は悩んで悩んで悩み抜いた。その結果僕たちの味方をしてくれているんです。もちろん、過去に犯した罪は消えないけど、今のようにアトラ君の罵倒を受け入れて向き合う覚悟を持って、自分の罪を認めてそれを悔やんでいる――それなのに、人間じゃないと言って蔑むつもりなら僕は絶対に許さない」


 普段の温和な雰囲気を静かに、次期教皇最有力候補に相応しいほどの威圧感が込められたものへと一変させ、感情が込められていないながらも相手を竦ませるのは十分なほどの迫力が込められた一言で、アトラを黙らせた。


「アトラよ、お前の気持ちは理解できる。クロノが裏切っていたと知った時、この私も衝撃を受けたからな――しかし、クロノがどんな人間だったのかを知っていたからこそ、私はクロノを受け入れることができたのだ。……それができないお前ではないだろう、アトラ」


 リクトに続いてプリムの一言に、黙っていたアトラの表情は怒りと、悔しさ――そして、情けなさで歪み、クロノの胸倉を掴んでいた手を乱雑に放して、溢れ出しそうな感情を抑えるように両手をきつく握り締めた。


 そのまま、しばらくの間室内に沈黙が続くが――押し黙ったままのアトラに、クロノが意を決して声をかけようとした瞬間、アトラは逃げるようにしてこの場から立ち去った。


「……気遣いを感謝するぞ、リクト、プリム」


 淡々としながらも心化からの感謝の言葉を述べるクロノは、相変わらず感情を感じさせないほどの無表情だが、それでもどこか嬉しそうでもあり、少しだけ悲しそうでもあった。


 一方的に仲間で友人だとアトラに思われ、当時は何も感じていなかったが――心を理解しはじめたからこそ、クロノはアトラの罵倒が胸に突き刺さるような感覚を覚えていた。


 仕方がないとはいえ、覚悟はしていたとはいえ、いざその時が来たら、思いのほか胸に深々と響いてしまったことにクロノは戸惑っていた。


 戸惑いをどう対処していいのかわからないクロノに「気にするな!」とプリムは豪快に笑う。


「まったく、アトラめ……良い奴なのだが、馬鹿正直に生真面目で頑固なところは相変わらずだな。だが、アイツのことだ、すぐに頭が冷えるだろう」


「プリムさんの言う通りだよ。それに、アトラ君だって僕たちと同じでクロノ君の気持ちを理解しているはずだよ――だから、大丈夫だよ、クロノ君」


 無表情ながらも明らかに沈んでいるクロノを見て、リクトは幸太郎なら何て彼に言葉をかけると考えた結果、出た答えを口に出した。


 二人の友人の言葉に浮かない顔をしながらも、確かな微笑を浮かべたクロノは「ありがとう」と再び感謝の言葉を述べた。

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