千三百二十話 バーソロンとの血文字連絡
眷属たちの団欒が一段落した後――。
バーソロンに血文字で、
『レン・サキナガと交渉し、和睦に成功した』
『はい! 早速の偉業! デラバイン、ケーゼンベルス、源左、バリィアンとの大同盟にレン家が新しく加わった。これで悪神ギュラゼルバンや恐王ノクターなどの巨大勢力による急襲があっても、ある程度の対処が可能です』
『そうだな、内から破壊工作の場合は厄介だが、大規模な急襲があったとしても、俺を含めた即応部隊で敵の裏を突くカウンター攻撃も容易になるだろう』
『素晴らしい戦術運用です。敵の頭を狙う』
『諸侯か神か、首脳が居なくても俺たちなら離脱も可能』
『はい、その作戦が成功したら、一般人が戦争で犠牲にならずに済みます』
強力な制空権を握る存在がいても相棒が居れば、大抵は切り裂けるからな。
そのことではなく、
『あぁ、あくまでも想定だ、保留の連続、可能性は様々にあるんだからな』
『はい、考えるだけならいくらでもできます。考えておけば、あっ、と、自分で過去に考えていたことを思い出して、もし、その通りになった場合の対処が楽になる』
『そうだ。何事も絶対はない』
『はい』
『で、話を変えるが、これからの眷属化の予定なんだが、先にレンを、<
『ふふ、了解しました。血文字が使えるようになりますし、絶対的な仲間が増えるのですから、眷属化は、女としては嫌ですが、レンが眷属になるのは賛成です』
『そう言ってくれるとありがたい』
『はい、陛下は優しいですし、純粋な愛がある。皆の嫉妬は、そこを狙っている部分もあるんですよ』
はは、と笑ってから、
『……狙っている部分か、了解した』
『でも正直言えば、わたしにも陛下を独占したい。という強い想いはあります』
『おおう、いやな思いはさせたくないが、俺も男だからな』
『はい、承知しています。話を変えますが、此方はチチルとノノとソフィーを無事に<筆頭従者>に迎え入れました』
おぉ、チチルか。バーソロンの面倒を見ていたメイド。
<筆頭従者長>が三人造れる<筆頭従者>が早速埋まったことになる。
『良かった。チチル、ノノ、ソフィーか。同じ光魔ルシヴァルの眷属で家族だ』
『はい、三人とも、今の陛下の言葉を聞いたら、喜ぶことでしょう』
『おう、しかし、バーソロン、短期間に三人の眷属化だろ、血の消費は相当なものだと思うが、大丈夫なのか?』
少し間が空いた。
『……多少、疲弊しましたが、合間に休憩を数刻使いました。そして、バーヴァイ城に戻る際の短い旅の間にも血の補給を兼ねたモンスター狩りも行い、血をストックしておきました』
『そうだったか』
『はい、回復ポーションも眷属化の合間に使用しました』
『なら大丈夫かな、だが能力のほうは……』
『僅かな能力ダウンだけで、体長は万全です。これは予想ですが<魔炎神ルクスの加護>と<愚皇・精神耐性>から進化を果たした<血炎皇・精神耐性>のお陰もあるかも知れません』
おぉ、愚皇・精神耐性から血炎皇スキルが進化していたのか。
魔炎神ルクス様の加護が大きいかな。
バーソロンを<
バーソロンの中にいたであろう魔炎神ルクス様が、幻想的な姿で、幻想的な炎の中に現れていた。
その幻想的な炎は……。
炎の魔剣ルクス&バベルの形にも変化を遂げて、魔炎神ルクスの炎の女性戦士が、その炎の魔剣ルクスとバベルを握って、強そうに構えていた。
あの光景は印象深い。
その思いで、
『魔炎神ルクス様にも感謝しよう、そして、バーソロンが元気ならいいんだ、嬉しいしかない。とにかくめでたいな~』
『はい! あ、今元気を失ってしまった! ですから、陛下の熱い血がほしいです♪』
『はは、元気なくせに、では、ここに来たら濃厚な血をプレゼントしよう』
『はい! ありがとうございます!』
『その<筆頭従者>のチチル、ノノ、ソフィーだが、まだ処女刃の儀式の途中かな』
『ノノとソフィーは早々と処女刃を終えましたが、チチルはまだです』
『分かった。では、バーソロンのこれからに期待しよう』
『わたしの期待ですか?』
『あぁ、<筆頭従者長>とは女帝になることでもある。光魔ルシヴァルの選ばれし眷属は並ではない。現に<筆頭従者>という眷属を三人も造ったんだ。それでいて元々がデラバイン族の王女バーソロンだったんだからな?』
『は、はい』
『魔界セブドラでは、諸侯の一人になる。だから期待するに決まっているだろ』
『そ、そんな、わたしが諸侯だなんて……』
『自信を持て、バーソロン』
『は、はい!』
『バーソロンが信奉している魔炎神ルクス様には感謝を捧げたい想いが強まった。縁の土地はどこなんだろう』
『……それが……正式な場所は……』
『失ったか』
『はい、祖先が支配していた【廃城デラバイン】の中に魔炎神ルクスの神像が設置されていたところがありましたが、既に魔界王子テーバロンテに破壊されています。【デラバインの廃墟】にも、祭壇が幾つかありましたが、すべて魔界王子テーバロンテに破壊されてしまったのです』
まぁ当然か。
『ですが、【デラバインの廃墟】の土地をくまなく探せば、どこかに魔炎神ルクス様の古い遺物があるかも知れません。しかし、魔界王子テーバロンテが健在時のバーヴァイ城城主の時に【デラバインの廃墟】に人知れず何度も足を運んで調べていたのですが……見つかっていません。あ、今、思い出しましたが、陛下がたくさん抱いてくださったバーヴァイ城の寝室がある魔塔の裏に、わたしが造った小さい魔炎神ルクス様の神像があります』
『バーソロンのお手製か』
『ふふ、はい、恥ずかしいですが……』
『バーヴァイ城に帰還したら、そこを見てみよう』
『あ、はい』
『では、そろそろ血文字を終わらせる』
『あ、キョウカと黒狼隊を連れて【レン・サキナガの峰閣砦】に向かいますか? バーヴァイ城の守りには、<神剣・三叉法具サラテン>様たちがいますし、<筆頭従者>のチチル、ソフィー、ノノもいます』
『了解した。<従者長>の順番は前後し、またそっちに戻って行うかも知れないが』
『はい、それでも【レン・サキナガの峰閣砦】までは直ぐに移動ができる範囲ですし、これから通商が始まることもあり、できるだけデラバイン族の幹部を外に出して置きたい』
なるほど。
やはり、もうデラバイン族の女王だ。
それでいて光魔ルシヴァルの<
『了解しました女王様』
『え?』
と、バーソロンの血文字が消えると、皆に囲まれていたレン・サキナガが振り払うように俺に近付いてくる。
ヴィーネたちもアドゥムブラリたちに血文字を送りながら後方に退いてくれた。
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