千三百十九話 レン・サキナガたちと和睦
「――閣下の大勝利!」
「御使い様、見事!」
宙空からヘルメとグィヴァが突進してくる。
水の渦と雷の渦を発生させていたから迫力があった。
二人は頭上で急ストップした。
周囲に水飛沫の嵐を周囲に発生させている。
その水飛沫には、電流のような雷属性の魔力が走っていた。
放電が起きてスパーク――。
水飛沫の中で爆発連鎖――。
変な燃え方をしては霧となってヘルメに取り込まれていく。
ヘルメの衣がグィヴァの雷を得て常闇の水雷精霊ヘルメに成っているような印象を抱かせるほどだった。
水と闇と雷を融合させているようなヘルメとグィヴァか。
精霊コンビに少し圧倒されたが……。
「おう」
と返事をしつつ魔槍杖バルドークを消す。
レン・サキナガは怯えながらヘルメとグィヴァを見上げていた。
そのレンの顔色は青白い。
が、高級回復ポーションの効果もあったようだ。
元の顔色に戻っていく。
変な方向に曲がっていた足も元通り。
胸と腹も連続的に叩いて突いてしまったが、大丈夫そうだ。
レンは回復が速い。
回復スキルか、回復の効能を持った
が、綺麗な着物と長襦袢は血に染まっている。
と、その黒い着物と長襦袢は魔力を発しながら血を吸収したか消したか、不明だが、元の色合いに戻っていた。
帯留めなどは崩れていない。
身に着けている着物類は光魔ルシヴァルの血を吸収できるのか?
単にレンの体が光属性と相性がいいから光魔ルシヴァルの血の<血魔力>を吸えるのかも知れない。
肌が見えている範囲に傷はないが、一応――。
水神ノ血封書を出した。
レンは水神ノ血封書をギョッとして見る。
そんなレンに構わず、
「水属性の《
「ひゃ、ひゃい! だ、大丈夫です、お願いします」
水神ノ血封書の秘宝を見て今日一番動揺しているレン・サキナガが可愛い。桃色のアイラインが魅惑的だ。
そのレンに、
「了解、今、魔法をかけるから、そのままで」
「あ、ありがとうございます」
レンは源左でよく見られた敬礼をしている。
やはり、大本は源左なんだよな。
どうして源左を裏切ったのか、気になるが……。
源左の内部もマーマインなどに食いつかれ撒くっていたからな。
そのレンにノーモーションのまま《
周囲の水素が動いた感覚を察知――。
ヘルメとグィヴァも此方を凝視した。
――巨大な水珠が瞬く間に出来上がる。
いつもより大きい。
称号を獲得し、魔力に精神が上昇したお陰だろう。
水属性の魔法力が上昇しているようだ。
「閣下に水の精霊ちゃんたちが吸い込まれるように従ってます!」
「はい、精霊王のような印象です。でも炎の精霊ちゃんは逃げてますね」
と、ヘルメとグィヴァが精霊眼で俺と俺の周囲を見て、感想を述べてくれた。
精霊だから
「ングゥゥィィ」
右肩の
――蒼眼を輝かせてきた。
《
エネルギーを得た《
非常に芸術性の高い魔宝石に見える。
水龍と水珠は透き通っていて綺麗だ。
その《
癒やしの水に濡れるレン。
はだけて開いている胸元の乳房が滝の水を浴びる如く――。
プルン、プルルル、プルルンと揺れていく。
見事な《
「閣下の水の精霊ちゃんたちは、楽しそうですね~」
「はい、おっぱい音頭って言ってます」
ブハッ――。
グィヴァの然り気無い翻訳を聞いた直後、吹くように笑ってしまったがな。
鎖骨から乳房へと流れ落ちる水が少しエロい。
レンの体が仄かに赤みを増した。
黒髪に艶が出たかな。
それ以外は普通、変化がないように見えるのは既に回復していたからだろう。
水神ノ血封書は仕舞う。
続いて、《
透き通った水飛沫がレンに降り注ぐ。
《
レンは元々が綺麗だしな。
薄紫色の瞳を見ながら、
「もう大丈夫かな」
と手を差し伸べた。レンは少し頬を赤らめつつ俺の手を、
「はい――」
と言って掴んで立ち上がる。
一見は細腕のようだが内実はかなり筋肉質か、前腕骨も分厚い、見えない前腕と上腕二頭筋などもしっかりしていそうだ。
掌の皮膚には厚くて硬いところがあった。
剣タコや槍タコか、武闘派の証明だ。
そのレンの手を優しく離すと微笑むレンは、
「戦闘の際にも水を活かしていましたが、水属性の言語魔法を無詠唱でしょうか」
「そうだ」
レンは頷いて、
「素晴らしい技術です。そして、お手合わせをありがとうございました。水と血を槍に活かす風槍流は……言葉に言い表せないほど凄まじかったです。体感したから分かりますが、今の戦闘で、わたしは強くなった。同時に心に熱いモノが芽生えました……シュウヤがケーゼンベルス様を使役し、サシィや眷属たちを従えているのも頷けます」
レンは興奮気味に語る。
薄紫色の瞳はジッと見ていたくなる。
そのレンに、
「ありがとう、レンも強かった。ここを治めているだけはある」
レンは静かに頷いてから「ふふ、はい」と発言し、黒鳩連隊の皆をチラッと見てから、
「……もう少し皆に対して……私が戦えるところを見せたかったのですが……シュウヤにあっさりと倒されてしまった」
と語る。
悔しさと言うよりは寂しさもある印象だ。
「俺が言うのもアレかも知れないが、ミトとハットリに、黒鳩連隊の面々の表情を見る限り、レン・サキナガに対する忠誠は、たしかな物だと思える。だから大丈夫だろう」
「……ありがとう、優しいのですね」
レンの薄紫色の瞳をジッと見ながら、
「そりゃな、美人さんだしな」
と少し照れながら語ると、レンは体を少し動かす。
薄紫色の瞳を潤ませてきた。
その視線を恥ずかしそうにそらして、
「ふふ……」
と微笑んでから俺に視線を向け、
「……シュウヤに言われると凄く嬉しいです……」
と言ってはまた恥ずかしそうに視線を逸らす。
そのレンに、
「これで和睦は成立かな?」
「はい、勿論、成立です」
「良かった。先ほども言ったが、バーソロンもこの後来る。源左とバリィアン族の講和条件などの話し合いに参加予定だ」
「はい、【バーヴァイ城】や【バーヴァイ平原】のデラバイン族ですね」
「おう、魔皇獣咆ケーゼンベルスは気まぐれでここに来るかも知れない」
「え!」
と、嬉しそうな反応を示す。
「大魔獣ルガバンティの調教が盛んで、その影響もあって、ケーゼンベルスは神聖視されているのかな、レン家では大変な名誉と聞いたが」
「はい、黒馬バセルンよりも、黒き大魔獣ルガバンティのほうが人気が高い。単純に強いですから、ただ、強ければ強いほど飼い方が難しくなる。スキルと心に精神が両者に影響する。魔皇獣咆ケーゼンベルスに話を戻しますと、魔界王子テーバロンテに対抗し続けていた唯一無二の存在ですから。昔からずっと色々なケーゼンベルスの玩具が商店で売られています。魔英雄シャビ・マハークの伝説にも登場しますし、それ絡みの魔皇獣咆ケーゼンベルスのお伽噺は、この辺りでは有名です」
「へぇ」
面白いなケーゼンベルス。
魔皇獣咆ケーゼンベルスか……。
『ウォォォン――』
と、魔皇獣耳輪クリスセントラル越しに、俺の気持ちが魔皇獣咆ケーゼンベルスに通じてしまったか。
【古バーヴァイ族の集落跡】か自分の縄張りの【ケーゼンベルスの魔樹海】だと思うが……。
ま、いっか。
すると、
「では、皆に知らせます」
「了解」
レン・サキナガは皆の前に移動していく。
近くに寄ってきた皆のソウゲン隊長やシバ隊長に黒鳩連隊と峰閣守衛隊たちを見据えて、
「――皆、今見たように私はレン・サキナガの当主として、光魔ルシヴァルの宗主に完敗を喫した。シュウヤ様の武力は本物だ」
「「「「はい!」」」」
静まるのを待ったレン・サキナガは、
「……【煉極組】組長ヨシタツ、峰閣守衛隊隊長ジハキ、上草連長でもあるソウゲン隊長とシバ隊長、私は和睦を決めましたわ」
「「「はい!」」」
「「……」」
「「おぉ」」
「「「和睦!」」」
静まるのを待ったレンは頷いて、
「光魔ルシヴァル、源左、バリィアン族、デラバイン族の大同盟にレン家、サキナガ家、どちらかの名で参加します。ですから、これから緊急評定を開くので、今、ここにいない上草連長に、今の出来事を伝えましょう。よろしいですね?」
「「「「おう!」」」」
「賛成ですぞ」
「はい!」
「賛成です!」
「「「「おう!」」」」
レン家の方々全員が一斉に返事をしていた。
ミトとハットリは静かだが、黒鳩連隊とざわめきは納まらない。が、直ぐに巨大なシンバルを持つ音楽隊の方が巨大なシンバルを盛大に打ち鳴らすと、皆が静まる。
ほぼ全員のレン家の方々が賛成だ。
俺たちとの同盟は、これで決定的だな。
レンは俺に近付いて、
「シュウヤ、改めて、わたしたちレン家、サシィ側ではサキナガ家ですが……今を以てシュウヤ様の大同盟に加わりたいと思います。【レン・サキナガの峰閣砦】を宜しくお願い致しますよ、シュウヤ様……」
「了解した」
遠くて見ている皆に、
「終わったぞ、レンたちは俺たちと和睦する――」
と知らせた。
「は~い、使者様の大勝利!」
ピュリンは片腕を上げて振っていた。
ピュリンの片腕はバレットM107の対物ライフル銃と似た形に変化している。
骨のマズルブレーキは将棋の駒のような形だ。
リサナが近くにいる。
即席に観客席を造り上げて見学していたようだ。
そして、ピュリンは、もしもの時に備えて、遠距離狙撃を行えるように準備を整えていたのかな。
皆<血道・石棺砦>の上だったが、皆が降りて、近付いてきた。
「魔斧槍と魔刀の強者の撃破♪」
「ん、シュウヤがんばった!」
素早く変身したイモリザに、骨の足のエヴァとハイタッチ。
「シュウヤの斧槍は渋すぎる!!」
飛びついてきたサシィを抱っこ。
ギュッとしてから降ろしてあげた。
「はい、ご主人様の一槍の技術は、やはり凄まじい――」
ヴィーネを抱きしめて一緒に横回転。
直ぐにキサラが寄ってきて交代しつつキサラをハグ。
そのキサラが、
「一槍の風槍流の技術は常に成長している。そして、魔槍杖バルドークを自分の手足のように扱える<山岳斧槍・滔天槍術>が凄まじい――」
と発言したまま唇を奪われたから奪い返すようにディープキスをしつつ<血魔力>を交換。
更に、キサラの肩甲骨も同時にマッサージを行うとキサラは軽くイッた。
とヴィーネと交代し、そのヴィーネが、
「――ですね、風槍流の意地のようなモノを感じました――」
ディープなキス。
キッカとキスマリとビュシエとも和気あいあいと今の感想を述べ合っていく。
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