千四百四十話 <空数珠玉羅仙格闘術>の試し
腰ベルトの金具に紐でぶら下がっている魔軍夜行ノ槍業が揺れた。
『驚き~』
『『『あぁ』』』
『カカカッ、弟子の器はただの槍使いではない』
『あぁ、夜行光鬼槍卿で魔界九槍卿が、弟子だからな』
『ふむ……魂が震える……良い弟子だ』
『が、皆よ、弟子が覚えたのは<空数珠玉羅仙格闘術>、羅仙人の神界セウロス系統だ』
『ふむ、それより、妾の体を取り戻してほしい、そして、<魔軍夜行ノ憑依>で妾をつこうてほしいぞ、<女帝衝城>以外の女帝槍を扱ってこその槍使いの弟子なのだからな』
今度は女帝槍のレプイレス師匠に頼むか。体は取り戻してあげたいな。
そして、後で飛怪槍のグラド師匠の体を納めないと。
「「「「おぉ~」」」」
「うんびっくり~数珠が拳の武器に変化!」
「にゃご~」
「ご主人様は格闘系も様々に獲得していますが、まさか、その闘霊本尊界レグィレスのネックレスで格闘術のスキルを得られようとは、予想だにしない、本当に驚きです」
「「はい!」」
「「「「……」」」」
〝巧手四櫂〟のイズチ、インミミ、ズィル、ゾウバチは口を拡げたままだ。
光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは、
「――閣下が!」
「――大進化!」
「「おぉぉ――」」
と叫びながら骨盾の愛盾・光魔黒魂塊と愛盾・光魔赤魂塊をぶつけ合い、
「「――まさに!」」
「「うむ!! 驚天動地、極まれり!!」」
光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスの体から噴出した魔力を星屑のマントが吸収していく。
その星屑のマントとゼメタスとアドモスの足下から月虹の目映い輝きが迸っていく。
「ボォォォォォン、ボボボッ、ボボッ!」
巨大な神獣ロロディーヌの横に付いている骨鰐魔神ベマドーラーが、大きな鳴き声でゼメタスとアドモスの大噴火的な魔力の動きに反応していた。
「「「「おぉぉ」」」」
魔犀花流のイズチたちがゼメタスとアドモスに驚いて声を発している。
「ゼメタスとアドモス様の魔力の動きが凄い……」
「あぁ、魔界騎士、総帥様の大眷属様が光魔沸夜叉将軍なのだとよく分かる!」
「「「「きゃぁー」」」」
「「「「「うぁぁ」」」」」
「退け~見えねぇぞぉぉ」
「きゃ、押さないでよ――」
「あぁぁ~」
「先頭組は退け~総帥様たちの動きを見させろ~」
「総帥の凜々しい姿を見たい~」
背中にいた魔犀花流の兵士たちは
経験豊富な兵士たちだが、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスのような存在を間近でじっくりと見られるような経験は少ないようだな。
「閣下は<天賦の魔才>があることも大きいのでしょうか!」
「なるほど、<脳魔脊髄革命>のエクストラスキルに似合うアイテムが闘霊本尊界レグィレスのネックレスだったと」
「「はい!」」
「しかし、まさか皆を封印し運べる闘霊本尊界レグィレスのネックレスが、拳の武器と籠手の防具と成って、新しい格闘術をご主人様に齎すことになろうとは、想像もできなかったですよ」
「ですね、拳と籠手から魔線で繋がっている数珠玉は鋼のような硬さがある? もしそうなら、フレイルのように鉄球を放るように扱えるのでしょうか」
ヴィーネとキサラの言葉に頷いて、
「浮いている漆黒の魔力と<血魔力>を纏っている数珠玉の一部は操作が可能だ――防御と攻撃に両方使えるだろう」
と、周囲に浮いている大きい数珠玉だけを思念で操作した。
実際に数珠玉を触ると、鋼鉄のような硬さがあった。
これならば、この数珠玉を鉄球のように扱えるか。
「素晴らしい、遠距離用の武器でもあるのですね」
「……はい、この進化は予想ができませんでした」
ヴィーネとキサラの言葉に頷いた。皆も驚くのは無理はない。
そして、<空数珠玉羅仙格闘術>は今まで色々な<格闘術>の組み手を学んできたことも大きいようだ。風槍流の『槍組手』は勿論のこと、玄智の森のホウシン師匠たちとの修業と修業蝟集道場の修業で『玄智・明鬯組手』を学べて、〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟を見てはスキルを得られた。それらの知見がなければ、この<空数珠玉羅仙格闘術>の恒久スキル獲得は無理だったと分かる。
「主の性質に似合うか……ならば槍の形状にも変化がまだ起きるのか?」
とアドゥムブラリが予想している。たしかに槍使いが俺だが……。
キスマリが、
「ふむ、主は様々な武器の適正が高いからこそではないか? 主はレグィレスを意識して使うと言っていたのだ、今の姿はレグィレスの一面でもあるということだろう。勿論、主の戦いに於ける様々な戦闘センスが高水準だからこその、レグィレスの一面だと思うが」
と、武人然と語る。キスマリさんと呼びたくなるが、当然か。魔界セブドラの様々な戦場で長く生き抜いた存在がキスマリだからな。<従者長>に迎え入れられて本当に良かった。アドゥムブラリは、
「なるほど、的を射た言葉だ。両拳の武器と籠手と大きい数珠がレグィレスだということか」
皆が頷いた。
「たしかに、イグィレスを意識したらこうなったからな、大きい数珠のレグィレスはこういう武器であり防具でもあるということか」
「なるほどです。ご主人様単体ならば、槍となるのが必然ですから、そして、格闘術スキルも様々に学んでいたからこそでもあると!」
「「なるほど~」」
「ふふ、皆さんの言葉と説明で使者様のことがより分かりました~、面白い~」
「うむ」
皆もそれぞれに考えながら頷いていく。
「ングゥゥィィ」
と
光と闇の魔力が渦巻くような陰陽の印と槍と酒の印が胸にあるシンプルな柔道着。
「ふふ、そのイグィレスの拳と籠手に数珠玉と<魔戦酒胴衣>は似合います、素敵ですよ、ご主人様」
「ありがとう、ヴィーネ――」
と、ヴィーネの腰に手を回して抱きしめる。
「あっ、ご主人様――」
ヴィーネも俺に抱きついてくる、<魔戦酒胴衣>の武道着越しにヴィーネの柔らかい体の感触を得た、ヴィーネも俺の背に手を回し、「ふふ」と嬉しそうに笑みを見せてから俺の鎖骨にキスをしてくれたから、オデコにチュッ唇を付けてキスをした。
そのヴィーネの肩甲骨を労ってあげてから離した。
ヴィーネは少しぼうっとした表情を浮かべているが、そのヴィーネたちを見ながら、「少し試すとしよう」と皆に押忍の空手の挨拶を行うように、両手を胸元でクロスをして挨拶を行った――。
「「ふふ」」
<空数珠玉羅仙格闘術>を意識し、恒久スキルだが発動させる。
右拳から魔線で繋がっている大きい数珠玉を数個前方に飛ばすイメージで正拳突きを行った。
前方に突き出す右腕の周囲からシュッと空気を裂くような音が響くと、右拳と繋がっている魔線がしなり伸びて、その魔線と繋がっているハンマーフレイルのような数珠玉が勢いよく前方に飛ぶ。右拳から水神アクレシス様を奉る大豊御酒と似た液体を周囲に散った。
数珠玉から<血魔力>と漆黒の魔力が混じる水飛沫が走っている。
その数珠玉は
「ボォォォォォン、ボボボッ――」
「骨鰐魔神ベマドーラー追い掛けなくていいぞ!」
「――ボボッ!」
骨鰐魔神ベマドーラーの返事が可愛い。
さて、次は左拳で<蓬茨・一式>を繰り出す――。
突き出た左拳と左腕から紫電の魔力が周囲に吹き荒れた。
紫電は茨の形となって宙空に残像を生んでいた。
数珠玉にも紫電のような魔力が激しく絡み付き放電が起きている。
右腕を引き戻すと大きい数珠玉は一瞬で右腕の近くに戻ってきた。
「左腕の正拳突きは、紫の稲妻のような茨が走る突きスキルか」
「それは<蓬茨・一式>ですね!」
「そうだ」
※蓬茨・一式※
※蓬茨魔拳流技術系統:基礎突き※
※獲得条件に高能力、天賦の魔才、魔技系の心得数種、魔雄ノ飛動が必須※
※己心の弥陀と似た心根と組手系スキルのセンスが求められる※
※体幹を巡る血に、毒にもなりうる高濃度の魔力を浸透させて、その魔力を拳に流す正拳突き※
※蓬茨魔拳流以外にも、蓬莱魔蹴流、崑崙双神流という武門は無数に存在する※
「拳の攻撃に合わせ大きい数珠玉と液体が前方に飛びましたが、やはり鉄球のように扱えるようですね」
「おう、魔線も伸びるから射程距離の長い遠距離用の武器としても扱える」
「エヴァが扱うサージロンの球にも似ているか」
「あぁ、そうだな、<導魔術>の技術も活かされているし、防御にも使える」
とアドゥムブラリの前に大きい数珠玉を動かした。
アドゥムブラリは大きい数珠玉に触れて、「硬い、<蓬茨・一式>の効果は切れているか」と発言。
「あぁ」
「ご主人様、<空数珠玉羅仙格闘術>とは
「おう、そうなる」
「羅仙人の格闘術の一種が<空数珠玉羅仙格闘術>なのですね」
キサラの言葉に頷いた。
そのキサラは、
「
たしかに、
「あぁ」
「<空数珠玉羅仙格闘術>とは羅仙人の系統でもあると……そして、神界セウロスから分離した異世界が玄智の森と聞いているが、神界セウロスと変わらないようだからな」
キスマリの言葉に頷いた。
「羅仙人か、神界セウロスのことはあまり分からないが、<空数珠玉羅仙格闘術>は、仙人や仙女が扱うような格闘術系統でもあるってことか」
と聞いてきたから頷いた。
すると、闇雷精霊グィヴァが、
「はい、御使い様は玄智の森を救った。大偉業を成し遂げている」
『閣下の偉業をその場で体感したかった』
常闇の水精霊ヘルメの気持ちを直に感じて、
『すまんな』
『閣下、此方こそ済みません、あれはナミの<夢送り>があっての神事で<水の神使>の閣下だからこそ、水神アクレシス様の神勅でもあったんですから閣下が謝る必要はないですよ、そして、その気持ちは嬉しいです』
『おう』
『ふふ』
すると、キスマリは、
「……玄智の森の話はよく覚えているぞ、冥々ノ享禄、玄樹の珠智鐘、白炎鏡の欠片の三つのアイテムを集めて、玄智の森を鬼魔人傷場から救い、神界セウロスの本来の場所に玄智の森を戻したとな、そのような水神アクレシス様の神勅をこなした主は凄すぎる!」
「はい! <水神の呼び声>と<水の神使>を持つ御使い様ですからね」
「使者様は、神界セウロス側でもある?」
イモリザの言葉に皆が注視した。
俺は、
「厳密には、そうかも知れない。だが、俺たちは光魔ルシヴァル、<光闇の奔流>が本筋だ」
「「はい!」」
ヴィーネとキサラとハイタッチ。
ついでにおっぱいは揉まない。
「そうだな、まさに俺たちは、光であり闇でもある側だ。主が昔、語っていたが、中庸だったか、あの考えがしっくりくる」
アドゥムブラリの言葉に頷き、
「あぁ、怒りに覚えて闇に染まる面もあるから、常に調和を保つことは難しいが、だからこそ中庸を目指すべきか。そして、金や欲に目が眩んで人々を死に追いやる政策を行う連中を手伝うようなことだけはしないようにしないとな」
「……そうだな」
「「はい」」
「使者様には、常に正義の神様が付いていると思います!」
「ふふ、そうですね、とても優しい正義の神様です」
「はは、そうだといいが」
少し静まる。
とアドゥムブラリが、
「玄智の森のホウシン師匠たちとの修業と経験などの効果が、闘霊本尊界レグィレスのネックレスに出ているってことか」
「そうだな、拳の武器と籠手に<空数珠玉羅仙格闘術>の獲得に〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟が関連しているとは当時は予想していなかったが……」
〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟に出現していた中に、<空数珠玉羅仙格闘術>を行っていた存在がいたかも知れない。
「あ! はい、玄智の森の武王院の奥、修業蝟集道場の廊下の横壁と天井に存在した偉大な芸術作品だったと聞いています」
ヴィーネは俺の話をよく覚えている。
記憶を共有するアイテムが必要ないぐらい色々と伝えていることもあるが、その際、エンビアの名が話に登場するたびに、俺の気持ちを察して少し怒っていた、が、それも可愛い思い出の嫉妬だ。その時を今のヴィーネを見ながら思い出しつつ、
「……その通り、
ヴィーネは頷いた。キサラが前に出て納得するように、
「……ふむふむ、皆が言うように<空数珠玉羅仙格闘術>の獲得には、シュウヤ様の玄智の森の武王院の経験が活きていると……」
と語りつつ数珠玉と拳の武器を見ていく。
すると、アドゥムブラリは、
「闘霊本尊界レグィレスのネックレスの〝才能次第で能力は変化する〟だな、すべてに通じている」
「はい、先ほどの液体も酒器も、玄智聖水に、水の法異結界と、水神アクレシス様を奉る大豊御酒、それらの神界のお酒と液体を取り込んでいるからこそ、今の<空数珠玉羅仙格闘術>を獲得なされた」
皆が頷いた。
修業蝟集道場で〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟の修業は重要だった。
〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟は、
朧気な炎を喰らい樹を吐き出す巨大氷竜。
水飛沫を浴びている大きな龍と大きな白蛇。
水浴びを受けて喜んでいるタツノオトシゴのような小さい蛇竜。
幅広い浅い川で大きな鮭を捕まえ、その大きな鮭を喰う巨大な白熊。白夜を意味するような飾りが目立つ氷の冠が載っていた。
その巨大な白熊が食い散らかした鮭のおこぼれを狙う燕と鷲と似た鳥たち。
海のような岸辺を駆ける大和鞍を身に着けた大きな馬。
神楽笛を吹き琴を弾き太鼓を叩く仙剣者や仙槍者。
滝を浴びている仙剣者や仙槍者。
剣舞や槍舞で踊る仙剣者や仙槍者。
などの造形が施されていた。
その〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟に向けて称号やスキルを意識すると、その〝神仙鼬籬壁羅仙瞑道譜〟の造形が暈けては神界セウロスの歴史の一場面が見えたんだったな。
最初は仙剣者や仙槍者たち同士が戦う幻影は、墨汁の山水画的な幻影だった。
が、その墨汁世界から線の描写が太くなると漫画やアニメのような描写から一気に生命が絵に吹き込まれたように現実の世界へと移り変わったことは、今でも鮮明に覚えている。仙剣者や仙槍者の仙武人が戦っていた場面だった。
琴の楽器から羅のように弦を飛ばしている女性と男性もいたが、南華仙院の大仙人の姿に似ているな。そこには、貂と似た仙女がいたんだ。尻尾を無数に持つ仙王鼬族は美しい姿が剣に斬られた姿は悲惨だった。
その時<神剣・三叉法具サラテン>の貂との会話を思い出したんだ。
『納得はできる。その仙女とか仙人のことを聞こう』
『誉れある神界に棲まう者たちです』
『貂の故郷、
『はい。白炎王山と
と昔語っていた
ソウカン師兄の『武は心であり、心もまた一つの武である。仙と神も武と心の仙境なり』の言葉を思い出す。
と昔を思い出していると、
「わたしの<光魔ノ数珠>とはまた違うようです」
キサラは両手首の黒数珠を出現させる。
<血魔力>を帯びて少し光り輝いていた。
「キサラのその数珠は光魔ノ数珠に進化をしていたのか」
「はい、<光魔ノ数珠>を装備した発動した状態ですと、身体能力が上昇し、<魔謳>と<百鬼道>の魔導書と関連した<伽藍鳥>と<砂血蝉>の威力と精度が上昇します」
「なるほど」
『主……』
あぁ<シュレゴス・ロードの魔印>の
『今の状態で<闘霊本尊界術>を試す』
『うむ』
『あ、この、イグィレスの拳と籠手に数珠玉を展開させたまま、皆を転移可能か試してみるか』
「キサラとメト、
「あ、はい」
「ンン、にゃァ」
と
宙空に浮かぶ数珠玉幾つかがクリスタルの中に転移するように移動。
「「「おぉ」」」
「はは、
「「はい!」」
「面白い~」
「「ふふ」」
「メトちゃんとキサラは普通ですね」
「普通といっても、小さいから不思議だ」
「「はい」」
「たしかに……」
と、闘霊本尊界レグィレスのネックレスを握りつつ<闘霊本尊界術>を発動させて解放させる。一瞬で、クリスタルの中から出た
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