千四百二十五話 六眼六腕の魔皇メイジナと魔界騎士たち
悪業将軍ガイヴァーと髑髏騎士団は六腕の魔族たち、魔界騎士に倒されることが多くなった。魔皇メイジナの守護部隊は特別な魔界騎士たち、メイジナの眷属かな。悪神ギュラゼルバンたちを倒そうとしている六腕の魔族は魔界騎士ではなく戦士かな。身なりは軍服に統一されている。
その魔皇メイジナと悪神ギュラゼルバンには浅からぬ因縁があったようだ。ここは魔皇メイジナの居城だろう、割れた窓から先に映る魔界セブドラは真夜。魔界王子テーバロンテの斜陽ではない。
そして、玉座の壇上付近の戦いは魔皇メイジナの勢力か数にして数百名の魔界騎士と六腕の戦士たちの活躍で髑髏騎士たちを倒しまくって押し返していた。悪業将軍ガイヴァーも強いが、六眼六腕の大剣を四つ持つ端正な顔立ちの魔界騎士に押されて吹き飛ばされている。
一方、大広間では悪神ギュラゼルバンの勢力に六腕の魔族たちは押されていた。ベターン大公とミュラン公は活躍している。
俺が見た時と大差ない、魔貴族としての衣装を着ていた。
体の節々から<血魔力>のような血と薄紫の魔力と茶色の魔力を放出し、貴族服の徽章やワッペンのような紋章にも魔力が内包されている。
魔侯爵アドゥムブラリと似た貴族服か、腫れた顔に片眼鏡を装備しているベターン大公は、口から白い繭のようなモノを無数に吐いた。
白い繭のような範囲攻撃で絨毯と石床を白く変化させながら六腕の魔族の足を絡め取るように動きを封じる。
と、前進しながらシックルと似た魔剣を両手に召喚するがままシックル刃を振り回し、六腕の魔族の武器のすべてを弾くと振り抜いたシックル刃で、その六腕の魔族の首を刎ねて倒していた。太鼓腹に似合わない動きといったら失礼か。
インナーマッスルが多いと意外に速いんだよな。時間にして一秒もない間だ。
と横から迫った六腕の魔族の魔剣に太鼓腹を抉られる。
うあ、血飛沫と内臓が弾けるベターン大公、悲鳴を上げた?
と、嗤う? その抉られた太鼓腹の血肉と内臓に鮫の歯牙を生やすと、六腕の魔族の魔剣を噛み砕きながら腕と体に絡み付き一瞬で太鼓腹の中に六腕の魔族が引きずり込まれていた。太鼓腹が上下に動いて咀嚼音を響かせると太鼓腹の表面に魔印が浮かんだ。
更に口から白い繭を吐く。
凄まじい速度で飛翔した白い繭は他の六腕の魔族の頭部を貫いていた。
怖いが強いなベターン大公……。
ビュシエの巨大な石棺による単純な押し潰しは大成功だった。
貴婦人ミュラン公は口から骨針を飛ばし相対した六腕の魔族の体を一瞬で穴だらけにして倒した。
そのミュラン公に六腕の魔族が迫る。
六本の腕で振るった魔剣を嗤い声を響かせながら、足下と宙空に魔力の幻影を発して奇妙に踊りつつ六つ魔剣の剣撃を華麗に避ける。
と、六腕の魔族の頭部に両手を絡ませた。その一瞬で六腕の魔族の頭部が拉げ曲がり背中側に顔を向ける。
その六腕の魔族の腹に魔剣が突き刺さると、六腕の魔族は倒れた。
ミュラン公は直ぐに左右へステップを踏みながら移動し六腕の魔族を狙う、両手に握られた細身の魔剣で袈裟斬りと突きを連続的に繰り出して、六腕の魔族を押し込むと、六腕の魔族は爆ぜた。
至近距離からの骨針ショットガンか、あれは喰らう、魔剣の攻撃を防御した直後だからな。
次の右にいた六腕の魔族が発狂しながら突き技を繰り出すが素早いミュラン公には当たらず、身を翻すような動きから左肩が消えたような体が沈む体勢の剣術で六腕の魔族の肩口から胸が一気に切断される。
と、その六腕の魔族の首と両足が鎧ごと真横に切断されていた。強いと、左に迫った六腕の魔族の首を魔剣で貫いて倒していた。
冷静に見て、ヴィーネやユイ並みの剣術か? 戦いは本当に状況次第で変化するとよく分かる。
この記憶を保ったまま耐えていたかもしれない魔皇メイジナの魂に感謝しよう。
そして、動きが良いミュラン公をキッカは良く倒してくれた。
光魔ルシヴァルの<
更にいえば塔烈中立都市セナアプアの冒険者ギルドマスターだ。
上界と下界の広い街に地下もある塔烈中立都市セナアプアには魔塔が乱立し浮遊岩や浮遊島も無数に浮かぶ。とんでもなく広い三角州に建つ都市がセナアプアで上院と下院の評議員たちも曲者だ。
評議員の持つ魔法学院と密接に絡む【魔術総武会】や、裁判所のような評議宿、それに三カ国の大貴族の思惑で動くスパイ組織と盗賊ギルドたち、そして、魔力豪商オプティマスに暗殺一家と闇ギルド……。
しかも闇ギルドはヤヴァいなんてもんではない。
【白鯨の血長耳】がいたからなんとか盛大な争いは起きていない状況だった。
俺たちが塔烈中立都市セナアプアに乗り込むとカザネの言葉の〝盲目なる血祭りから始まる混沌なる槍使い〟となったわけだが……内実は【天凛の月】が乗り込む前こそが、カオスな毎日だったに違いない。
上界も下界も浮遊岩を巡る争いもあるし、宗教街と武術街に血銀昆虫の街なんて怖すぎる……。
【闇の枢軸会議】の勢力も互いに争っていた。
評議員と関係していた【闇の八巨星】と【テーバロンテの償い】……バーソロンと関係が深い【魔の扉】のバルミュグ……大魔術師ケンダーヴァルことフクロラウド・サセルエルなど……。
中小の闇ギルドも乱立し凄まじいカオスだったはずだ。
そんな、状況の塔烈中立都市セナアプアでキッカ・マヨハルトは、
猛者というか偉人だろう。
聖ギルド連盟や正義の神シャファの秘密裏な執行機関、【義遊暗行士】、【暗行衛士】、【義遊暗行師会】と繋がりの深い正義の評議宿と連携している裏仕事人の仕事もあったようだしな。
更に塔烈中立都市セナアプアに辿りついたころは、
ノーラの一族との関係性はまだ詳しく聞いていないが少しだけ皆とのムフフでハッスルの夜の時に聞いている……。
そして、それらしい会話は他の<
<血剣術>の技術はかなり高度で強いからこそミュラン公の隙を逃さず<血王印・血雲刃嵐>の必殺技が決まったんだろう。光魔ルシヴァルの光属性との相性も良かった。
キスマリと戦ったドラムラン大公と褐色の翼を持つトーガを着た巨漢魔族ウゲラヌス大公はここにはいないようだ。
すると、悪神ギュラゼルバンが、
「聞きしに勝る六眼六腕たちも隙を衝けば、たわいもないものだな。止まるがいい<悪神・神域展開>――」
六腕の魔族たちの動きが一斉に硬直。
あれは喰らったから分かるが、重力が増えたとかいうレベルではない。
魔法かスキルか、上から押し付けられるとかではなく、体のすべてに圧力がかかった。
光魔ルシヴァルの体と<魔闘術>系統が豊富にあったから戦闘を継続できた。
悪神ギュラゼルバンは近い位置にいる六腕の魔族に近付き、右腕が持つ魔槍を突き出し六腕の魔族の腹を魔槍で穿ち倒す。
直ぐに左腕の魔槍を迅速に横に振るい左にいた六腕の魔族の体を輪切りにして倒すと、右手を持ち上げ、魔槍から漆黒の炎を噴出させる。
その魔槍にぶら下がり、まだ息のある六腕の魔族の体を漆黒の炎で燃焼させて塵にして倒す。
と、悪神ギュラゼルバンは腰から背後に伸びている魔線を引っ張る。
魔線は首輪と繋がっていたプラチナブロンドの髪の女性魔族を引き寄せて抱き寄せた。
女性魔族は、
「くっ、離せ……悪神……触るな」
と喋る。
まだ顔には幼さが残るが、あの女性は……。
俺が戦った六眼バーテに間違いない。
その六眼バーテは泣く。
魔皇メイジナと同じ種族だったのか。
オオノウチは魔法紋の契約書を使い六眼バーテを召喚していた。六眼バーテも六腕だった理由はコレかよ……。
あの時、背景なんて考える余裕はなかったが……。
悪神ギュラゼルバンは魔皇メイジナの勢力と争い勝利し、長い間、六眼バーテはこき使っていた結果かよ。
……今思えば納得だが、やるせない思いだ。
悪神ギュラゼルバンは、その六眼バーテの顔を長い舌で舐め回してから、
「魔皇メイジナに魔界騎士グレナダよ、お前の同胞、バーテ・ラマロウは落ちたぞ! お陰で、楽々とラデルバラン害螺門を突破できたわ! ハハハハ――」
と叫ぶ、だから六腕の魔族グレナダの装備を持っていたか。
「あぁ……」
六眼バーテは泣き崩れる。
が、直ぐに悪神ギュラゼルバンが六眼バーテの耳を囓るようなことをすると、六眼バーテは顔を青ざめて背筋を伸ばしていた。悪神ギュラゼルバンめ……。
これを見ると、【グィリーフィル地方】に出向いて完全に滅したくなる。
魔皇メイジナは、
「バーテ……悪神ギュラゼルバンめが……」
と呟くと、近くにいる味方に話しかけていた。
近くで髑髏騎士の数体を魔槍で薙ぎ払って倒している強者がいた。綺麗な女性で、槍武術は断罪流槍武術と似ている。
彼女が六腕の魔族グレナダか。
断罪槍を模倣したという……。
すると、悪神ギュラゼルバンは、
「目障りな魔皇メイジナと、六眼六腕の魔族メイジナ共、覚悟はいいな――」
と悪神ギュラゼルバンは頭上と周囲に数十の魔槍を召喚していた。
それらの魔槍を六眼六腕の六腕の魔族たちへと直進させる――<悪神・神域展開>で体が動けない六腕の魔族たちは為す術なく魔槍に体を無残に貫かれる。
魔槍から噴出した漆黒の炎を浴びた六腕の魔族たちは一瞬で炭化し消えた。
〝グィリーフィル漆黒の魔炎晶〟の効果か?
かなりの威力だが……鑑定が必要だな。
そして、悪神ギュラゼルバンと六腕の魔族たちの周囲には<悪神・神域展開>の効果かな、縦縞模様が時々出現している。
追憶の映像だからか?
俺が見ている視界は魔皇メイジナの六眼を元にしていると思うが魔皇メイジナの能力が反映されているんだろうか。
とベターン大公とミュラン公も動けない六腕の六腕の魔族を楽々と倒していく。
戦いは一気に悪神ギュラゼルバン側に傾いた。
すると、魔皇メイジナは、
「バジラセ戻れ!」
と指示を飛ばした。
一人<悪神・神域展開>を跳ね返していた異彩を放っていた端正な顔立ちの魔界騎士は、数十の髑髏騎士を倒し、衝撃波を周囲に喰らわせ、ミュラン公とベターン大公を吹き飛ばしてから、
「はい――」
と魔皇メイジナの前に戻ってきた。
魔皇メイジナは頷き四腕を上げる。
その手に六浄魔剣セリアス。
六浄魔大斧ガ・ランドア。
六浄独鈷コソタクマヤタク。
六浄魔刀キリク。
が召喚された。
元々持っていた六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルを掲げ直し、皆に向け、
「グレナダも皆も出るぞ! 例のアレを使う、バーテを取り返すぞ」
「「「「ハッ」」」」
魔皇メイジナを筆頭に左に魔界騎士バジラセと右に魔界騎士グレナダたちが並び、背後から魔界騎士たちが一斉に前進を開始。
悪神ギュラゼルバン側は悪業将軍ガイヴァーが合わせ前進。
「Gyoaaa――メイジナ覚悟! <無慈悲ノ悪突>――」
先頭の魔皇メイジナは笑みを浮かべると前傾姿勢を見せた刹那、六腕がブレた。
「げぁぁぁ――」
悪業将軍ガイヴァーは胴体を半分斬られて足が切断されて吹き飛んでいた。
そのまま前進した魔皇メイジナは無数の髑髏騎士を倒しまくり、ミュラン公とベターン大公の攻撃を避けながらミュラン公とベターン大公を斬り伏せ、悪神ギュラゼルバンに近付いた。
悪神ギュラゼルバンは「チッ、<魔皇強靱>か――」と言いながら前進し、両手の魔槍を突き出す。
魔皇メイジナの繰り出した六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルの<断罪刺罪>のような<刺突>と衝突して、二人の神の間から激烈な衝撃波が発生し、二人以外の存在が吹き飛ぶように、床と天井の建材が崩壊していく――。
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