千四百二十六話 魔皇メイジナの真実
魔皇メイジナと悪神ギュラゼルバンの得物が衝突し合うたびに城が崩れていく。互いの体から発せられた魔力と得物から漆黒の炎と朱色の魔力が迸っていく影響は凄まじい。
メイジナとギュラゼルバンは足場がなくっても構わず得物を振り合い、得物同士が衝突し閃光が迸る。更に急所を狙うべく得物が衝突し合うと一瞬で十数合ぶつけ合った。<魔闘術>系統を強めたメイジナは左右上腕が握る六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルの連続突き――。
一方のギュラゼルバンも体から漆黒の炎の他に、紫色の魔力を噴出させると両手の魔槍を突き出した。
雷状の魔力が魔槍から迸っていた。
互いの前方で、その得物の穂先と穂先の先端が衝突し目映い閃光と火花が幾つも発生した。大砲が放たれたような轟音が響く。
互いに雷状の破片のような魔力刃を受けるが気にしていない。魔皇メイジナと悪神ギュラゼルバンは姿勢がぶれず。
空間が削れるような振動波が周囲に発生していた。
魔皇メイジナは左右上腕の六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルを交換するように腕をクロスし、六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルを返すように石突側の<豪閃>のようなスキルを繰り出す――。
ギュラゼルバンも漆黒の炎で触れたらやけどしそうな二つの魔槍の柄を前に押し出し、二つの柄で、二つの石突のメイジナが繰り出した<豪閃>のような攻撃を弾くとギュラゼルバンは力の一撃に体が痺れたように漆黒の炎が揺らぎ<魔闘術>系統が衰えて、少し後退したが、直ぐに盛り返す。
漆黒の炎を発している二つの魔槍の威力は高い。
六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルも威力は同程度。
互いに穂先と柄に石突の攻撃を繰り返す。
応酬は一瞬の間に五十回を超えた。
魔皇メイジナと悪神ギュラゼルバンは鍔迫り合いのような展開から悪神ギュラゼルバンが押されたが、その悪神ギュラゼルバンは己の魔線と繋がっている六眼バーテが転がっている先を見てメイジナ側に送るようなことをしてから魔皇メイジナの動きを止めさせると、
「ハッ、多少はやるようだが、いいのか? 六眼バーテは怯えているぞ」
「……」
メイジナは怒りを滲ませるように六眼の魔眼を発動した。
すると左右の腕と太股が少し膨れて、
「……悪神、わたしたちの様々な負の感情やお前自身の悪業がお前の力になることは分かっている」
「ハッ、嗤わせるなよ、お前とて魔界の神の一柱であろうが。それとも神界の神皇なのか?」
悪神ギュラゼルバンは嘲笑。
メイジナの六眼は睨みを強めた。
が、直ぐに冷めたような視線となった。そして、六眼バーテを見て、
「……バーテ、お前の恥辱は我が晴らす」
と発言し、六浄短槍ベギリアルをギュラゼルバンに差し向け、
「これ以上の侮辱は許さない――」
と攻める。
迅速に左中段の腕が握る六浄魔刀キリクを真横に振るう。六浄魔刀キリクから朱色の放電のようなモノが宙空に発生――。
右中段の腕が持つ六浄魔大斧ガ・ランドアが斜めを少し斬るようにギュラゼルバンの胸と腹と下腹部を狙う――。
右下段の腕が持つ六浄魔剣セリアスが悪神ギュラゼルバンの腹を狙う突き――。
それらの連続攻撃をギュラゼルバンは己の二腕が持つ魔槍と無数の魔槍で防ぎきる。
周囲に浮かぶ魔槍は<血想槍>や<導魔術>を連想させた。
俺との戦いでは悪神ギュラゼルバンは無数の魔槍の操作は少なく己の二本の魔槍を操作することが殆どだったのは俺の加速能力に合わせるためだったんだろう。
悪神ギュラゼルバンは、『速度が異常に出ているが、神格を有した戦いに慣れているようだな――』と語っていた。
悪神ギュラゼルバンも押し返すようにフェイントを交えた魔槍の上段と下段の打ちわけから、メイジナに防御を意識させたところで、無数の魔槍を囮に二つの魔槍を持つ両腕がブレた。
左右の空間を稲妻が裂くような薙ぎ払いから突きの連続、槍舞を繰り出した。細かな雷状の魔力が悪神ギュラゼルバンの体から迸っていく。
体に細かな雷状の魔力を浴びてしまったメイジナは苦しげな表情を浮かべながらも、左右上腕の六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルを盾代わりに、少し前進を遂げる。
「ハッ、強がりはよせ――」
強氣のギュラゼルバンは魔槍の無双を繰り出すように凄まじい連続攻撃を魔皇メイジナに繰り出していく。
魔皇メイジナは連続的な連舞を受けながらも、タイミングを狙っていたように左下段の六浄独鈷コソタクマヤタクに魔力を込める。
と六浄独鈷コソタクマヤタクから波動の防御層と衝撃波が同時に発生――悪神ギュラゼルバンは両腕で繰り出していた連続突きのスキルは跳ね返されるように押し返され「なに!?」と仰け反って吹き飛んだ。
そこに六浄魔剣セリアスの刃から朱色の魔力の刃が滲み出る切り払い――悪神ギュラゼルバンの胴体に入る。
ピコーン※<六浄精魂炎>※スキル獲得。
おぉ俺もスキルを得た。
六浄独鈷コソタクマヤタク専用か、心を燃やすか。
「ぐあぁぁ」
と悲鳴を上げながらもギュラゼルバンは周囲で浮かばせている無数の魔槍を操作しメイジナに向けていた。
メイジナは六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルを振り回し、悪神ギュラゼルバンが遠隔操作する魔槍のすべてを払いながら直進し悪神ギュラゼルバンに近付いた。
悪神ギュラゼルバンは漆黒の炎で身を固める。
と魔皇メイジナは「お前の罪汚れをここで討ち果たす――」と発言しながらすべての腕がブレた直後――。
<六浄ノ朱華>を繰り出した。
六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルの突きと払いから、六浄魔刀キリクと六浄魔剣セリアスの袈裟斬りと逆袈裟に六浄魔大斧ガ・ランドアのかち上げに六浄独鈷コソタクマヤタクの波動突きの連舞が、漆黒の炎を纏う悪神ギュラゼルバンにクリーンヒット。
体が細断され修復されるを繰り返した悪神ギュラゼルバンは悲鳴も上げられず吹き飛んだ。城の壁を抜け、次の壁も抜けて庭の地面を抉り動きを止めた。悪神ギュラゼルバンがここまで押されるとは、メイジナ強い。
再生していた悪神ギュラゼルバンが体に纏ってたいた漆黒の炎が消えた。が、また発して周囲の瓦礫を吹き飛ばすと共に悪神ギュラゼルバンが消える。
魔皇メイジナの背後に転移していた。
悪神ギュラゼルバンの<双豪閃>のようなスキルが魔皇メイジナの背中に直撃、連続的に決まる。背の魔鎧が砕け背骨が砕け散る。
「うがぁぁぁ」
と悲鳴を発した魔皇メイジナは体が曲がりながら血飛沫を発して吹き飛ぶ。逆側の城壁側を付き抜け、門を破壊し、周囲の六本腕の魔族兵士たちの死体を吹き飛ばしながら堀を破壊して、その堀の中に埋まる――。
腕から離れた六浄武器は自動的に魔皇メイジナを追い掛けていた。
刹那――。
「メイジナ様――」
「ぬ?」
と城壁が崩れ
悪神ギュラゼルバンの体を穿とうとした魔槍の一撃だったが――。
悪神ギュラゼルバンは片腕が持つ漆黒の炎を発した魔槍を下に傾けながら半身で、その一撃を防ぐが、グレナダの体から出た銀色の魔力の効果もあるのか、悪神ギュラゼルバンは衝撃に押されて反撃ができないまま押し込まれていく。
「ぬ、その得物に魔槍技は……グラスベラ特攻機師の、そうかお前があの魔界騎士グレナダか――」
悪神ギュラゼルバンは左腕が握る魔槍を魔界騎士グレナダの首に向けた。魔界騎士グレナダはその一撃を屈んで避けながら、片鎌槍の穂先を回し漆黒の炎を発している魔槍を引っ掛け、片鎌槍の石突を悪神ギュラゼルバンの下腹部に向けた。
悪神ギュラゼルバンは俄に後退し、左腕の魔槍を消し、再出現させた魔槍で下腹部の攻撃を防ぐが、「そこだ――」と魔皇メイジナが転移していたような加速力で悪神ギュラゼルバンの側面に移動していた――。
悪神ギュラゼルバンは「なんだと!」と驚き半身となってメイジナに備えるが、僅かな隙が生まれた。魔界騎士グレナダの断罪流<断罪刺罪>が胸に決まる。
悪神ギュラゼルバンは苦しげに「ぐ――」と言いながら魔界騎士グレナダの得物を掴んでグレナダを睨むが、魔皇メイジナが漆黒の霧と黒い葉の群れのようなモノが入っていた石箱を放り投げていた。
石箱から放たれた漆黒の霧と黒い葉の群れは悪神ギュラゼルバンの体から発せられていた漆黒の炎を打ち消しながら悪神ギュラゼルバンの体に絡み付く。
あの悪神ギュラゼルバンの体に絡み付いた霧のようなモノと黒い葉の群れは旧神だろう。
「なんだこれは、魔力を吸うだと――ぐぁぁぁ」
と悪神ギュラゼルバンは苦しみ悶えながら墜落。
更に悪神ギュラゼルバンの体から魔線が繋がったままだった瓦礫と衝突し血塗れだった六眼バーテにも漆黒の霧と黒い葉が絡みつく。
続いて、漆黒の霧と黒い葉は魔界騎士グレナダと魔皇メイジナにも絡み付いてしまう。
「メイジナ様、これを」
「ふ、それはお前に似合う」
グレナダがメイジナに渡そうとしていたアイテムは旧神の擬戦衣だった。刹那、悪神ギュラゼルバンたちは漆黒の霧の中に消える。
悪神ギュラゼルバンと魔皇メイジナたちが現れた場所は……。
え、俺たちが今いる場所【旧神の墓場】か。
それとも似たような旧神たちが好む場所か?
悪神ギュラゼルバンは「くそが、なんだここは!」と己の体に絡む黒い葉と茎を溶かしているが追いつけない、体が覆われてかなり動きが鈍い。
完全に不意を突かれて動揺もあるようだな。
魔力量も俺と相対した時は異なり、少ない印象の悪神ギュラゼルバン。
と、魔皇メイジナや魔界騎士グレナダと六眼バーテの体にも黒い葉などが絡み付いている。
「メイジナ様、これを持っていてください」
「だめだ、あの約定〝旧神の石箱〟で契約をしたのは我、お前は悪神ギュラゼルバンの最期を見届けろ」
「メイジナ様……はい」
と魔皇メイジナは微笑む。
悪神ギュラゼルバンは漆黒の炎を発しているが、黒い葉に覆われていく。
六眼バーテは頭部をすっぽりと黒い葉に覆われていた。
その六眼バーテは、
「……ぁぁ……メイジナ様……」
と哀しげに名を語る。
魔皇メイジナは死を覚悟したように【旧神の墓場】に向け腰にある玉佩を掲げる。
「――我はここにいる。が、約定を果たしてもらうぞ、旧神ども!」
と叫ぶと、黒い葉と黒い茎の中から桃色の魔力を帯びた女性がにゅるりと生えて、
「『ふふ、このシュバス=バッカスちゃんが、ちゃぁんと、聞き遂げてあげたわ。でも、悪神に魔皇と六眼魔族だけなの?』」
と指摘。
魔界騎士グレナダには気付いていない、旧神の擬戦衣の効果か。
「そうだ、さっさと頼む」
「『うふふ、はい♪』」
刹那、魔皇メイジナの体に絡み付いた黒い葉と半透明な烏賊魔力で桃色の花々の幻想的な魔力も周囲に散る、黒い葉から放出されている黒い霧と桃色の魔力が衝突すると火花が散っていた。
魔皇メイジナの周囲に得体の知れない声が響きまくる。
と、細かな魔法陣が無数に発生し、メイジナの周囲を回り始める。
魔皇メイジナは神像と化して一瞬で巨大な魔皇メイジナの姿に変化。
魔皇メイジナの玉佩と連動しているように六浄の武器とメイジナが装備している防具が繋がり、自然と神像に似合う大きさに変化を遂げていた。
刹那、悪神ギュラゼルバンの表情がギラついた。
「<魔神ノ半霊獄>――<悪神・神域暴刹破>――」
連続的にスキルを発動。
旧神のシュバス=バッカスを魔力の牢屋で囲うと、魔皇メイジナの玉佩を奪い、六眼バーテを引きながら魔界騎士グレナダの腹を殴り肩に担ぎながら、
「ハハハハ――」
己の内から漆黒と紫色と白銀に燃焼しているクリスタルを出して、そのクリスタルを使用、一瞬で転移して旧神の墓場から消えていた。
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