千二百九十九話 皆と団欒に情報共有

 ヴィーネとグィヴァと【赤霊ノ溝】の砦の内部と外側を見て、またヴィーネたちに視線を戻し、


「――皆、ただいま、短槍が嵌まっていた溝の地下は結構な広さの洞穴でな、モンスターなどイベントは盛りだくさんだったよ」

「にゃぉぉぉ」

「にゃァァ~」

「シュウヤ様、地下の溝とは!」

「おぉ、我が主の帰還なり!」

「御使い様~」

「ウォォォ、主!! 我は大戦果を上げたぞおお!」

「ふふ!」

「『――主と友の帰還!! 我も向かうぞ――』」

「閣下とロロ殿様の帰還だ!」

「オォォォ! 閣下ァァァ」

「ウオォ♪ 閣下ァァァ♪」


 古バーヴァイ族の四腕戦士キルトレイヤと四腕騎士バミアルに、キスマリとフィナプルスとグィヴァと光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスとイモリザも元気だ。


 ミレイヴァルはお淑やかに頭を下げていた。


「シュウヤ様たちのご帰還です~」


 波群瓢箪の上に立っている半身が半透明のリサナは扇を振るっていた。

 直ぐに、隣にいるヴィーネが、


「お疲れ様です!」

「おう!」


 と発言。そのヴィーネとハイタッチ――。

 直ぐに肩の竜頭装甲ハルホンクの薄着を意識した。


「ングゥゥィィ」

「にゃ~」

「にゃァ」


 神獣ロロは黒猫の姿に戻りながらヴィーネの足に頭部を寄せた。

 肩にいた銀灰猫メトもヴィーネの肩に移って長い耳に鼻キス。


「ぁう、冷たい」


 とヴィーネの長耳が少し凹む。

 可愛い。そんなヴィーネと銀灰猫メトが愛しくなって、


「おう、ひとまずは――」

「ぁ――」


 ヴィーネの温もりを得る。


「ンン」


 銀灰猫メトは喉声を発して、尻尾で俺の頭部を叩いてから下りた。


 ヴィーネの戦闘装束は、紅と黒の羽のデザインが素晴らしいムントミーの衣服。

 そのムントミーの衣服越しのおっぱいの柔らかさは、しっかりと得ている。


 ぷにょぷにょ感が嬉しかった。


 ヴィーネも「……」と無言のまま体重を俺に預けてきた。

 俺の鎖骨の下辺りに高い鼻を潰すように押し付けてくる。

 ヴィーネの唇の感触を、その胸に得た刹那――。

 股間がピクッと反応してしまう。

 ヴィーネは、少しもっこりとした俺の股間に自らの腰を押し付けてくれた。


 が、我慢をがんばり続けてハグをしながら――。


 宙空から突進してくる魔皇獣咆ケーゼンベルスの姿を把握。

 そして、寄ってきたキサラに合わせてヴィーネは熱い吐息を俺の耳元に吹きかけてから離れてくれた。


 興奮度合いがヤヴァいから、こっそりと<血脈冥想>を行い整えた。


 そして、何事もなくキリリとした顔付きを意識し、キサラに半身を預けるように斜め前に出る。


「「――シュウヤ様!」」


 ビュシエともハイタッチ――。

 握手と恋人握りの「「ふふ」」の流れから――。

 キサラの拳に己の拳をチョンと合わせた。

 レベッカだったら『何スッキリとした顔してんのよ!』とツッコミが来たことだろう。


 ビュシエは少しタイミングが遅れて、


「あっ、これですね――」


 と細い右腕を突き出す。


「――おう」


 そのビュシエの拳の甲に右手の甲を突き合わせた。

 そして、


「改めてビュシエ、<血道・石棺砦>の守りと〝黒衣の王〟の魔槍の奪取をありがとうな」


 と、言いながらビュシエの手を引っ張る。

 <血道・石棺砦>の簡易砦はもう消えている。


「あっ」


 ビュシエの腰に左手を回して、少し強引に寄せた。

 ビュシエの背を撫でてあげていくと、

 

「シュウヤ様……温かいです……」


 と嬉しそうな声を発してくれた。

 声音からして、此方の胸まで温かくなるぐらい切なさを感じた。

 長い金色の髪を指で梳かすようにビュシエの両肩に手を当てながら引く。

 ビュシエはとろけそうな表情を浮かべて少し呆けていたから――<血魔力>を、そのビュシエの体にぶっかける勢いで送ってあげた。


 すると、ビュシエは、


「ァン」


 と喘ぎ声を発して体がビクッとして、白い蝙蝠に変身しては上空に向かう。

 と、宙空で慌てて女体に戻ると、一瞬慌てて手足をばたばたと動かしていた。


 白いパンティが見えている。

 ビュシエは降下して、何事もなく俺を見る。

 と俺の<血魔力>の血がまだ顔に少し残っていたのか、その血に気付くと、一瞬で妖艶な顔色に変化。

 唇から舌を出し、その舌で自らの唇の襞と俺の血を舐めてから、


「……ふふ♪ オイシイ……あぁ……」


 ちょいエロだから興奮した。

 そのビュシエは気を取り直し、


「……シュウヤ様、溝の下に何か重要な遺跡があったようですね。そして、魔公爵フォンマリオンの襲撃の可能性があるとヴィーネが言ってましたが」

「おう、遺跡は遺跡だが、アイテムが関係だ――」


 とビュシエに言ってからキサラに腕を引っ張られて、キサラを見る。

 と、そのキサラから頬にキスを受けた。


 その流れから、キサラを抱きながら唇を奪う――。


 キサラは半開きの口内から舌を寄越してきたから合わせた。

 キサラの舌を吸いながらディープな<血魔力>をキサラの口内に送る。

 とキサラは俺の唇を引っ張るのを止めて、唇を少し離し体を震わせる。

 イッていた。気を失ったキサラは喉を晒すように少し海老反り体勢となっていた。細い体だが、肉付きがいいところは良いからムチムチ感は高い。


 そんなキサラの背中を社交ダンスのノリで両腕で支えた。

 キサラは直ぐに起きた。上半身を起こして、スラリとした長い両足でちゃんと立った。


 目が潤んでいるキサラは、


「うふ、シュウヤ様……素敵なキスをありがとうございます。そして、〝黒衣の王〟に続いての貴重なアイテムの入手のようですね」


 頷いた。

 キサラは、足下にいた黒猫ロロ銀灰猫メトに猫パンチを受けていた。


 そのキサラと周囲にいる皆に、


「その通り、魔公爵フォンマリオンとの関係やら、ソー師匠との訓練でスキルも得たことを、皆に説明する前にもう一度ハグだ」

「「ふふ、はい!」」


 と笑顔の二人と再び抱き合った。

 キサラとビュシエの体の温もりを得てから離れ、キッカの近くに移動する。

 キッカはエヴァと話をしていたが、微笑み、


「――宗主、バーソロンとサシィとは連絡済みです。そのことでエヴァと話をしていたところです」

「了解した、四眼四腕の魔族と二眼四腕の魔族のバアネル族だったか、そいつらの残党などの戦いもないようだな――」

「――はい!」

 

 キッカともハイタッチ後――。


「砦の内部の戦いの貢献に〝黒衣の王〟装備の奪取に改めて――」


 とキッカの体を抱きしめる。


「あぅ、ふふ……」

 

 キッカの背中を優しくさすってあげながら<血魔力>を送ると、キッカは、


「あぁぁぁ……」


 感じてくれた。

 キッカを抱きしめる両手の強さを変化させつつ、その両手からキッカの背に<血魔力>を送ると、キッカは「え、あぅ」と両腕を引いて一瞬ビックリしていた。

 

 キッカは体が震え、


「え、あぅ、き、気持ち良すぎて……あんっ」


 と<血魔力>を送りすぎたか、途中で気を失った。

 直ぐに起こすように<血魔力>を送ると、


「ハッ……シュウヤ様、ここで、その……褒美としての礼なのは、ぁん……わ、わかって、ぁう……ひゃ……」


 となんか抵抗したから<血魔力>を連続的に送ったら、またキッカはイッた。そんなキッカの体を支えていたが、少し両腕を揺らすとキッカは目を開ける。左手でキッカの背を支えながら起きてもらった。

 キッカの双眸は充血している。

 胸元のハート型の穴から覗かせるおっぱいの谷間が素晴らしい。


「宗主……シュウヤ様……」


 俺の血のほしさと、女としての欲情が見え隠れしている。

 が周囲の視線もあるのか、自重したようで、ヴィーネたちの背後に移動していた。さすがは冒険者ギルドマスターでもある精神力だ。

 

 続けて、リサナとキスマリとフィナプルスとミレイヴァルとも連続的にハグ。

 そして、


「【赤霊ノ溝】での戦いは中々激務だった。四人とも、ありがとう」

「ふふ、何を言われますか、皆と同じく、こうして抱きしめてくれるシュウヤ様がとても愛しいです」

「うむ! 主……」


 大柄のキスマリが、途端に女性らしくなるのが、とても可愛い。

 四腕が震えているし、緊張せんでもいいのに……。背中を撫でてあげた。


「ぁう」


 と可愛い反応を示すキスマリ。

 続いて、フィナプルスとも、


「……はい、【古バーヴァイ族の集落跡】のためです。それに、【テーバロンテの王婆旧宮】に向けて交渉材料となる〝黒衣の王〟の装備は増えましたし、良いこと尽くめ」

「はい、わたしは陛下の騎士として活躍できればそれでいい」


 ミレイヴァルはそう発言し、抱きしめを強くしてきた。

 嬉しくなったからミレイヴァルを強く抱く。

 他からの視線が強くなったから直ぐに離した。


 そして、沈黙を続けているバミアルとキルトレイヤにナロミヴァスと流觴りゅうしょうの神狩手アポルアと闇の悪夢アンブルサンを見る。


 皆、片膝を地面に突けたままだ。

 俺の部下としての立場を貫く気概を感じて、少し嬉しく感じた。

 

 そこで、ラムラントとペミュラスと光魔騎士グラドと馬魔獣ベイルをチラッと見てから黒髪の魔族と三腕のバリィアン族たちの前に移動した。


「――シュウヤ様、お帰りなさい!」


 ラムラントは背中の細長い手を使った挨拶をしてくれた。

 バリィアン族の背中の手の挙動は、いつ見ても面白い。


「おう、ラムラント、助けた方に人気があるようだな」

「昔、指揮した部隊のメンバーがいたんです」

「あぁ、そういうことか、そりゃそうなるな」

「ふふ、はい」


 と、助けたバリィアン族の方々と黒髪の方々を見る。

 助けた魔族たちも寄ってきた。

 三腕の魔族バリィアンの数が多いのかな。


「「お帰りなさい~」」

「魔英雄様だぁぁ」

「わぁぁ~」

「格好いい兄ちゃんが帰ってきたー」

「同じ黒髪~~~」

「猫ちゃんたちこっちきて~」

「「ワンッ」」


 子供も犬もいるから、本当に助けられて良かった。

 黒髪のレン家の方々か、交渉するにしても源左のサシィに連絡は必須。

 相棒と銀灰猫メトは、ビュシエが懐から出した<血魔力>製の魚の玩具で遊んでいるから、無理だろうな。

 

「魔英雄様、憎いバアネルたちを倒してくれてありがとうございます!!」

「「「ありがとうございます!」」」

「拙者は魔英雄殿に、命を託す!!」


 総髪のレン家の男性。

 座している姿勢は武士だ。

 衣装はボロボロで落ち武者そのもの。

 が、パラレル地球の過去の日本人だとしても好意は感じる。


「魔英雄様、ありがとう……バアネルたちを潰してくれて、俺たちは……あの肉包丁野郎め、精霊様が氷漬けにして粉々にして倒してくれた……俺は嬉しすぎて、精霊様と皆様は真の魔英雄だ……」


 バリィアン族の男性が男泣き。

 ヘルメは数回頷いて、助けた方々と子供たちに水をピュッと飛ばしている。


 とりあえず皆さんに、


「バリィアン族の方と、黒髪のレン家の方々、それぞれに送るので少しお待ちを」

「「「はい!」」」

「「「ハッ!」」」

「「「承知!」」」

「分かりました~」

「「はぁ~い」」

「「うん~」」


 すると、魔皇獣咆ケーゼンベルスが、


「主、【赤霊ノ溝】の魔族たちの名はバアネルというのか」

「おう、そいつらの追撃、ご苦労さん」

「ウォン! 逃げたバアネルはすべてを根絶やしにしてやった。【古バーヴァイ族の集落跡】の今後を纏めるだろうパセフティたちの憂いも無くなるであろう」


 魔皇獣咆ケーゼンベルスの発言に皆が静まる。

 頷いて、


「よくやってくれた。逃げて野盗となったら脅威になるからな」

「うむ」


 エヴァとエトアも拍手している。

 すると、ラムラントが、


「魔皇獣咆ケーゼンベルス様、バリィアン族を代表して、お礼を申し上げます――ありがとうございます!」

 

 と背中の細長い腕を畳むように頭を下げていた。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは「ウォン!」と叫ぶように返事を行う。

 頭部の黒毛は少し逆立っている。

 歯牙も見せていた。

 まだ興奮が少し収まっていない状態なんだろう。


 ケーゼンベルス的に、他の魔族の嗜食に関しては魔獣だから構わない面もあるかと思うが、さすがに拷問を好み、俺たちの仲間を喰らうバアネル族の存在は許せなかったようだ。

 

 ケーゼンベルスは憤慨さを隠そうとしない。

 怖さがあるが、気高さを感じた。

 とても心地良い。魔皇獣咆ケーゼンベルスは渋い表情のままラムラントの傍に生き、魔息を吐く。


 ラムラントの髪の毛が魔息の風を受けて、ブアッと持ち上がった。


「名は忘れたが三腕の女子よ、今後とも、よしなにな! そして、女として主と、もっと仲良くなって、チュッチュするがいい! ウォォォン!」

「「「――ぷはッ」」」

「チュッチュッて言い方が、ぷはは」

「「「ふふ」」」

「にゃ、にゃ、にゃぁ~」

「ンンン、にゃァ」


 魔皇獣咆ケーゼンベルスが言い方が面白すぎる。

 俺は腹を抱えて笑った。皆も笑う。相棒たちはゴロニャンコ。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスは、


「ふんッ、笑うことでもなかろう! ラムラントは主の<従者長>という新しい番いとなるのであろう?」

「あ、はい」

「ならば、良いではないか、チュッチュッだ!」


 と真面目に語るから面白い。

 ケーゼンベルスは、ラムラントの傍に寄って鼻息を荒くしていた。


 ケーゼンベルスの喋りと態度を間近で見ているラムラントは、少し恥ずかしかったのか、頬と首下を斑に赤く染めてビュシエとキサラとグィヴァの背後に移動していた。

 

 ケーゼンベルスは尻尾を少し下げて溜め息を吐いていた。

 大きい黒い狼で気高さもあるが、コミカルだ。

 

 そして、暫し、間が空いた。ペミュラスを見る。

 すると、そのペミュラスが、


「……陛下、地下で新たな〝黒衣の王〟の装備を獲得したのですか?」


 ペミュラスの発言だ。

 縦長の顔としての輪郭を有しているスケルトンタンク風の頭部はいつ見ても怖い。

「いや、地下では短槍と円樹鍛冶宝具。その説明を皆の前で行う」

「おう、色々とあった。説明する前に――」

「――はい、気になります――」

「使者様~わたしもハグ~」

「おう!」

「わーい」


 イモリザを抱きしめながら半回転を繰り返す。


「えぇ――段々、速くなってる♪」

「はは」


 イモリザと共に皆の周りで回り踊る。


「ふふ♪ 使者様ダンス~♪」

「おうっ、ボンバイェ!」


 ヒップホップの挨拶的なダンス風に片方の拳を突き合わせ掌を合わせる。


「使者様~♪ 円樹鍛冶宝具とは♪」

「おう、最初は地下の溝を♪ <血鎖の饗宴>で、ぶち抜いたァ」

「へぇへぇ♪ へぇへぇ♪」


 とイモリザとも楽しくラップ調にダンスしながら掛け合う。

 と、そこで、普通に戻して、


「イモリザもピュリンとツアンでがんばってくれたようだな――」

「はい♪」


 と離れたところで――。

 アミラの魔槍具装甲をまた取り出して、


「――溝には、この短槍が突き刺さっていたんだ。名はアミラの魔槍具装甲、まだ魔力を通していない――」

「おぉ~」

「それがアミラの魔槍具装甲!」

「名前的に甲冑などが展開される?」


 キサラの言葉に頷いた。

 皆に向け、


「あぁ、魔力を通したら、たぶんな。で、このアミラの魔槍具装甲の短槍は、エメラルドグリーンの心臓部に深く刺さっていて、<鎖>や<超能力精神サイキックマインド>ではなかなか引き抜けなかったんだ。片手で引き抜こうとしても失敗した」

「なんと!」

「片手でも挑戦したが、失敗。その際に、エヴァはアミラの魔槍具装甲から記憶を少し得ている。で、筋力などが上昇する<戦神グンダルンの昂揚>などを使って両手で引き抜けた。その際に、鉱脈の一部にも見えたエメラルドグリーンの心臓部が消えてな。下に大きな洞穴が発生した。そこには、大量の頭が割れたモンスターがいた。礫の攻撃が来たから、直ぐに<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で防いだ。そして、その<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の使い方に魔軍夜行ノ槍業の師匠たちがヒントの思念をくれてな……」

「ん、あの時に、そんなことがあったのね」

「はい」

「一瞬でしたが、はい」


 と、エヴァとエトアとヘルメが語る。

 頷いて、


「おう、刹那の閃きで<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に左手の掌を当てて魔力を送った。すると、下の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の表面に変化が起きたんだ――」


 と皆の前に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚し、見せる。


「で、新しく獲得したのが、<魔仰角印>と<魔俯角印>。中心がクリスタル状に変化する――」


 と魔力など消費し、内臓が痛くなるが、構わず――大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を縦にし、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の表面の変化具合が、皆に分かりやすいように<魔仰角印>を意識した。


 一瞬で『八咫角』の模様が変化。

 表面の背景に、ルシヴァルの紋章樹のような樹が描かれる。

 上が明るく下が暗いのは変わらない。

 一瞬で、枯山水のような模様も発生。

 その模様を縁取り、這うように、闇と光の魔力の流れも発生していく。


 更に、万物を意味する陰と陽の二つの氣と同じ意味の闇と光が融合したルシヴァルの紋章樹と陰陽五行説や太極図と似た模様を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に刻まれた。


 その陰と陽の魔力の流れの中に魚のような魔生物が二匹泳ぐのも同じ。


 同時に、この魔生物は、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から召喚可能な魔生物だと理解。

 進化が可能のようだ。


「「「「おぉぉ~」」」」

「<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が進化!!」

「シュウヤ様は冒険の度に、成長している!」


 ビュシエの言葉に頷いてから、


「魔軍夜行ノ槍業に魔力を送り、ソー師匠の無覇と夢槍に妙神槍流を試した時にソー師匠の壮絶な記憶を体感し、<握把法>と<魔略歩式>の恒久スキルに、<魔略・無覇夢槍>などの<魔槍技>を獲得し、<魔軍夜行ノ憑依>も得たんだ」

「「「おぉ」」」

「魔軍夜行ノ槍業自体も進化したのですね」

「凄すぎる!」

「……地下の溝は修業部屋でしたか……」

「そして、その地下の敵と、魔公爵フォンマリオンが関係を?」

「それが、その頭が割れたモンスターと赤武者四腕魔族が関係があるのか、ないのか、分からない」


 エヴァが、


「ん、地下の敵とは、たぶん、円樹鍛冶宝具とは関係がない。そして、地下に黒い鉱脈があった。その鉱脈をわたしが溶かして、黒色が基調に銀色の粒々が入ったインゴットを回収した。そしたら、溶かしたところが、遺跡のような場所で、守護者ラレスの幻影が出現していた石板と、円樹鍛冶宝具と、幼霊高古代竜ハイエンシェント・ドラゴニアソロリハの頭蓋霊骨と、モルダーン金剛魔霊樹の葉が出現したの。円樹鍛冶宝具を守るのが守護者ラレスだった」

「「……」」

「幼霊高・古代竜ハイ・エンシェント・ドラゴニア……」

「モルダーン金剛魔霊樹の葉……」

「守護者ラレスと円樹鍛冶宝具とは、どうなったのですか」

「ん、話をしていたら、ラレスは、敵対していた魔公爵フォンマリオンの〝フォンの黒大渦こくだいか〟に生き埋めにされたって言ってた」


 ヴィーネたちは頷いた。

 魔公爵フォンマリオンの名に納得したからだろう。

 補足ついでに、


「守護者ラレスだが、大魔術師ドモンシックス様が創造主らしい。だが、魔公爵フォンマリオンに負けて、〝傀儡鋼の万年神器〟という名のアイテムに変化させられる途中だったようだ」


 ヘルメも、


「はい、守護者ラレスと円樹鍛冶宝具は、当時敵対していた魔公爵フォンマリオンに〝傀儡鋼の万年神器〟にされかけた」


 と語る。

 皆が頷く。

 そして、


『〝傀儡鋼の万年神器〟とは、傀儡兵の器、活力源、鍛冶道具、呪術道具、依代など様々に活用できる秘宝の一つ。大本は、古の魔皇マルタンの術式の一つされているが、定かではない。その〝傀儡鋼の万年神器〟は、スキルの<魔皇衛士召喚>のようなことも可能なのだ。しかも、そのスキルと違って大量の生贄と魔力消費が必要ない、僅かな魔力消費だけで、己の眷属兵と傀儡兵を大量に生成できる。しかも、何回でも使用可能。己に強さがあれば、〝傀儡鋼の万年神器〟を使えば諸侯にのし上がれることは容易だろう』


「と、ラレスは語っていた」

「なるほど……」

「その守護者ラレスは、大魔術師ドモンシックスの魔力が尽きて散った。だが、円樹鍛冶宝具は硬直して一つになった。エヴァが回収している」

「ん」


 と、エヴァが回収した円樹鍛冶宝具を見せる。

 幼霊高古代竜ハイエンシェント・ドラゴニアソロリハの頭蓋霊骨とモルダーン金剛魔霊樹の葉がくっ付いたまま。

 盆栽的、苗木的な鍛冶道具だが、研究はミスティかクナに頼るしかないだろうな。

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