千三百話 新しい眷属の<光魔ノ魔槍具・アミラ>の誕生

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。

 するとゼメタスとアドモスが、


「オォ、円樹鍛冶宝具の秘宝!」

「鍛冶、円樹とありますから、樹と金属の装備が生成可能になるのでしょうか」


 と質問してきた。


「まだまだ分からないが、名前的にはそうかも知れない。先ほども言ったが、ミスティかクナに見せて要研究だろうな」

「「はい!」」

「……植物の化石に見えるアイテムが円樹鍛冶宝具。そして、〝傀儡鋼の万年神器〟になりかけたアイテムでもあると……」


 ヴィーネなりに分析していると分かる。

 皆が頷いた。

 ヴィナトロスは驚いている。

 そのヴィナトロスが、


「〝傀儡鋼の万年神器〟をシュウヤ様が得たら……」


 ヘルメがハッとした表情を浮かべて、俺を凝視。

 ビュシエは、


「周辺地域の蹂躙が可能となりましょう」

「うふふふ、ビュシエ、分かっていますね! 悪神ギュラゼルバンに恐王ノクターの勢力の地域の平定も楽になる! 更に悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様の助太刀を兼ねた魔城ルグファントへ向けての大進軍も可能! ついでに大厖魔街異獣ボベルファの鬼魔人&仙妖魔の軍とミトリミトンを拾って、神聖ルシヴァル大帝国の版図が拡げましょうか! 閣下! 円樹鍛冶宝具を埋めましょう!」

「埋めましょう♪」

「うふふ、ましょう~♪」

「埋める~♪」


 ヘルメがふざけた調子で大反応。

 イモリザとマルアとリサナが歌う調子でノッている。

 

 ヘルメは嬉しそうに周囲に水飛沫を飛ばしてきた。

 グィヴァも応えて、雷飛沫を飛ばす。

 それに触れたイモリザと黒猫ロロ銀灰猫メトが感電したように銀髪がモジャモジャとなっていた。


 黒猫ロロ銀灰猫メトは平気だ。

 

 皆、ヘルメに合わせて楽しげな雰囲気となる。

 悪いが、


「あはは、円樹鍛冶宝具を地下に戻したところで〝傀儡鋼の万年神器〟と成るのか?」

「分かりません、無理なのですか?」


 とヘルメは皆に聞いていた。


「ん、たぶん無理」

「無理かと」

「はい、もう無理でしょう」


 エヴァとヴィーネとキサラが発言。

 ヘルメとグィヴァはショックを受けたような印象で、体から水飛沫と雷飛沫を放出していた。


 ヴィナトロスも〝傀儡鋼の万年神器〟のことを知っているのか、頷いている。


「ヴィナトロスは、何か意見があるか?」

「はい、〝傀儡鋼の万年神器〟は噂で聞いたことがあります。兵士、眷属を、無限に造れるようになる秘宝だと。似たような秘宝は結構あります。そして、生成途中だったのなら鉱脈に戻しても無駄かと」

「なるほど」


 ヘルメは〝がーん〟とショックを体で表現するように肩を落としていた。

 が、直ぐにけろっと笑顔を浮かべる。

 と、下半身を液状化にしてから、霧を散布するように周囲に飛ばしながら俺の真上に来た。


 涼しい水気に満ちて、癒やされた。

 真上に来たヘルメを見ながら、


「……〝傀儡鋼の万年神器〟があればお試しで使うと思うが、進軍はしないぞ。大厖魔街異獣ボベルファと合流し魔城ルグファントに向かうほうが楽だ。虐げられている人々を見かけたら救いたいが……」

「はい、閣下ならそう言うだろうと思ってました」

「おう」

「ですね。とにかく〝傀儡鋼の万年神器〟が敵対関係になりそうな魔公爵フォンマリオンの手に渡らず良かったです」


 キサラの発言に皆が頷いた。

 すると、ビュシエは、


「ラムラントとペミュラス、魔公爵フォンマリオンの名と、大魔術師ドモンシックスの名に円樹鍛冶宝具の名を聞いたことはありますか?」


 と聞いていた。

 ラムラントは俺たちに一礼。

 ペミュラスにも目配せを行う。

 と、ペミュラスはラムラントを見て、頷く。

 

 スケルトンタンクを思わせる頭部の中身の四眼を意味するだろう、ドット絵風の煌めきが点滅を繰り返していた。


 ラムラントは笑みを浮かべて頷く。


 【赤霊ノ溝】の戦いで百足高魔族ハイデアンホザーのペミュラスと三腕のバリィアン族のラムラントは仲良くなったようだ。


 ラムラントは、


「大魔術師ドモンシックスの名と、円樹鍛冶宝具の名は聞いたことがないですが、魔公爵フォンマリオンの名は聞いたことがあります」


 と答えた。

 皆、ラムラントを注視して頷いた。

 そして、一斉に隣にいる百足高魔族ハイデアンホザーのペミュラスに視線が集まる。

 

 ペミュラスは胸元に生えている歩脚の一部を収斂させてから、


「ラムラント殿と同じく、魔公爵フォンマリオンの名のみ聞いたことがあります」


 と発言。

 頷いた。

 

 とりあえず、三腕のバリィアン族のラムラントに、


「その魔公爵フォンマリオンの情報を頼む」

「はい、【バーヴァイ平原】や【源左サシィの槍斧ヶ丘】の北、北と西と南の遠くまで続いている広大な【ローグバント山脈】の北側付近の【ゲーメルの大霧地帯】、【シャントルの霧音唖】、【ベルトアン荒涼地帯】、【レムラー峡谷】の近くに、魔公爵フォンマリオンの所領と【フォンマリオンの魔塔】が存在するはずです」


 と魔公爵フォンマリオンの情報を教えてくれた。


「ここから北か」

「はい」

「ペミュラスの知っていることを頼む」

「ラムラント殿と同じ、その【フォンマリオンの魔塔】の土地の名です」


 するとビュシエが前に出た。


「シュウヤ様、魔公爵フォンマリオンなら聞いたことがあります。そして、【フォンマリオンの魔塔】なら遠くから見たことがある。〝列強魔軍地図〟に載っている【フォンマリオンの魔塔】がそうです」

「あぁ~〝列強魔軍地図〟に載っていたのか――」


 〝列強魔軍地図〟を取り出し、皆に見せた。


 【古バーヴァイ族の集落跡】を俯瞰で見ると意識。


 すると、【赤霊ノ溝】からズームアウトされ【古バーヴァイ族の集落跡】の【ベルトアン道】から【バーヴァイ平原】地方の俯瞰視点となった。

 

 試しに【バーヴァイ城】を意識――。

 一瞬で〝列強魔軍地図〟の描かれている【バーヴァイ城】を見下ろす俯瞰視点となる。


 さすがに、城内やバーヴァイ地方にいるテン、黒狼隊のリューリュ、パパス、ツィクハル、ベイア、キョウカ、蜘蛛娘アキとアチュードとベベルガや、エラリエース、<従者長>となったアチの姿は見えない。


 アドゥムブラリはそろそろ、この【バーヴァイ城】に戻ったかな。


 そして、<千里眼>があれば、バーヴァイ城内の様子もリアルタイムで把握ができるんだろうか。


 いつかは、そのスキルを持つとされるアルフォードと会いたい。


 魔神レンブラントの家系に〝炎幻の四腕〟を渡す約束もある。

 カリィ繋がりでロルジュ公爵の【ロゼンの戒】にいるだろうアルフォードを回収しにサーマリア王国の王都ハルフォニアに乗り込まないとな。


 塔烈中立都市セナアプアの下界にある俺たちが所有するに至った死蝕天壌の浮遊岩に侵入した冒険者クランのランザミックが仕出かしてくれたケアンモンスターの借りもある。


 【フォンマリオンの魔塔】を意識。


 一瞬で【ベルトアン道】と【ベルトアン荒涼地帯】を越えて北のほうへと視点が移動――。

 【フォンマリオンの魔塔】の地方をクォータービューで眺める視点となった。


「「「おぉ」」」


 エトアにペミュラスとラムラントは驚く。


 バミアルとキルトレイヤにナロミヴァスと流觴りゅうしょうの神狩手アポルアと闇の悪夢アンブルサンも此方を見ているが黙ったまま。


 〝列強魔軍地図〟と似た魔地図は、魔界セブドラでは持っている方々は多いようだからな。

 

 俺の持つ〝列強魔軍地図〟は結構な物のようだが。


 そして、大きいケーゼンベルスに、黒猫ロロ銀灰猫メトはスコ座りで己の腹を舐めている。


 と今は前足の肉球の掌球と指球と指球の間に溝に生えている毛が気になるのか、その間の溝に小さい口を突っ込んでモグモグとしていた。


 俺と目が合う黒猫ロロさんは、前足を少し離す。

 鼻が少し膨らんでいた。

 

『……ここ、くちゃいお?』


 とか考えていそう。

 そして、『我が輩は、にゃんこなり』とは言わないが、そんな印象で、俺を見ながら無垢なままボウッとしている。面白い。


 すると、キッカが、


「〝列強魔軍地図〟は便利です。そして、ビュシエ、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長選ばれし眷属>の任務で眷属たちと共に【フォンマリオンの魔塔】に近付いたのですか?」


 ビュシエに聞く。そのビュシエは頷いて、


「直に行ってませんが、はい」


 と肯定した。

 皆が頷く。

 〝列強魔軍地図〟を仕舞った。


 ヴィーネが、


「ご主人様、守護者ラレスの創造主の大魔術師ドモンシックスとは聞いたことなかったですが、【魔術総武会】と関係があることは確実でしょうし、覚えておきたい大魔術師の名ですね」


 ヴィーネの言葉に頷いた。


「あぁ、守護者ラレスの語りには、大魔術師ケンダーヴァルを知っているような雰囲気を醸し出していた。だから、大魔術師ドモンシックスと知り合いだった可能性がある」

「そうなの、ですね。魔界セブドラにいる理由、大物でしたか」


 頷いた。

 

「各地に点在する傷場か【幻瞑暗黒回廊】の中を行き来可能な〝センティアの手〟のようなものを利用し、魔界とセラを行き来していたのでしょう」

「ん」

「魔の扉の鏡もあります」


 皆の言葉に頷いた。

 すると、エヴァは、


「ん、円樹鍛冶宝具は仕舞う」

「了解」

「「はい」」


 水神ノ血封書を出した。

 高級魔力回復薬ポーションを飲んだ。


「――良し、次は、バーソロンのところに戻る前に、アミラの魔槍具装甲に挑戦する。金漠の悪夢槍と〝煉霊攝の黒衣〟は後回し、<霊血の泉>もこのまま利用し、<霊呪網鎖>か<水血ノ魂魄>に<光魔の王笏>も使うかな……上手くいけば使役か、契約となるかもだ」

「「「はい」」」

「わわ、新しい眷属の誕生を、見られる? わくわくします♪」


 <霊呪網鎖>も使うかも知れないからイモリザは嬉しそうだ。


「ん! 最後の女性の記憶だと大柄のモンスターを倒すか、封じるために決死の覚悟だったと思うから、記憶がそのままならば、大変そうだけど……アミラの魔槍具装甲と化して、かなり長い年月が経っているから、成功するかも」

「シュウヤ様の挑戦を応援します!」

「仙妖魔の血を引く一族かも知れないです。わたしと同じように光魔ルシヴァルの眷属と成れたら仲良くしたい!」


 マルアの言葉に頷いた。

 更に、波群瓢箪の中に半身を入れているリサナが、


「ふふ、楽しみです♪」


 と発言。


 ――<水の神使>を発動。


「おう、じゃ行くぞ!」


 とアミラの魔槍具装甲に<血魔力>の魔力を通す。

 同時に<光魔の王笏>を発動――。


 <血道第四・開門>――。


 ※光魔の王笏※

 ※<血道第四・開門>※

 ※光魔ルシヴァル血魔力時空属性系※※<ルシヴァルの紋章樹>から派生※

 ※称号<覇槍ノ魔雄>を得ることが条件の一つ※

 ※光と闇を知る魔雄※

 ※血の眷属の宗主の因果律を超えた証明※

 ※血の眷属たちの光魔ルシヴァルの王の資格の一つ※

 ※取り込んだ<大真祖の宗系譜者>が強まった証明でもある※

 ※<従者開発>※<光闇ノ奔流>※<光邪ノ使徒>※<大真祖の宗系譜者>の四種スキル必須※

 ※<ルシヴァルの紋章樹>から派生し称号<覇槍ノ魔雄>が必須※

 ※<霊血の泉>により運を失うが<大真祖の宗系譜者>が強化※眷属たちの能力を大幅に引き上げる※

 ※血道の道は険しいが、血を吸い込み続け、血道に関するスキルを使い続けることで先が見えるだろう※

※多大な精神力を必要とするが、選ばれし眷属の<筆頭従者長>は二十人まで可能※

 ※<従者長>は二十五人まで眷族化が可能。<光魔の王笏>効果で、眷族となった直後の眷族者は、今までの経験がプラスされて独自の進化したスキルが獲得し易くなる※

 

 更に<霊呪網鎖>を発動。


 ※エクストラスキル<鎖の因子>固有派生スキル※

 ※エクストラスキル<光の授印>の作用により追加効果※

 ※光の粒子鎖を用いて知能の低いモンスターを限定して洗脳、支配下に治められる。ただし<鎖の因子>のマークに直接触れていることが条件※


 アミラの魔槍具装甲から闇の魔力が放出。

 柄の表面が割れて、短槍は崩壊しかかると、短槍から長い黒髪が出現し伸びる。

 

 その間にも、両手の掌から幾万の豆電球のような仄かな明かりを発している繊維のような鎖が伸びた。


 その繊維のような鎖は妖精の産毛を連想させる。

 

 割れて崩壊しそうなアミラの魔槍具装甲と黒髪に、その<霊呪網鎖>が触れて侵入。

 すると、崩壊していくアミラの魔槍具装甲と黒髪に盛大に魔力を吸われる。

 アミラの魔槍具装甲は壊れて原形を失った。

 その割れに割れた中身からニョキと女性の長い腕が伸びて得体のしれない濃密な魔力を得た。


 暗夜に灯を得たような不安から安心へ移り変わる不思議な感覚も得た瞬間――。

 

 そして、筋肉らしきモノが次々に出現しくっ付き始めているアミラの魔槍具装甲へ――。


 <水血ノ魂魄>を発動――。

 

 ※<水血ノ混沌秘術>系統:魂魄使役術※

 ※高水準の能力と水神ノ血封書と<水の神使>などが必須※

 ※水神ノ血封書を外に出しておくと威力が上昇※

 ※荒ぶる精霊やSランク以上のモンスターを弱らせたところで使うと、魂を捕らえ、水神ノ血封書に封じ使役を可能とする、成功率は低い※

 ※<水の神使>などを使えば成功率は上がる※


 短槍だった、アミラの魔槍具装甲は甲冑を纏った女性が現れた。片膝の頭は地面に付いている。


 長い黒髪で甲冑はあまり見えないが、小さい頭部は見えている。俺を見ている蒼い双眸は綺麗だ。


「あぁぁ……貴方様……私を……」

「おう、名はアミラでいいのかな」

「ぁぅ……はい……主……」


 とアミラは頭を垂れた。


 ※ピコーン※<光魔ノ魔槍具・アミラ>※スキル獲得※

 

 おぉ、新しい眷属の<光魔ノ魔槍具・アミラ>の誕生だ。

 

「ん、新しい眷属!」

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