第28話
一階の広大な面積を持つ屋内訓練場に到着した幸太郎と嵯峨は、ある程度の距離を取って向かい合った。
余計な警戒をされてしまうと思った嵯峨は、武輝を輝石に戻して戦うことよりも幸太郎と話し合うという姿勢を取っており、幸太郎をリラックスさせようとしていた。
幸太郎自身リラックスはしていたが、嵯峨に対しての不信感は完全に拭えていなかった。
その理由は、ここに向かう最中、すぐにこの場所を治安維持部隊が囲むだろうと判断して、邪魔をさせないように周囲への脅しのために何度か嵯峨は爆弾のスイッチを平然と躊躇うことなく連続で押して、建物内の爆弾を複数起動させていたからだ。
一体いくつあるのかと幸太郎は尋ねると、十から先は面倒なので数えていないと平然と嵯峨は言ってのけた。
アカデミー都市内にはたくさんの輝石使いがいて、実力者も勢ぞろいしているので、準備は怠ってはならないと嵯峨は判断したので、アカデミー都市に訪れる前にかなりのものを揃えて、各エリア内に隠していたといたずらっぽく笑って答えた。
「外が騒がしくなってきた……治安維持部隊かな? 思ったよりも遅かったね」
「そうなんですか? ……それじゃあ、お互いのために早く話をしましょうか」
「そうだね、それじゃあまずはお互い改めて自己紹介をしようか――僕は御存知嵯峨隼士、歳はショウと同じピチピチの十九歳、よろしくね」
「僕の名前はラッキーセブンの七と、浅瀬の瀬に、幸せな太郎で七瀬幸太郎です。青春真っ盛りでピチピチの高等部一年です」
呑気にお互いに自己紹介をする二人。
二人の間には緊張感も恐怖も何もなく、ただ二人とも自然体で接しているため、まるで友達感覚で会話をしていて、自宅にいるようなリラックスしている雰囲気が流れていた。
しかし、二人の表情は若干の固さがあり、お互い少しだけ緊張している様子だった。
「それじゃあ、嵯峨さんから話してどーぞ」
さっそく会話を開始させた幸太郎に、一瞬の沈黙の後戸惑ったような表情を浮かべた。
「僕から? いや、年上だからって遠慮しないで何でも聞いていいよ」
「僕も嵯峨さんと会って話したかったんですけど、いざ嵯峨さんと面と向かったら話したい内容が全部頭から飛んじゃって……すみません」
「同感……何だか相思相愛だけどお互い初心で会話が長続きしない恋人みたいだね、僕ら」
「その表現ちょっと嫌なんですけど」
「それじゃあ、お互い素直じゃない性格をしているがために、中々本音を言い合えないでやきもきしている男女の幼馴染?」
「男女の関係から離れましょうよ」
そう言って、楽しそうに笑い合う二人。
二人の間には和気藹々とした雰囲気が流れていた。
「それにしても、よくここに僕がいるってわかったね。正直、あの事件を知ってるか不安だったんだけど、知っていてくれてよかった」
「大道さんから教えてもらったんです――自分がはじまった場所……嵯峨さん、刈谷さんを助けるために暴れて、大道さんと出会った時、自分が生まれ変わるくらいの何か感じたんじゃないかなと思ったんですが……どうでしょう」
根拠がないので自信がなさそうな幸太郎の答えを聞いて、じっくりとためた後に「大正解!」と嵯峨は幸太郎に向かって惜しみない盛大な拍手を送った。
「あの時まであんまり強くなるってことはもちろん、いろんなことに興味がなくて空っぽだったんだけど、あの時から強くなりないなーって、薄々思いはじめたんだ」
「どうしてそう思いはじめたんですか?」
「多分、ショウとかが傷つけられたのを見てそう思ったのかもしれないし、キョウさんに呆気なく倒された時にそう思ったのかもしれない……正直、どうしてそう思いはじめたのか自分でもわからないんだ。ごめんね、曖昧で」
「いえ、気にしないでください。教えてくれてありがとうございました」
「あー、いえいえ、こちらこそ、気づいてくれてありがとう。君が僕の言葉の意味に気づいてくれなかったら、こうして会えて話せなかったから、僕が感謝したいほどだよ」
お互いにお礼を言い合う二人。
お互いだいぶリラックスした様子で、最初の表情の固さがもうなくなっていた。
それをお互い何となく理解したようだった。
すると、和気藹々としていた二人の間の空気が微妙に張り詰めた。
「それじゃあ、お言葉に甘えて僕からは聞きたいことを聞いてもいいですか?」
「いいよ、お兄さんに何でも聞いて」
「それじゃあ、どうして嵯峨さんは大道さんと刈谷さんを襲ったんですか?」
何気なく唐突に本題に入った幸太郎の質問に、嵯峨は思いきり不意をつかれてしまったようで、一瞬言葉に詰まってしまい、苦笑を浮かべた。
「急に本題に入ったね。ちょっと驚いた」
「一番聞きたいことも最初に聞いておきたくて」
「幸太郎君って好きなものは最初に食べるでしょ」
「あ、よくわかりましたね。それじゃあさっそく僕の質問に答えてください」
「ショウとキョウさんを――僕がみんなを襲って輝石を奪ったのは僕が強くなるためだ」
幸太郎の質問に淡々とした様子で嵯峨は答えた。
嵯峨の答えに幸太郎は特に驚く様子もなく、「なるほどー」と呑気な様子で納得していた。
「輝石を集めて賢者の石を作ろうと思ってるんですか?」
「あ、知ってた? そうだよ。四年前、僕は死神――ファントムに襲われた時に、理由はよくわからないけど彼が僕のことを気に入ってくれて、その時彼から賢者の石の作り方を教えてもらったんだ」
「賢者の石って作ったら強くなれるんですか?」
「さあ? でも、ファントムは賢者の石はどんな願いも叶えてくれるって言ってた。それなら、賢者の石を作って強くなろうと思って。もちろん、そう簡単に強くなれると思ってないから、輝石を奪うついでに強い人を倒して経験を積んでから強くなろうと決めたんだ」
「経験――それが、たくさんの人を襲った理由ですか?」
「そうだね。事実、僕は確実に強くなっている――……と思う」
軽い調子で質問の答えを述べた嵯峨には多くの人や、友人の二人を襲ったという罪悪感も後悔もなく、ただ自分が確実に強くなっていることに胸を張って誇らしげな様子だった。
そんな嵯峨の様子に幸太郎は一瞬首を傾げるが、すぐに元の態度に戻った。
「質問の答えは以上のようだけど――次は僕が質問してもいいかな?」
「ええ、どうぞ」
幸太郎の質問が終わり、今度は嵯峨が質問する番だった。
「僕は後悔しないために自分が決めたことに迷うことなく従ってるんだけど、君も同じ?」
「はい、一応……」
頷く幸太郎を見て、嵯峨はとても嬉しそうにニッコリと笑った。
「同じ行動をできる人がいてくれてよかった。昔、それをショウやキョウさんに言ったら、あんまりいい顔されなくて、ちょっと寂しい思いをしちゃったんだ」
「現在進行形で僕のそんな行動をしてしまったせいで友達を心配をさせて怒られちゃって……まあ、僕が悪いんですけど」
「ショック? 最善を尽くすために自分が今できることを精一杯しようと思って行動した結果、それが、逆に周囲の人間を遠ざける原因になって。自分が友達と思ってる人が、自分を理解してくれないのはとても寂しいことだよね。そんな行動を改めろって言われても、それが自分なんだから、そう簡単には変えられないし」
自分の心の内をすべて見透かしている嵯峨に、幸太郎は居心地が悪そうに苦笑を浮かべることしかできなかった。
「ショウとキョウさんは僕が平気で危険に飛び込んで無茶をするって知って、それが危険だと思っててすごく心配そうだった。僕はそんな二人に何か言葉をかけるべきだったけど、結局何も言うことができなかった……まあ今となってはもういいけど――君もそうだろう?」
同意を求めてくる嵯峨に、幸太郎は黙ったままだったが自嘲的な笑みを浮かべた。
そして、幸太郎は意味深な笑みを浮かべて嵯峨を真っ直ぐと見つめた。
真っ直ぐと見つめる幸太郎の目は嵯峨への疑心に満ちていた。
「どうやら質問をしたいことがあるようだけど――時間的にそろそろ終わりかな? でも、もう少しゆっくり話したいから、もうちょっと黙っててもらおうかな」
多くの治安維持部隊が集まってきているのか、訓練施設の外が急に騒がしくなってきた。
嵯峨はポケットの中から爆弾の起爆スイッチを取り出して、カチカチとスイッチを連打する。まるで、シャープペンシルの芯を出すかのように。
訓練場内に連続して大きな爆音が響き渡り、何かが燃える焦げたにおい、そして、建物内が大きく揺れて、幸太郎は思わず転びそうになったがそれを何とか堪える。
大きな揺れは治まったが、それでも揺れはまだ続いていた。
「嵯峨さん、ちゃんと考えて爆発させてます? それ、ゲームのコントローラーじゃないんですよ? 爆弾のスイッチで十六連射は勘弁してください」
「ごめんごめん、ちょっと調子乗り過ぎちゃった」
「そもそも、こんな量の爆弾どこで手に入れたんですか」
「まあ、色々と入手ルートがあって――……でも、ほとんどが爆発量を僕が抑えてるから大丈夫……きっと」
「それ、当てになるんですか?」
「昔よく刈谷と一緒に危ないもの作ってたから大丈夫。知ってる? 刈谷も手製の爆弾作れるんだよ? もちろん、殺傷能力のないカンシャク玉みたいなものだけど。それに、このウェストエリアの訓練施設は輝石使いの激しい訓練に耐えるように設計してあるから大丈夫大丈夫」
「街路樹を薙ぎ倒す威力を持つものをカンシャク玉って呼ぶのは納得できませんが……」
いまだに揺れが続く中、呑気に会話をしている二人。
「それじゃあ、あまりゆっくりできないけど話を再開しようか……何か聞きたいことがあるようだけど、なんでも聞いていいから」
「それじゃあ、質問させてもらいますね――嵯峨さんは刈谷さんと大道さんを襲って、後悔していませんか?」
呑気な雰囲気を一変させて、ジッと嵯峨を試すような、それでいて挑発するように幸太郎は見つめた。
思いもしない幸太郎の質問に、嵯峨はわけがわからないといった様子で首を傾げていた。
「どうしてそんなことを聞くの? 幸太郎君ならわかるよね? 僕は後悔してないって」
「刈谷さんと大道さんは友達なんじゃないんですか?」
「友達だからこそ理解してくれるよ。それに、二人はずっと、僕に強くなるってこと以外の目標を持てって言ってた。強くなるにせよ、そのためにどんなことをすればいいのか、自分で考えろって言ってたんだ――僕が決めたその答えが、賢者の石を作り出すこと……二人は納得してくれるし、気にもしてないよ」
傍目から見れば自分勝手な言葉を述べた嵯峨だが、幸太郎はそんな嵯峨の発言を聞いて不快感を露わにすることなく、「確かにそうですね」と満足そうに微笑んで納得した。
納得してくれた幸太郎に、嵯峨はニッコリと笑った。
「刈谷さんと大道さんは良い人です。二人はきっと嵯峨さんに襲われたことを気にしません。嵯峨さんが決めたことだからと言って、きっと納得します」
「そうだね。僕はそう思ったからこそ遠慮なく二人を襲えたんだ。二人を倒せば強くなる、そう考えたから準備運動に何人か襲った後に二人と戦ったんだ」
「強くなれましたか?」
「うん、かなり強くなったと思う。その後にセラちゃんやティアリナさん……ますます強くなってるのを実感してるよ。強い人とこんなに会えるなんて、僕は運がついてる」
「そうですか……それはよかったです――でも……」
嵯峨さんと僕――似てると思った。
でも、やっぱり違う――
決定的に僕は嵯峨さんと違う。
嵯峨と自分が似ていると言われた時から、心の中でずっと靄のようなものが幸太郎には存在していた――しかし、それがようやく消え去り、心の中はハッキリとした。
それと同時に幸太郎は心底ガッカリしたようにため息をついた。
ふいに幸太郎はポケットの中にあった、武輝が出せない自身の唯一の武器である白銀色のボディを持つショックガンを取り出して、それを両手で持ち、銃口を嵯峨に向けた。
見慣れぬ銃のようなものを両手で持って、それを自身に向ける幸太郎を嵯峨は不思議そうに見つめていた。
「それ、何だかカッコイイね。光線銃みたい」
「ショックガンって呼ばれていて、衝撃波を撃ち出す殺傷能力のない銃です」
「あー、ガードロボットの武装に採用されてる銃か……へぇー、小型化に成功したんだ。触らせてもらいたいけど、今は無理?」
「そうですね……すみません」
「ちなみに、どうしてそんなものを向けるのか理由を聞かせてくれない?」
「やっぱり、嵯峨さんと僕は違うみたいです」
「……そうなの?」
迷いなくハッキリと断言した幸太郎に、嵯峨はガクリと力が抜けたように肩を落とした。
しかし、まだそれが納得できない様子で、縋るような目で幸太郎を見つめる。
「どうしてそう思ったのか教えてくれる?」
「僕は後悔しません……でも、友達を襲って傷つけたら後悔します」
「そうなの?」
セラと麗華、そしてティアのことを思いながら幸太郎はそう言い切った。
その言葉に、嵯峨は信じられないといった様子だった。
「友達に僕の行動を拒絶された時、正直言って戸惑いました。自分ではみんなのためにと思って正しいことをしてるのに、どうしてそれを否定して拒絶するんだろうって」
自分の勝手な行動によって心配させてしまったセラと麗華のことを幸太郎は思い出す。
「嵯峨さんの言う通り、今でも友達にかける言葉が見つかりません……無茶をする僕の行動を納得させてもらえるような上手い言葉が見当たらないんです――……取り繕った言葉で一時的には納得させても、結局は心配させてしまうのは目に見えてますから」
「それなら、僕のように気にしなければいいのに」
「それが一番楽ですけど……でも、それだと僕自身が納得できないし、後々になって後悔します。だから、一番楽な方へと逃げる気はありません」
自身を真っ直ぐと見つめながらの一言に、嵯峨は幸太郎から逃げるように一瞬だけ目をそらしてしまったが、すぐに元の調子に戻った。
納得できないといった様子だった嵯峨の表情は、徐々に失望の色が強くなってきた。
「嵯峨さんは本当に後悔していないんですか? 刈谷さんと大道さんを襲って」
「うん、してないよ」
「本当ですか?」
「だからしてないって」
同じ質問を繰り返す幸太郎に、若干の苛立ちを言葉に込めて嵯峨は後悔していないと言い切った。
嵯峨の答えを聞いて、納得していない様子の幸太郎だったが、改めて嵯峨と自分との違いを感じ取っていた。
「なら、やっぱり僕と嵯峨さんは違います。嵯峨さんの身になって考えても、僕は嵯峨さんみたいに友達を襲ってまで自分の目的を達成する気にはどうしてもなれません」
今でも意識不明のままの刈谷さん。
嵯峨さんを止める気だったけど結局は止められなかった大道さん。
二人とも、嵯峨さんを友達だと思っているからこそ必死で止めようとした。
嵯峨さんの言う通り、二人なら嵯峨さんの気持ちを理解することはできて、いつかは嵯峨さんの行動を仕方がないの一言で済ませられるかもしれない……
でも、その答えに至るまでの間ずっと二人は苦しむ。
だから――……
「僕と嵯峨さんは違います」
改めて、幸太郎は嵯峨を拒絶し、軽蔑するようにハッキリと言った。
その言葉を受けた嵯峨は失望していたが、すぐに感情がまったく感じられない無表情になり、もう幸太郎に興味を失くしたようだった。
「そうなんだ……ちょっとガッカリだけど仕方がないか」
「すみません……少しハッキリと言い過ぎちゃいましたか?」
「ああ、気にしないで。正直にハッキリと言ってくれて嬉しいから――それに、君のその素直な感想のおかげで僕もようやく当初の目的に集中できるから」
申し訳なさそうな幸太郎だったが、嵯峨はニッコリと明らかな愛想笑いを浮かべて気にしてないと言って、幸太郎を安堵させる。
そして、深々と心底残念そうに、失望したように一度大きくため息を漏らすと、レインコートの中から自身の輝石を取り出した。
カップラーメンの重し代わりに使われている幸太郎の持つ輝石と同じく、嵯峨の輝石はアクセサリー等に埋め込んでいなかった。
弱々しい一瞬の発光の後に、嵯峨は自身の武輝である槍を手にする。
「アカデミー創立以来の落ちこぼれって評価されているらしいけど、僕からしてみれば君は強い……多分、ここに来て一番強い。セラちゃんやティアリナさんよりも……」
「本当ですか? ……何だか照れます」
「だからこそ、君を倒して輝石を奪ったら僕はもっと強くなれる――君を倒して輝石を奪って僕は早くここから脱出する」
「ここを治安維持部隊が囲んでいるのに逃げられますか?」
「うん。諦めないで逃げる」
「そうですよね……それじゃあ、僕はここで嵯峨さんを止めます」
ショックガンを握る両手を強くする幸太郎。
向かい合っている幸太郎と嵯峨の間に張り詰めた緊張感が流れる。
「怖くない? 僕は武輝を持ってるのに。武輝を出せないほど輝石の力を扱えないんじゃ、大怪我をするよ? 逃げるなら今の内だよ? まあ、逃げても無駄だけど」
「痛いのは嫌ですけど……ここで嵯峨さんを止めるって僕は決めましたから」
「それなら君は絶対に逃げないね。ごめんね、僕と違うって言ったから、少し君を見くびってた」
軽い調子だが脅しには十分すぎる嵯峨の一言だったが、幸太郎は顔色をまったく変えることなく、圧倒的に実力差が開いている人物を止めると言い放った。
自分が決めたことに忠実な幸太郎に、無意味であることがわかっていても自分の姿を重ねてしまい、自嘲的な笑みを嵯峨は漏らしてしまった。
「まあ、安心してよ。セラちゃんとティアリナさんにかなり痛めつけられて体力的に限界で、武輝を出すのもやっとなんだ……今も、気を抜いたら武輝が輝石に戻っちゃう――そんな状態の武輝の威力なんてたかが知れてるから、大事には至らないよ」
「そうなんですか? それなら運が良かったです」
「運が良いのはお互い様だね――それじゃあ……行くよ?」
嵯峨が言葉を言い切ると同時に、幸太郎との間合いを一気に詰める。
ダメージが蓄積されているとはいえ、輝石の力で身体能力を強化されていない幸太郎にとって、嵯峨の動きを目で追うことは不可能だった。
しかし、幸太郎には確信があった。
嵯峨はきっと自分に向かって一直線に向かってくるという確信が。
下手な小細工を使わず、一直線にこちらに向かってくると。
嵯峨を自分の身に置き換えて考えて、必ずそう来ると思っていた。
根拠がないが、確実に嵯峨はこちらへ真っ直ぐと向かうと。
――自分なら絶対にそうする。
案の定、一瞬のうちに幸太郎の目の前に嵯峨が現れた。
嵯峨は幸太郎に向けて、武輝である槍の穂先に伸びた刃で斬りかかっていた。
刃は幸太郎の首を狙っていた。
幸太郎が輝石の力を扱えないということを知っていた嵯峨には、確実に自分が勝つという確証があり、自分の勝利を疑うことはなかった。
嵯峨は残り少ない体力にもかかわらず、全力で幸太郎を倒しにかかる。
自身の勝利を確信していた嵯峨だが――決着がつく寸前、大きな破裂音が響く。
破裂音が響くと同時に、嵯峨の身体は大きく吹き飛んだ。
そして、幸太郎の身体も大きく吹き飛んだ。
お互い後方に向かって吹き飛び、受け身も取らずに床に突っ伏した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます