千四百十七話 翡翠のバジュラの輝き


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスとキサラたちと共に下に向かう。

 浮上してくる魔貴族たちに直進――。

 魔皇獣咆ケーゼンベルスが「『ウォォォォン』」と咆哮を発して、複数の魔貴族の動きを止めると、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙で<月虹斬り>を繰り出して、魔貴族の首を刎ねていた。

 

 と、大広間を載せていた巨大な骨鰐は大広間を残し点滅し見えなくなった。さきほどの玉座と巨大なテーブルが中央に存在する大広間だけの眺めになった。

 <闇透纏視>だと、そこに骨鰐はいると分かる。

 同時に魔線の経脈が無数に拡がって、大広間にも繋がっていることが確認できた。

 <闇透纏視>を解除すると、経脈的な魔線の連なりはすべて消えるからかなり分かりやすい。


 巨大な骨鰐の周囲を、海流のように流れていた魔力は<闇透纏視>無しでも見えているから軽度なステルス機能があるということか?

 だが大広間を隠していない、あいつらの余裕の表れかな。

 と次々に魔貴族たちが大広間から離れて上昇してくる。数にして数百は一瞬で超える。

 大広間も巨大な城にあるような広さだ。

 そして、大広間が空母だとしたら上空を覆うようなバリアを展開したら魔貴族たちは外に出られないか――。


『……主、下の地下遺跡から我たちの匂いを得た……』


 半透明の蛸足集合体シュレゴス・ロードが反応してきた。


『ほう、地下遺跡は旧神も関係するのか、魔皇メイジナの遺跡かと思ったが』

『うむ、その遺跡も関係すると思うが、冥界シャロアルではなく群生旧神の類い旧神たちの墓場もあるようだ、知能があるかは分からぬが……次元魔力の封が解かれている……』

『了解した、が、今はあの大広間の連中が先だ』

『うむ』


 もしかして、漆黒の虚炎魔神ガラビリスと、関係する指輪に、俺が触れたことも関係する?

 少し冷や汗が……。

 

 と、気にせず――<魔闘術の仙極>を発動させて加速を数段階引き上げて相対した魔貴族の体を青炎槍カラカンの<断罪刺罪>で仕留める。

 青炎槍カラカンから青白い炎が吹き荒れた。

 指から右腕の戦闘型デバイスに降りかかるが、俺の腕は勿論だが、戦闘型デバイスはかなり頑丈だ。

 

 と、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも躍動するように魔貴族を屠りまくる。

 キサラも魔槍斗宿ラキースで<刃翔刹閃>を実行。

 <舞斬>のような機動で魔貴族を縦に両断して倒していた。

 そして、降下している俺たちの速度を超えたキスマリとキッカの<バーヴァイの魔刃>が魔貴族たちと衝突――。

 

 魔貴族たちは<バーヴァイの魔刃>を喰らうと仰け反りながら落下。魔皇獣咆ケーゼンベルスが、姿を小さくしながら、その仰け反った魔貴族の首を喰らい付き、後ろ脚で胴体を蹴り跳ばしながら頭部ごと脊髄をぶっこ抜いて豪快に倒す。


 アドゥムブラリも<魔弓魔霊・レポンヌクス>から<魔矢魔霊・レームル>を無数に射出しまくる。

 魔貴族の動きを封じ込めながら偽魔皇の擬三日月の<投擲>を繰り返す。

 ブーメラン軌道の偽魔皇の擬三日月は一瞬で数十の魔貴族の体が真っ二つ。


 偽魔皇の擬三日月は強力無比な大斧だな。偽とあるが、本物よりも強力な大斧に見えてくる。


 <バーヴァイの魔刃>とアドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>を防ぎ喰らいながらも再生能力が高い魔貴族には的確にビュシエの<血道・霊動刃イデオエッジ>と黒豹ロロの触手骨剣が捉えて、その体を蒼く燃焼させて倒していた。


 あっさりと逝くから吸血鬼ヴァンパイアと相対している気分となった。それだけ闇属性の濃度が高い敵ってことだろう。

 魔貴族の中には無名の強者はいるが、皆、それを上回る火力だ。

 ピュリンもイモリザが用意していた<魔骨魚>と連動する骨の弾丸を放ちまくって魔貴族と道化帽子を被るピエロの体に風穴を空けていく。大広間にも骨の弾丸が向かうが、茶色の翼を持つ巨漢魔貴族が口からヘドロの塊を吐き出して、骨の弾丸を防いでいた。


 大広間の連中は後だ、と、魔犀花流派の面々が魅せる。

 イズチの指揮の下、大広間から現れ続けている魔貴族たちを宙空で囲む。

 常に数的優位を保ちながら各個撃破で仕留め続けていた。

 人面瘡を鎧に有した兵士が囲まれたら〝巧手四櫂〟が迅速に魔貴族の囲いの一部を崩しように突っ込んでは囲いから人面瘡を鎧に有した兵士が離脱し、魔犀花流派の兵士たちと合流する。


 再生能力が高い魔貴族には、〝巧手四櫂〟の号令の下、一斉に、宙空で数十人単位の隊列を組むと、


「「魔犀花流奥義陣を展開!」」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「「「「「「「「――<魔脈曼絶痺陣>」」」」」」」」


 魔犀花流派の兵士たちの前方と左右に胎蔵界曼荼羅のような花模様を背景に魔神ガンゾウの幻影が出現し花模様が周囲に散った。

 同時に各自が持つ魔杖槍から花の魔印を輝かせると魔杖槍から波動のような遠距離攻撃が魔貴族に向かう。

 波動を喰らった魔貴族は、蜘蛛の巣にも引っ掛かったかの如く動きが封印された。

 刹那、魔犀花流派の鎧に刻まれている人面瘡も不思議に色づくと動きが加速する。

 〝巧手四櫂〟たちが先頭に魔杖槍を突き出して波動を喰らい動きが鈍い再生能力が高い魔貴族の魔槍を弾き体を貫く。

 更に、魔犀花流派の皆で、一斉に再生能力が高い魔貴族の体を魔杖槍で貫きまくって、再生能力が高い魔貴族を倒していた。


 見事だ――と感心していると強者の魔貴族が、


「お前が悪霊驍将軍ゲーラーを!」


 と叫びながら皆の攻撃を掻い潜って近付いてきた。

 その魔貴族は貴族服の徽章が多く、<魔闘術>が優れていると分かる。

 <闇透纏視>で直ぐに分析――。

 他の魔貴族もだが魔軍夜行ノ槍業の師匠たちの体を持つ存在はいない。

 魔力の流れから動きを予測し、魔剣を避け、次の魔剣の突きを青炎槍カラカンの柄で受け流し――。

 <魔手回し>で魔剣を横に払いながら青炎槍カラカンの柄を魔貴族の腹にぶち当てた。


「げぇ」


 と吹き飛ばした魔貴族の体を<鎖>で貫いて、左手首の<鎖の因子>に収斂させるがまま魔貴族に近付き青炎槍カラカンを振るう<魔仙花刃>を繰り出し、魔貴族の首を切断し仕留める。

 

 キサラも魔槍斗宿ラキースで光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスの背後にいた魔貴族を<刃翔鐘撃>で仕留めていた。

 そのキサラの横に付ける。

 背後からヴィーネとキッカと大きい黒豹ロロの上にいるキスマリが付いてくる。

 

「大広間にいる魔貴族たちの数はまだ多く正確な数は不明ですが、皆が強いのでこのまま行けそうですね」

「おう」


 と言っている間に――。

 俺たちの真下にいた光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが大広間近くに近づく。

 直進してきた数体の道化帽子をかぶるピエロと衝突。

 ゼメタスはドールゼリグンと一足先に駆けた。

 対面した道化帽子のピエロの曲剣を受けず――左に出ながら右腕を振るう。

 名剣・光魔黒骨清濁牙と共に右腕が妖しくブレると、道化帽子のピエロの体から三つの剣閃が生まれ、そこから月虹が走ったかと思ったら、道化帽子のピエロの体は三つに分かれて青白い光を放って爆発。


 そのゼメタスの横にいるドールゼリグンに乗ったアドモスは愛盾・光魔黒魂塊を掲げて、ゼメタスの側面を守る。


 左側から、道化帽子のピエロが踊りつつ回した曲剣の凄まじい連続攻撃をすべて弾くと素早く反撃の名剣・光魔赤骨清濁牙を下から上に振るった――。

 その道化帽子の頭部と体に皓々とした月虹の筋が発生、その道化帽子を被ったピエロの体が皓々とした月虹の形で三枚下ろしにされて青白く燃焼して消えた。


「ゼメタスとアドモスの先陣も心強いが、俺たちも大広間に突入するか」

「はい」

「ンン、にゃおぉ」

「うむ! 当然だ!」

 

 キサラと黒豹ロロと、黒豹ロロに乗ったキスマリと共に降下。

 黒豹ロロは体を小さくさせると、キスマリは跳躍。

『ヘルメとグィヴァ、準備しておいてくれ』

『『はい』』


 俺たちが急降下している間に、

「ウォォォォン!」


 魔皇獣咆ケーゼンベルスも急降下。

 背後にいるヴィーネは翡翠の蛇弓バジュラから光線の矢を放つ。

 

 光線の矢は、まだ生きている道化帽子を被ったオルマルシィを避けて、玉座の大柄の四眼の魔族、頭蓋骨が縦に連なった長身の魔術師たち、テーブル席で暢気に食事をしている片眼鏡を装備した巨漢魔貴族、トーガを着た巨漢魔族と、貴婦人と、白粉で化粧した顔の女性魔族と、歪んだ頭蓋骨に異様な漆黒の炎に燃えている顔の男と、黒い牛の魔獣に向かった。

 

 光線の矢は、玉座の大柄の四眼の魔族には当たらず、数メートル手前で振動して止まっている。

 頭蓋骨が縦に連なった長身の魔術師たちも同様。

 

 テーブル席で暢気に食事をしている片眼鏡を装備した巨漢魔貴族の数メートル手前の上空で光線の矢は止まる。

 

 褐色の翼を持つトーガを着た巨漢魔族の上空でも、光線の矢は止まる。

 俺に攻撃してきた貴婦人と、白粉で化粧した顔の女性魔族と、歪んだ頭蓋骨に異様な漆黒の炎に燃えている顔を持つ魔貴族の数メートル上空の先で光線の矢は止まっていた。


 一方、黒い牛の魔獣には光線の矢が突き刺さった。

 光線の矢から現れた緑色の蛇が、黒い牛の体内に侵入すると黒い牛は無数の乳房と体が大破裂し、周囲に内臓が散らばってテーブルを汚した。


 各自の前で止まっていた光線の矢が振動、分解され掛かると緑色に輝いて、分解が止まる。そして、魔線で繋がり、「え! まさか、魔毒の女神ミセア様と――」と叫ぶヴィーネが持つ翡翠の蛇弓バジュラとも魔線が繋がると、魔線の繋がりが一気に拡大し、そこに、魔毒の女神ミセアと蛇の幻影が出現した。


 錦色の目に髪の蛇たちはリアルだ。

 

「『悪神ギュラゼルバンと、その眷属共……我の縁、<夜の瞳>を有した混沌の槍使いシュウヤは我の魔界騎士候補である、更に、我の民と戦うということは我に喧嘩を売るということぞ!』」


 魔毒の女神ミセアの言葉と神意力を有した言葉が響き渡る。

 テーブル席が振動し、何かが破壊された音が響いた。

 頭蓋骨が縦に連なった長身の魔術師たちが動いて、魔杖を二つ召喚すると、魔杖を急浮上させる。

 すると、玉座の四眼四腕の魔族が漆黒の外套を払いながら玉座から立ち上がる。


「ガリボンズにザィア、無駄なことはするな」

 

 と発言、角兜と融合しているような頭蓋骨の黒と朱色の四眼がそれぞれ意味があるように煌めく。

 二人の頭蓋骨が縦に連なった長身の魔術師たちは「「ハッ」」と会釈後、魔杖を引き戻し、長細い腕の手で掴む。

 鷹揚に、悪神ギュラゼルバンと目される存在は、魔毒の女神ミセアの幻影を見上げ、

 

「『ハッ、魔界騎士に民だと? ここをどこだと思っている……』」

「『我を威圧しているつもりか? お前が密かに利用を企んでいた魔皇メイジナの遺跡と旧神エフナドの秘奥黒寿宮殿などから、魔力は外に漏れているのだぞ? それがどういうことに繋がるか、お前がよく知っておろうが!』」

「『……あぁ、知っているとも。文句があるならば掛かってくればいい。我の大眷属はとうに何人も失っているのだからな。お前にどうこう言われる筋合いはない』」

「『……ハッ、我の優しさが理解できぬ阿呆な悪神よ、〝戦う前によく考え敵を知る〟……という言葉を贈ろうか――』」


 悪神ギュラゼルバンは右腕に魔槍を出現させる。

 その魔槍を振るい上げると、漆黒の炎を帯びた閃光が迸る。

 閃光は魔毒の女神ミセアの幻影を貫き、魔毒の女神ミセアの幻影は真っ二つとなって消えた。


 悪神ギュラゼルバンが放った一撃で魔界セブドラの夜空に漆黒の炎の閃光が突き刺さる。

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