千四百二十三話 悪神ギュラゼルバンとの激闘

 悪神ギュラゼルバンは魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌの遠距離攻撃を掻い潜り六浄武器を奪おうと前進してきた。

 その悪神ギュラゼルバンを凝視しつつ<鎖>を飛ばす。

 <鎖>は魔槍で左に簡単に弾かれるが、操作し再び向かわせる。その<鎖>を再度弾いた悪神ギュラゼルバンは前進してくる。即座に六浄短槍ベギリアルを召喚し、右手に六浄魔槍キリウルカを召喚すると悪神ギュラゼルバンは動きを変えて――。

 両手に握っていた魔槍に<血魔力>のような魔力と漆黒の炎を込めて、俺ではなく斜め後方に<投擲>を行うと、<投擲>した魔槍が相棒と魔皇獣咆ケーゼンベルスが繰り出した炎を打ち消して無数の黒寿草ごと地面を大きく穿った。漆黒の閃光を放つ爆発となったが爆風は、地面に突き刺さった魔槍の中へと収斂し、衣装が光る魔貴族に変化。


 その魔貴族に向け、


「奇っ怪な! 先ほどの人食い魔貴族を誕生させたのか!」

「にゃごぁぁ」


 魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌは炎を吐く。

 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも<バーヴァイの魔刃>を放った。

 魔貴族は後退して炎を避けたが、<バーヴァイの魔刃>を喰らい弾け散る。


 悪神ギュラゼルバンは旧神の黒い葉を両手に召喚した魔槍を振るい回して細断にしてから魔槍を俺に<投擲>を行う。

 その魔槍を受けずに避けた。


 悪神ギュラゼルバンは、


「――六浄の武器を自分の物にしたのか。魔皇メイジナめが、旧神に完全に囚われているわけではないいのか……」


 悪神ギュラゼルバンはそんなことを語ると、魔皇メイジナの神像に向かった。

 魔皇メイジナの神像に嵌まっている防具を狙うようだが、防具の飛来はない。

 

 そして、悪神ギュラゼルバンは魔皇メイジナの玉佩で入手可能とは行かなかったようだ。

 

 その悪神ギュラゼルバンに神獣ロロディーヌが紅蓮の炎を吐いた。

 悪神ギュラゼルバンは素直に後退して紅蓮の炎を避ける。

 キサラの<バーヴァイの魔刃>と――。

 ヴィーネの光線の矢と――。

 ゼメタスとアドモスの<バーヴァイの魔刃>――。

 を連続的に避けた。神獣ロロディーヌは前進し体から触手を伸ばす、骨剣は魔槍に弾かれた。

 ヴィーネは再び翡翠の弓バジュラの光線の矢を連続的に射出していく。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスも悪神ギュラゼルバンを追った。

 悪神ギュラゼルバンは周囲に漆黒の炎を撒くと、そこから太鼓腹の魔貴族を数体誕生させて上昇。


 五体の太鼓腹の魔貴族は、魔皇獣咆ケーゼンベルスの銀色の炎を喰らって燃焼して散った。


 悪神ギュラゼルバンは己を囲う球体状の防御陣を生み出し、触手骨剣と光線の矢を防ぐ。

 球体の防御陣は無数の魔槍と漆黒の炎で構成されていて物理と魔法の防御能力が高い。


 魔力の消費量はかなり高そうだが、悪神なだけに魔力切れも起きそうにない。

 無尽蔵の魔力を持つのかもしれないな。

 が、<闇透纏視>を続けていく。

 悪神ギュラゼルバンの観察を強めつつ<鎖型・滅印>で<鎖>を連発した。


 悪神ギュラゼルバンは球体状の防御陣を使わず、宙空に浮いている魔槍を幾つか振るって簡単に連続的に飛来している<鎖>を弾いてきた。

 続けて<鎖>に混じって《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》を連発するが、《連氷蛇矢フリーズスネークアロー》も魔槍によってすべて弾かれる。

 

 魔法は効かないと思うが試しに――。

 《スノー命体鋼・コア・フルボディ》を発動し――。


 新衣装に氷の鎧が装着されていく。

 皆を乗せながら飛翔している神獣ロロディーヌの位置と、魔皇獣咆ケーゼンベルスの位置と悪神ギュラゼルバンの位置を確認。


 俺の《氷命体鋼スノー・コア・フルボディ》を纏った音を察した魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロはタイミングを合わせて左右に跳躍し悪神ギュラゼルバンから離れた。


 悪神ギュラゼルバンは動きを変えた俺たちを見て、静止。

 その隙に――悪神ギュラゼルバンに向け――。


 王級:王氷墓葎キングフリーズ・グレイブヤードを唱えた。


『閣下の強力な魔法なら多少は効くはず!』

『はい!』


 ヘルメとグィヴァの念話が外に響いたようにう冷気が谺し、周囲の空間が凍り付いた。

 氷の墓標のような氷の壁が幾つも誕生し悪神ギュラゼルバンに向かう。

 悪神ギュラゼルバンは漆黒の炎を周囲に吐き出しながら王氷墓葎キングフリーズ・グレイブヤードの氷の墓標を囲むと一瞬で漆黒の炎に王氷墓葎キングフリーズ・グレイブヤードが吸い込まれてしまった。


「見事な氷の魔法だが、無駄だな、我の魔力の供給源となるだけだぞ」

『光属性以外は効きそうにないですね……』

『悪神、神なだけはあります』

『はい』


 左目にいる常闇の水精霊ヘルメと右目にいる闇雷精霊グィヴァに同意。

 悪神ギュラゼルバンにヴィーネの光線の矢が向かうが、魔槍で防がれる。悪神ギュラゼルバンの足下に絡み付く黒い葉は自然と萎んで漆黒の閃光を放つと燃えていた。


 隙を窺うが、今のところはない。

 ――<魔雄ノ飛動>を意識し、発動――。

 悪神ギュラゼルバンを見ながら<血道第五・開門>と<血霊兵装隊杖>の光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装を消して、肩の竜頭装甲ハルホンクを意識。


「ハルホンク、ジャケットに胸甲が少し付いたタイプで」

「――ングゥゥィィ」


 防護服のジャケットとズボンとインナーの形が少し変化。

 右と左の胸甲には黒寿草の印が追加された。

 蛍光色と黒色を活かしたシンプルなデザイン。格好いい。


 そのままゆっくりと飛翔――。

 <黒寿ノ深智>のお陰で、魔力は全快だ。

 悪霊驍将軍ゲーラーなどとの戦いの連続から消費し続けていたからちょうど良かった。

 体も快調、旧神エフナドの加護や恩寵の<黒寿ノ深智>は中々に凄い。

 意識すれば、黒寿草も思念で操作が可能のようだ。

 蛍光色の液体の大本は黒寿草。魔力と精神力もかなり増加した。

 すべての<魔闘術>系統を解いても、何かの<魔闘術>系統を体に展開しているように見えるかも知れないな。


 と悪神ギュラゼルバンは両腕に持つ魔槍を振るい、突く。

 己の周囲に無数に出現させている魔槍も振るい回して、魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌの遠距離攻撃をすべて往なしては反撃を行う。

 地面から伸びた、旧神の黒い茎と黒い葉と黒い葉が刃に変化した植物をも、無数の魔槍で薙ぎ払い切断しまくる。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは『「ウォォン!」』と地面が爆ぜるような衝撃波と銀色の炎を吐いた。

 が、悪神ギュラゼルバンの球体の防御陣を盾にするような分身を活かし防御しながら後退する悪神ギュラゼルバンは巧み、神獣ロロディーヌも紅蓮の炎と触手骨剣を繰り出していくが、さすがに紅蓮の炎を球体の防御陣では受けようとはしない。

 が、触手から出た骨剣とヴィーネの光線の矢は球体の防御陣で防いでは、球体の防御陣を消して、両手の魔槍の柄で叩き落としていた。更に俺に向けて魔槍を<投擲>――。

 凄まじい勢いで加速してくる魔槍を掴みたくなったが――。

 螺旋状に刃が出現したから逃げた。


 背後の山なりとなっている地面が悪神ギュラゼルバンの魔槍と衝突し爆ぜた。

 その間に、魔皇獣咆ケーゼンベルスが、


「――ウォォォォン!」


 と、飛び掛かるように突進、悪神ギュラゼルバンは上昇し特攻を避ける。

 斜め下から旧神の黒い葉と神獣ロロディーヌの細い紅蓮の炎とヴィーネの光線の矢とゼメタスとアドモスの<バーヴァイの魔刃>が向かうが、すべてを避けた。

 と、足下から時々魔法書の切れ端を落としていた。

 落とした箇所は旧神の気配が消えていた。

 

 悪神ギュラゼルバンは高速で移動しながら、時折、球体状の防御魔法を発生させて、己に飛来しているすべての遠距離攻撃を往なし避けて防ぎながら、魔槍に漆黒の閃光の反撃だけでなく、指先から生み出した小さい魔法陣から眼球のガビーサー亜種を無数に生み出していた。


 そのガビーサーは己の周囲に結界を造れるようで地面の旧神たちの黒い葉たちを一気に枯らしていく。

 ゼメタスとアドモスが、地面に増えた眼球ガビーサー狩りにロロディーヌから分かれる。

 

 悪神ギュラゼルバンは魔皇メイジナの神像に近付こうとしたが、神獣ロロディーヌの紅蓮の炎を見て、後退し、俺を見て、


「混沌の槍使い、お前は、旧神と魔皇メイジナの縁を持つのか?」

「旧神は持つが、魔皇メイジナとは面識がない」


 悪神ギュラゼルバンは旧神の擬戦衣と魔皇メイジナの玉佩を見てから魔皇メイジナの神像を睨んでから、そのアイテムを消し、俺を凝視し、


「……お前を倒せばすべてが丸く収まる――」


 悪神ギュラゼルバンは両手から膨大な漆黒の炎を発した。

 スキルか魔法か、漆黒の炎は円状に、悪神ギュラゼルバンを挟む――。

 と、俺の背後に転移してきた。俄に<仙魔・龍水移>を実行し、悪神ギュラゼルバンの背後を取り返す――両手の六浄魔槍キリウルカと六浄短槍ベギリアルに<血魔力>を送りながら、<握吸>と<握式・吸脱着>を実行し、


「チッ――」


 <血想剣>と<血想槍>を発動。

 <六浄ノ朱華>を繰り出した。

 六浄魔槍キリウルカの突き――。

 六浄魔剣セリアスの袈裟斬り――。

 六浄魔刀キリクの逆袈裟――。

 六浄魔大斧ガ・ランドアの突き上げ――。

 六浄独鈷コソタクマヤタクの突き――。

 六浄短槍ベギリアルの払い――。

 

 悪神ギュラゼルバンは「ぬおぉ――」と叫びながら背中に目があるように朱華に光る六浄魔槍キリウルカと六浄魔剣セリアスの袈裟斬りを漆黒の炎が発生している魔槍で防ぐと爆ぜたが、身を捻りながら、六浄魔刀キリクの逆袈裟も防ぎ、爆風を浴びながら後退――。

 

 不意打ちから接近戦も得意か、悪神ギュラゼルバンは上級神としての確固たる実力を持つ。


「にゃごぉ」

「ウォォォン!」

「「<バーヴァイの魔刃>!」」


 悪神ギュラゼルバンは後退――。

 同時に体を一回り大きくさせながら全身から漆黒の閃光を放つと上昇し皆の遠距離攻撃を避ける。

 と、


「『我にこれを使わせるとは――<悪神・神域展開>』」


 刹那、皆の動きが急激に遅くなり、俺も力を奪われたようなような感覚となって体が異常に重くなった、これが神意力を有した<神域展開>か。


 両足から<血道第一・開門>で<血魔力>が濃厚な血を大量に放出させた。


「くっ、これは、ご主人様も動きに違和感が?」

「シュウヤ様、大丈夫ですか!」

「「ぬぬ――」」


 ヴィーネとキサラが神獣ロロから降りて左右を飛翔していく。


『閣下、わたしたちは封じられていません』

『はい、いつでも外に出られます』

『おう』


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも跳び下りて、皆から離れた。

 キサラは紙人形の<飛式>を俺にも寄越してくれた。十兵衛と千方の<魔倶飛式>は相棒と魔皇獣咆ケーゼンベルスに付けたかな。


 体を更に大きくさせた悪神ギュラゼルバンは、


「お前たち<悪神・神域展開>の中で動けるとは予想外だ、すべては封じられなんだか――」


 と漆黒の炎を発した長い尾を振り回す。

 魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌに漆黒の炎が付いた尻尾を喰らって吹き飛んだ。


「――ごぁ――」

「ぎゃ――」

「ロロ!」


 と俺にも大きい尻尾が飛来――。

 <闘気玄装>を強めながら大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚した。その大きい尻尾の攻撃を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で防ぐ――。

 左手から半透明の蛸足集合体シュレゴス・ロードが出る。

 そして、


『主、悪神ギュラゼルバンに<旧神ノ暁闇>を喰らわせたいが……』

『あぁ、攻撃系で遠距離か?』

『うむ、〝暁闇を破る鬨の声〟我の敵にだけ光を有した魔声でダメージを与える』

『了解した』


 魔軍夜行ノ槍業が震動し、


『この<悪神・神域展開>は動きを鈍らせる以外にもスキル効果を落とす、スキルを無効化などもあるようじゃ』

『わたしたちの召喚は可能のようだけど』

『出たら重くて動けないかもな』


 と、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に再び尻尾の攻撃が当たった刹那――。


「『ウォォォォン! これはなんだ!』」

「にゃごおぉぉ」

「え!」

「こ、これは!」

「な、なんと!?」

「閣下ァ」


 と魔皇獣咆ケーゼンベルスと相棒の叫び声に皆の声が響いた。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を下げて左右を見ると魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌに皆が、闇色の四角い立方体の中に封じ込まれてしまった。


 神獣ロロの紅蓮の炎でも崩せない。

 悪神ギュラゼルバンは、


「フハハ、神獣、お前の戦神のような火力をもってしても、それは簡単には溶かせまい? 眷属と髑髏の魔界騎士に魔皇獣咆ケーゼンベルスと仲良く<魔神ノ半霊獄>の中で暫く大人しくしておけ」


 と発言すると、俺を見た悪神ギュラゼルバンは魔槍を俺に向けると漆黒の閃光を放つ。


 直ぐに<無方剛柔>を意識し発動。

 <ルシヴァル紋章樹ノ纏>を発動。

 <仙魔奇道の心得>を発動。

 <仙魔・暈繝飛動うんげんひどう>――。

 <水月血闘法・水仙>を実行――。


 動きが遅くなったが<魔闘術>系統は豊富。

 漆黒の閃光を避けきった。

 悪神ギュラゼルバンが加速しながら魔槍を突き出してくる。転移するような加速力の突きを見ながら魔槍を右に避け、<無方剛柔>を解除しながら左手に仙王槍スーウィンを召喚し、その左手で<血龍仙閃>――。


 悪神ギュラゼルバンは左手の魔槍を掲げて、


「ぬ、新たな<魔闘術>系統か……」


 <血龍仙閃>を防ぐと衝撃を殺すように黒い葉を萎ませ枯らしながら後退。


 両腕に漆黒の炎を纏いながら円を描く。

 悪神ギュラゼルバンは圧倒的な雰囲気を持つが、師匠たちの追憶で魔人武王ガンジスと遭遇した時のほうが、恐怖感があるのは、俺が成長しているお陰か。

 と悪神ギュラゼルバンの背後の空間がズレる。

 なんか召喚でもするのか。


 <経脈自在>――。

 ならば俺も――。

 右手に断罪槍を召喚――。

 <水神の呼び声>――。

 <水の神使>――。

 <闘鮫霊功>――。


『イルヴィーヌ師匠、体が痛いかも知れませんが、頼みます――』

『了解、闘鮫霊功か、気にせず使え』

『はい』


 断罪流槍武術を扱う断罪槍のイルヴェーヌ師匠を召喚し、<魔軍夜行ノ憑依>を実行した。


 イルヴィーヌ師匠の精神体と融合する。

 イルヴィーヌ師匠の半裸が見えた気がした。

 白と銀のグラデーションが綺麗な髪が靡くイルヴィーヌ師匠の瞳は白緑の瞳で美しい。小鼻の上に僅かなソバカスがある。

 綺麗だ。


『<百力冥想>に<魔銀剛力>――』

『<断罪ノ化身>』


 俺と融合中のイルヴィーヌ師匠は早速スキルを使う。

 新たな丹田の器官から魔力を得る感覚を得た。

 体から<魔銀剛力>の<魔闘術>系統の銀色の魔力は出ないが、代わりに月虹の魔力が吹き荒れるように体から出た。


 すると、悪神ギュラゼルバンの背後の空間から甲冑の胴だけ、その胴の中に四眼が犇めき合う奇怪なモンスターが現れる。

 

「『グゲベラファヴァ……悪神、お前、俺の代えの四眼を潰したくせに、また呼ぶのかよ、あ、なんだ、ここは、旧神の墓場か? 俺をここで使うとか、お前正気か? あぁ、瘴気は喰らいすぎて悪神ギュラゼルバンだったな、グゲベラファヴァ……』」


 奇怪な笑い声だ。どこに口があるのか分からない。


「四眼王ラフマンよ、お前の相手は、混沌の槍使いだ、潰せ――」


 甲冑の胴に巨大な四眼を有した存在が四眼王ラフマンか。

 四眼王ラフマンが煌めくと横に転移してきた。


『――それが転移か、遅い――<断罪槍・薙躱斬打>』


 四眼王ラフマンの四眼から刃が飛び出たが自然な速度で右腕を上げる。

 断罪槍と衝突した四つの刃を断罪槍の片鎌の穂先が切断――。

 更に、断罪槍の柄が斜め下に向かうように右腕を捻るように下ろした。

 捻られながら斜め下に向かう片鎌槍の穂先が四眼王ラフマンを輪切りにし、返す断罪槍の柄が、四眼王ラフマンの胴と眼球と衝突し、その胴を潰し吹き飛ばした。


 ピコーン※<断罪槍・薙躱斬打>※スキル獲得※


 四眼王ラフマンは吹き飛びながら燃焼し消えた。

 

「四眼王ラフマンがこうも容易く……」


 驚く悪神ギュラゼルバンに向け――。

 <龍神・魔力纏>――。

 <滔天仙正理大綱>――。

 <滔天神働術>――。

 <滔天魔経>――。

 <光魔血仙経>――。

 <脳脊魔速>を発動――。

 一気に近付いた。

 イルヴィーヌ師匠の力を活かすように――。

 漆黒の炎に身を包んだ悪神ギュラゼルバンは前傾姿勢のまま突進。

 俺の速度を合わせて魔槍を突き出してくる。

 構わず、


「<断罪刺罪>――」


 突き出した断罪槍の穂先と悪神ギュラゼルバンの魔槍の穂先が衝突。

 悪神ギュラゼルバンは、「速度が異常に出ているが、神格を有した戦いに慣れているようだな――」と発言しながら漆黒の炎を灯す左手に持つ魔槍を突き出してくる。


『<断罪槍・月神一枝>――』


 断罪槍の三日月の枝刃が伸びるがまま片大鎌槍となった断罪槍が、その魔槍を弾くと、そのまま体幹を活かすように前進し『<魔銀剛閃>――』を発動――。

 悪神ギュラゼルバンの片腕を片大鎌槍で切断した。


「ぬごぁぁ――」


 悪神ギュラゼルバンは加速力を高めて後退――。

 体の背後に魔法陣が生まれると瞬時に腕を再生させた。

 仙王槍スーウィンを一旦消して神魔光邪杖アザビュースを出す。

 

『弟子、それを――』


 イルヴィーヌ師匠の不安は分かるが構わず――。

 神魔光邪杖アザビュースに魔力を通した。

 先端から十字架の閃光が迸った。光刃が飛び出る。

 十字架の光刃を喰らった悪神ギュラゼルバンは体が萎縮したように黄土色に燃え上がる。


 ピコーン※<神魔撲殺>スキル獲得※

 ピコーン※<神魔無言>スキル獲得※


「げぁぁぁぁ」

『主――』


 左手から半透明の蛸足集合体シュレゴス・ロードが出た。


『今だ使え、シュレゴス・ロード!』

『<旧神ノ暁闇>――』


 半透明の蛸足集合体シュレゴス・ロードから異常に増える。

 人型を模る? と本物シュレが見えた瞬間――。

「『――シュレゴファッザッロッガァァァァァァァ』」


 鮮烈な光と闇が黄土色の炎に包まれている悪神ギュラゼルバンと衝突。

 耳が劈くどころか目の前の空間が歪む。

 暁暗の空間に閉じ込められたような悪神ギュラゼルバンの体は奇怪にねじ曲がり潰れながら爆発を繰り返して収縮すると、空間ごと爆ぜた。


 悪神ギュラゼルバンの姿が消えたかに見えたが、空間が歪むと、そこから血だらけとなった悪神ギュラゼルバンが這い出てくる。

 ふらふらになって立ち上がると、俺に向け――。


「<悪神・神域暴刹破>――」


 悪神ギュラゼルバンから得体の知れない魔声が響く。

 漆黒の炎が見えたが、姿がぼやける。

 と、バチバチと音が響く。<魔闘術>系統の幾つかが弾け飛び封じられた。精神が圧迫されて、心臓が握り潰される……。


 痛すぎる。

 と、鐘の音が響いた。


『くっ、弟子、これは精神攻撃だ』

『閣下、ここはお任せを』

『おう、<精霊珠想>――』


 左目から出た液体ヘルメの<精霊珠想>が視界を覆うと、悪神ギュラゼルバンが転移し、右から魔槍を突き出してきた。


 直ぐに<魔仙神功>を実行――。

 膨大な魔力を体内で爆発しているんではないかと錯覚するように体が熱いまま断罪槍の柄で魔槍を受けとめた。

 半身の姿勢から断罪槍で<魔手回し>――。

 三日月の枝刃で魔槍を引っ掛けて、悪神ギュラゼルバンの魔槍を外に引っ張るように回し弾く。

 即座に神魔光邪杖アザビュースで覚えたばかりの――。

 <神魔無言>を悪神ギュラゼルバンに喰らわせた。

 

「――」

 

 まだ燃えている悪神ギュラゼルバンの何かを封じたと理解。

 同時に<魔仙神功>の加速力を活かす――。

 神魔光邪杖アザビュースで<杖楽昇堕閃>――。

 悪神ギュラゼルバンの頭部と――。

 吹き飛ぶが加速するがまま二回目の<杖楽昇堕閃>の神魔光邪杖アザビュースの打撃を喰らわせる。悪神ギュラゼルバンは殴られた方向に吹き飛ぶ。

 その悪神ギュラゼルバンの脳天に教皇用十字架の形を刻むように<神魔撲殺>を喰らわせた。


「――」


 悪神ギュラゼルバンの頭部が完全に陥没し、上半身の一部から心臓部のようなクリスタル状の何かが見えた。

 回復はさせない。

 両手の武器を消し、右手に神槍ガンジスを召喚するがまま――。

 <戦神震戈・零>を繰り出した。

 ※戦神震戈・零※

 ※戦神イシュルル流:<神槍技>※

 ※戦神イシュルルの戈魔力が<戦神震戈・零>と化す※


 体から神意力を有した膨大な魔力が湧き上がる。

 俺自身から酒の匂いが漂うと、煌びやかな戈が出現。

 前方の空間が、その戈となったかの如く、そのまま神槍ガンジスと重なって前進――。

 煌びやかな戈と方天画戟と似た双月刃の穂先が融合しつつ悪神ギュラゼルバンの体のすべてを穿ち抜く――。

 戦神イシュルルの戈魔力と神槍ガンジスの魔力が、悪神ギュラゼルバンの魔力ごとすべてを消し飛ばした。


 

 静寂が包む。

 微かな黒い葉が蠢く音が響くのみ。


『ふふ、やりましたね!』

『お見事です!』

「シュウヤ様!」

「ご主人様、勝利を!」

「閣下、悪神ギュラゼルバンを消し飛ばした!」

「おぉぉ閣下の大勝利!」

「おぉぉ――ウォォォォォン!」

「にゃおおおお~」


 神獣ロロディーヌの勝利の雄叫びだ。

 

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