千二百九十七話 ん、シュウヤ、変なの見つけた!
降下しながら周囲を見て、黒色と赤色の岩場に着地した。
岩の下の層にマグマのような熱いモノが流れているのか、至る所から黒い煙が濛々と上昇している。
ガスが心配だが、風通しがいいから平気かな。
と魔力が濃厚な黒色と虹色の液体が粘土のように固まっているところは、温度が異常に低いのか、黒い鉱物が一気に晶出。
俺の知る地球では自然にクリスタルが生成される環境は様々に整っていないと無理だったが、面白い。魔界セブドラの地質学、古植物学、岩石成因論、岩漿論、応用地質学、鉱床学、結晶学なども魔法技術と相まって魔機械と融合し、様々に発展しているところは発展しているだろうと予測できる。
セラだとドワーフと古代ドワーフの印象が強いかな。
魔界セブドラの地下にも古代ドワーフかドワーフのような魔族がいるんだろうか。
「ンン、にゃ~」
「にゃァ」
「ん、戦獄ウグラ擬きを全部倒した」
「はいでしゅ! 皆さん強い!」
「――閣下、ソー師匠の幻影を纏って、装備している!」
皆も降下してきた。
その皆に、
「おう、この洞穴は結構広い、一応注意な」
「ん」
「「はい」」
「はい!」
常闇の水精霊ヘルメは、傍に着地し、俺と魔軍夜行ノ槍業をマジマジと見る。
俺の体と重なっているソー師匠の幻影は、興味深いよな。
改めて、俺も――。
自分の体を見る。
幻影のソー師匠と重なっていると言うか……。
幻影のソー師匠をフォールフィールド的に纏っているような印象だ。
これが<魔軍夜行ノ憑依>か……。
「ん、シュウヤとソー師匠に皆、少し見てくる」
「了解」
魔導車椅子に座った状態のエヴァは、紫色の魔力で包んでいるエトアを黒い岩に置いてから、洞穴の左の方に向かい、宙に浮かびながら周囲を見回していた。
魔導車椅子からスッと離れた。
両足は骨の足のまま浮遊して下を見ている。
エヴァだから発見可能な鉱脈を見つけたかな。
【古バーヴァイ族の集落跡】にはエヴァが知らない鉱脈が多いようだ。
「ンンン」
「ンン――」
『『ここ、かゆいにゃ~』』
と言っているような印象だ。
ドラゴンの鱗的な粒々があるが、それが、体に当たると気持ちいいんだろうか。
腹から産毛に隠れた桃色の乳首さんが見えている。
ふうふう~と、産毛と乳首さんに息を吹きかけて遊びたい。
そんな相棒と
縄張りの匂い付け作業をがんばる二匹だ。
が、ここは少し湿っているから、体が臭くなりそうだぞ……。
体が臭くなったら後でヘルメに洗ってもらうか。
そして、ここの洞穴の全体像を見ると……どことなく海食洞にも思えた。
と、エヴァが移動している左奥の方が、ここよりも地熱がありそう……。
熱水鉱床のような熱された液体が出ている黒と赤の岩柱が見えた。
俺もそこに行こうかな、エヴァの金属精錬は成長しているから、使用しても隙はないと思うが一応は――。
と、考えたところでソー師匠の幻影が俺の体から抜けるように離れる。
ソー師匠の幻影と魔軍夜行ノ槍業を繋ぐ魔線が太くなった。
そのソー師匠は本物の四肢を得て、改めて己の手足の感覚を確かめるように両手と両足を動かし、本物の手で幻影の己を触ろうとしたが、幾度となく手は幻影の体をすり抜けるのみ。
そんなソー師匠へ無覇と夢槍を放った。
ソー師匠は『お?』と少しおどけた表情を浮かべて、無覇と夢槍を本物の両手で受け取ると無覇と夢槍の柄を見て満足そうに頷く。
そのまま二つの柄を上に傾け穂先を見上げた。
何かを思い出している?
そして、その無覇と夢槍の穂先と柄越しに俺を見て嬉しそうな表情を浮かべると、
『フッ……お前は……』
『……どうかしましたか?』
『……』
両腕を広げて『さぁな?』と口元を動かしたように見えたが……。
眉目秀麗のソー師匠は、
『……ハッ、それよりも、弟子の<魔略歩式>から<魔略・妙縮飛>の使用は、中々の練度だったぜ、初の使用に見えないのがまた小憎たらしさ満載だ』
『あ、ありがとうございます! ですが、まだまだです。ソー師匠の疾風迅雷のような速度に腰と足のキレの良さは保てない』
『ハッ、当たり前だろうが、お前は妙神槍流を習い始めたばかりだろう』
『はい! そして、妙神槍流のご教授、ありがとうございました』
『おうよ、が、妙神槍流奥義<魔略・無覇夢槍>は<魔槍技>の一つに過ぎない。スタイル的に弟子と合うが、妙神槍流のスキルは多彩だからな。他の七人の流派と同じく先は長いと知れ』
『はい――』
ラ・ケラーダの態度で思念を返す。
と、ソー師匠は腰ベルトにぶら下がっている魔軍夜行ノ槍業の中へと戻った。
「ん、シュウヤ、変なの見つけた!」
「え?」
「なんと! 闇の精霊ちゃんと火の精霊ちゃんが多い場所ですが」
「にゃ?」
「にゃァ~」
ヘルメやエトアと驚きながら目を合わせてから、
「エヴァのとこに行ってみよう」
「「はい!」」
「「にゃ~」」
エヴァは黒い鉱脈の表面に骨の足を付けていた。
<金属融解>と<金属精錬>を実行中だろう。
黒い鉱物にはキラキラとした粒が入っているようだ。
黒い鉱物が一瞬で精錬される様子は不思議。
骨の足に黒い鋼を吸着させていた。
一瞬でエヴァの骨の足が黒い鋼の足と成る。
が、その骨に吸着されていた黒い鋼はドロッとした動きで足下の金属製容器の中に格納されると、その容器ごとアイテムボックスの中に消えていた。
エヴァはそうしたことを何度も実行。
吸着していた黒い鋼を足下に集めて、黒いインゴットに変化させては容器に入れてアイテムボックスに仕舞う。
一瞬の間に、何度も骨の足が鋼の足へと変化を続けるから元々が鋼の足だったようにも見えてしまう。
エヴァの顔色は、少し苦しそうだ。
が、熟れているし、少し色っぽい仕種もあるから魅了された。
がんばれと心で応援した。
すると、エヴァが狙って溶かしたのか不明だが、黒い鉱脈の一部に丸い円状の穴ができていた。
露出した地面には小さい植物がある。
エヴァは足下に円状の空間を作るように黒い鉱脈を溶かした?
黒い鉱脈が覆っていたところに植物が育つ余地があるとは思えないが……。
小さい植物は半透明な魔力を放っている。
更に、その植物の手前の地面には、四眼四腕の魔族の石板も露出していた。
その石板から四眼四腕の魔族の幻影が宙空に浮かびつつ、四腕を左右に広げている。
四眼四腕の魔族の幻影は、背後の小さい植物を守ろうとしているのか?
四眼四腕の魔族の石板の左右には、骨のドラゴンの頭部と、火の魔宝石と、植物の葉が浮いていた。
その骨のドラゴンなど、すべてを守るために存在しているのかも知れないが。
皆に向け、
「植物に、四眼四腕の魔族の石板に、植物の葉に、幼ドラゴンの骨頭に、火の魔宝石のお宝か!」
「ん! たぶん!」
「半透明な四眼四腕の魔族は、植物たちを守っているんだと思いますが……」
「不思議でしゅ! 宝箱があればわたしがあけましゅ!」
皆の言葉に頷いて、近付いた。
すると、
「何者か……」
四眼四腕の魔族の幻影が聞いてきた。
「俺はシュウヤ、で、あなたたちは?」
「我はラレス。円樹鍛冶宝具を守る、守護者なり」
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