千四百三十九話 <闘霊本尊界術>スキルと新スキル

 ヴィーネとキサラとイモリザに、


「ヴィーネとキサラにイモリザ、体と精神は大丈夫なんだな?」

「はい、大丈夫です、その闘霊本尊界レグィレスのクリスタルの中に入ったと直ぐに理解しましたが、気付いたら、外に出ていました」


 ヴィーネの言葉にキサラとイモリザは頷き、


「はい、わたしも同じです、体も精神も無事」

「わたしもです♪」

「良かった、安心した」

「にゃァ」

「オゥ~ン」

「はい、いきなりでしたからね、ですが<血魔力>ですし、見ている限りですが、お酒の匂いもですが、不思議な安心感はありましたよ」


 ビュシエの言葉に頷いた。

 犀花サイファは、馬と犀が融合しているような頭部の口をキサラの頭部に向けている。

 犀花サイファなりに心配していたか。

 銀灰猫メトはヴィーネの右足に先ほどから頭をぶつけまくって前転を繰り返している。


 と、左手の<シュレゴス・ロードの魔印>から半透明の蛸足集合体シュレゴス・ロードが少し出て、


『我も仕舞えるのだろうか』

『左手に帰る場所があるから必要ないと思うが、闘霊本尊界レグィレスのネックレスの中に格納できるか試すか』

『頼む』


「「ふふ」」

「ウォン、我も少し心配した、恐王ノクターのアイテムから入手したアイテムだからな」

「主には、魔商人ベクターとしての顔を見せた。今後の重要な戦略も告げたんだ。恐王ノクターへの心配はもう要らないと思うぜ、むしろ、魔毒の女神ミセアなどと同じく主を虜にするような女系の勧誘に注意をすべきだろう」

「うむ……主は女の眷属たちと番いの、ちゅっちゅタイムを好む傾向にはあるが……」


 と魔皇獣咆ケーゼンベルスのちゅっちゅタイムの言葉が渋い声音だけに面白いしシュールだ。<翻訳即是>の翻訳な分もあるとは思うが。

 

「使者様に心配されて嬉しいぴょん~♪」

「はは、ぴょんってどこで覚えたんだぴょん」


 イモリザがヘンテコなポーズを取って両手を左右に広げると、


「今ぴょんですぴょん、ぴょん♪ げろげーろ♪」

 

 と銀髪の形を魔蛙夢蔵右衛門ムクラウエモンとそっくりな姿に変化させながら蛙のように跳躍し空を飛ぶから面白い。

 蛙を意識していると分かるが、ヘルメが平泳ぎを行うように両足を動かしている。

 膝を曲げるたびに白いパンティが見えて可愛いが、面白い。


『ふふ、イモリザが面白いです』

「「はは」」

「あはは」

「「「ふふ」」」


 とイモリザのひょうきんな姿に皆が笑うと、銀灰猫メトも、


「ンン、にゃァ~、ンン――にゃはは」


 と鳴いてはイモリザの蛙飛びに合わせて跳躍を繰り返す。

 銀灰猫メトも喉声的にだが笑っている印象だった、可愛くて面白い。


 さて、その皆に、


「ネックレスから<闘霊本尊界術>のスキルを獲得した。それを使用したら三人に闘霊本尊界レグィレスのクリスタルから出た漆黒の魔力と<血魔力>が向かったんだ、で、三人を包むとクリスタルの中に吸い込まれるように転移していた」

「「はい」」

「ですね、使者様の温かい心に包まれた感覚でした♪」


 イモリザの言葉にヴィーネとキサラは目を合わせて頷いて、


「はい、ご主人様の熱い液体を感じました」

「うふ、はい、お酒の匂いも」


 と語る。俺が持つ闘霊本尊界レグィレスのネックレスを見てきた。

 皆も闘霊本尊界レグィレスのネックレスを注視しているから右腕を上げる。


「この闘霊本尊界レグィレスのクリスタルの中に入った時の意思に記憶はあったか」

「「「はい」」」

 

 と、相棒も俺の動きを見ているように足下から幾つかの小さい触手を伸ばしてきたが、闘霊本尊界レグィレスに悪戯をされる前に――右腕をヒョイッと左に逸らして神獣ロロの触手を避けた。


「ンン、にゃご!」


 と神獣ロロが喉声を響かせ少し怒った口調で鳴いた影響で頭部が振動し揺れる。

 皆も揺れるからヴィーネとキサラの背中に腕を当てて支えてあげた。

 直ぐに二人から鎖骨と首にキスをされる。

 乳房の柔らかさは勿論だが、一物を腰とお腹にプレスされるのはいい……。


 と嬉しかったが、これ以上の刺激は一物さんが急成長してしまって、先走り汁どころではないから離れた。


「「ぁ……」」


 と耳に残るようなヴィーネとキサラの喘ぎ声に、俺を見つめてくる半開きの唇に妖艶な表情には切なさもあった。

 可愛すぎるが、今は、


「キサラとヴィーネも、ロロもだが、まだ闘霊本尊界レグィレスのネックレスのお試し中だ。今は飛行に集中して、皆のことを頼む」

「ンン、にゃんお~」

「「ふふ」」


 神獣ロロディーヌは『わかったにゃお~』と鳴いたように返事をしてくれた。

 キサラとヴィーネは冗談の範疇だったか、表情を元に戻していた、玩ばされるのも良い気分だ。


 そのヴィーネが、


「イモリザと同じく、最初は、ご主人様に抱きしめられているような温かい気持ちを得たところで、気付いたら外に出ていました」

「そっか、一瞬だったからな」


 ヴィーネとキサラは頷く。

 イモリザは、俺の左手を両手で掴んで持ち上げ、


「――使者様に抱っこされて頭を撫でられているような優しい気持ちが――とても良かったです~、もう一度入りたい~」


 と脇腹に抱きついてくる。

 イモリザの背中に流れている長い銀髪ごと背中を撫でてあげた。

 イモリザは嬉しそうに笑顔を浮かべて「うふふ~♪」と横回転しながら離れて、キサラとハイタッチ。


 そのキサラは、

 

「ふふ、はい、外に出た直後ですが、不思議と気持ちも晴れ晴れとした気分です。そして、聖賢な液体に包まれていたような……あ、しかしたら魔力や体力の回復効果があるかもしれません?」


 キサラは、ヴィーネと隣にいるイモリザに聞くようなニュアンスで語る。

 三人は頷くとヴィーネが、


「骨鰐魔神ベマドーラーに展開されていた<霊血の泉>の効果で、わたしたち<筆頭従者長選ばれし眷属>の体力と魔力に全能力が上昇し、回復能力も上昇していたので、あまり実感はないですが……たしかに回復しているような氣がしてきました。ご主人様の熱いエキスを頂いて、お腹が少し熱いのもあるかも知れません」


 と腹に両手を当てたヴィーネのエロティシズムポーズが魅惑的すぎる。


「あ、キュピーンの感覚が良くなったような♪ そうかもです♪」


 イモリザは銀髪を真っ直ぐ立てて吃驚マークを作る。ヴィーネは頷いて、


「そういえば、二人とも肌の艶が少し良く、少し桃色にテカっているような」

「ふふ、ヴィーネとイモリザも肌と髪の艶が増したような氣がします」

「たしかに~言われてみたら……でも、皆は元々すべすべな肌の持ち主で綺麗ですから、あまり変わらない?」


 イモリザの言葉に俺とアドゥムブラリは頷いたが、ヴィーネとキサラは多少なりとも変化を感じているようだ。

 肌と髪は元々綺麗なことは勿論だが、たしかに、いつもより桜の色と艶があるか?

 えっちしている時や、えっち後の上気さとつるるんとした艶ほどではないが……。


「回復効果があるってことか」

「「はい」」

「たぶん」

「だろうな、酒は神秘性があるように思える」


 アドゥムブラリも肯定。

 すると、銀灰猫メトと魔皇獣咆ケーゼンベルスが、


「にゃァ~」

「ウォン! 我らも、その闘霊本尊界レグィレスのネックレスのクリスタルの中に入ることはできるのか?」

「分からんが、この際だ、ゼメタスとアドモスにキスマリと銀灰猫メトとケーゼンベルスにアドゥムブラリとビュシエとキッカに〝巧手四櫂〟も順番で試してみるか」

「うむ!」

「オグォ~ン」

「あ、サイファもだな」

「オゥ~ン」

「「承知!」」

「了解だ」

「「「「ハッ」」」」


 イズチ、ズィル、インミミ、ゾウバチも素早く寄ってきた。

 そこで闘霊本尊界レグィレスのネックレスを意識――。

 まずはゼメタスとアドモスと銀灰猫メトとケーゼンベルスとイズチを一変に格納できるから試すか。


「まずは、ゼメタスとアドモスにメトとケーゼンベルスとイズチを指定してやってみる、行くぞ――」

「「ハッ!」」

「ウォン!」

「は、ふぁい!」


 イズチは自分が呼ばれるとは思わなかったようだ。

 額の花模様の魔印が輝く、細い眉毛と四眼の内の、二つの細い眼の動きが左右に揺れて動揺していた。

 可愛い。このイズチとインミミは美人さんだし、魔犀花流の総帥になったこともあるし、眷属にしたいが、順番があるからな。

 人面瘡の曰くも知りたいところだ。


 さて、ゼメタスとアドモスたちを指摘するように意識して<闘霊本尊界術>を発動させた。

 闘霊本尊界レグィレスのネックレスの中の数珠玉が煌めく。

 先ほどと同じく漆黒の魔力と<血魔力>がクリスタルから放出されてゼメタスとアドモスと銀灰猫メトとケーゼンベルスとイズチを俺の目の動きに合わせるように移動しては各自を捕まえるように覆った。次の瞬間、皆はクリスタルの中へと漆黒の魔力と<血魔力>と共に転移していた。


 アドゥムブラリは、闘霊本尊界レグィレスのネックレスを凝視し、


「おぉ! ケーゼンベルスとメトにイズチまでクリスタルに入るとな!」

「あぁ」


 と、皆に漆黒の魔力と<血魔力>が絡んだ際に周囲に散っていた液体があったが、酒の濃密な匂いだ。

 しかも見知った匂い……玄智の森の玄智聖水に、水の法異結界と水神アクレシス様を奉る大豊御酒が混ざった液体か。

 他にも今まで飲んだ魔戦酒バラスキアなどがあるか。


 そして、闘霊本尊界レグィレスのネックレスの中に格納される時間は一秒と少しか。


 戦闘中でも使えるだろう。

 格納中に魔線を切断されるような攻撃を喰らえばどうなるか分からないが……。

 闘霊本尊界レグィレスのネックレス事態の防御力も少し心配か。

 アクセルマギナに質量のスペクトル分析をしてもらえば、素材がある程度判明するから、耐久度は分かるかな。


 硬度と軟性を備えた硝子ならかなり強度が高いことになる。

 アドゥムブラリは、


「魔皇獣耳輪クリスセントラルまで小さくなってるぜ、体に数珠玉が絡み付いているが……」

「あぁ、イズチも四眼の魔族で光魔ルシヴァルではないが闘霊本尊界レグィレスのネックレスの中に入った」

「おう、眷属ではなく仲間も運べるってことじゃねぇか! すげぇアイテムだな、主のアイテムを選ぶセンスは異常だな、レベッカのお宝センサーを越えているぜ?」

 頷いた、パムロールの蜘蛛籠では、モンスターを捕獲できるが、


「皆を運べるのは大きいか」

「はい、旧神法具ダジランの指具にあるベリラシュの指を喰う追跡者と合わせた転移にも使えるかもです」


 ヴィーネの言葉に皆が頷く。


「あぁ、神話ミソロジー級は確定か」

「「「おぉ」」」」


 アドゥムブラリの発言にイモリザとズィルとゾウバチが拍手し歓声を発した。


「凄い、生まれて初めて見るアイテム!」


 インミミは興奮した口調で可愛らしい。

 ズィルも、


「我らも初めて見る」


 と発言。


「魔犀花流の〝巧手四櫂〟は長生きだ。その魔犀花流の〝巧手四櫂〟が知らないのなら、闘霊本尊界レグィレスのネックレスは、かなり貴重なレアなマジックアイテムだな」

「「「「はい!」」」」

「あぁ、俺もだぜ、時空属性も関係あると思うが、こんなアイテムがあるとは知らなんだ」


 とアドゥムブラリの言葉に皆が頷いた。

 ヴィーネとキサラが近付いて、俺が持つ闘霊本尊界レグィレスのネックレスを凝視。


「クリスタルの中にいる皆は不思議そうな表情のまま数珠玉に絡まれているのは不思議ですね」

「はい、中に入った時は気持ち良かったんですが、あ、数珠玉からシュウヤ様の<血魔力>が染み出るように外に出ています。そして、お酒の匂いも漂いますから、これは、やはりシュウヤ様の濃厚なエキスがクリスタルの中に満ちている……ようですね、うふ……」


 キサラの言い方が女を感じさせた。


「そうなのかも知れない、では、クリスタルの中にいる皆を出すから離れてくれ」


 と、闘霊本尊界レグィレスのネックレスと皆の解放を意識した瞬間、皆が解放された。

 

「ウォォン!」

「「――閣下ァァァ」」

「にゃァ?」

「え、あ はっ!」


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは少し混乱中。

 魔皇獣咆ケーゼンベルスは遠吠えを行うように頭部を真上に向けて喉の毛を見せていた。

 ふっくらとした毛毛が可愛い。


 銀灰猫メトは相棒の頭部の黒い毛に潜るようにごろにゃんこ。

 その銀灰猫メトは、相棒の触手の群れに抱っこされるように持ち上げられていた。

 銀灰猫メトは「ンンン――」と喉声を発して、相棒の小さい触手の動きに興奮し、猫パンチを神獣ロロの頭部と毛と無数の小さい触手に当てていく。


 と銀灰猫メト神獣ロロの触手の勢いに負けて逃げるように「ンン、にゃァ」と鳴いて寄ってくる。

 相棒は遊ぶのを止めて頭部の毛を短くしてくれた。銀灰猫メトはトコトコと歩いて、ヴィーネとキサラとイモリザの脛に頭部をぶつけていく。と、背の小さいイモリザの脹ら脛へと胴体を擦り当てながら左足と右足の間を行き交っていく。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは大型の黒い狼な大きさもあるからか、三人には近寄らず、俺の近くを通った。

 その魔皇獣咆ケーゼンベルスの頭を撫でながら「クリスタルの中の記憶は最初のみか?」と聞くと、魔皇獣咆ケーゼンベルスは「うむ! 主の匂いがして温かさを得ては、クリスタルの中から外を見ては皆が巨大な姿に変化しているようにも思えたぞ」と語りつつ神獣ロロの大きい右目の上辺りに移動しエジプト座りで待機していく。


「へぇ、イズチとゼメタスとアドモスも同じかな」

「はい! 総帥の温かさを感じて、とても嬉しかった……」


 イズチは涙ぐむ。それほどか。

 というか光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスの体からの漆黒と紅蓮の炎のような魔力の噴出が激しいからイズチの体が隠れてしまっていた。そのゼメタスとアドモスは、


「はい、閣下の魂を感じてとても心が熱くなりもうしたが、一瞬で終わってしまいましたぞ!」

「うむ、思わず、閣下と叫んでしまいました」


 と厳ついゼメタスとアドモスの必死な語りようを見ていると、可愛く見えてしまうのは何故だ。

 思わず瞼を閉じて開くを、ヴィーネの膝に頭部を当てている銀灰猫メトに向けた。


 その銀灰猫メトに向けイモリザが、


「ふふ、銀灰猫メトちゃんとケーちゃんもクリスタルの中を体感した仲間♪」


 とイモリザは銀灰猫メトと魔皇獣咆ケーゼンベルスに話をして銀灰猫メトに視線に合わせるようにしゃがみ込むと右手の掌で銀灰猫メトの頭部と背中を優しく撫でていく。


 両方とも絵になる可愛さ。

 ココアミルク肌の美少女と細身のロシアンブルーの戯れ。

 

 銀灰猫メトは撫でられながらネコらしく両前足を前に背筋を伸ばす。

 その前足で相棒の頭部の毛を押して揉むようにモミモミを行う、爪の出入りが可愛い。

 

 パン職人を始めた銀灰猫メトさんだ。

 イモリザの手が、そんな銀灰猫メトのお尻付近に移動すると、徐々に腰を上げて尻尾と太股周りの毛毛をルンルンと言わせるように尻尾を立たせてきた。


 ロシアンブルーに近い銀灰猫メトだからスマートだ。

 そんな銀灰猫メトを見たイモリザは「ふふ、お尻さんが丸見え~♪」と言いながら、尻尾の付け根を片手でトントンと優しくマッサージするように振動させていく。

 

「にゃァ~ン」


 と銀灰猫メトは嬉しそうな声を発した。お尻を突き出すポーズでお尻トントンを願う。

 イモリザは「ふふ」と笑って「色っぽい声のメトちゃん面白い~♪」

 と銀灰猫メトの頭部の毛を人差し指で掻くように撫でてから背を撫でながら右手で尻尾を引っ張るように撫でていく。


 銀灰猫メトは両後脚が少し持ち上がった。


「ンン」


 と喉声を発したが、逃げない銀灰猫メト

 イモリザは銀灰猫メトの可愛さのあまり調子に乗ったか、両手によるマッサージの嵐を銀灰猫メトに繰り出していく。


 銀灰猫メトは「ンンン」と喉声を発しながら匍匐運動を行うように姿勢を低くして離れた。

 少し間抜けな姿で面白い。 

 

 と、その銀灰猫メトは走って、


「にゃァ~」


 と鳴きつつヴィーネの脛に頭部を当てて脹ら脛に回り込む。

 ヴィーネの足に片目を隠すような位置からイモリザを見やる。


 イモリザは、


「ふふ、大丈夫です♪ 追いかけません♪」


 と発言し、追いかけていない。

 銀灰猫メトは「にゃ、にゃ、にゃァ~」と『なんだこにゃいのか~』といった調子に鳴いてから、ヴィーネに体重を預けるように右足に体を寄席つつ足の甲に両前足を乗せると鼻先を上向け「にゃァ」とヴィーネに挨拶。


 ヴィーネは笑顔をとなって、


「ふふ」


 と両膝を胸に抱くように姿勢を低くし銀灰猫メトの小鼻に人差し指を当てていた。

 銀灰猫メトは鼻孔を拡げ窄めて、ヴィーネの人差し指の匂いを嗅いでからペロッと人差し指を舐めていた。

 くちゃーな顔はしないから良かった。


 銀灰猫メトは己もだが、ヴィーネたちがクリスタルに入ったから心配して匂いのチェックをしたいんだろう。


「わたしも、メトちゃんの鼻をもらいます~」


 と近付いていたイモリザも銀灰猫メトの小鼻に人差し指を当てる。

 ヴィーネとイモリザの人差し指のダブルタッチを受けた銀灰猫メトはイモリザの人差し指の匂いを嗅いでからペロッと舐めていた。


「ふふ~」

「ンン」


 銀灰猫メトはヴィーネの右足の甲から離れた。

 イモリザから逃げるように、キサラの前に移動した。

 キサラの左足の脹ら脛に頭部をぶつけて脹ら脛に体を寄せる。

 そのまま右足の脛に尻尾を絡めつつ太股の毛をぷるぷると震わせた。


 ネコ科の分泌吸の匂手フェロモンズタッチダンスにも見える。

 オシッコをぶしゃーと掛けたりしないが、野良猫なら、近くの植木に縄張り宣言のためのオシッコを振り撒くタイミングだろう。


 と何気ない銀灰猫メトの動きを観察して楽しんでしまう俺は猫が大好きなんだと改めて認識。


 さて、結構な魔力を消費した感があるが、闘霊本尊界レグィレスのネックレスを再度、


「皆、もう少し闘霊本尊界レグィレスを調べる」

「はい」


 クリスタルの中の数珠玉だけを意識。

 漆黒の魔力と<血魔力>は外に出さないことも意識し、<闘霊本尊界術>を発動させる。

 

 すると、クリスタルの中に入っていた数珠玉の二つがクリスタルから外に飛び出た。

 漆黒の魔力や<血魔力>は外にでない。


 数珠玉は、俺の前で静止。

 が、直ぐに数珠玉は細かく分解されたような動きで酒器へと変化を遂げる。

 酒器になるまでの動きは電導の轆轤ろくろを使い粘土で陶芸の器を作るような動きに近かった。

 

 そして、古代の盛酒器を思わせる形だ。

 中身の神秘的なお酒の液体が揺れていた。

 先ほどと同じ、俺が玄智の森で取り込んだ水もある。

 <四神相応>とも関係している仙王ノ神滝の玄智聖水、水の法異結界に水神アクレシス様を奉る大豊御酒に魔戦酒バラスキアとゼガサッチ産の魔酒などもあるだろう。

 

 すると、アドゥムブラリが、


「酒器に酒は、水神アクレシス様を奉る大豊御酒などを取り込んだ主の気質として……今まで取り込んだ魔酒でもある? そして、最初の漆黒の魔力の一部は神界や光魔ルシヴァルの光属性に耐えられず消えたようだが、漆黒の魔力は、光属性の魔力に対応したということか」


 頷いた。


「単なる対応ではなく、光魔ルシヴァルの闇属性が闘霊本尊界レグィレスのネックレスの漆黒の魔力を救うように吸収したようにも思えます」


 クリスタルの中に一時的に入っていたヴィーネの意見に皆が頷く。

 アドゥムブラリは俺とネックレスと浮いている酒器を見て、


「レグィレスとはなんだろうか」

「漆黒の魔力の源か?」

「そうかもですね」

「元々のお酒の名、液体酒器、クリスタルや数珠玉の名とかも考えられる」

「酒器が消えないなら鑑定できるかな」

「<闘霊本尊界術>を消せば消えると思うが、数珠玉を意識すると外に出て、酒器に変化するようだ」

「総じて、玄智の森の修業が、闘霊本尊界レグィレスのネックレスに活きたか」


 アドゥムブラリの言葉に頷いて、


「あぁ、玄智の森では水神アクレシス様を奉る大豊御酒に水の法異結界などを得て、<玄樹の守人>と<玄智武奏>と<玄樹仙槍者>と<玄樹仙剣者>と<水仙>と<玄智の神威>と<水仙の戦槍把>と<水仙の法異師>と<水仙の華鏡師>と<水仙法異華御師>などの戦闘職業を得て最終的に<霊槍・水仙白炎獄師>に進化したからな、スキルも<経脈自在>と<仙魔・霧纏>と<水月血闘法・水仙>を得られた、その貢献は計り知れないか、ヘルメがいる効果も大きいかな」

『ふふ』

「なるほど、水神アクレシスと<光魔の王笏>も大きいと思うがな? とにかくナミに感謝だな」

「おう、次は、闘霊本尊界レグィレスのネックレスの、レグィレスだけを意識して<闘霊本尊界術>を実行してみる」

「「「「はい」」」」

「おう」

「うむ!」

「にゃァ」

「ウォン!」

「「承知!!」」

「「「「ハイッ」」」」


 レグィレスを強く意識して<闘霊本尊界術>スキルを実行――。

 すると漆黒の魔力と<血魔力>が十個のクリスタルの中に満ちた。

 そのクリスタルの中から数珠玉が出てくると、出していた酒器も数珠玉に変化し、十個のクリスタルの中から出ていた数珠玉と融合して、漆黒の魔力と<血魔力>を有した大きい数珠玉が目の前に現れた。


「……」


 漆黒の魔力と<血魔力>を有した大きい数珠玉は意思があるように思えるが沈黙。

 触ると自然と腕に絡み付いてくる。両拳の武器と籠手となり、魔線が連なる数珠玉が俺の周囲に浮いた。

 

 ピコーン※<空数珠玉羅仙格闘術>※恒久スキル獲得※



「おぉ、<空数珠玉羅仙格闘術>という格闘系だと思われる新スキルを得た」



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