二話 キャラクターメイキング

 

 ――ん?


 新たに出現した俺の体に触ろうとしたが、手は通り抜けてしまう。


 リアルだが、どうやら、これも実体化してるわけではないようだ。

 透け透けだがリアルだな。

 ホログラフィーを超えたAR技術のようだ。


 リアルなもう一つの体の下には、


『転生後のキャラクタークリエイトを開始します』


『種族を選択してください』

 といった、立体的な3Dの文字が表示されている。


「VRゲームを超えて、いや、想像を超えた代物だ。自分自身のキャラクターメイキングか」


 笑みを意識した。

 独り言を呟きながら、目の前に浮かんでいる〝種族の選択〟の項目に手を置くように触る。


 と、周りの白い空間が立体的な巨大スクリーンのようなモノに変貌を遂げた。

 その白い空間のスクリーンのようなモノに自然豊かな世界が生成されていく。


 最初は巨大なキャンバスに絵を描くように色調だったが、だんだんと高精細になりリアリティ溢れる姿の個性溢れる生き物たちが描かれ、誕生していった。


 見ているだけで楽しかった。

 これをゲームとか表現した奴は、どんな脳をしているんだ?


 あ、俺か。


 目の前に多種多様な種族のキャラクターが表示されていく。


 その生きているキャラクターに手を伸ばして触れる。

 不思議な感触があった。

 その触れたキャラクターの情報がウィンドウに写る。


 リアルな立体映像。


 感触がある時点で映像と言えるのか?

 と疑問に思いながらも、実際に歩いて動いているキャラクターの姿を見て感動を覚える。


 左右に手を動かすと、ウィンドウが動いた。


 SF映画のようだが、そんな代物じゃねぇ。

 俺の手がコントローラーか……。

 指先の微妙な感触まで汲み取っている。


 声で指示を出しても、ちゃんと認識して動いた。


 すっげぇリアル……。

 箱oneのキネクトなんて比じゃないな……。

 PS5のヘッドマウントディスプレイを装着して遊べるVR体験を超えている。


 小説とかによくあるVRMMOとか、こんな感じなのか?

 映画で立体映像を駆使した作品があるが……。


 神にでもなったように――。


 色々と情報が載っているスクリーンを飛ばしたり戻したりして、種族の情報を選択しては、一つ一つの情報を読んで調べていく。


 人族、アンムル、エルフ、ハーフエルフ、ラハカーン、ダークエルフ、ハーフダークエルフ、セバリー、セブプーン、オーガ、ゴブリン、人魚、ノーム、ドワーフ、エンシェントドワーフ、ハーフドワーフ、竜人、リザードマン、猿人、デミヒューマン、ジャイアントブル、サイクロプス、センシバル、吸血鬼ヴァンパイア吸血鬼ヴァンパイアハーフ、クシャナーン、ソサリー、ラミア、ハイエルフ、等々。


 と、沢山の種類があるので選ぶだけでも時間が掛かる。


 左右の手で種族のキャラクターを触るように動かす。

 目まぐるしく、手を動かしていった。

 種族の見た目がゴキブリの姿もある。


 驚きだ。


 テラなんたらの漫画を思い出す。


「この中から自分が成れる種族を選べるわけか。自由度満載、悩むな……」


 試しに人族を選択してみよう。

 指の腹を押し当て、タッチ。詳細という文字が出た。その詳細を再び指の腹で押す――。


 すると、


 ※注意事項※必ずお読みください※

 ※注意※

 ※種族特性は恒久スキルとして新たに組み込まれます。貴方の選んだ種族の種族特性は、必ず恒久スキルとして獲得しますが、種族特性のない同族も多数存在しています※


 皆が皆、種族特性を持っていない?

 ってことかな。


 その後に、人族の詳細が表示されていく。



 種族:人族

 平均寿命:48~

 種族特性:<成長の証>

 恒久スキル:なし


 ※他の種族からは人族や人間など呼称は様々だ※

 ※主に人族と呼ばれる種族は、この世界で最も人口が多い種族の一つ※

 ※人族の活動範囲はかなり広いエリアに分布している※

 ※遠い土地でも人族は存在しているだろう※

 ※しかし、人族が生息していない人類未踏の地も存在する※

 ※大概の人族社会は王や皇帝に女帝を頂点とした奴隷制を用いた貴族社会が中心となって構成された国が多い※


 ※そして、違う国家同士の戦争もあれば、内部で王侯貴族たちの権力争いが暴走し、その結果内戦へと発展。それにより国が滅亡といった話は常に起きているのが現状だ。そんな人族たちの都市には、数多くのギルドが存在し、互いに切磋琢磨しながら発展を遂げているだろう※


 ※人族最大の強みとも言えるのは職業選択の自由だ※


 ※人族を含めた人型生物は〝職の神レフォト〟の寵愛を受けているとも言われている。それによって無限とも言える戦闘職業が存在するのだ※


 ※自分の努力次第で戦闘職業のランクアップが可能※

 ※その変化は無限大※



 説明通りだと社会形態は中世か近代に近いか。

 職の神レフォト。

 人族に近い形の生物を寵愛する神様か。


 選ぶとして……。

 折角の異世界転生だ。


 ――同じ人間はつまらないな。

 次はゴブリンの詳細。


 ゴブリンを選択。

 俺のキャラクターモデルが変形。

 ぐにゃっと音が聞こえてくるように変わる。


 顔は少し俺に似ている。

 が、まんま醜い顔を持つモンスターのゴブリンに変貌してしまった。


「うはぁ……醜い、リアルすぎる」


 種族:ゴブリン

 平均寿命:15??

 種族特性:<狭窄>:<精加獣>:<知能減退>:<トドグ・ゴグの加護>

 恒久スキル:<鬼の系譜>:<ゴブリンの進化>


 ※人族並みに人口が多い※

 ※大陸の各地に散らばり様々な場所に生息※

 ※微妙に姿、形、習慣が違うゴブリンも存在する※

 ※多種多様なゴブリン族は基本的に纏まりがない※

 ※地域によってゴブリンたちの王であるゴブリンロード、ゴブリンキング、ゴブリンカイザーたちの群雄割拠な軍閥が発展している戦国乱世のような地域もあるだろう※

 ※ある地域ではホブゴブリンやハイゴブリンが人族や亜人などを完全に駆逐し、“ゴブリンたちによるゴブリンたちの政治”が執り行われている特殊な地域も存在する※

 ※そんなゴブリン族の大半が“欲望の王魔トドグ・ゴグ”を信奉しており、繁殖の周期も短く、どこの場所でも繁殖しやすいのが最大の強みとも言えるだろう※

 ※だが、人族による討伐対象なので人口はそこまで爆発的には増えていない※


 ゴブリンの王か。強烈そうだなぁ。

 ゴブリンたちの政治ってどんなのか非常に興味はあるが……。


 やはり、見た目で却下だな。


 次は吸血鬼のヴァンパイアを選択。


 すると――。

 俺のキャラクターグラフィックがゴブリンから人間の姿に変化していく。

 見た目は人間の姿だが、口の犬歯は尖って伸びていた。

 皮膚は青白く、目が真っ赤に変化を遂げている。


「青白い顔に目が真っ赤」


 お? 脂肪腹が完全になくなっている。

 全身の筋肉も増強されたのか?


 詳細を見てみよう。


 種族:ヴァンパイア

 平均寿命:??

 種族特性:<怪夜魔族>:<吸血>:<不死能力>:<変身能力>:<身体能力増加>:<魔法能力増加>:<血魔力>:<腸超吸収>:<太陽炎身>:<光滅身>


 恒久スキル:<真祖の血脈>:<魅了の魔眼>


 ※吸血鬼、ヴァンパイアは吸血神ルグナドが産み出したとされているが、定かではない※

 ※人族社会においては、人族や亜人に〝魔族〟と揶揄されて常に人族や亜人からの討伐対象となる。なので種族人口は少ない※

 ※完全な不死ではないが、弱点を突かない限り永遠なる存在である※

 ※<血魔力>を使いこなせれば姿を変える<変身能力>を覚えることも可能だ※


 ※最大の特徴は、<身体能力増加>と<魔法能力増加>だろう※

 ※普通の人族よりも圧倒的な魔法能力と強靭な身体能力が備わっている※


 ※しかし、血を摂取しなければ、血漿欠乏症となりミイラ化してしまう※

 ※完全にミイラ化すると、極端に能力が落ちてしまい、老人や老婆の姿へと変わり果てる※

 ※しかし、ミイラ化により消滅することはない※


 ※人族社会の裏でこっそりとヴァンパイアの社会が形成されているだろう※


 ※『何分、人族の血が嗜好品なのでね……我らを滅しようとする者に、闇の魔族としての鋭い牙と血の洗礼を浴びせてあげよう』※


 台詞付きかよ。説明が怖いな。

 だが、魔族か。いいな、ダークな感じがいい。


 <変身能力>って、本当に変身できるのか?

 ためしにタッチ。


 ※変身能力※

 ※ <血魔力>を使い、コウモリや鴉など様々な闇の生物に変身可能※

 ※成長と共に変身可能生物は増える※


 やはり立体表示された。

 <怪夜魔族>にもタッチ。


 ※怪夜魔族※

 ※闇の魔法が使える。闇属性の攻撃を吸収する※


 おぉ~キタキタ。

 闇の魔法に闇属性の攻撃を吸収か、いいねぇ。


 次は<吸血>を調べてみる。


 ※吸血※

 ※血を吸った相手に弱催眠効果、血を吸うごとに自身の身体能力、魔法能力微アップ。ただし、三日<吸血>なしだと能力微少ダウン、七日過ぎても<吸血>なしだと徐々にミイラ化する※


 えっと……。

 能力アップはするけど、<吸血>って弱点みたいなもんじゃ?


 次は<腸超吸収>をタッチ。


 ※腸超吸収※

 ※ありとあらゆる栄養素を取り込み、毒素を中和する腸。魔素吸収率も大幅に上がる。ヴァンパイア独自の腸内細菌を持ち、あらゆる環境に適応を促す※


 へぇ、すげぇ腸を持つんだな。

 弱点らしいのもタッチ。


 ※太陽炎身※

 ※太陽光、紫外線に当たると自然発火する。浴びすぎると体は灰と化す。<不死能力>関係なし※


 ※光滅身※

 ※光属性攻撃を受けると、攻撃を受けた部分は焼かれ、強力な光だと体ごと消滅してしまう。<不死能力>関係なし※


 やはりこの辺は特性ってより完全な弱点だな……。


 次は恒久スキルにタッチして調べてみる。


 ※恒久スキル※

 ※これは常時発動中のスキルのことである※

 ※未来永劫恒久的に発動し続ける※


 なるほど、ゲームとかによくあるパッシブスキルってことか。


 見てみよっと。<真祖の血脈>をタッチ。


 ※真祖の血脈※

 ※魔力、精神力+補正※

 ※処女の血を獲得すると、吸血神ルグナドを産み出したとされる真の吸血鬼血脈である真祖の力を解放※

 ※解放後にスキルの統合を促して、二段階、魔力と精神力が上がる進化を促す。専用スキルを取得※


 ※真祖の血脈※

 →???


 処女の血を飲むことにより吸血鬼ヴァンパイア、怪夜魔族の真祖の力が解放される。


 処女の血かぁ、狙って飲むのは大変そうだ。


 次も調べよっと。


 ※魅了の魔眼※

 ※一定の条件下で精神力が低い者を魅了する※

 ※絶対ではない。条件が重なると成功率が上がる※

 ※知力、魔力、精神力が関係※


 こうして見ると、吸血鬼ヴァンパイアは弱点も多いが能力も高い。


「この種族は面白そうだ。候補の一つだな……」


 次はヴァンパイアハーフを選択してみよう。


 立体の映像で浮かぶ俺のキャラクターは若干変化していく。

 牙もなくなり青白い顔でもなくなった。


 見た目は人間にそっくりだ。

 贅肉が消えて細マッチョ。

 全盛期の学生時代を思い出す。

 筋肉はヴァンパイアと同じように付いてるようだが……。


 ……詳細を調べる。


 種族:ヴァンパイアハーフ

 平均寿命:??

 種族特性:<怪夜魔族>:<吸血>:<不死能力>:<身体能力増加>:<魔法能力増加>:<腸超吸収>:<光滅身>


 恒久スキル:<真祖の血脈>:<魅了の魔眼>


 ※ヴァンパイアより更に希少性が高い※

 ※ヴァンパイアと人族の間にできた両方の性質を受け継いだ生物※

 ※ダンピールやヴァンパイアハーフと云われる※

 ※血の制約もヴァンパイアと変わらない※

 ※不死だが、半人族なので人族社会に溶け込みやすい種族である※

 ※吸血鬼、ヴァンパイアと同じように人族による討伐や迫害対象だが、昼間も歩け、見た目が人族なので滅多に正体が露見することはない※


「おぉ……」


 ハーフはコウモリや鴉に変身は無理か。

 しかし、弱点は少ない。


 ヴァンパイアハーフがいいな……。

 昔からヴァンパイア系の映画が好きだった。


 だが、血は問題だ。

 普通の人間を無理やり襲うとか、ありえない。

 血を奪うとかやりたくない。

 良心が痛みそうだ。


 それとも成ってしまえば〝心〟が変わるかな?

 生きていくために精神が変わるか。


 そんな甘い希望的観測を持ちながら、他の種族も色々調べていく。


 うーん……。

 人の営みに接していたいし、特殊でもありたい。


 やはり、これしかない。


 人間を辞めることになるが……。

 新たに始める自由な人生だ。別に構わない。


 血を啜って生きてやるさ。

 ――サイコパス万歳。


 寿命のないヴァンパイアハーフを選ぶ。

 決定ボタンをタッチした。


 タッチすると――。

 俺のリアルな立体モデルは、その場で回転して動きお辞儀をする。


 その下には『種族はヴァンパイアハーフに決定しました』と表示された。


 また、上方から滝のように文字が流れ出す。

 立体的に生きた姿で出現していた他種族のキャラクターたちが次々と消えていく。


 滝のように文字が流れ消えていく中……。


 次の言葉が浮いていた。


 ※次にエクストラスキルを四つ選択してください※


 ※注意事項※必ずお読みください※


 ※エクストラスキルとは生まれながらにして持つ特殊スキル※

 ※希少性が極めて高い固有スキルです※


 ※更にエクストラスキルには相性があります※


 ※スキルや他のエクストラスキルと連鎖、多重リンクを起こし、様々に派生していく特殊スキルを覚えることがあるでしょう※

 ※成長と共に進化を遂げるだけでなく、エクストラスキルを取得するだけでも貴方に変化を及ぼし、更なる飛躍を齎す可能性があるのです※


 ※エクストラスキルは一つ保有しているだけでも非常に稀有な存在と成りますので、考えて行動するようにしてください※


 ※但し、貴重なエクストラスキルも、それはあくまで〝人の範疇〟での話です※

 ※千差万別、多種多様な世界※

 ※転生予定の世界は何があるのかまったく分かりませんので、覚えておいてください※


 ※時間制限あり※

 ※エクストラスキルは一五分以内に選択してください※


「……時間制限ありかよ」


 また滝の如く文字が表示されてゆく。

 右隅にデジタル時計が表示された。


 ありとあらゆるスキル名が表示されていく。


「とにかく、エクストラスキルってのは、かなりのレアなんだな。それを最初から四つも選べるってことか……」


 まぁ、転生後の人生のためだ。

 得するなら選んでおこう。


 空間に立体的に出現した大量のスキル表示から、使えそうなスキルを多数ピックアップ。


 翻訳即是、メリディアの洗礼、光の授印、セプトーンの波、アシュラー運命の系符、ヴァイスの戦声、脳魔脊髄革命、シャファの慧眼、精霊の加護、アリアの涙、力の奔流、火の授印、ガイアの夜明け、魔闘術の心眼、導魔術の心眼、仙魔術の心眼、ロード・オブ・ウィンドの手、アロトシュの巫女、魔法革命、鎖の因子、ノクターの篝火、ラプンツィルの翼、魔力楔の解、千里眼、レブラの星、ローレライの刻印、ボシアドの魔眼、狂王のペルソナ、超術の開祖、ミセアの毒針、ウラニリの流星雨、等々。


 二分経過。

 殆ど内容は見ていない。

 選べる数はもっと無数にある。


 だが、時間制限がある。


 一つ一つのスキル詳細を見るのは時間が掛かるから焦る。


「この中から選択するか……」


 まずは<翻訳即是>かな……詳細。


 ※翻訳即是※

 ※思考能力がアップ。言語や文字の理が感覚で理解できるようになる。絶対ではないが、翻訳できるものはある程度理解でき、書けて、声帯が合えば話せるだろう※


 ということらしい。


「翻訳スキルか。やっぱり……人間以外とも話をしてみたいし」


 一つ目は<翻訳即是>に決定っ。

 すると、表示されていたエクストラスキルの数が一気に減った。

 一つ選ぶたびに候補が消えていくのか?


 残った奴から選択しろってことか。

 それじゃ、次は……これかな。詳細っと。


 ※光の授印※

 ※魂に光の授印を刻むことで体の一部分に十字のシンボルマークがつく※

 ※光属性の攻撃の吸収&無効化を行う。精神耐性も向上。深層精神汚染を防ぎ、自動発動後は鐘の音を鳴らし浄化を促す。自分自身が成長してから、ある一定の条件下で固有光属性スキルを覚える※


 おっ?

 こりゃ、ひょっとするとひょっとしちゃう?


 ヴァンパイア系の弱点の一つである光属性の弱点が無くなるかなっと、簡単な思い付きで選択。


「<光の授印>に決定っと」


 決定した瞬間――。

 目の前で浮くオレそっくりなキャラクターが光を帯びる。


 そして、左胸に十字マークが出現。


 ――それは白色の綺麗な十字架マーク。


 丁度、心臓の上辺りだ。

 ステータスを見る。


 おぉ、すげ。

 種族名も変わっているじゃないですか。


 詳細っと。


 種族:光魔セイヴァルト

 平均寿命:??

 種族特性:<光闇の奔流>:<吸血>:<不死能力>:<身体能力増加>:<魔法能力増加>:<腸超吸収>

 恒久スキル: <真祖の血脈>:<魅了の魔眼>


 エクストラスキル:<翻訳即是>:<光の授印>


 ※見た目は完全に人族です※

 ※しかし、魔族ヴァンパイアの流れを汲む新種族です※

 ※光魔セイヴァルトは希少固有種族と成ります。同族はいません。体内魔素が許容量を超え次第、一段階だけ種族進化を促すでしょう※


 ※光魔セイヴァルトで過ごす期間をどう過ごすかで、種族進化を果たした時の成長度合いが変わります※


 光魔が付いて、新たな種族になってるし。

 しかも、種族進化?


 種族特性の<光滅身>が消えた。

 予想通りに弱点が消えちゃったよ。

 更には<光の授印>で、いずれは固有の光属性スキルが使えるようになると……。


 新種族だからなのか<怪夜魔族>ってのもなくなったな……。

 代わりに<光闇の奔流>が新しく追加された。


 早速、<光闇の奔流>をタッチ。


 ※光闇の奔流※

 ※光と闇の属性を魂に持ち、その魂の激流を表した物。光と闇の魔法が使用可能となる。光属性と闇属性の攻撃を吸収&無効化、精神耐性微上昇、状態異常耐性微上昇。しかし、光と闇の精神性に影響されやすくなる※


 おぉ、光と闇の魔法。それに光と闇を吸収ぅぅ~?

 影響されやすいという弱点は気になるが、ま、いいか。


「エクストラスキルは凄いな……」


 これも変わっているかなっと、<吸血>をタッチ。


 ※吸血※

 ※血を吸った相手に強催眠効果、血を吸うごとに微能力アップ※

 ※五日<吸血>なしだと能力微少ダウン※

 ※十五日<吸血>なしだと徐々にミイラ化する※


 やはり<吸血>も進化していた。

 <吸血>なしの期間が三日から五日に延びて弱点も緩和されている。密かに無くなってることを期待したが、そう簡単にはいかないようだ。


 だが、光の弱点が無くなったのは大きい。


 まさにエクストラスキル。


 二つ目は文句なしでこれだな。


 後二つだ。七分が過ぎる。


 時間制限があるからあまり考えていられない。

 表示されているエクストラスキルの数は少なくなってきた。


 その中から選ぶ。

 <鎖の因子>が気になった。


 ※鎖の因子※

 ※自分の好きな場所に鎖状のマークを刻み、そのマークの場所から任意に<鎖>の射出が可能となる※

 ※<鎖>を使い続けると本人の成長と共に成長※

 ※<鎖>は〝鋼〟に似た性質だが中身は〝魂〟と〝鎖の因子〟の作用でできている※

 ※この<鎖>で大概の物質は貫けるだろう※

 ※又、成長と他のスキルの影響で、様々な形質変化を起こす※


 ※取得すると戦闘職業の<鎖使い>も自動取得する※


「大概の物質は貫けるか。これもいい」


 三つ目のエクストラスキルは、これだ。

 この<鎖の因子>に、さくっと決定。

 因みに、鎖状のマークは左腕の手首に付けておく。


 おっ?


 左手首に鎖状のマークが追加された。


 左胸の十字架マークにも変化が起きた。

 無数の鎖が十字架に絡みついている。


 蛇が樹木を上っているようにも見えた。


「細かい……」


 十分が経過、残りは五分だけ。

 次に気になったのは、<仙魔術の心眼>。


 これは魔力を使って自然に同調し、干渉といった遠隔操作に長ける術らしい。


 詳細をタッチしたら、そんな風に書かれてあった。


 気になるが、却下。

 最後に残っている……他のエクストラスキルは……。


「これは……」


 この、<脳魔脊髄革命>かな。詳細っと。


 ※脳魔脊髄革命※

 ※第一、第二だけではない臨界期を無限に引き起こす。思考力と判断力を大幅に引き上げ、自律神経系、交感神経、副交感神経などの運動生理機能を良い方向へ異常発達させる※

 ※その恩恵により運動系スキル全般に多重補正が掛かり、体へと吸収される魔素の転換率を飛躍的に上昇させる※

 ※恒久スキルに<天賦の魔才>が自動追加されるだろう※


 <脳魔脊髄革命>をタッチすると、


 ※脳魔脊髄革命※

 →???


 ???とは、今後何か覚えますよ的なことなのかね?

 ???をタッチしても、なんにも反応せず。


 <身体能力増加>と相性はよさそうだ。


 臨界期は、なんだ?

 副交感神経は分かる。リラックス時に作用して、交感神経が興奮した時に作用しているんだよな。

 自律神経系は睡眠や生活のリズムに直結したり、ストレスに関係してるとかだったはず。


 このスキルがあれば多少のストレスは解消されるかも?

 異世界に行くんだ。

 精神的なタフさが求められるのは必定だろう。


 最後はこれに決定だ。

 制限時間は残り三分を切っていた。


 決定ボタンをタッチする。


 すると、俺のキャラクターモデルが拡大される。

『ステータスを確認します』と表示されていた。


 ステータス


 名前:シュウヤ・カガリ

 年齢:20

 称号:異界の漂流者

 種族:光魔セイヴァルト

 戦闘職業:鎖使い

 筋力3.0敏捷4.0体力3.0魔力7.0器用5.0精神7.0運3.0

 状態:健康


 スキルステータス


 取得スキル:なし


 恒久スキル:<真祖の血脈>:<魅了の魔眼>:<天賦の魔才>:<光闇の奔流>:<吸血>:<不死能力>:<身体能力増加>:<魔法能力増加>:<腸超吸収>



 エクストラスキル:<翻訳即是>:<光の授印>:<鎖の因子>:<脳魔脊髄革命>


『ステータス確認を終了します』


 <天賦の魔才>が自動追加されたのでチェック。


 ※天賦の魔才※

 ※戦闘職業+補正。能力全般の成長補正。魔素吸収率も含む※


 細かい。

 成長補正か。戦闘職業+補正とはなんだろ?

 よく分からん、タッチ。


 ※戦闘職業+補正※


 ※近接と魔法※


 ※二つの戦闘職業系に限り、成長速度が上がる補正※


 でたでた。タッチしても説明がされないのもあるけど、これは出た。

 戦闘職業は全部ではなくて、二つだけか。


 二つのみだが、それでも成長が早い。

 覚えとこう。


 最後に『キャラクターモデルを変更できます』と出た。


 今度は時間制限は無いらしい。

 早速遊んでみる。


 お? うはぁ、うおっ、こんなことまで……。

 あそこのサイズまで弄れちゃうよ。


 ちょいと弄って……。

 巨根、こ、これは無理があるな……。

 元の大きさに戻しとこ。


「ごっほん」


 誰も見てないのに、なんだ、この妙な気分は……。

 彼処の幅や反った部分は弄るなってか?

 いいじゃないか。


 見栄をはっても!

 誰に強がってんだか……。


 手を動かして身長を増やし横幅も減らしてみたが、結局は最初と同じ元の身長に戻し、最後に少しだけ身長を高くした。


 因みに元の身長は百七十九センチ。

 だから、念願の百八十センチ超えだ。


 これで終了っと。


「これで、行こう」


 筋力や魔力の数値が低いのか高いのか分からないが、ゲームに近い世界なのか?


 それに……歳が二十になってる。

 十四歳も若返るみたいだ。


 すべてを決めると――。

 また『転生を開始しますか?』と文字が立体表示された。


 その下には『はい』、『いいえ』の文字が浮かんでいる。


『『はい』 or 『いいえ』』


 『はい』を黙ってタッチした。


 また文字が出現。


 『転生後ポケットを確認ください』


 その文字が出た瞬間、

 空間に亀裂が入る。

 亀裂の先には螺旋宇宙のような巨大な闇の渦が見えた。


「またかよっ、ポケッ――」


 闇の渦の中に――吸い込まれ、言葉は途中で空気が無くなるように消えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る