第17話

 一時間近く走ってようやくセントラルエリア付近に、風紀委員たちとリクトは到着した。


 途中何度か輝士団の邪魔が入ったが、すぐに輝士団が襲撃することはなくなり、ここまで順調なペースで余裕を持ってセントラルエリアまで向かうことができた。


 このペースなら、教皇庁本部まで順調に向かえると思った麗華は、セントラルエリアに入る前に休憩も兼ねて近くにあったベンチに座って、今後のことを話し合っていた。


 順調な状況に麗華は余裕そうな表情を浮かべ、セラとリクトはまだ油断していない様子で周囲を見回し、幸太郎は休む間もなく走り続けていたため全身で息をしてぐったりしている様子でベンチの上で横になっていた。


「ホンット、だらしないですわね!」


「さっき食べたお昼ご飯吐きそう。特に鳳さんのが――おえっ」


「ぬぁんですってぇ! この私の料理をあなたは何だと!」


「騒がないでください。せっかく、作戦が順調なのに輝士団に気づかれてしまいます」


 セラの注意を受けて、麗華はハッとしたように怒声を張り上げるのを中断した。


 怒声は張り上げなかったが、麗華は不機嫌そうな表情で悔しそう歯噛みして、気持ち悪そうに吐き気を催している幸太郎を睨んだ。


「で、でも、さすがは鳳さんです。狙い通りに輝士団の動きを輝動隊が封じましたね」


 明らかに機嫌が悪そうな麗華に、見え見えのフォローをセラはすると、単純な麗華は得意気に胸を張った。


「フフン、当然ですわ! まあ、輝士団と輝動隊の仲の悪さを改めて周囲に露呈させてしまい、あまり喜ばしいことではありませんが、利用できるものは利用せねばなりませんわ!」


「でも、まだ油断はできません。この作戦がいつまで通じるか……それに、リクト君を襲ったという、偽物の輝士団が現れる可能性だってあります」


「も、もちろん承知の上ですわ!」


 余裕な表情で思いきり油断をしている様子の麗華を、呆れた様子のセラは窘める。


 輝士団が襲ってこないこと、そして、風紀委員の緊張感のなさに当てられて、少し心に余裕を持っていたリクトだが、セラの言葉を聞いて表情が暗くなる。


 暗い表情を浮かべているリクトに気づいたセラは、自分が余計な一言で彼を不安な気持ちにさせたことに気づき、優しげな笑みを浮かべて彼の手を自分の手でそっと包んだ。


「すみません、不安な気持ちにさせてしまって」


 安堵させるような声音で自身を気遣ってくれるセラに、思わず自分の母親と同じように見えてしまったリクトは一瞬見惚れてしまった。


「あ……だ、大丈夫です、その……僕の方こそすみません、守られてばかりで……」


「リクト様が戦う必要はありませんわ! あなたは次期教皇最有力候補、そんなあなたが戦って怪我でもされたら、大変な大事件になりますわ! ですので、弾除け程度にしかならないこの肉壁を存分に使ってくださいませ」


 取り繕った笑みを浮かべて麗華はそう言って、疲労でぐったりしている幸太郎を指差す。


 リクトは愛想笑いを浮かべて「あ、ありがとうございます」とお礼を述べた。


「ここで次期教皇最有力候補を助ければ、教皇庁は私たち大きな借りができますわ! それを利用すれば、私は一気にアカデミーの支配権を――オーッホッホッホッホッホッ!」


「鳳さん、本心ダダ漏れです。それと、静かにしてください……」


 今後のことを考え、興奮のあまり本心ダダ漏れで、邪な気持ちがたくさん詰まった表情で高笑いをする麗華。大音量で高笑いする彼女に、セラは呆れた様子で注意した。


 ひとしきり笑うと、麗華はセントラルエリアの中央にある教皇庁本部の建物を見つめた。


「さて、後は教皇庁本部を目指すのみですわ、さっさと――」

 気合を入れる麗華だったが、突然現れた、赤いマントを羽織った屈強な外見をした六人の男の輝士団によってそれが中断させられた。


 輝士団の登場に気づいたリクトは再び怯えはじめ、横になっていた幸太郎は億劫そうに上体を起こしてズボンの間にしまっていたショックガンを取り出した。


「いいところでしたのに……まったく、少しは空気を読みなさい!」


「鳳さん、気をつけてください……何か雰囲気が違います」


 セラの言葉通り、六人の輝士団が纏っている空気は今まで襲ってきた輝士団とは異なるものだった。幸太郎は何か背筋に冷たいものが走ったような気がした。


 輝士団たちは何も言わずに輝石を取り出して、武輝に変化させる。


 剣、ヌンチャク、手甲、ハンマー、斧、双剣――六人は武輝を手にし、構える。


「あ、あの人たちだ……あ、あの人たちです! 僕を……高峰さんを襲ったのは!」


 武輝の形状を見て、リクトは思わず叫んだ。


 双剣の人物意外、他の五人は自分を襲った人物であるとすぐにリクトは気づいた。


 リクトの報告を受けて、麗華はニンマリとサディスティックな笑みを浮かべる。


「それなら……容赦は必要ありませんわね?」


「七瀬君、リクト君をお願いします……あなたも気をつけて」


 セラと麗華の二人は同時に輝石を武輝に変化させる。幸太郎はセラの言葉に力強く頷き、怯えたまま動かないリクトの前を庇うようにして立ち、ショックガンを構えた。


 六人は一斉に武輝に光を纏わせて風紀委員たちに向かって飛びかかってきた。


 一斉に襲撃する六人の前に、多勢でも恐れることなくセラは飛び込んだ。


 三人はセラを迎撃するために、残りは麗華に向かって襲いかかる。


 飛びかかってくるセラに、三人は同時で攻撃するが、セラは空中で舞うような動作をしてそれを回避し、身を思いきり捻って剣を振った。


 剣を振ると同時に発生した凄まじい風圧によって、三人の男の態勢が崩れた。


 一方の麗華は、三人が飛びかかってきているにもかかわらず、麗華は退屈そうに欠伸をして、油断しきっている状態だった。


 そんな麗華に向かって三人は武輝を一斉に振り下ろすが、同時攻撃を片手に持った武輝である、細いの刀身のレイピアで麗華は軽々と受け止め、不敵な笑みさえも浮かべていた。


 少し麗華が力を入れるだけで、三人の屈強な外見の男たちは押し出された。


 思いきり麗華は武輝に力を入れ、一歩を踏み込むと男たちは情けなく態勢を崩す。


 麗華は体勢を崩した三人の足を一気に払って転倒させた。


 圧倒的な力を持つ二人の少女に、六人の男たちは気圧されていた。


 二人の少女は六人の男たちを、威圧するような冷たい目で睨み、男たちは息を呑む。


 この二人には高峰のように六人同時に攻撃を仕掛けても太刀打ちできないと判断した六人は、お互いに目配せをする。


 一人の男が武輝であるハンマーに輝石の力を纏わせ、思いきりアスファルトに向かって振り下ろした。


 爆音にも似た轟音とともに、粉々に砕かれたアスファルトが粉塵となって舞い、セラと麗華の視界を遮った。


「七瀬君!」

「七瀬さん!」


 二人が警告するようにして自分の名を叫んだのを聞き、リクトを庇うようにして立っている幸太郎は緊張感を高め、ショックガンを両手でしっかり持って攻撃に備える。


 二人の男が左右から幸太郎に向かって襲いかかってきた。


 幸太郎は右から向かってくる男に向かって、躊躇いなく引き金を引いた。


 空気が膨張して、一気に破裂するような音とともに発射される不可視の衝撃波が男に襲いかかるが、自身に迫る攻撃を察知した男は驚異的な勘でそれを回避する。


 製作者曰く、当たりさえすれば輝石使いでも倒せる威力を持っているショックガンだが、当たらなければ意味がないということを今更悟った幸太郎は、迎撃するよりもリクトととも逃げることを選択する。


 だが、二人の男はあっという間に間合いを詰め、一人の男が幸太郎に向かって攻撃を、もう一人はリクトに向かって攻撃を仕掛けた。


 幸太郎は目前に迫る攻撃に怯むことなく、怯えて動けないリクトに向かって飛びかかってアスファルトに思いきり突っ伏した。思いがけない行動に、男たちの攻撃が空を切る。


 何とか攻撃を回避することができたが、間髪入れずに男たちは地面に突っ伏した幸太郎たちに向かって武輝を振り下ろした。


 せめて、リクトだけを守ろうとするようにして、幸太郎はリクトから攻撃を庇うようにして、彼に覆い被さった。


 セラと麗華の二人は、男たちの死に物狂いの攻撃に足止めされて、駆けつけることができなかった。


 自身を庇う輝石の力を上手く引き出すことができない幸太郎の胸に、リクトは情けなく小さな悲鳴を上げて、きつく目を閉じて自身の顔を埋めることしかできなかった。


 男たちの武輝が幸太郎に向けて振り下ろされる――

 だが、その前に攻撃を仕掛けた二人の男は呻き声を上げて倒れた。


「どうやら、間に合ったみてぇだな! 中々面白いことになってんじゃねぇか!」


「油断をするな。まだ敵は残っている」


「心配しなくても、後はお嬢とセラに任せりゃいいだろ。負けねぇよ、こんなのに」


「……それもそうだな」


 嬉々としている軽薄そうな男の声と、感情があまり感じられない男の低い声が響いた。


 聞き慣れたその声に幸太郎は起き上がって声の主を確認する。


刈谷かりやさん、それにドレイクさんも」


「よお、幸太郎。怪我はねぇか?」


「はい。助けてくれてありがとうございます」


 声の主は――派手な色のシャツとテカテカ光る合成皮革のジーンズをはいた、金に染めた長髪をオールバックにした少年・刈谷祥かりや しょう。刈谷は武輝であるナイフを持っていた。


 そして、もう一人は黒いスーツを着た身長2メートル近いスキンヘッドの大男で、麗華のボディガード兼使用人を務めるドレイク・デュール。ドレイクの両腕には武輝である籠手が装着されていた。


 二人の姿に幸太郎は安堵するとともに、弾けるような笑みを浮かべて二人に駆け寄った。


 リクトは突然現れた味方かもしれない男たちの登場に安堵していたが、いまだに消えない恐怖心に全身を震わせて、立ち上がることができなかった。


「刈谷さんたちはどうしてここに?」


「大和――うちの隊長から頼まれてな。お嬢たちを助けるために駒になってくれと。俺一人でも十分だったんだけどよ、余計なことにこのオッサンも大和が念のために呼んだんだ」


 不満気な表情で、刈谷は腕を組んで無表情のドレイクを睨む。


「刈谷一人では何をするかわからないとのことで、駆り出された」


「うるっせぇな! 俺は別に一人でも十分だっての!」


「……お二人とも、私たちを手伝わずに呑気に話しているとは、いい度胸ですわね」


「刈谷さん、ドレイクさん。わざわざ来てくれてありがとうございます」


 口論に発展しそうな刈谷とドレイクの間に、こめかみに青筋を浮き立たせている麗華が入った。そんな彼女の後ろにいるセラは、二人に向かって丁寧に深々と頭を下げた。


「手伝うっつったって――お嬢とセラ、お前ら苦戦もしてねぇだろ。あーあ、こんなにズタボロにしちまって。一撃で決めてやった俺たちの方がまだ優しいぜ」


 麗華とセラと戦っていた四人の男は、容赦なく、そして、完膚なきまでズタボロにされ、そんな男たちを刈谷は憐れむような目で見て、手を合わせて合掌のポーズを取る。


 襲ってきた六人の男たち全員を倒したので、麗華たちは武輝を輝石に戻した。


「敵であるならば容赦はしないというのが私のルールですわ! それよりも、あなたたち二人が来たということは、輝動隊は――いいえ、大和が動き出しましたわね」


「ああ。わかりやすいメッセージだったみてぇだからな。つーか、面白そうなことやってんのに、どうして俺も混ぜてくれなかったんだよ! 公共物破壊なら俺に任せろって!」


「輝動隊が動き出したので、もう破壊は必要ありませんわ」


「何だよ、つまんねー! 敵も弱いし、物も壊せねぇし! これじゃあ俺が来た意味ねぇじゃねぇか!」


 駄々をこねる子供のように、手足をジタバタさせる刈谷に、麗華は冷たく睨み、セラは少し引いたようにして苦笑を浮かべていた。


 そんな中、一人真面目にドレイクは倒れている男たちの顔を確認していた。


 顔を確認したドレイクは「こいつは……」と、小さく驚きの声を上げた。


 その声に反応した麗華とセラはドレイクに近づく。


「野獣を思わせるようなこの野蛮な男の顔に見覚えがありますの? ドレイク」


「ああ……こいつは昔の同僚だ。親しくはなかったがな」


「同僚? つまり、あなたが教皇庁に所属していた時の同僚というわけですの?」


 ドレイクは麗華の言葉に、静かに頷いた。


「教皇庁内部には様々な派閥がある。教皇のみの判断で教皇庁が動き出すことに納得していない一派、昔の伝統を守ろうとする一派等様々な派閥があり、大きく強硬派と穏健派の二つに分類される――そこにいる教皇の息子には説明が不要だと思うがな」


「おいおい、どうした少年! 情けねぇなぁ。立てるか?」


「あ、ありがとうございます……」


 情けなく地面に尻をついたまま立ち上がっていないリクトに、やれやれと言わんばかりにため息をついて刈谷は手を差し伸べて立ち上がらせた。立ち上がらせると、刈谷は興味深そうにリクトを頭のてっぺんから爪先まで顔を近づけてジロジロと見ていた。


「……お前が教皇の息子、リクト・フォルトゥスねぇ……ふーん……」


「刈谷さんの野蛮さが移りますから、リクト様に近寄らないでいただけます?」


「俺は病原菌か! まあいいか……教皇の息子がどんなもんかと思ったら、まさか、こんな情けねぇガキだったとは思いもしなかったぜ」


「刈谷さん! あなた少々言い過ぎですわよ!」


 面と向かってリクトに失礼なことを言う刈谷に、麗華は怒りの形相を浮かべる。刈谷は逃げるようにして麗華から離れた。


 刈谷に好き放題言われても、リクトは何も言い返すことができなかった。


「……すみません、ドレイクさん。続きをお願いします」


 このままでは話が進まないと思ったセラは、小さくため息をついてドレイクに話の続きを求めた。ドレイクはセラの頼みに、静かに頷いて応じた。


「そんな中、俺たちボディガードの間に、一人の男を筆頭にしてある派閥が生まれた――現教皇エレナを神格化している派閥だ。この男――いや、この場に倒れている全員その派閥に属していた」


 ドレイクの言葉を聞いて、胸騒ぎがしはじめるリクトの表情が徐々に青白くなってきた。


 そんな彼の気持ちなど露も知らないドレイクは淡々とした調子で話を続ける。


「教皇エレナは確かに、歴代教皇の中でも群を抜いた力を持っているとされ、神格化する人間は多く存在する――しかし、その派閥は違った」


「純粋に神格化しようとする穏健派ではないということでしょうか」


 厳しい表情浮かべるセラの言葉に、ドレイクは静かに頷いた。


「神格化させるために不必要なものはすべて切り捨てる考えを持っている。表向きは穏健派と見られて敬虔な信者だが、裏では教皇のためという大義名分を掲げて汚いことをしている連中だ。過激派であることは間違いない」


「陰険な教皇庁の奴ららしいぜ。信者というよりも狂信者だな」


 正鵠を射ている刈谷の言葉に、思わずドレイクは小さく微笑んでしまっていた。


「そんな派閥を束ねている男――教皇の家族と長い付き合いがあるために、歪んだ誇りを持ち、自分を有能なフィクサーと思い込んでいる男だ」


 ドレイクの説明を聞いて、リクトの全身に衝撃が走った。


 ドレイクが言った、教皇の家族と長い付き合いがある人物に覚えがあったからだ。


 そんなわけ……そんなわけない。


「そいつの名前は……高峰――」

「そんなわけない!」


 ドレイクの言葉を遮るようにして、リクトの悲痛な叫び声にも似た怒声が響き渡った。


 リクトの性格から予想ができないほどの大きな声に、全員の視線が彼に集中した。


 怒声を張り上げたリクトは、自分でも思った以上の声が出ていることに驚きながらも、目には涙をためていた。


 そんな様子のリクトに、ドレイクは申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「……高峰はまだ君の専属ボディガードを務めていたのか」


「そうです……高峰さんは、僕をずっと守ってくれました! 僕の相談も親身になって乗ってくれました! 僕のことを……僕を、ずっと思っていて――……」


 感情が込み上げて、リクトはこれ以上何も言えなくなってしまった。


 しかし、リクトは込み上げた感情を必死に抑え、涙に濡れた目でドレイクを睨む。


 今まで情けなく怯え続けていたリクトから伝わってくる必死さと、ドレイクの言葉を断固として認めないという強い態度に、この場にいる全員がリクトに気圧された。


「だから! ……だから、高峰さんが僕の……僕のことを!」


「リクト君! 待ってください! な、七瀬君? あなたも――」


 セラの制止を聞かず、リクトはセントラルエリア方面に向かって一人、走ってしまった。


 幸太郎は誰よりも早く反応して、何も言わずにリクトを追いかけた。


「ドレイク、私も高峰さんと今朝会って話しましたが、確かに高峰さんはリクト様のことを心配しているように思えました――そんな方が本当にリクト様を?」


「高峰は昔からその派閥の頂点だった。高峰を信用したい気持ちはわかるが、信用はできない……すまない、彼を気遣うべきだった」


「仕方がありませんわ。それよりも、早くリクト様を――」


「おおっと、お嬢……アンタとオッサンと、セラはあのガキを追いな……俺は少しの間時間を稼ぐ。暴れ足りなかったんだ、楽しくなってきたぜ」


 全員でリクトを追いかけようと提案する麗華だが、大勢が近づいてくる気配を察知した刈谷は獰猛で野性的な笑みを浮かべてここに残ると言い放った。


 セラと麗華はお互いに顔を見合わせ、目配せした後、ここは刈谷の判断に任せることにして、先を急ぐことにした。


「ここはあなたに任せますわ! 私に任されることを光栄に思いなさい!」


「すみません、ここはお願いします、刈谷さん」


 麗華とセラは時間を稼ぐ刈谷にそう言って、幸太郎とリクトを追う。

 ――が、走り出そうとした瞬間に、「あ、そうだお嬢」と刈谷は思い出したように麗華に話しかけて、引き止めた。


「大和の奴が教皇庁へ向かえってさ」


「……元より、そのつもりですわ」


「さすがは幼馴染。お熱いねぇ」


「大和とはそんな関係ではありませんわ」


 冷やかすような刈谷の言葉に、麗華は冷たい反応を示して走り去った。


「……ツンデレ反応を期待してたんだけどな。ありゃあ脈なしか?」


「余計なことを気にしていないで、集中しろ」


 先を急げと言われたドレイクはまだ残っており、刈谷の隣に立った。

自分の隣に立ち、小言を言ってきたドレイクを刈谷は不満そうに睨む。


「俺一人で十分だって言ってんだろ。オッサンは邪魔だっての」


「俺はまだ三十代前半だ」


「老け顔だな」


 二人は短い会話をして、輝石を武輝に変化させる。


 刈谷はベルトについた輝石を取り出して武輝であるナイフに変化させた。武輝を片手に、そしてもう一方の手には腰に下げている輝動隊の隊員に支給される特殊警棒を持つ。


 ドレイクはペンダントについた輝石を変化させ、両腕全体を包む籠手に変化させた。


 臨戦態勢に入った二人は、敵の到着をジッと待った。



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