千四百二十一話 間欠泉のように吹き荒れる蛍光色の液体
ここは、知能を有した群生旧神の間でもあるのか。
悪神ギュラゼルバンは周囲に魔槍を幾つも召喚する。
それらの魔槍から漆黒と紫の炎が発生し、魔槍と魔槍の宙空の空間を埋めるように拡がると瞬く間に己を囲う球体状の防御陣を形成した。
悪神ギュラゼルバンの周囲三百六十度の方向から攻撃から守れそうな防御陣で、相棒の紅蓮の炎とケーゼンベルスの銀色の炎をその防御陣で防ぎながら旋回を続けていく。
すると、大空洞に繁っている黒い葉の群れと茨を有した茎が上昇し、そんな防御陣に守られている悪神ギュラゼルバンの足下に絡みつこうと伸びていく。
黒い葉の幾つかは魔刃に変化していた。
その黒い刃と葉は虹色と蛍光色の魔力を発して加速し、悪神ギュラゼルバンを守る防御陣の表層を囲うと防御陣を斬る。
悪神ギュラゼルバンは、
「話が違うぞ旧神ども、魔界騎士グレナダの旧神の擬戦衣はここにあるのだ、なぜ、我だけに――」
と叫びながらも防御陣は直ぐに回復させた。
『断罪流槍武術を模倣した魔界騎士グレナダを知る悪神ギュラゼルバンか』
魔軍夜行ノ槍業の断罪槍のイルヴェーヌ師匠が念話を寄越す。
『悪神ギュラゼルバンは魔界騎士グレナダを倒して〝旧神の擬戦衣〟を入手したということでしょうか』
『たぶんそうだと思う』
と念話をしている間に悪神ギュラゼルバンは漆黒の炎を己の体から出して加速し、上昇、黒い葉の群れから離脱した。
先端が刃となった黒い葉と茎の群れも蛇のような動きで悪神ギュラゼルバンを追い掛けた。
悪神ギュラゼルバンは魔皇獣咆ケーゼンベルスの炎と衝撃波と俺たちを乗せている神獣ロロディーヌの炎を避けながら、二本の腕が持つ二つの魔槍と、周囲の<血想槍>のようなスキルで操作している複数の魔槍で、連続的な斬り払いを繰り出すと、黒い魔刃と葉は細断される。一部の茎は腐り始めて消えていく。
悪神ギュラゼルバンを執拗に狙っている黒い葉と茎の群れの大本は、この大空洞の中に大量に茂っている黒い葉で、黒寿草が悪神ギュラゼルバンを攻撃している、それは旧神の墓場の意思だろうか。そして、俺たちには黒い葉による攻撃は一切ない理由は先ほど〝暫しの猶予〟とあった言葉通りか。左手の<シュレゴス・ロードの魔印>の魔印からピンク色の蛸の足が出た。
その
『主、ここを悪神ギュラゼルバンは、〝知能を有した群生旧神の間〟と語っていたが、正解だ。同時に【旧神の墓場】でもあり、旧神エフナドの秘奥黒寿宮殿でもあり、魔皇メイジナの遺跡でもある』
『……すべてか、地下遺跡自体が旧神たちか? それが旧神エフナドの秘奥黒寿宮殿で魔皇メイジナの遺跡を喰らったとか? 魔神ガンゾウのように魔神コナツナの遺跡を利用したとか? 融合したのか? すべてが一緒くた?』
『すべてがYESだ。我は旧神の墓場と呼ぶが、次元魔力が漏れているように無数の旧神たちの影響で、様々時代と時代と異世界と異世界が交差し融合し無数に移ろいやすいのだ。だからこそ、ここは魔皇メイジナの地下遺跡でもあり、旧神エフナドの秘奥黒寿宮殿でもあるのだ』
……時代と時代に異世界と異世界……先ほど見えた映像とマッチする。
『〝列強魔軍地図〟には【メイジナ大平原】とあるから、魔皇メイジナの遺跡が大本なのか?』
『表向きはそうだろう。嘗ての魔皇メイジナが旧神と関わっていた地下神殿でもあり、メイジナが封じたか、何処かの神か、旧神に逆に喰われたか、封じられたのかも知れぬ。そこを悪神ギュラゼルバンは調べあげ無数の生贄を持って封印を解いたと推測する』
なるほど。
『では、先程、俺たちを精神的に攻撃してきた連中が旧神たちでいいんだな?』
『そうだ、無数の旧神たちだ』
『了解したが、旧神たちの思考がここで共有されるようなことが起きている?』
『当然だ、知能を有した群生旧神の間でもあるのだからな』
『先程の旧神たちの威圧じみた念話と言葉だが……』
「「『『セラ……かの者の血……樹……黒寿を……かの者ぞ……』』」」
「『……暫しの猶予を与えよう、未知な魔獣たちと、我らと近い者を持つ者……』」
と神意力で実際の俺たちの心と体を威圧してきた。
しかし、俺が惑星セラの地下に転生した直後にお世話になった黒寿草が、ここで関係してくるとは思わなかった。
『主は、名を知らぬ旧神たちの幾つかから既に認められていたようだ。それ故の〝暫しの猶予〟だと言うことだ』
『暫しか、どれくらいの時間なんだ』
『数秒か、数年か、分からぬ』
速いところ悪神ギュラゼルバンを仕留めて離脱したいところだ。
そして、名の知らぬ旧神たちの幾つかから、既に認められていたか……惑星セラにいる旧神とは<シュレゴス・ロードの魔印>の契約を結んだシュレゴス・ロード以外には接触はしていないと思うが。何気ない行動の中に接触していた可能性があるってことか。
それとも
魔皇獣咆ケーゼンベルスと神獣ロロディーヌは、またも口から拡げた。
「にゃごぁぁ~」
「ウォォン!」
盛大な炎を、悪神ギュラゼルバンに向けて吐いた。
悪神ギュラゼルバンは直線状の銀と紅蓮の炎を避けながら巨大な神像から離れていく。
魔皇獣咆ケーゼンベルスと、俺たちを乗せた神獣ロロディーヌは前進し――。
地面にあるオベリスクのような、蒼色と紅色に燃えている柱の間、中央に鎮座している巨大な像に右から近付いた。巨大な像は数百メートル級。見た目は阿修羅像に見える。
悪神ギュラゼルバンの目的が、あの神像かな、旧神エフナドの神像か。
魔皇メイジナの神像って線もあるのか?
が、この洞窟遺跡の地面には黒寿草が繁りまくっている。
黒寿草の海の如くと言えるような環境だ。
六本腕が持つ魔槍と魔剣と短槍と独鈷と魔大斧と魔刀が外れると飛来してくる――。
「キタ! 防具が反応しないのは解せぬが!」
悪神ギュラゼルバンが叫ぶ。
旧神エフナドらしき神像は雷状の魔弾も射出――。
が、六本の武器は悪神ギュラゼルバンに向かわず、雷状の魔弾が向かう。
「え、なぜだ!」
悪神ギュラゼルバンが吼えながら雷状の魔弾を魔槍で受けながら後退し、俺たちを見ながら弧を描くように上昇すると、下から蛍光色と虹色の魔力を発した黒い葉が追跡していく。
六本の武器類は魔皇獣咆ケーゼンベルスにも向かわず、雷状の魔弾が向かった。
俺たちを乗せた相棒に六本の武器類と雷状の魔弾が飛来してきた。
「にゃご?」
「え!」
「わたしたちに武器が!」
「おぉ~」
「――ロロ殿様ァ」
「きゃぁぁ」
俺たちを乗せている
高所恐怖症のヴィーネが叫ぶように、視界がぐわりぐわわりと回転すると
六つ武器は
雷状の魔弾には追跡能力はない――。
「なぜだ! 旧神の者たちといい、なぜ、神獣と混沌の槍使いたちに六浄が向かう! 旧神の擬戦衣に、魔皇メイジナの玉佩は我が持つのだぞ!」
悪神ギュラゼルバンが叫びながら、魔皇獣咆ケーゼンベルスの炎を避けていた。
あの神像は魔皇メイジナの神像だったのか。
シュレゴス・ロードも言っていたが、ここは魔皇メイジナの遺跡でもあるようだな。
過去に魔皇メイジナが旧神の墓場で行った名残がここか?
そして、魔皇メイジナの玉佩を持っていると、あの神像にアクセス可能ってことか。
背後、相棒がいた宙空を抜けた雷状の魔弾は、地面と衝突し無数の黒い葉を抉り燃焼させる。
と地面を大きく穿ち地盤が跳ねたように盛り上がるや否や蛍光色の液体が間欠泉の如く吹き荒れた――。
「――にゃ!」
「「「「うあぁ」」」」
「「……」」
蛍光色の液体には濃密な魔力が宿っていた。
黒寿草を育てた液体なら、あれを採取するべきか。
相棒の触手手綱をモミモミしてから、頭部から背中側に移動し――。
相棒を追跡している六つの武器を見ようとしたが、相棒の尻尾の黒い毛毛が邪魔だ。
尻尾は可愛いがと意識した直後「ンン」と喉声を発した相棒が尻尾を下げてくれた。
「ありがとう、ロロ!」
「にゃおぉ~」
と嬉しいのか尻尾がまたピンと持ち上がってしまう。仕方なしと笑いながら、俺たちを追跡している六つの武器を再び凝視した――すると六つの武器が煌めく。
――ん? ――六つの武器から何かを感じた。
――悪意ではない。
まさか? と思いながら半身で皆を見た。
すると、左手の掌にある<シュレゴス・ロードの魔印>から出ている
『主、あの武器は主に呼応したようだぞ』
『俺に呼応か、何かを感じた』
『やはり、が、それよりも我は、あの下からあふれ出ている旧神エフナドの血、秘奥黒寿宮殿の血、秘奥黒寿草の濃密な魔力を得たいのだが』
『蛍光色の液体を得たいんだな』
「ングゥゥィィ、主、我モ、ホシイ……ゾォイ!」
胸甲と
<神獣焰ノ髭包摂>が自動的に発動している。
『そうだ』
「了解した、ハルホンクもその時に喰おうか」
「ングゥゥィィ」
蛍光色の液体か、魔力も濃厚で旧神エフナドの血でもあるのか、黒寿草の元祖的な黒い葉だから、リリウムポーションが無数に造れるような魔法の液体ってことでもある。
とりあえず、ヴィーネとキサラたちに
「――ロロと皆、あの武器類は俺のことを追跡しているようだ。だから少し離れるぞ、そして、六つの武器のことはおいておいて、悪神ギュラゼルバンの目的を阻害しつつ悪神ギュラゼルバンの討伐を目指すことに変わりないからな」
「「はい!」」
「にゃご」
「承知!」
「承知いたしましたぞ!」
ヴィーネとキサラと光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスなら阿吽の呼吸で戦えると思うが、今は
と相棒の背から跳躍して離れた。
<武行氣>で飛翔していくと、案の定、六つの武器が飛来した。
悪神ギュラゼルバンに魔皇獣咆ケーゼンベルスが向かう。
やや遅れて神獣ロロディーヌが向かうのを見つつ、六つの武器を下に誘導するように、黒い葉が茂っている斜面に着地。
湿った大地のような場所で、ぬかるんでいる。
と、六つの武器の内の魔槍を最初に普通に掴んだ。
穂先が、笹穂槍で横から肢刃が出ている。十文字槍に近いタイプの魔槍を速やかに戦闘型デバイスに仕舞う。
new:六浄魔槍キリウルカ×1
渋い名だ。
「ぬおおお――」
と、悪神ギュラゼルバンが怒ったように発狂した?
魔槍から漆黒の閃光を俺に向けて繰り出してきた。魔皇獣咆ケーゼンベルスは反対側の宙空だ。
相棒が俺を庇うように前に出ようとしたが、「ロロ――普通に避けるから、悪神ギュラゼルバンへの反撃は任せた――」
「ンン――」
続けて、漆黒の炎を抜けて、魔剣と短槍と独鈷と魔大斧と魔刀は俺を追跡してきた。
その間に間欠泉のように吹き荒れる蛍光色の液体に突っ込む――。
「ハルホンクとシュレ、喰え――」
『オォォォ――』
「ングゥゥィィ――」
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