千三百二十六話 魔傭兵ドムラチュアとイルヴェーヌ師匠の手足


 血痕は階段回りに多い。血の点と血の足跡が幾つかある。

 木屑と血が染みこんだ縄の切れ端も散らばっていた。

 手摺りか幅木か壁板などの残骸が散らばり路地にも落ちている。

 汚れた敷物の孔は槍に突かれた跡だ。

 中央の剥き出した板から出ている板といい階段の出入り口付近でも争いがあったことは確実か。


 更に洗練された魔素を下の階層から二つ感じた。

 下の魔素の持ち主は相当な手練れか。

 遠距離用の攻撃で天井ごと俺たちをぶち抜いてくる?

 と、思わせるぐらいの魔力を有している。

 対戦車ライフルに、重火器なら、この廃墟の天井ごと、俺たちを撃ち抜けたかも知れないな……が、どんな相手か分からずにいきなりの先制攻撃はしないか。


 そして、下の連中は魔素を隠す素振りがない。

 戦闘が終わった直後だからかも知れないが……すると、魔軍夜行ノ槍業が揺れた。


『血の匂いだけではないわね、周囲にわたしたちの体か何かを持つ存在がいる』

 

 と雷炎槍のシュリ師匠が思念を伝えてきた。


『あぁ、ここに来た時にも感じていた魔素の類……下の二つの魔素は強者の類い』


 獄魔槍のグルド師匠の思念だ。


『狭い場所の戦いか、俺たちも出てもいいが、弟子に任せよう、妙神槍流を使え』


 妙神槍のソー師匠の思念に自然とラ・ケラーダを意識した。


『弟子は強いから大丈夫、そして、皆そろそろ、妾の体か装備を持つ存在が現れてもいいと思わないか?』

『うん、けどレプイレスは既に『魔槍技』の<女帝衝城>を弟子に伝授している。わたしの断罪槍は槍譜もナシなのだぞ。お預けにもほどがある。だから、先に、わたしの体か装備を持つ魔人武王の弟子か、魔人武王の弟子を倒した存在と出会う頃合いだろう』


 女帝槍のレプイレス師匠と断罪槍のイルヴェーヌ師匠の思念だ。


『どちらにせよ、体がほしいところだぜ』

『……体があれば、我も魂をかけてトースン、ソー、シュリと共に弟子と戦える』

『我の残りの体に装備か悪愚槍流の槍譜があれば、弟子は更に強くなり、我も強化されて弟子と共に戦える』

『……ふむ、下の存在が、強者なら、その魂も我らがいただく……』


 獄魔槍のグルド師匠と塔魂魔槍のセイオクス師匠と悪愚槍のトースン師匠の思念が響く。塔魂魔槍のセイオクス師匠の思念は珍しいが何かにつけて魂をかけてくるんだよな。


『ふむ、わしの可能性もある』


 頭目の飛怪槍のグラド師匠の思念の後、静かになった。


 俺としては飛怪槍のグラド師匠と断罪槍のイルヴェーヌ師匠の何かがほしい。師匠たちすべてに感謝しているから、何かしら恩返しがしたい。


 それに、八人の師匠から槍武術を学べば強くなる。


 <魔軍夜行ノ槍業>と<魔軍夜業ノ理>の恒久スキル。

 特に<夜行ノ槍業・弐式>のカウンターは強くなるのは嬉しい。


 一槍の風槍流の技術がもろに発揮される<山岳斧槍・滔天槍術>とカウンターの<夜行ノ槍業・弐式>は合うからな。


 そして、八人の師匠たちの体と装備に奥義書の多くは……。


 ※魔界八槍卿の遺物の多くはイーゾン山脈の古の神々たちと関連している【八峰大墳墓】、またの名を【八大墳墓】に眠る※


 とあるように、セラの八峰大墳墓、略して八大墳墓に保管されている。

 いつかはイーゾン山脈に向かうのは大きな目標の一つだ。

 

 そして、魔人武王ガンジスは、今、俺たちがいる魔界セブドラのどこかで生きているはず。

 まさか、真下にいる強者が魔人武王ガンジスなわけないだろうし……。


 さて、眷属の数人をここに呼ぶか?

 が、<分泌吸の匂手フェロモンズタッチ>を使うとなると……。

 二次三次の争いを呼び込む恐れがあるが、一応血文字だけ伝えておくか。


 同時に闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの指輪を触り魔力を送った。

 ゼメタスとアドモスに魔界のグルガンヌの東南地方に戻ってもらった。


『――皆、ラムラントを眷属化する場所を探していたら、怪しい廃墟を見つけた、そこに侵入を試みるが、争ったばかりの形跡がある。見知らぬ相手と戦うことになるかも知れない。興味があったら来てもいい、ただし、俺は<分泌吸の匂手フェロモンズタッチ>は使わない』

『『はい』』

『ん、分かった、今ゼメタスとアドモスが突然、『――閣下の魂を感じまするぞ! 魔界に帰還命令ですな!』と『――閣下が我らを必要としている!?』と叫びながら消えたけど、シュウヤが?』

『おう、呼ぶ予定だから、一旦、故郷に帰ってもらった』

『ん、了解、後、怪しいアイテムが他にもあった』

『そのアイテムから出ている電波、魔素の追跡は任せる』

『ん』

『はい、ここに数人を残して、シュウヤ様たちのところに向かいます』


 キサラの血文字に頷いて、


『了解した、予想外に早くレンが来たら、俺の代わりに緊急評定に出席しといてくれ。そして、此方に来るにしても、ラムラントの<従者長>化を考えているから、それを前提でな』

『『『『はい』』』』

『分かりました!』


 ヘルメとグィヴァとラムラントは俺たちの血文字コミュニケーションを見て頷いた。

 三人は右手の指先を下に向けながら、左手の人差し指を口に当て、


『ここからは喋りはナシ?』的なジェスチャーを繰り返す。

 三人とも可愛い仕種だから、思わず笑う。


 あえて、


「……もう俺たちの魔素は把握済みのはず。だからいいさ」

「はい」

「分かりました」

「下の存在は強者なのですね」


 ラムラントの言葉に頷いた。


「で、ここの廃墟だが、他人の家の屋上に変わりない。レン家の玉佩を用いれば、廃墟に立ち入る理由はなんでも造れると思うが、基本、俺たちは不法侵入者、どのような争いであれ、問答無用で攻撃を受ける立場だ」

「はい、調べず、捨て置くのもありかと思いますが」

「あぁそれもいいが、どこも魔素だらけで、空き地も少なかったからな。この際だ、この廃墟の下にいる方々に、【天凛の月】として挨拶しておこうか?」


 少しふざけて、白蛇竜小神ゲン様の短槍を振るう。


「ふふ、閣下ったら」

「「ふふ」」


 笑顔を見せていたラムラントだったが、だんだん不安を覚えたのか、表情を強張らせ、


「……室内戦となるのでしょうか」

 

 安心させるよう笑顔を意識しながら頷く。

 

 戦闘型デバイスを掲げた。


「俺たちはそうなるかもだ、ラムラントは外を見ててもらうかな。とりあえず、アクセルマギナとガードナーマリオルスよ、出てくれ」


 瞬時に右腕の環状の戦闘型デバイスから銀色の魔力粒子が飛び出て、床に集積すると、一瞬で汎用戦闘型アクセルマギナと成った。


 やや遅れてガードナーマリオルスも足下に誕生。


「マスター、状況は把握済み、偵察用ドローンを使い、すべての出入り口を調べてきますか?」

「ピピピッ」


 アクセルマギナに頷きつつ、


「そうだな、頼む」

「承知しました、直ちに――」

 

 その間にもガードナーマリオルスは体の筋から近未来的な光を放っている。

 キュルキュルと音を響かせながら回っていた。

 そのガードナーマリオルスに、


「ガードナーマリオルスも、なんか久しぶり」

「ピピピッ」


 いつもの音を発して、片眼鏡のような片目を伸ばしながら挨拶してくれた。

 片眼鏡のような小さい片目がキュートだ。


 その間に戦闘型デバイスから数個の偵察用ドローンが飛び出ていく。

 偵察用ドローンとの視界が共有されていく。


 ラムラントは、瞳を散大させながら、背の片腕をの手をパー状態にして、


「わわ――」


 と驚きまくる。

 戦闘型デバイスの縁がハニカム構造に成って、その孔から蜂のような偵察用ドローンが生まれ出るのは不思議すぎるからな。


 偵察用ドローンの翅もミクロのハニカム構造。

 フィボナッチ数列や約1.618対1の黄金比。


 実は、人工重力などや異次元の秘密が隠されているのかも知れない。


 アクセルマギナとガードナーマリオルスは……。

 皆と共に俺も簡単な説明はしていたが……。

 

 ナ・パーム統合軍惑星同盟の高度な文明が造り上げた人工知能アクセルマギナと人工生命体のようなガードナーマリオルスだからな、その造形を見れば驚くのは当然。


 説明で精霊の一種と思えば簡単だ、と冗談で言ったら納得していたが。


 偵察用ドローンの視界はアクセルマギナも共有しているから楽だ。

 ガードナーマリオルスが、その情報を片眼鏡から宙空に投影していく。


「わぁ……これはここの……」

「はい、ガードナーマリオルスは、閣下が飛ばして、廃墟の周りに展開している偵察用ドローンの個々が見ている視界を立体的に投影、表示させることが可能なのです」

「凄い……」


 ラムラントは唖然としている。


 ついでに<闇烙・竜龍種々秘叢>を意識し、闇烙・竜龍種々秘叢の巻物を出す。

 闇烙龍イトスと闇烙竜ベントラーは、和風ジオラマ世界の中に立体的な闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスとして現れている。


 その巻物からリアルな血龍魔仙族ナギサを出した。


「主――」


 黒髪美人のナギサは敬礼。

 棍棒と共に鎧姿だ。


「状況は分かっている?」

「はい、悪夢の女王ベラホズマ様、ナロミヴァスの復活など、すべて。そして、ラムラントさん、わたしの名はナギサ・ホツラマです。主様の背後に浮かぶアイテムボックスでもある〝闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそう〟の管理人です」


 と、紹介しては周囲を見渡すナギサ。

 ナギサとアクセルマギナに、偵察用ドローンの視界に映っている廃墟の一階にある前と裏の出入り口を固めてもらうか。


 ラムラントは、


「あ、はい! 宜しくお願い致します、地獄龍山の魔人一族のナギサさん」

「はい」


 ラムラントは、闇烙・竜龍種々秘叢の巻物を見て、


「この闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうはシュウヤ様も隠れることが可能な異世界が内包されたアイテムボックスでもあると聞いています。闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスが住んでいるとも聞いています。その巨大な龍とドラゴンの空旅はロロディーヌ様に負けていないとも、神獣様とメト様は怒ったように鳴いて否定していましたが……」

「ふふ、はい。その通り」


 偵察用ドローンの一部を回収――。

 一部を一階裏口のリビングと正面の出入り口から侵入させたが、四眼四腕の魔族が見えた途端、裏口から侵入させた偵察用ドローンが消えた。

 続いて、振り返った四眼四腕の魔族が、手投げ手裏剣を<投擲>。

 <投擲>された手投げ手裏剣は雷撃的な速さ、正面側の偵察用ドローンも撃ち落とされたか、消える。

 二階の小さい窓から侵入させた偵察用ドローンも四眼四腕の魔族が見えた途端、暗闇となった。

 

 偵察用ドローンに気付くとか、何者だよ、確実に手練れだ。

 そして、シンプルな指輪の闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトが少し揺れたような感触を得た。

 直ぐに闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトに魔力を込めた。

 ゼメタスとアドモスを呼ぶ――。


「「閣下ァァ」」

「よう、下に強者、最低でも二人いる」

「承知!」

「室内戦ですな、しかし、上の【レン・サキナガの峰閣砦】の大楼閣に我らはいなくてもいいのですか。緊急評定の場がどうなるか不透明ですぞ」

「あぁ、俺たちはゲストだが、普通のゲストではないからな。そして、血文字で既に連絡済みだ。ヴィーネかキサラかエヴァか、ここに来るようだが、キッカかビュシエもいるから大丈夫だ」

「ハッ!」


 そこで、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスに、ラムラント、ヘルメ、グィヴァ、アクセルマギナ、ガードナーマリオルス、ナギサを見て、


「一階と二階には、現在判明しているだけで、二名の四眼四腕の魔族強者がいる。二階の四眼四腕の魔族は、この天井でだれかと戦い、その戦った相手を引き摺って下に運ぶ必要性があった状態。そして、偵察用ドローンはすべて倒された。その際に一階の手練れの遠距離攻撃が分かった。手投げ手裏剣、雷撃的な<投擲>攻撃でかなり速い。背に武器の柄が見えた。二階の四眼四腕の魔族も手投げ手裏剣が飛んでくると思え」

「はい、やはり手練れでしたか」

「縄張り意識も強そうです」


 頷いた。


「あぁ、廃墟には生活感はなかったから、ここをセーフハウス代わりに使っている魔傭兵辺りと、魔軍夜行ノ槍業の師匠たちが反応した相手だから、古豪だとしたら、ただの魔傭兵ではない可能性が大だ。そして、二階の四眼四腕の魔族が戦った相手も分からない」

「「「はい」」」


 ゼメタスは階段付近の荒れ具合を見て、納得したのか、


「……なるほど」


 と発言しながら蒸気のような魔力を体から噴出した。

 アドモスと共に星屑のマントの内側が煌めいていく。


 ゼメタスとアドモスは頼りになる。

 頼もしさを覚えながら、


「作戦だが、最初は話しかけてみる。だめなら戦う。で、概要だが、グイヴァとナギサとゼメタスとアドモスとラムラントは飛び降り、路地を確認後、廃墟の出入り口は二つあるからどちらも固めろ。突破されても、むやみに追わずともにいい、で、相対したら最初はなるべく見るか、様子見でいい、戦いとなったら全力で対処、そして、隣の店からの増援って線もあるかもだから、一応は頭にいれておけ、アクセルマギナは、ここで待機だ。屋上の階段付近で、俺が突破されたことを想定しとくのもいいだろう、一階前後の出入り口へのフォローも任せる、残りの偵察用ドローンの運用も任せよう」

「「「はい」」」

「「分かりました!」」

「素晴らしい作戦ですぞ!」

「うむ!! 気合いが滾る!!!」


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスらしさ爆発。

 その影響で、二階の四眼四腕の魔族が動いた。


 屋上で吼えている俺たちを見たら、内心穏やかでは入られないか。


「では、〝廃墟にいる強者と戦うかも知れない〟作戦を開始しよう」

「ふふ、あ、閣下、わたしは液体で、先行します」

「勿論そのつもり、が、先行ではない同時だ」

「あ、閣下……はい」


 ヘルメは俺が心配していると理解して嬉しかったのか瞳を潤ませる。

 と一瞬で液体化。

 床の色合いに溶け込むようにスイスイと床を進む。

 血の一部を取り込みつつ階段付近で少し動きを止めたヘルメ。

 そこは硝子の破片が多い。

 四眼四腕の魔族の強者が簡素だが、用意した――足音対策か。

 床と密着している液体状のヘルメは煌めかせながら硝子の破片を吸い込んで、音もなく硝子の破片を砕いたのか、硝子の破片だったモノごと液体状の体を無数に別個に分離させて、その液体状の体を路地に飛ばしていく。

 

 外に水飛沫として排出していた。

 <武行氣>を強めながら<血道第三・開門>――。

 <血液加速ブラッディアクセル>を発動。

 <生活魔法>で水を足下に撒く――。


 <血道第四・開門>――。

 <霊血装・ルシヴァル>を発動――。

 <経脈自在>を発動。


 <滔天仙正理大綱>を発動――。


 ※滔天仙正理大綱※


 ※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>に分類※

 ※水の法異結界と大豊御酒に<魔闘術>系統と<魔手太陰肺経>の一部と<闘気玄装>と<召喚闘法>と<経脈自在>と<羅仙瞑道百妙技の心得>と<仙魔奇道の心得>に高水準の魔技三種が必須※

 ※霊獣四神と玄智の森の恵みが詰まった大豊御酒を飲んだことで水属性が強化され、新たな魔力活力源を獲得、滔々と流れる大河を心に宿した者、それは滔天仙流の開祖の証しだ※

 ※魔技三種の能力が上昇※

 ※近接と<投擲>の武術技術系統が向上※

 ※大豊御酒と水の法異結界を得ている使い手は<霊仙酒槍術>など様々な酒から功能が得られ、<霊仙酒豪槍鬼>などの戦闘職業が得られるようになるだろう※


 <滔天神働術>を発動――。


 ※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙召喚>に分類※

 ※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>の水神アクレシスの強い加護と高水準の霊纏技術系統と<召喚闘法>と<魔力纏>技術系統と<仙魔奇道の心得>が必須※

 ※水属性系統のスキルと水に纏わるモノが総体的に急上昇し、水場の環境で戦闘能力が高まり、功能の変化を齎す※

 ※酒を飲むと戦闘能力が向上※スキルと恒久スキルを連続発動。


 <水月血闘法>を発動。


 ※独自闘気霊装:開祖※

 ※光魔ルシヴァル独自の闘気霊装に分類※

 ※<脳魔脊髄革命>と<魔雄ノ飛動>と魔技三種に<超脳・朧水月>、<水神の呼び声>、<月狼ノ刻印者>が必須※

 ※霊水体水鴉と双月神、神狼、水神、が祝福する場だからこそ<水月血闘法>を獲得できた※

 ※血を活かした<魔闘術>系技術の闘気霊装が<水月血闘法>※


 <闘気玄装>を発動――。


 ※闘気玄装※

 ※玄智武王院流<魔力纏>系統:仙技<闘気霊装>に分類※

 ※白蛇竜武王鬼流<魔力纏>系統:神仙絶技<闘把神霊装>に分類※

 ※三叉魔神経網系統※

 ※魔装天狗流技術系統:上位変身奥義系※

 ※義遊暗行流技術系統:上位変身系※

 ※怪夜王流技術系統※

 ※高水準の<魔闘術>と<魔力纏>技術系統と覇王ハルホンクの御魂と<経脈自在>と<光魔ノ王笏>と<脳魔脊髄革命>と<魔雄ノ飛動>と魔技三種に<超脳・朧水月>と<水神の呼び声>と<月狼ノ刻印者>、<魔手太陰肺経>の一部、羅仙族、仙羅族、仙王鼬族の<闘気霊装>や<瞑道霊装>系統の使い手の魔力の吸収及び体感が必須※

 ※普遍的に<魔闘術>系統の強度が大幅に強化され、他の魔技も相対的に上昇し体重が変化、浮力と加速を得る※

 ※熟練度と才能次第で、ただの魔力操作が極めて高度な<闘気玄装>に変貌を遂げることもある。また、<闘気玄装>は能力と功能と心技体の向上具合の変化を促すことに成り、体得している内観法も良い方向へ変化を遂げるだろう※

 ※様々な武法に<魔力纏>などのスキルを体得していると<魔手太陰肺経>と同様に<闘気玄装>は覚えにくくなるだろう※

 ※古代の白蛇仙人ブショウが仙剣・仙槍の秘奥譜『闘気玄装』と『玄智・明鬯組手』を開発したとされる※



 <魔闘術の仙極>を発動。

 

 ※魔闘術の仙極※

 ※水神アクレシスと霊獣四神を奉る大豊御酒が必須※

 ※すべての高水準の能力、<魔雄ノ飛動>系統のスキル、<魔闘術>と<魔闘術の心得>の極めて高い熟練度、高水準の魔技三種系統能力、<経脈自在>、<仙魔・暈繝飛動うんげんひどう>が必須※



 <黒呪強瞑>を発動。


 ※黒呪強瞑※

 ※<黒呪強瞑>技術系統:基礎、<魔闘気>に分類、上位系統は無数に存在※

 ※獲得条件に〝黒呪咒剣仙譜〟の理解と少量の魔刃を精神に浴びることが必須※

 ※体に、黒い剣状の魔印や波紋が刻まれる。筋肉が活性化し動きが加速することであらゆる行動力が上昇※

 ※<魔闘術>などの魔技三種に他の<闘気霊装>とも相性が良い※

 ※使えば使うほど強化され魔力消費は大きくなる※

 ※<黒呪強瞑>の開祖は、魔界の神々や無数の諸侯の内の誰かと言われているが不明※


 丹田から吹き荒れるような魔力を一瞬で鎮めるように体に魔力を巡らせる。

 体幹を軸に実際の筋肉を己の魔力だけで活性化させた。

 速度を上昇させる。


「……ヘルメの水の動きにも呼応してくるかも知れない」


 液体のヘルメは少しだけ山なり状態となってから元に戻った。

 右側が壁で左側に小さい柱が並ぶ階段を下りていく。

 洋燈の明かりが階段の横壁に並ぶ。

 

 狭い廊下には、魔槍と魔剣に棒手裏剣を持つ四眼四腕の魔族がいた。

 身長は高い。手足が細いし結構な美形だ。

 早速、棒手裏剣が飛来。即座に前進――。

 白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先で宙空に卍を描き棒手裏剣を弾く。

 棒手裏剣は異常な重さッ、だがッ――。

 ――今の<魔闘術>系統を強めた状態なら楽に対処可能。

手首が撓る機動から幾つもの棒手裏剣が飛来してくるが、すべて弾く。

 このまま間合いを詰めることもできたが……。

 四眼四腕の魔族と、その背後、閉じられた部屋も気になった。


 <闇透纏視>を使いながら四眼四腕の魔族を凝視。

 腰にぶら下がる血濡れた布はただの布ではない。

 そして、右下腕に持つ魔槍は、ここでは振り回すことは難しいと思うが、かなりの魔素を内包している。


 手足と胴体の魔素の内包量が他とは異なる。

 魔軍夜行ノ槍業の師匠のだれかの手足か?


『弟子、あの細い手足はわたしの! 魔槍も罪罰槍だ』


 断罪槍イルヴェーヌ師匠のか。

 白蛇竜小神ゲン様の短槍を振るうような素振りを見せながら目の前の存在に、


「こんにちは、怪しい者ですが、貴方たちはここで何を?」

「……ここは私たちの家だ。出ていけ――」


 と、常闇の水精霊ヘルメの液体を止めるように棒手裏剣を<投擲>してきた。

 ヘルメは直ぐに女体化。そのまま棒手裏剣を体に浴びたが、すんなりと液体を抜ける。 バックステップで四眼四腕の魔族から離れた。


「ヘルメはそこで見ててくれ、で、ここは貴方たちの家ではないはず、だいたい、家の中で武器を持っているのはオカシイでしょう」

 

 ヘルメと俺を凝視する四眼四腕の魔族は、


「……お前たちは、どこの者だ」

「俺の名はシュウヤ、種族は光魔ルシヴァルです。所属は【天凛の月】の盟主を務めている。魔界セブドラではバーヴァイ城などにいた、それで、上で誰かが戦ったようですが、それは貴方ですか?」

「知らない名に勢力だ……」

「知らないのも無理はない、【レン・サキナガの峰閣砦】に来たばかりで、この廃墟に来たのも、たまたまです」

「あ? 嘘だろうが、お前もどうせ【パリアンテ協会】の者だろう……」


 お前も? この四眼四腕の魔族が所属している組織は【パリアンテ協会】と戦っているってことかな。


「違います」

「怪しすぎる――」


 右下腕と左下腕が持つ棒手裏剣を投げてきた。

 右手に握る白蛇竜小神ゲン様の短槍を僅かに左右に動かすだけで、棒手裏剣を左右に弾く、壁に突き刺さる棒手裏剣。


「敬語はここまでにします、宜しいかな」

「ハッ、勝手にしろ――」


 四眼四腕の魔族は棒手裏剣を投げまくってきた。

 それらをすべて、一槍の白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄で弾ききる。

 視線を強めて、


「……俺たちは【パリアンテ協会】ではない。その手足は魔手術を受けたのか?」

「魔眼持ちか……ではレン家の者か?」


 肯定か。


「レン・サキナガとは知り合いだが、知り合ったばかりだ。ここの【レン・サキナガの峰閣砦】に来たばかりと言ったが?」

「……レン家の者でもない、フリーの魔傭兵、賞金稼ぎか?」

「否定も肯定もしない。魔界王子テーバロンテを滅した存在だ」

「……ははは、阿呆か? なんでそんな大物が、ここにいるんだよ!」

「閣下、この阿呆を氷漬けにして処分しましょう」

「……ヘルメ、我慢しろ。で、俺の仲間の一人を眷属に迎え入れるために場所を探していた。本当にたまたま、この廃墟を選んだだけだ。お前の名は?」

「あぁ!? では、先ほどの偵察はなんだ――」

 

 と棒手裏剣をまた<投擲>してきた。

 それを白蛇竜小神ゲン様の短槍で弾く。


「チッ、なんて槍の扱いだ、が――」


 四眼四腕の魔族は間合いを詰めてきた。

 近付く前に<超能力精神サイキックマインド>を実行。

 

「――な!?」


 四眼四腕の魔族は吹き飛んで壁と衝突。

 衝撃波で周囲の雑貨に小さい机が宙に舞う。


「ぐっ……」


 魔槍と魔剣を捨てていない四眼四腕の魔族に近付いて、


「偵察は貴女と下にいる存在が強そうだったからだ。そして、俺の腰のこれを知っているか?」


 と揺れている魔軍夜行ノ槍業を見せる。


「あ? 魔界四九三書のような膨大な……と魔界騎士が争い合う絵柄……え? 魔族たちの顔だと」


 知らないようだ。


『カカカッ、強い気配があるが、魔人武王の弟子でもない、弟子、存分に戦い倒せ』

『うん、やっちゃえ!』


「知らないならいい、で、名と組織を名乗ったらどうだ」

「魔傭兵ドムラチュア! 名はラマガンだ!」


 四眼四腕の魔族は名乗りながら左上腕が握る魔剣を突き出していた。

 <闘気玄装>など<魔闘術>系統を意識しつつ、前傾姿勢に移行した。

 俺の頭部に向けられた魔剣の切っ先を白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先で弾きながら<白蛇穿>――。


 四眼四腕の魔族、ラマガンの左上の前腕を穿つ――。


「ぐえぁ――」


 悲鳴を発したが、ラマガンの視線は鋭い。

 その右腕と左下腕の反撃を予測し、狭い廊下に沿うように後退した。

 ラマガンは、後退した俺を追うように前に出る。

 右上腕の手首に備わるアイテムボックスから、右手の掌に出していた棒手裏剣を<投擲>してきた。

 俄に白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄を下から上に振るい――。

 スペツナズナイフのような機動で飛来してきた棒手裏剣を下に叩き落とした。

 ラマガンは、俺が棒手裏剣を防ぐことを想定し、前進してくる。

 右上下腕の手で魔槍を短く持っている。

 その右上下腕の手が持つ魔槍を疾風迅雷の速度で突き出してきた。

 速いから踏み込みは見えなかった。

 が、穂先は別、<刺突>系統のスキルを凝視しながら前進――。

 白蛇竜小神ゲン様の短槍で<白蛇竜異穿>を繰り出した。

 煌めく魔力を放つ魔槍の穂先を、<白蛇竜異穿>の白蛇竜小神ゲン様の短槍が上に弾きながら直進し、穂先が、ラマガンの胸に吸い込まれる、その胸を穿った――。


「げぁ」


 ラマガンは仰け反り血飛沫を発した。

 即座に白蛇竜小神ゲン様の短槍を消す。

 再び、引いた右腕の手に白蛇竜小神ゲン様の短槍を出現させる。

 <握吸>を発動させ、柄の握りを強めながら<塔魂魔突>を繰り出した。

 俺と白蛇竜小神ゲン様の短槍の挙動から周囲の空気が圧縮されたような、ドッとした音が響くと同時にラマガンの腹を白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先が貫いた。


 ラマガンの腹部と腰の一部が消し飛ぶ。

 ラマガンの上半身が血飛沫を発しながら真上に飛んだ。

 両足で立ったままのラマガンの傷口から血が噴出――

 その血を吸収しつつ<闇透纏視>を実行。

 まずは、天井と衝突しそうなラマガンの上半身を凝視――。

 イルヴェーヌ師匠の両腕と体の繋ぎ目にある僅かな魔力の淀みを狙うがまま――。

 <豪閃>を繰り出した。白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先が、ラマガンの左肩口に侵入――。そのままジュッと音が響きながらラマガンの左肩口を斬る。

 イルヴェーヌ師匠の片腕は無事、ラマガンの肩口からの切り離しに成功――。

 そのまま、そのイルヴェーヌの右腕を回収。

 更に、ラマガンの反対の腕として活用されていたイルヴェーヌの左腕と、そのラマガンの体の繋ぎ目を凝視しながら、そこに<豪閃>――。


 白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先が、ラマガンの肩口を突き抜けるように上から下へと直進し、ラマガンの肩口をぶった切った。イルヴェーヌ師匠の片腕が舞った。その片腕を回収、よっしゃ――。


イルヴェーヌ師匠の両腕を傷つけず――無事にラマガンの上半身とイルヴェーヌ師匠の両腕の境目を両断できた。


 続いて視線を下げて倒れ掛かっているラマガンの下半身を凝視。

 ラマガンの両足になっているイルヴェーヌ師匠の手足の境目はよく分かる。ラマガンに似合わない下半身とイルヴェーヌ師匠の両足との境目に向けて――数歩前に出る挙動の<闇雷・飛閃>を繰り出す――イルヴェーヌ師匠の両足を傷つけず――ラマガン側の体を白蛇竜小神ゲン様の短槍で斬る。

 無事にイルヴェーヌ師匠の両足を残し――ラマガンの下半身を切断に成功――綺麗なイルヴェーヌ師匠の両足を残し、ラマガンの下半身は肉片となって吹き飛んだ。


 イルヴェーヌ師匠の両足をアイテムボックスの中に回収――。


『よし! よくやった! 断罪槍の回収も忘れるな!』


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