千三百二話 血魔剣と漆黒の〝煉霊攝の黒衣〟のコラボ


「ウォン! 魔槍具装甲か! 主は器用だな! 短槍のアイテムに変化可能な仙妖魔の女子を妻にもらうとは!」


 言い方が面白い。


「ンン」

「ンン、にゃ」


 と、ケーゼンベルスの物言いにエヴァのところにいた黒猫ロロ銀灰猫メトが離れた。

 

 と、ケーゼンベルスの黒い体毛が風を受けているように自然とウェーブしていく。


 大きい黒狼で、耳には魔皇獣耳輪クリスセントラルを嵌めているからかなり渋い。


 だが、渋いが、銀白狼シルバのように尻尾を振りながら、歯牙を見せて、俺を見て、喜んでいるようなケーゼンベルスは可愛い。


 そのケーゼンベルスに、


「はは、眷属だからな」

「ウォン! 当然ッ、皆が主の嫁っ子であろう! ウォォォン!」

「ン、にゃぉ~」

「にゃァ」


 黒猫ロロ銀灰猫メトがケーゼンベルスに同意するように鳴いている。

 その三匹は、


「ん ウォン、ふむ――」

「にゃ」

「ンン」


 鼻キスを行い合って互いの首と体をなめ合うグルーミングを開始した。

 

 先ほどのスコ座りといい、息が合うな。

 微笑ましい。


 アミラも黒猫ロロ銀灰猫メトとケーゼンベルスが一生懸命に舌を使って体毛を舐めてあげているのを見て、笑顔を見せていた。


 舌はざらざらしているし、汚れを取る効果があるんだろう。不思議とあまり臭くならないしな。

 

 アミラが知る頃の魔界セブドラにも、魔猫や狼はいたんだろうか。


 そのアミラを見て、


「短槍となった場合、他の人物もアミラの魔槍具装甲を使えるのかな」


 蒼い双眸が美しいアミラは頷いて、


「はい、だれでも短槍は使えます。が、私が拒めば使えない」


 そりゃそうだよな。

 アミラの蒼い双眸をジッと見る。

 頬を赤らめて可愛い。

 

 北欧の女性の雰囲気があるが、それ以外は古風な日本風で、ユイっぽさがある。

 少し充血蒼い双眸を見ながら、そのアミラに、


「では、アミラが使えるスキルなどを教えてくれるか?」


 アミラは瞳を一瞬散大収縮させてから瞼をパチパチと動かして、


「……はい、短槍状態から<仙妖・影髪>で黒髪が出せる。敵の捕縛も狙えます。炎に弱いですが、ある程度の魔法耐性もある。更に<仙妖・精神圧>、<仙妖・精神制御>で相手の精神を乗っ取ることも可能です。私の黒髪か短槍に触れていれば成功確率は上昇します。更に主専用の<光魔仙妖・開門>、<光魔仙妖・力妖狗>、<光魔仙妖・透明>、<光魔仙妖・黒穿ラゾマ>などのスキルもあります」

「ん、凄そうなスキル」


 エヴァの発言に、皆が頷く。


 <光魔仙妖・黒穿ラゾマ>はアミラの魔槍具装甲を用いた必殺技だろうか。


 それともマルアと同じくデュエット専用の槍技?

 なら新しい知見だ。

 

 そのエヴァが、


「ん、さっき聞いた<仙妖・大穿刺>と<仙妖・蠱毒>に<仙妖・雅石化>も使えるの?」

「はい、<仙妖・大穿刺>は、今の<仙妖魔・闘戦壱式>スタイルで使えます」


 と、アミラは右手に持つ短槍の魔槍具装甲を皆に見せながら語る。


 <仙妖魔・闘戦壱式>とは、今の軽装スタイルってことかな。そして、<仙妖・大穿刺>は先ほど巨大鬼トウガンの心臓を穿って封じる時に用いたスキルと教えてくれていた。


 俺専用ってのが気になるから、


「俺専用とは、アミラを短槍のアミラの魔装具装甲を装備した時に使えるスキルのことかな」

「はい」

「「おぉ」」


 アミラの頷きと返事に皆が感心したようだ。

 すると、マルアが、


「はい、凄い! <仙妖・黒蛇髪>はわたしもあるけど、<仙妖・精神制御>はわたしにはないです!」


 と発言。

 アミラの魔槍具装甲の短槍を敵対者へと、ワザと渡すような戦い方も戦術に組み込めるか?


 そして、魔公爵フォンマリオンは、俺たちの下にまだ飛んでこない。


 今も生きて領域を保ち続けているなら、魔界王子テーバロンテを撃退したか寄せ付けないだけの能力を持つ魔公爵フォンマリオンのはず。

 

 だから円樹鍛冶宝具から〝傀儡鋼の万年神器〟への変成は失敗したと分かっているはず。


 警戒して来ないか。

 

 先ほどのアルフォード関係ではないが、<千里眼>や<遠距離透視>などあるのなら、俯瞰から俺たちを見ているかも知れない。

 ま、見ているだけなら別段に構わない。


 そこで、サラたちを見て、


「キサラたちもアミラに自己紹介をしたらいい」


 と言うと最初にキサラが前に出る。

 キサラは、


「アミラ、わたしの名はキサラです。わたしもアミラの魔槍具装甲を使えますか?」

「はい、宜しくキサラ、主と同じ<血魔力>を持つ方は無条件で使えます。更に短槍系の流派を習っているのなら直ぐに馴染むはずです」

「短槍専門ってことではないですが、天魔女流が使えます――」


 キサラはダモアヌンの魔槍と青炎槍カラカンを見せる。


「はい、大丈夫かと」

「キサラも槍使いだからな、<槍組手>もあるが、近接の格闘術では俺の先生の一人でもある」

「ふふ、はい」

「主の先生とは……失礼致しました……キサラ様」


 キサラは「ふふ」と笑みを見せる。

 ダモアヌンの魔槍を振るい、白絹のような髪を揺らす。

 そして、


「――アミラ、様は要らないです。そして、わたしはシュウヤ様の最強の眷属、選ばれし眷属、最高の眷属たち、その意味を持つ<筆頭従者長>の一人です。わたしたち<筆頭従者長選ばれし眷属>は三人の<筆頭従者>も持つことが可能ですが、わたしは持たない予定です」


 と語尾のタイミングで俺を見ながら語る。

 前にも言っていたな、<筆頭従者>は造らないと。


 今はそうでもいつか気が変わるかも知れないな。

 アミラは、


「了解しました、キサラ。皆様も光魔ルシヴァルの最高眷属の<筆頭従者長>、選ばれし眷属の<筆頭従者長>たちなのですね」


 と語ると、皆の顔を順繰りに見ていった。


 エヴァ、ビュシエ、キッカ、ヴィーネはアミラと目が合うと微笑んでから会釈。


 その様子を見ながら、


「ここにいるのは様々な眷属たちだ。魔界セブドラと惑星セラには<筆頭従者長選ばれし眷属>と<従者長>の眷属たちは多い」


 そこで、ヴィナトロスとグラドを見て、


「ヴィナトロスとグラドは、魔界騎士の光魔ルシヴァル版、光魔騎士の眷属だ。バーヴァイ城に光魔騎士ファトラがいる。セラにはデルハウトとシュヘリアもいる。そして、最初に認めてくれたのは、悪夢の女神ヴァーミナ様だ。ヴァーミナ様は俺たちのケツモチといえるか」

「「ハッ」」


 ヴィナトロスとグラドの会釈を見て頷いて、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスを見て、


「この指輪、闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトを通し、魔界セブドラに楔が繋がって、絆を得た光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスもいる。傷場など魔の扉の鏡を使わずに魔界セブドラとセラを行き来できる唯一無二の、俺の大眷属だ」

「ゆ、唯一無二……感無量! 閣下ァァ、私は閣下の骨でありまする!!」

「閣下ァァ! 骨と甲冑が爆発する想いですぞ!!!」

「閣下♪ バモス!!」


 イモリザの掛け声をプラスしたゼメタスとアドモスのモノマネに加えて、ゼメタスとアドモスの槍烏賊のように拡がっては縮むを繰り返している頭部のモノマネを銀髪で行うから余計に面白い。


 そのイモリザを見ながら、


「イモリザは<光邪ノ使徒>、ピュリンとツアンの三人と意識を共有している。その三人で戦闘中だろうと、自由に三人の体を入れ替えられる。更に……」


 続けて、ナロミヴァスたちを見る。


「今は水神ノ血封書などを利用し、<血魔力>を通しただけの眷属もいる。そして、古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルを冥界シャロアルで復活させ眷属となった。更に、常闇の水精霊ヘルメと闇雷精霊グィヴァは、意識を持った精霊で両者とも特別な本契約を果たしている」

「「はい!」」

「おう!」

「はい!!」

「「「ハッ」」」

「バーヴァイ城で魔界王子テーバロンテを滅した後、【ケーゼンベルスの魔樹海】に移動し、そこで魔皇獣咆ケーゼンベルスも使役をした。そして、相棒とメトのことはもう話をしたな」

「ウォォン!」

「にゃ~」

「にゃ、にゃァ」


 と簡単な説明をした。

 アミラは、皆を見回してから息を呑む。

 ヘルメの半身が瀑布と化しているのを二度見してからは一瞬、恍惚とした表情を浮かべてからハッとして、


「は、はい!」


 と返事をしていた。

 キスマリとラムラントとペミュラスは無言。

 ヴィナトロスとグラドは小話中。


 悠久の血湿沼ナロミヴァス、流觴りゅうしょうの神狩手アポルア、闇の悪夢アンブルサンは微動だにしない。


 そして、ヴィーネが前に出た。

 選ばれし眷属、最高眷属の最初の一人が<筆頭従者長>のヴィーネだ。


「アミラ、わたしの名はヴィーネ、元はセラの地下都市ダウメザラン出身のダークエルフ。地上に出て長く放浪後、北マハハイム地方から南マハハイム地方に渡った。その南マハハイム地方で出会ったご主人様に買われたのだ。そして、わたしの積年の恨みを晴らしてくださった御方……更に、そのわたしを最初の<筆頭従者長選ばれし眷属>に選んでくださったのだ」


 としみじみと語ると、エヴァが微笑みながら頷く。

 レベッカがいたら、何か言ってるだろうな。


 迷宮都市ペルネーテで出会って色々とあったからなぁ。

 アミラは、


「……はい、最初の<筆頭従者長選ばれし眷属>のヴィーネ様」


 と会釈するアミラの姿勢が良い。

 貴族的な雰囲気もあるし、仙妖魔のマルアとは同じ種族だが、環境はかなりことなるってことかな。

 エヴァの記憶にも親戚に折檻せっかんされていた、体罰的な虐待をされていたようだし、相当厳しいしつけを叩き込まれた印象だ。


 ヴィーネは頷いてから、


「……戦闘スタイルは翡翠の蛇弓バジュラの後衛とガドリセスを扱う前衛の両方可能、万能型だ。今後は協力する機会も多々あると思う。そして、キサラと同じく様は付けないでいい」

「はい、銀髪が美しいヴィーネ、今後とも宜しく」


 ヴィーネとアミラは微笑み合う。


 エヴァとキサラとビュシエとキッカが頷きながら自然と拍手していた。皆も拍手していく。


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも骨盾を骨剣の柄で叩いて返事をしていた。

 キサラとグィヴァは頷く。

 キスマリとイモリザとマルアは数回頷いていた。


 筋骨隆々のキルトレイヤとバミアルは、アミラから離れた位置で仁王立ち、門番代わりだ。


 古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルは格好いい。

 

 ヴィナトロスとグラドは、アミラを見ながら、先ほどと同じく今も時折会話している。


 光魔騎士の先輩でもあるからな。


 ヴィナトロスは神格を取り戻したらどうするんだろう。

 眷属たちにわざと喧嘩を売るように俺にキスの嵐をくれていたが……。

 ま、神格を取り戻すには、相当モンスター&魔族を倒して魔力を得なければならないだろうしな。

 本人の好きなようにさせるか。


 続いて、エヴァが


「ん、わたしはエヴァ、<筆頭従者長選ばれし眷属>の一人、よろしく」

「はい、エヴァ、よろしく」

「ん、【古バーヴァイ族の集落跡】の三腕魔族の【バリィアンの堡砦】にデラバイン族の王女でバーヴァイ地方を担当しているバーソロンがいる。【源左サシィの槍斧ヶ丘】には源左の頭領でもあるサシィもいる……」


 サシィのところで間をあけるエヴァ。

 エヴァっ子は少し頬を膨らめて、赤らめているが、どうしたんだ。

 

 エヴァっ子は、視線を皆に向け、


「セラのセナアプアにレベッカ、ミスティ、ユイ、先生のクレイン、ルマルディ、ビーサ、サイデイルにキッシュ、ペルネーテにヴェロニカ、がいる」


 その間に戦闘型デバイスに入れた〝黒衣の王〟装備の魔槍と魔大剣の名を見る。

 

 new魔槍グルンバウダー×1

 new魔大剣ブルアダラー×1


 なんか格好いい名だ。

 これらの〝黒衣の王〟装備のお陰で<バーヴァイの螺旋暗赤刃>と<バーヴァイの魔風重大剣>が使えるようになった。


 そして、茨の凍迅魔槍ハヴァギイの新技の獲得はまだだが、アミラの魔槍具装甲を使って独自の新技獲得を目指すのもありかな。

 ま、当分は仙妖魔として外で活動してもらったほうがいいか。


「閣下、魔公爵フォンマリオンは来ませんね」

「あぁ、では、〝黒衣の王〟の装備の一つ〝煉霊攝の黒衣〟を着てみる」

「はい」


 肩の竜頭装甲ハルホンクを意識。

 下に着るのは、メイドたちが特別に用意してくれたゴルゴダの革鎧服と白牛熊をミックスさせた半袖にしよう。


 アイテムボックスから〝煉霊攝の黒衣〟を取り出した。


「ングゥゥィィ――」


 漆黒のローブ的な〝煉霊攝の黒衣〟を装備。


 ピコーン※<バーヴァイの魔刃>※スキル獲得※


「よっしゃ、<バーヴァイの魔刃>を獲得!」

「おぉ」

「ん、赤霊ベゲドアード団たちが繰り出し続けた魔刃?」

「そうなるか、試す――」

 

 右手に血魔剣を生み出し魔力を通す。

 血魔剣のブレードと骨の柄から血が迸った。

 アーヴィンの髑髏の杯の名残の骨の柄は十字架的。

 剣身から太い炎が駆け上っていく。

 柄の左右から噴出している血の炎がプラズマ的だ。


 吸血王の血魔剣。

 古い血脈ソレグレン派の血魔剣は渋い。

 

「「「おぉ」」」

「「「おぉ、やはり、吸血神!」」」

「血魔剣と漆黒の〝煉霊攝の黒衣〟のコラボが素敵すぎる……」


 皆の歓声を感じながら獲得したばかりの――。

 血魔剣を振るい<バーヴァイの魔刃>繰り出した。


 血魔剣の先から漆黒の魔刃が飛ぶ。

 前方の【赤霊ノ溝】の砦の防御壁に、その魔刃が衝突して、防御壁を貫いていた。

 

 おぉ~。


「「……」」

「「「おぉぉ」」」


 皆の歓声というか響めきが気持ち良かった。

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