千四百三十八話 闘霊本尊界レグィレスのネックレス

 ゼメタスとアドモスは周囲を巡るように飛翔していく。

 恐王ノクターたちとの交渉中に、俺を守ることを意識し、恐王ノクターの言葉に合わせて愛盾・光魔黒魂塊と愛盾・光魔赤魂塊から虹色のフォースフィールドのような魔力を、時折発してくれていた。


 今も頼もしい動きだ。

 すると左端の視界に、


『魔商人ベクター、恐王ノクターはどこに……【メイジナ大平原】で仕事がある?』

『あぁ、魔商人としての仕事だろう、【メイジナの大街】に【ケイン街道】に【サネハダ街道街】や【ケイン街道】などの街が多いからな』

『あ、〝闇神リヴォグラフノ赤目札〟を使いバーソロンを追跡していた暗殺者たちの依頼者、大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ・ラカンと接触でしょうか』

『大魔商人ラシカラと怪冥漁会ダバトカ・ラカンはバーソロンへの恨みだろうから違うはず』

『では、魔商人ベクターは【メイジナの大街】の大魔商デン・マッハやゲンナイ・ヒラガと取り引きでしょうか』

『あぁ、ありえる』

『大魔商ドムラチュアと、何かの取り引きを行う可能性もありますね』


 頷いたが、


『ドムラチュアの部下のラマガンは、恐王ノクターの眷属を倒していると聞いているが、魔商人ベクターの気質からして、眷属が殺されても目的のためならら取り引きを行うか』

『はい、その魔傭兵ドムラチュアのラマガンは閣下がハブラゼルの魔宿の隣の廃墟の一階で倒した強者で、イルヴェーヌ師匠の手足を移植されるほどの逸材だった存在ですね』

『おう、そのラマガンに投資していた大魔商ドムラチュアは宵闇の女王レブラ様側の勢力と聞いている。その関係もあるから魔商人ベクターととも取り引きを行うかも知れない』

『はい、魔商人ベクターは敵対していた閣下に対しても、交渉を行いましたし、宵闇の女王レブラ様やドムラチュアとも己の目的のためにはどんなことでもしてきそうですね』

『そうだな、恐王だ。恐怖を知るからこその魔神の一柱……敵の敵は味方、状況次第で戦術を変えるなど柔軟な姿勢を持つ。何事も表裏一体な面がある相手が恐王ノクターで魔商人ベクターと考えようか……と、なると、恐王ノクターの眷属となったほうが、俺たちには安心できる相手だったかな』

『ふふ、閣下が珍しい。ですが、はい……相手の心理を読んでくる、まさに恐怖、恐王です。悪神ギュラゼルバンたちの、単純な恐怖のほうが分かりやすい……』

『そうだな、油断ができない相手が魔商人ベクター。だからこそ、この闘霊本尊界レグィレスのネックレスもかなり有能なアイテムのはずだ』

『はい、あの中のすべてのアイテムが神話ミソロジー級かもしれませんね、そして、閣下を味方にするための贈り物。眷属に誘う言動も吸血神ルグナドへの考えといい……かなり本気に思えました』

『あぁ……』


 恐王ノクターの第一の目的はテーバロンテが支配していた所領の確保。

 更に【ノクターの大血湖】と【ノクター平原】と隣接している同盟を結んだように見せかけていた悪神ギュラゼルバンの討伐も狙っていた。

 他にも【メイジナ大平原】、【マセグド大平原】にも隣接しているのかも知れない王魔デンレガと魔蛾王ゼバルと闇神アスタロトと魔界王子ライランと吸血神ルグナド様とも争っている。

 

『敵か味方の見定めは非常に難しい相手が恐王ノクター、魔商人ベクターですね』

『たしかに』


 ヘルメは神妙な顔付きとなっていた。

 小さいが美人さんの常闇の水精霊ヘルメが左目にいると神々が相手だろうと安心して交渉ができる。ヘルメに感謝だな。

  

「にゃおおぉ~」

「ウォォォォン!」


 と相棒とケーゼンベルスが呼んでいる。


「ゼメタスとアドモス、戻ろうか」

「ハッ」

「承知!」


 直ぐに振り返った。相棒の神獣ロロディーヌの上にいる皆を見ながら、体から<武行氣>の魔力を噴出させて飛翔を行う。

 空から巨大な神獣ロロディーヌに近付いた。


「「――シュウヤ様!」」 

「「「総帥!」」」

「総帥は、恐王ノクターを退けたぞ、やはり、魔英雄!!」

「「「おぉ~」」」


 神獣ロロの背中側にいる魔犀花流の人面瘡を鎧に擁した兵士たちが、歓声を発している。

 その皆に手を振りながら――ゼメタスとアドモスと一緒に相棒の頭部に着地。神獣ロロの大きい耳が下りてきたが、避けるように屈んでアーゼンのブーツ越しに柔らかい頭髪の感触を得ながら滑るように前に進むと直ぐにヴィーネとキサラが抱きついてきた。

 

 二人とハグしながら横回転を行って足を止めた。

 

「――安心しました、交渉は成功のようですね」

「――戦いが起きずに軍勢が素直に退くとは、はらはらドキドキしましたよ!」


 ヴィーネとキサラは俺の両手の掌をぎゅっと握りながら自らの胸元に俺の手の甲と手首を引き寄せて抱きしめながら、言ってくれた。

 二人の乳房の柔らかい感触に至福な気持ちを得た。が、二人の拘束を解くように両腕に力を込めた。ヴィーネとキサラは直ぐに両腕を離す。

 その二人と皆に向け、


「おう、巧く行った。実際、戦いも辞さない覚悟だったが恐王ノクターも俺の実力を見て戦うことを避けたようだ」


 と、キスマリが寄ってくる。


「ふっ、主の鼻の下が伸びた顔が面白い! ふふ」

「おうよ――」


 キスマリの片手とハイタッチ。

 続けてキッカとイモリザとも抱き合う。


 黒い毛の一部が逆立っているケーゼンベルスは、


「ウォン! 主、見ているだけの状況は我はいやだったぞ! そして、<魔皇ノ嗅覚>で、恐王ノクターたちの匂いは、しかと覚えた! 追跡は可能だ!」

「おお? <魔皇ノ嗅覚>にはそんな効果もあるのか、ありがたい。そして、敵は撤退したから俺たちの勝利は確定だ。だからレン家に【メイジナ大平原】は安泰だろう、よくぞ我慢してくれた」

「うむ!! 大勝利! 主のため皆のため! 多くの民を救った主の戦いに貢献できたことが……我は、我が、誇らしく思えて非常に嬉しいぞ!!!」


 と少し涙目になって吼えるように語るケーゼンベルス。

 その言葉と鳴き声は胸を衝く。

 皆も俺と同じように感動したのか、


「――ふふ、わたしもです」

「「――はい」」

「ケーゼンベルスちゃん♪」

「ケーゼンベルス様――」

「オゥ~ン!」

「にゃァ~」

「ケーゼンベルス――」


 と黒い狼のケーゼンベルスに抱きついていく。

 ケーゼンベルスの大きさ的に、抱きしめがいがありそうだ。

 イモリザ、犀花サイファ、ビュシエ、銀灰虎メト、アドゥムブラリはケーゼンベルスの黒い毛を堪能している。キサラとヴィーネも遅れて黒い毛にダイブしている。


 そして、魔犀花流の〝巧手四櫂〟のズィル、ゾウバチ、インミミ、イズチはケーゼンベルスに抱きついていない。さすがに仲間になったばかりだし、神格を持つケーゼンベルスにはなれなれしくできないか。

 更に言えば【メイジナ大平原】での魔皇獣咆ケーゼンベルスの信仰は結構大きいからな。

 

「イズチたちも相棒の黒毛ソファを堪能するように、ケーゼンベルスの黒い毛を堪能してもいいんだぞ?」

「は、はい!!」

「あ、はい」

「承知!」

「了解しました!」


 ズィルとゾウバチは命令と受け取ったニュアンスだったが、インミミとイズチは嬉しそうに返事をしては、ケーゼンベルスの太股付近の毛にダイブしていた。

 

 魔皇獣咆ケーゼンベルスのモフモフとした毛並みはタマランだろう。

 俺も少しだけ胸元のケーゼンベルスに毛並みにダイブして、抱きついた。が、直ぐに「ンン――」と喉声を響かせた神獣ロロディーヌの触手に体が絡め取られて引っ張られる――。


 そのまま相棒の双眸の真上辺りにまで、強引に運ばれた。

 直ぐに、屈んで、相棒の大きい眉毛辺りの出っ張りに手を当てながら、


「ははは、分かった分かった、俺は空の運転手を務めよう」


 と大きい眼球を上から覗き込みながら語る。

 神獣ロロは片方の眼球の瞳を上に向けて見てきた。


 大きいが可愛い目目だ。

 虹彩と角膜に瞳孔が美しい。


 普段は紅色が殆どだと思ったが、白っぽいところもあるんだな。

 と、瞼を閉じて開くと親愛のコミュニケーションを行ってくれた。


 大きいから端の強膜の大きさも普段の猫とは違う。


「ンン、にゃお~」


 と、満足そうに喉声と鳴き声を発した神獣ロロさん。

 再び、頭部の端から伸ばしてきた触手手綱を右手で掴んで、立ち上がる。


 その裏の肉球を親指でぷにゅと押し、またも押して、ぷにゅぷにゅ感を得て満足しつつ、


「よーし、【マセグド大平原】を見ながら【レン・サキナガの峰閣砦】に帰還だ」

「にゃ~」


 そして、右腕の腕時計や未来的なガジェットにも見える戦闘型デバイスを見る。


 風防硝子の上に浮かぶ人工知能アクセルマギナとロボット型のペットに見えるガードナーマリオルスのホログラム映像と宇宙的な背景は美しい。

 アクセルマギナの前と周囲に浮かんでいる細かな、未来的なOSとアイコン類のUIを、ユビキタスコンピューティングで行えることは、実に素晴らしい。


 そして、その中に先ほど仕舞ったアイテムの、


 new:闘霊本尊界レグィレスのネックレス×1


 があった。恐王ノクターこと魔商人ベクターの言葉に嘘はない。

 無魔の手袋を嵌めたままの右手に、その闘霊本尊界レグィレスのネックレスを召喚。


 戦闘型デバイスからnew:闘霊本尊界レグィレスのネックレス×1が消えた。と、相棒が触手を伸ばしてきた。


 闘霊本尊界レグィレスのネックレスを触ろうとしはしない。

 すると、背後からキサラとイモリザとビュシエが寄ってきた。


「シュウヤ様、それは?」

「恐王ノクターからもらったのですか?」

「恐王ノクターの……シュウヤ様はあいつを信用したのですか」

「ある程度は信用した」


 と発言しつつ、その三人に、右手が持つ闘霊本尊界レグィレスのネックレスを見せた。

 漆黒の魔力を放っている数珠玉入りのクリスタルがぶら下がっている。


「恐王ノクターは、俺と縁を結ぶ、誼を得たいつもりらしい。魔商人ベクターに変身して、漆黒の机を用意すると、その上に様々なアイテムを召喚して提示し、その中から好きなアイテムを選択して差し上げると言ってくれたから、その様々なアイテムの中から、これを選んだ、どれも貴重なアイテムだったと思う」

「なるほど、漆黒の魔力を放つ数珠玉入りのクリスタルが複数個有したネックレス……どんな効果なのでしょうか」

「闘霊本尊界レグィレスの名からして、ラムーの鑑定をお願いしたいところだが、呪いは無いと分かるから試してみるか」

「――ご主人様」

 

 魔皇獣咆ケーゼンベルスの毛並みを堪能していたヴィーネたちも寄ってくる。


「おう、これは、闘霊本尊界レグィレスのネックレス、恐王ノクターが、魔商人ベクターに変身し、そのベクターが様々にアイテムを提示し、その中から、これを俺が選んで入手した」

「撤退した恐王ノクターはご主人様に貢ぎ物を、ではあの恐王ノクターが降伏を?」

「降伏はないな、これは貢ぎ物だと思うが、その恐王ノクターは俺を大眷属に誘ってきた、しかも、バーヴァイ地方やバードイン地方の支配権を俺が持ったままとか、破格の条件だったな」

「なんと……」

「主、そんな恐王ノクターの大眷属の誘いは断ったのだろう?」

「ウォン! そんなことを……」

「あぁ、勿論、断った」

「うむ!」 

「ウォォン、安心したぞ」


 キスマリとケーゼンベルスの言葉に皆が頷いた。


「大眷属を失った恐王ノクターは、失うことも織り込み済み?」

「だろうな」

「失敗は失敗と捉えて無駄な戦いはせず軍を撤退させた。そして、ご主人様を部下に誘うとは、それほどに他の勢力との争いが熾烈ということでしょうか」


 ヴィーネの言葉に、


「そうらしい、テーバロンテの残党が活躍している【マセグド大平原】での戦いも結構厳しいようだな、更に、恐王ノクターの地元【ノクターの大血湖】と【ノクター平原】と隣接している【吸血神ルグナドの類縁地】では、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長選ばれし眷属>と戦っている大眷属がいるようだ。他にも王魔デンレガと魔蛾王ゼバルと闇神アスタロトと魔界王子ライランなどの大きい勢力と争っている土地があると言っていた、そして、共同作戦を展開していた悪神ギュラゼルバンだったが、それは表向きで恐王ノクターの部下のゲラは家族がギュラゼルバンに殺されていた。ゲラは悪神ギュラゼルバンを倒したかったと言っていたように、悪神ギュラゼルバン軍がレン家の軍と戦い、疲れているところの背後を狙っていたようだ」

「なるほど、ご主人様の予想通り」

「……納得です」

「はい、直ぐに軍を退いた理由」

「ギュラゼルバンに合わせず、様子見に徹していた理由は【マセグド大平原】にあった」

「主の予想通りか」

「使者様は頭がいい!!」

「「「はい」」」


 【マセグド大平原】で戦っていた恐蒼将軍マドヴァの名は聞いていたから、単に記憶力が多少いいって程度だろう。更に【マセグド大平原】では、魔界王子テーバロンテのバビロアの蠱物を逃れられた強者がいたようだしな。

 塔烈中立都市セナアプアに戻った際にも、レベッカに皆が、予想していたが、優秀な魔傭兵団が小勢力と合わせて恐王ノクターや悪神ギュラゼルバンの大勢力と、俺たちと同じように戦っていたということだろう。


「恐王ノクターこと魔商人ベクターも、当たり前ですが頭が切れますね」

「ふむ、魔界セブドラの一角、永遠の間、最上級の魔神であり続けられるには、深い理由がある」


 キスマリの言葉に皆が頷いた。


「昔から策士ですよ、そして、【吸血神ルグナド様の類縁地】を守るのは、<筆頭従者長選ばれし眷属>レカーかと思います」


 ビュシエが教えてくれた。


「レカーという名が吸血神ルグナド様の<筆頭従者長選ばれし眷属>で、激戦を繰り広げ続けている猛者、女性? 男性?」

「女性です、武器は血魔槍レカーを主力に使う。シュウヤ様が気に入るほどのブロンドの髪の持ち主です。胸はヴィーネやわたしたちと変わりません、あ、メガネも無しですが、素敵なイヤリングと髪飾りは常に装備していました。男はいません」


 当たり前だが、ビュシエは素晴らしい情報を持つ。 

 恐王ノクターこと魔商人ベクターから闘霊本尊界レグィレスのネックレスをもらったが……吸血神ルグナド様の<筆頭従者長選ばれし眷属>レカーさんを味方したくなってきた。


「ほぉ……」

「初耳です」

「昔、レカー、血魔槍レカーか。戦場で名を聞いたような氣がするが忘れた」


 キスマリは聞いたことがあったが忘れていたか。


「わたしも初耳ですぞ!」

「我もだ、<筆頭従者長>と<筆頭従者>に<従者長>などが多いですからな」


 ゼメタスとアドモスのグルガンヌ地方では、レカーの名はそこまで轟いていないか。

 【メイジナ大平原】から北側の魔界セブドラ地方では、ある程度レカーの知名度は高そうだ。


「ビュシエは、そのレカーさんと面識がある?」

「はい、定時の血道大長老会議と緊急の血道大長老会議にて、レカーと話をしたことが数度あります。因みに、わたしも恐王ノクターの眷属とは何度も戦い、そのたびに仕留めている」

「恐王ノクターは、それを指摘しなかったが」

「はい、それは無理もないかと、戦は無限と呼べるほどのありますし、大眷属と眷属も一部を除いて相当入れ替わっているはずですから、ビュシエ・ラヴァレ・エイヴィハン・ルグナドの活動は広いかったこともあります。気付かないのも無理はないかと」


 ビュシエの言葉に頷いたが、恐王ノクターはビュシエの存在を知っていてスルーしたかも知れないな。魔商人ベクターと吸血神ルグナドとの争いと縁との会話には微妙な雰囲気があった。というか、言葉を選んでいる節も感じられた。

 

「ご主人様、その闘霊本尊界レグィレスのネックレスに魔力を?」

「あぁ、試すんだった」


 と皆がネックレスを注視。無魔の手袋を外した。

 <血魔力>を込めると漆黒の魔力が少し弾けるように消えたが、<血魔力>は漆黒の魔力を取り込みながら闘霊本尊界レグィレスのネックレスに吸収される。

 と中身の数珠玉とクリスタルが輝くと、クリスタルの面から数珠玉が外に飛び出た。

 数珠玉が環状に変化したと思ったら、大きい古い酒器に変化。


 と、古い酒器から漆黒の魔力と俺の<血魔力>が混じった魔力が含んだ液体が溢れ出た。酒の匂いが漂う――。


 これは魔酒か? レグィレスの魔酒だろうか。


「ご主人様……それは特別なお酒を造るマジックアイテム?」

「正直分からないが……」

「いい匂いです」

「わわ、お酒といえば、キュラバラル魔酒!」

「ゼガサッチ産の魔酒!」

「ふふ、宗主は魔戦酒バラスキアで強くなられた」


 キッカの言葉に頷いて、酒なら飲んでみるかと意識した刹那――。

 古い酒器から漆黒の魔力と俺の<血魔力>が混じった魔力が含んだ液体が飛来。

 口に吸い付いてきたから飲んだ――。


 魔力を得た直後――。

 ピコーン※<闘霊本尊界術>※スキル獲得※


 その途端、古い酒器が破裂し、溢れた液体が闘霊本尊界レグィレスのネックレスのクリスタルの中に吸収されるように入り込む。

 <闘霊本尊界術>を意識発動させる。

 と、ネックレスのすべてのクリスタルの中に入っている数珠玉が光ると漆黒の魔力と<血魔力>がクリスタルの内部で煌めいた。するとクリスタルの内部から漆黒の魔力と<血魔力>が放出されて、ヴィーネとキサラとイモリザに降りかかり包まれた瞬間――十個の内のクリスタルの三つの中にヴィーネとキサラとイモリザが転移してしまう。


 ヴィーネとキサラとイモリザが小さいクリスタルの中だ。


「「――え!!」」

「にゃァ?」

「ウオォォォン!? 消えた、あ、そのクリスタルの中に入ったのか!」

「おぉ……主、その闘霊本尊界レグィレスのネックレスとは生物を封じられる?」

「そのようだ、そして、持ち運びが可能ということだな」


 クリスタルの内部にいる三人の解放を意識した直後、闘霊本尊界レグィレスのネックレスのクリスタルの中で、漆黒の魔力と<血魔力>に包まれていたヴィーネ、キサラ、イモリザが消えると、漆黒の魔力と<血魔力>に包まれた状態の三人が目の前に出現。

 三人を運んだような漆黒の魔力と<血魔力>は闘霊本尊界レグィレスのネックレスの中に収斂すると、クリスタルの内部にあった数珠玉が分かりやすく点滅している。


 三人とも額に疑問符を乗せているような不思議そうな顔色を浮かべていた。

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