千三百十八話 レン・サキナガとの激闘

 魔星槍フォルアッシュなどの選択肢もあるが、愛用の武器で行こうか。

 右手に魔槍杖バルドークを召喚――。


「ふふ、縷紅草るこうそうのような穂先と、濃密な蒼い魔宝石でしょうか、魔槍杖を扱うのですね」

「あぁ、竜魔石は古代竜エンシェント・ドラゴンの魔竜王の脳だった物だ」

「まぁ……それは貴重と言いますか、造り手が優秀そうです」


 アイテムを見る目は確かだな。

 ザガとボンが造り上げた魔槍杖バルドークは進化している。

 直ぐに、その魔槍杖バルドークに魔力を込めながら<柔鬼紅刃>を意識した。

 レン・サキナガは、縷紅草るこうそうと表してくれたが、魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先は、ぐわり、ぐわわりと魔竜王が口を広げるような動きで紅矛と紅斧刃へと変更を遂げた。柄には『呵々闇喰かかやみぐい』と魔法の文字が浮かぶ。


 そのままだと、嗤うながら闇を喰うって意味だが、別の意味もありそう。


「武器の形状が変化……素晴らしい、魔斧槍ですね、ふふ。そして、槍使いがシュウヤの本筋……」

「おう、そうだ……槍使い、風槍流の使い手が俺だ」

「風槍流……」


 レン・サキナガは風槍流を知らないようだ。

 セラの南マハハイム地方では風槍流はそれなりに有名なんだがな。

 魔界セブドラは広い。槍の流派もセラ以上に凄まじいほど存在しているようだから知らないのは無理もない。だが、この場には俺がいる。アキレス師匠から教わった最強の風槍流を、この魔界セブドラでも有名にしてやろう……そのアキレス師匠に、今の俺を報告したらなんて言うだろう。続けて<握吸>を意識して発動させた。

 <握式・吸脱着>も発動させて魔槍杖バルドークの柄を掌の下に浮かせる。

 そのまま半身で左手を前に出しながら<握吸>を意識し魔槍杖バルドークを掌に吸い込ませ掴む。


「いつでも来い、強者レン」

「ふふ、あ、少々お待ちを……【地下大回廊】の場を少し盛り上げましょう」

「場を盛り上げる?」

「はい、実は、ここは宝物庫にも通じてますが……」


 と言うと、俺を少し見る。観客でも用意するつもりか?

 そんな思いで周囲を見た。レンは微笑みながら、


「この地下の【地下大回廊】は極一部で、【地下闘技場】でもあるんです――」


 と発言しながら周囲を見渡す。


「へぇ、地下闘技場か……だからか、壊れた武器があちこちに落ちては、岩壁に商会の名が刻まれている……」


 と言いながら周囲を見回した。


「商会は、はい。闇商人連合と繋がりがあるので、仲が良い後援者たち、大魔商」


 地下空間は地下大回廊と呼ばれているようにかなり広くドーム球場的。


 地下だから当然、気温は低い、風は無し。

 床は土と石畳で構成されている。

 この地下闘技場の地下大回廊を俯瞰で見れば、円の形をしているかも知れない。

 既にサシィたちは、俺の背後と左右にも移動している。

 エヴァは魔導車椅子を崩して金属の足にしていた。

 リサナは体から出している植物の蔓を波群瓢箪に絡ませながら共にぐるぐる回っている。

 何をするつもりか不明だ。イモリザとキサラとヴィーネは<血魔力>を発して、ハート状の血飛沫をあちこちに作りつつ手を振っていた。

 ビュシエは体から<血魔力>を発し<血魔力>製の巨大な心臓を作ると、眷属たちの前に設置した。皆の視界を奪う巨大な心臓は無駄にリアリティが高い。


 ビュシエは、その心臓の上に跳び乗った。

 俺に手を振ってから、『ちゅっ』とした両手の投げキッスを寄越してくれた。

 <血道・石棺砦>だけでも多種多様な使い方が可能だが、<血魔力>の心臓か。


 相棒が好きな<血魔力>製の魚の玩具をも造れるしビュシエの血道系統のスキルは本当に豊富だ。さすがは元吸血神ルグナド様の<筆頭従者長選ばれし眷属>の一人。

 ビュシエ・エイヴィハンだからなのかも知れない。


 そのビュシエの想いに応えて投げキッスを送り返す。

 とビュシエは『えぇ!?』と俺が投げキッスをするとは思わなかったようで、きょどる。

 <血魔力>製の眼鏡がズレて落ちそうになっていた。

 可愛い。とビュシエの足下の<血魔力>製のハートが真っ二つ。

 更に皆の攻撃を受けて破裂するようにこっぱ微塵に散った。

 <血魔力>製の巨大な心臓は瞬く間に霧散する。

 ビュシエは白い蝙蝠に変化。

 浮遊しながら下にいた眷属たちの行動を見て、目元を赤く光らせる。

 白い蝙蝠から怪光線が出るような雰囲気だ。

 が、攻撃はせず女体化し、くるくると前に回転。

 綺麗な肌色の背中を見せるように、回転しながら背が多く露出したドレス風のスタイルに衣装をチェンジ。器用に両足で着地するや否や<血魔力>製のハンマーを両手に生成する。その物質化している<血魔力>製のハンマーをダイナミックに振るって、皆の物質化していないハートの形をした<血魔力>を破壊し、散らした。


 ビュシエの血のハートに皆も怒っているのかと思っていたが、楽しそうだ。皆で<血魔力>の血でハートの形状を中空に造り始める。

 更に、各自の武器を振るい合い、そのハートと似た形状の<血魔力>を消し飛ばす。同時にダンスを始める。あの<血魔力>を活かした遊びは<筆頭従者長選ばれし眷属>と<従者長>の特権か。

 とキスマリも<血魔力>を放出して、宙空に形を造ろうとしているが霧状にしか拡がらない。形となっても変なドーナッツ、少しヘンテコだ。

 <血魔力>の扱いに慣れず、不満気に両太股を地面に付けていじけていた。

 乙女的で可愛い。ヘルメとグィヴァもイモリザとリサナもダンスに参加。

 ヴィナトロスは自分の周りに<血魔力>の霧が漂ってきたのを吸い込んでいた。

 エトアはその<血魔力>が吸収されるのを間近で見て、目を丸くしている。

 ペミュラスとキルトレイヤとバミアルとラムラントは素直に見学。

 ナロミヴァス、アポルア、アンブルサンたちは眷属たちの行動と<血魔力>の扱いに暫し唖然としたが、直ぐに気を取り直すように、俺のほうを見続けていた。

 視線から熱い忠誠を感じるから嬉しい。

 ミトとハットリに黒鳩連隊の皆々と黒鳩連隊隊長ソウゲンと黒騎虎銃隊隊長シバは眷属たちの様子を見て少し驚いていたがレンに視線を向け直し声援を送っていた。

 レン・サキナガは、手を振って皆の声援に応える。

 と俺を見て、


「もう少し待ってくださいね」

「おう、構わない」


 レン・サキナガは微笑みながら大きい昇降台から離れるように俺の右から広い地下大回廊を見て回るように前へと歩いていく。


 レンが歩いた先には鳥居形の背と勾欄が付いた豪華な椅子があった。


 女王か女帝が座るような椅子。

 魔力を有した椅子で特別な効果がありそうだ。

 サイドテーブルのような魔机もあった。

 簡易な椅子も多数並んでいる。


 その斜め奥には、岩が重なっているようにも見える太くて長い鋼杭が床に突き刺さっている大きい塊があった。

 大きい塊の表面には魔法陣が発生している。

 更に大きい塊を締めて張りまわすように魔法の鎖と幅広な鋼のワイヤーが何重にも絡んでいる。境界を示し出入りを禁止する意味があるような印象だ。

 魔法の鎖と幅広な鋼のワイヤーには巨大な南京錠が嵌まっていた。


 地下闘技場の地下に何を封印しているんだ。

 闘技場で散った魂に、消費した魔力を吸い込むような仕組みがありそうだ。


 床が一気に怪しく感じるが、レンは何も言わず。

 

 レンは、鳥居形の背と勾欄が付いた椅子の近くを素通り、地下大回廊を進んでから足を止める。

 あそこが地下大回廊の中心か。


 そこで周囲の黒鳩連隊の面々を見るように視線を巡らせると、右手に持つ魔刀を左右に回し、

 

「闘技音楽隊出なさい――」


 と叫ぶと周囲から、


「「「ドッ」」」


 と重低音が響き渡り、左の岩壁の上が突如として光った。

 スポットライトを浴びたような岩壁の上には観客席がある。


「あんなところに観客席!?」

「「わっ」」

「ん、驚き」

「「はい」」

「地下闘技場というだけはあるようです」

「先ほど闇商人連合は【レン・サキナガの峰閣砦】のレン家を含むと語っていた。地下闘技場では、闇商人連合と関係した興業が行われているのでしょうか」

「たぶん、その可能性は高いです。商業上の共同利益の保全、海上交通の安全保障、共同防衛の責務と述べていた。この闘技場も、その一環でしょう」

「ふむ。たぶんそうだろう。しかし、源左には野試合を行う土俵があるが……このような会場はない」


 ヴィーネとキサラとサシィは会話を耳にしているレン・サキナガは頷いてから、


「はい、ありきたりですが正解です。【メイジナの大街】、【サネハダ街道街】、【サネハダ街道街】にも大小様々な闘技場があり、祭りが行われている。大魔商や魔商人に魔傭兵たちの興業の一つ」


 魔界セブドラではポピュラーかな。


 競技場の観覧席を載せたような岩壁にはバルコニーのような崖造りの板組がある。

 そのバルコニーには、数組のダンサーと、数個の大太鼓が設置され、太鼓と打楽器とシンバルなどを持った数人による音楽隊か。


 そこにいる音楽隊が大太鼓と太鼓を、ドンドン、ドドン、ドンドン、ドドン、ドドドドドッドドン、ドドドッと心の像を打ち抜くような勢いで打ち鳴らし始めると、ダンサーが、その太鼓の音に合わせたダンスを行い、非常にリズムがいい。


 途中からリズムが収まると、歌手もいるのか、静かなリズムのまま民謡的な祝い歌を歌い始める。


「――閣下、音楽隊ならこちらにもありますから!」


 とヘルメたちがレンが用意した音楽隊に負けじと、音楽を奏で始めた。キサラはダモアヌンの魔槍をギターバージョンに変化させている。

 イモリザが、「ららら♪ 皆が歌う♪ 楽しい♪ この明るい地下の闘技場で、使者様が黒髪の色っぽい美人さんと一騎打ち♪」と歌う。


 キサラも歌い始めていた。

 イモリザとキサラにもスポットライトが当たった。


 照明用の魔道具の光源は地下空洞のあちこちに設置されていた。

 その照明用魔道具を操作しているのは、黒鳩連隊と黒鳩連隊以外のレン家の者。


 太鼓のリズムに乗るように近付いてきたレンは、


「ふふ、シュウヤ、行きますよ」


 レン・サキナガは薄紫色の瞳を輝かせる。

 と周囲に発生していた火の玉の一部が和服と重なった。


「おう」


 楽しそうに笑顔を見せるレンは横斜めを歩く。

 左手に持つ魔刀を斜め左下に差しつつ、俺を見ながら魔力を有した草鞋わらじを履いた左足の爪先を見せるようにジリジリと間合いを詰めてくる。


 耳飾りが揺れていた。


 すると、レンが身に着けている着物ドレスと肌襦袢と肌との隙間に空気が入り込んだようにふわりと持ち上がって着物ドレスと模様が波打つように揺れた。

 刹那、レンは前進しながら魔刀を振るってきた。


 直ぐに後退して一閃を避ける。


 <血道第三・開門>

 <血液加速ブラッディアクセル>を発動――。


 俺を追うように地面を蹴って追ってきた――。

 レン・サキナガの周囲の火の玉から漏れた火が眩い軌跡を生む――。


 着物ドレスの縁際が縁の形を模ったまま液体のようなモノに変化――。


 と、あまり見ていられない――。

 

 左腕を捻ったように魔刀の切っ先を突き出してきた。

 やや遅れて右手が持つ斧槍も突き出してきた。


 その魔刀の切っ先と魔槍の突きを凝視しつつ――。

 正眼の構えから右手が握る魔槍杖バルドークで<刺突>――。


 紅矛で魔刀の切っ先を<刺突>で突き崩す。

 更に紅斧刃で魔斧槍の矛を下に押し削るように直進させた紅矛でレンの右籠手を狙った。


 レンは加速し、俺の<血液加速ブラッディアクセル>の加速力に対応し、右手を下げながら半身から体を右に開くような挙動の横回転を行う。

 魔槍杖バルドークの<刺突>でレンの右籠手を狙ったが、横に避けたレンは前に出ながら左腕が上にしなる。

 上に切っ先が向いた魔刀を上から下に振り下ろしてきた。

 俺の正中線ごと一刀両断を狙う斬り方――。その斬撃の風を感じながら体の軸をずらすように横移動だけで避けた。


 レンも横に逃げた俺を追うように相対する。

 剣術はユイを思い出す――。

 レンは魔斧槍と魔刀を同時に振るう。

 首を狙ってきた。

 その魔刀と魔斧槍の軌道を読みながら――。

 <闘気玄装>を発動――。

 <血脈瞑想>を発動――。

 <生活魔法>の水を足下に撒く――。

 <水神の呼び声>を発動。

 <水の神使>を発動。

 <滔天仙正理大綱>を発動。

 <滔天神働術>を発動。

 <仙魔・暈繝飛動うんげんひどう>を発動。

 <水月血闘法>を発動させる。

 

 魔斧槍と魔刀の一閃をスェーバックの動きで避けながら横に跳ぶように移動。


 レン・サキナガは体勢を沈める。


「速度が急上昇したが、私も――」


 レン・サキナガの着物ドレスの端がウネウネと動き魔力の粒が中空に舞う。


 和服ドレスの端の変化は速度加速スキルの一環か、<魔闘術>系統の能力かな。

 

 先ほど、レンの部下の誰かが防御重視の<煉鋼甲・零式>だと言っていた。


 太股の<闘争:権化>と<鬼化:紅>のスキルと目される刺青は魔力が強まる。

 和服ドレスの戦闘服と関係しているのは分からない。と、和服の表面に炎が発生し炎を纏う。


 和服の表面を行き交う炎は太陽のプロミネンスのような動きを発しているが和服は燃焼していない。


 レンは体から<魔闘術>系統を強めながら加速、前進し――。

 屈んだ体勢から起き上がる勢いを魔斧槍に乗せるように左下から右上へと振るってきた。


 魔斧槍の矛と斧刃を凝視――。


 魔槍杖バルドークを斜め左下に差し出した。

 

 紅斧刃で斧刃を受け止め、そのまま上へとレンの魔斧槍の斧刃を弾く。レンは右腕が上がり、脇腹が空く、そこに反撃の石突を突き出したが、右に移動していたレンに避けられた。


 動きも速い。

 <魔闘術>系統のスキルを更に使ったか強めた。


 レンの魔斧槍の連続突き技が迫る。


 <光魔血仙経>を発動。

 

 ※光魔血仙経※

 ※光魔血仙経流:開祖※

 ※光魔血仙格闘技術系統※

 ※滔天仙流技術系統※

 ※戦神流命源活動技術系統:神仙技亜種※

 ※仙王流独自格闘術系統※

 ※仙王流独自<仙魔術>系統※

 ※<黒呪強瞑>技術系統※

 ※魔人格闘術技術系統※

 ※悪式格闘術技術系統※

 ※邪神独自格闘術技術系統※

 ※魔界セブドラ実戦幾千技法系統※

 ※光魔ルシヴァル血魔力時空属性系<血道第五・開門>により覚えた特殊独自スキル※

 ※<血道第五・開門>、<血脈冥想>、<滔天仙正理大綱>、<性命双修>、<闘気玄装>、<経脈自在>、<魔人武術の心得>、<水月血闘法>、大豊御酒、神韻縹渺希少戦闘職業、因果律超踏破希少戦闘職業、高水準の三叉魔神経網系統、魔装天狗流技術系統、義遊暗行流技術系統、九頭武龍神流<魔力纏>系統、<魔闘術>系技術、霊纏技術系統、<魔手太陰肺経>の一部、戦神イシュルルの加護が必須※

 ※血と水を活かした光魔血仙経流により、全般的な戦闘能力が上昇※

 ※眷属たちに己の生命力を譲渡する根源となる能力、<性命双修>と関係※

 ※使い手の内分泌、循環、神経、五臓六腑が活性化※

 ※己の魄と魂の氣が融合※

 ※生命力を眷属か関係者に譲る場合、使い手は膨大な痛みを感じることになるが、その謙譲とサクリファイスに「献身」は神々も注視するだろう※

 ※血仙人の証し※


 様々な<魔闘術>系統を練りねた。

 練り捏ねて練度を高めた濃密な魔力を丹田から体中に巡らせた。


 魔槍杖バルドークを斜め前に出した。

 レンの魔斧槍の突きを魔槍杖バルドークの紅矛で受け止める。

 続けての突きも、紅矛で合わせた。

 何十合と合わせまくる。


 キィィンと連続とした甲高い音が響く間に――。


 レンは魔刀の斬り上げを繰り出してきた。

 

 その斬り上げを避ける。

 と、またも魔斧槍と魔刀の連続的な突きを繰り出すレン・サキナガは強い。

 

 魔槍杖バルドークを上下に動かし防ぐ。

 反撃の紅矛と竜魔石の<刺突>を繰り出すが、レンは魔斧槍を盾にして巧みに避けてくる。


 レンは<魔闘術>系統を強める。

 周囲の火の玉が次々にレンの中と和服の中に突入していった。

 太股の<闘争:権化>と<鬼化:紅>が輝くと消える。

 レンの体が和服ごと少し大きくなった。

 胸元と太股の肌に傷のような印が発生し、それが炎のような模様に変化しながら拡がる。

 <黒呪強瞑>か<闘鮫霊功>のような<魔闘術>系統だろうか――。

 レンの体がブレまくりながら、魔刀と魔斧槍を連続的に突いてきた。

 縦に割る一閃も混じる――。

 一閃は避けたが、凄まじい連続攻撃を繰り出してきた。


 <山岳斧槍・滔天槍術>を意識。

 そのすべてを魔槍杖バルドーク一本で往なす。


「――くっ、一本の魔槍で、ここまで、私の武が――くあっ、まるで山脈の如くの鉄壁さ――」


 レンはそう叫びながらも正確な攻撃を続ける。

  

 魔斧槍を下から突き上げようとしたモーションに入る。

 刹那、左に出て、回るように魔槍杖バルドークで<豪閃>――。

 レンは、受けず、右回りに後退して、俺の側面を取ろうと、魔斧槍を振るい、


「崎長斧槍流<山轍崩打>――」


 <牙衝>のような下段攻撃を連続的に放ってきた。

 下に構えた魔槍杖バルドークのまま後退。


 防ぐ度に魔槍杖バルドークが揺れた。

 同時に地面に刃状の亀裂が走る。

 刹那、地面ごと足を狙う<山轍崩打>の突き出される魔斧槍の穂先へと魔槍杖バルドークの竜魔石を衝突させるように突き出しながら下段攻撃の<山轍崩打>を防ぐ。魔槍杖バルドークを活かすように前転し、<豪閃>を狙う――。

 俺の体と共に回転する魔槍杖バルドークの紅斧刃をレン・サキナガの頭部に向かわせる。


「ハッ――<無反動・世斬り>」


 レンは上空からの攻撃を誘っていたか。

 魔槍杖バルドークの<豪閃>の振り下ろし攻撃に<無反動・世斬り>の魔刀を合わせてきた。振り上げて魔刀の刃で<豪閃>の紅斧刃を受ける。

 と魔刀を横へズラした。紅斧刃の<豪閃>は勢いが削がれ横にズラされる。

 俄に魔槍杖バルドークを引く。レンは即斬に<無反動・世斬り>の袈裟懸けから逆袈裟の連続斬りで俺を押し込もうとしたが――。

 <山岳斧槍・滔天槍術>の活かすように魔槍杖バルドークの柄で、その連続斬りのすべてを往なす。

 が、痛い――。


 直ぐに指は再生するが、指の数本が飛んだ。

 が痛いってのは生きている証拠なんだよと言うように――魔槍杖バルドークの柄を押し込みながら<龍豪閃>――レンの魔刀の柄と刃と魔斧槍で<龍豪閃>は防がれた。

 が、予測済み――。

 魔槍杖バルドークの下からの竜魔石がレンの脇腹と魔斧槍を持つ手を掠めたところで、左回し蹴り<蓬莱無陀蹴>を繰り出す。


「ぐ――」


 レンは左回し蹴りの<蓬莱無陀蹴>を魔斧槍の柄で防ぐと、両足の草履が少し浮いた、力で押されたレン・サキナガは悔しそうに歯を噛むと魔刀を突き出すモーションを見せた。即座に魔槍杖バルドークを少し下げ<夜行ノ槍業・弐式>を実行した。

 神速の勢いで持ち上がった紅斧刃と突きの魔刀が衝突。

 魔刀は重低音を響かせながら破壊されると衝撃波が発生し、レン・サキナガは胸元の注連縄のような帯を晒す。そこに<夜行ノ槍業・弐式>の竜魔石のカウンターの突きが決まった。


「ぐは――」


 血を吐いたレン・サキナガの和服と胸元が大きく窪む。

 レンの体が収縮するように元の大きさに戻った。

 続けて、紅矛ではなく柄の打撃の<夜行ノ槍業・弐式>のカウンターがレン・サキナガの片足に入り「ぎゃぁぁ」と宙空を転げるように回った。気を失ってはいないと思うが、追撃はしない。

 地面に片足から着地したレン・サキナガは微動だにしないが武器を消す。

 

「参りました、ぐえ……」


 と力なく発言しながら血を吐いた。

 体勢を崩すように片足の膝で地面を突いた。

 即座に、「了解――」と言いながら戦闘型デバイスから高級回復ポーションを取り出す。

 その高級回復ポーションの瓶の蓋を囓り取り、ポーションの瓶をレン・サキナガに放ってポーションの液体をふりかけてあげた。

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