千二百九十四話 <魔仰角印>と<魔俯角印>
頭が二つに割れているモンスターは四腕の手に丸い物を生み出す。遠距離攻撃型か。
『閣下、わたしも外に出ますか?』
『おう、エヴァとエトアの守りを頼む』
『はい――』
液体状のヘルメが右目から飛び出て瞬時に女体と化した。
下の洞穴は結構な広さ、斜め下のほうの地底へと続いているようにも見えた。
「女、ァァ、肉ゥ、ウマァァ」
「まじゅー、肉、マズゥ」
「ズベデ、グウ! ボッフォ、ベゲべべェ!」
「オレサマ、オマエ、マルカジリィィ」
「ボッフォ、ベゲべべェ! ボッフォ、ベゲべべェ!」
「ベゲべべェ! ボッフォ!」
「「「ボッフォ、ベゲべべェ!」」」
気持ち悪い声だ。
<翻訳即是>で、ある程度言語を理解できたが……『ボッフォ、ベゲべべェ!』とは意味不明。
エヴァたちに、
「エヴァ、バアネル族と同じ人肉嗜食のモンスター野郎だ、気を付けよう」
「ん、シュウヤ、下のモンスターはシュウヤが引き抜いた短槍を扱っていた女性の一族が戦っていた相手と同じだと思う! 頭が割れている口のようなところから新しい頭を生やして四腕も魔剣に変化させる。そのタイプは接近戦が得意で強い、戦獄ウグラのようなスタイルだと石を投げてくるタイプが多い。強いのは魔剣に腕を変化させるタイプだと思う。変身してきたら、記憶で見た敵と同じと考えていいと思う」
エヴァの言葉に頷いた。
エトアも頷く。
「了解した。そして、先ほどの短槍の名はアミラの魔槍具装甲だった――」
と右手にアミラの魔槍具装甲を召喚。
「ん、その女性の名がアミラ、全身がイスラさんたちのように甲冑だったことも短槍の名に合う」
とエヴァが言った後――。
下の頭が二つに割れているモンスターたちが、
「「「「「「ボッフォ、ベゲべべェ! ボッフォ、ベゲべべェ!」」」」」」
と叫び一斉に石のような物を投げてきた。
俄に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚。
その大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を斜め下にぐわりと移動させ、盾代わりに扱う。その大きな駒のような<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に着地――。
<導想魔手>のように空中の足場にもなる<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>は飛行機な乗り物にも成るな。
『弟子、この使い方も良いんだけど……』
『いいではないか、新しい魔城ルグファントの魔君主なりの〝八咫角〟と〝風槍流〟になればいいのじゃ』
雷炎槍のシュリ師匠と飛怪槍のグラド師匠の思念会話には導きがある。
師匠たちに強い感謝の念を抱きつつ『八咫角』と『風槍流』を意識した。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の面に刻まれてある『八咫角』と『風槍流』の文字が輝くと周囲に梵字のような文字が浮かび消えていく。
同時に下から飛来が続く石のような攻撃を大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で連続的に防いでいった。音からして硬い、魔力も得た。
その輝く〝八咫角〟に掌底をぶつけるように左手の掌を当てた。
すると、大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の〝八咫角〟がバラバラに蠢くとパッと消えて背景にルシヴァルの紋章樹のような樹が描かれた。
上が明るく下が暗い。
同時に闇と光の魔力の流れが大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の中心で起きる。
その魔力の流れは枯山水的な動きに変化した。
やがて、万物を意味するだろう陰と陽の二つの氣と同じ意味だと思われる闇と光が融合し、背景のルシヴァルの紋章樹と合う陰陽五行説や太極図と似た模様を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の中心に刻まれた。
陰と陽の魔力の流れの中に魚のような魔生物が二匹泳ぐ。
すると、背景のルシヴァルの紋章樹と陰と陽に太極図を意味するだろう魔法陣が消える。代わりに<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の中心が八角形で半透明と化した。
手触りはクリスタル。
クリスタルの半透明から先に見える光景が少し異なる。
見下ろす視点の水平上に見えるモンスターだが、どこか変だ。
そして、八角形の角から出ている魔線と、そのモンスターが合う。
と一瞬で、モンスターの左右に割れている頭部の一部が焦げた。
これは……。
「ん、シュウヤ、大きな駒のような<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の下のほうが盛り上がって、光と闇の魔線が迸った」
「はい、不思議です」
とエヴァとヘルメが指摘。外から言われて初めて納得した。
なるほど、最初に出た光線のような物は飛び道具的にダメージも与えるが、本命の攻撃ではない。成長と共に本命級にもなると分かるが、今はまだまだだろう。
と理解しつつ<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に魔力を注ぐ。
刹那、大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>のクリスタルのような半透明の中に吸い込まれた――。
――滑り感が半端ない。
こりゃ、動きの制約が凄まじいが……時が止まっている?
時の力がクリスタルの中で凝縮していると理解。
凄まじい大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>にこんな秘めた能力があろうとは――魔力もかなり失う。<仙魔術>系統でもないと思うが、内臓が捻れ、疲弊していく。
痛いが、冷静に片手に魔槍杖バルドークを召喚。
アミラの魔槍具装甲が血魔力で浮き上がると自然に<血想槍>を意識した。
茨の凍迅魔槍ハヴァギイ。
無名無礼の魔槍。
王牌十字槍ヴェクサード。
骨装具・鬼神二式。
雷炎槍エフィルマゾル。
夢槍と無覇。
独鈷魔槍。
なども武器とアイテムを出した刹那、力の解放を味わうと共に――。
『『『弟子! 見事――』』』
『『『『『魔軍夜行ノ槍業の使い手と言えよう!』』』』』
師匠たちの多重の声が響き渡る。
と同時に師匠たちの幻影とシュリ師匠とトースン師匠とソー師匠の体の一部と共に下へ直進していた。
一瞬で頭が左右に割れたモンスターの数体を穿ち洞穴の一部をくり抜くと、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の八角形のクリスタルの上に立っていた。転移するように戻ったようだ。八人の師匠たちの幻影が八角形の中に一瞬見えた。
ピコーン※<魔仰角印>※恒久スキル獲得※
ピコーン※<魔俯角印>※恒久スキル獲得※
おぉぉ。
「え!」
「ん、一瞬で、モンスターたちの数体を倒して戻ってきた!」
「閣下、今のは……<仙魔・龍水移>のような師匠たちの姿も一瞬見えたような……」
「ンン、にゃ~」
「ンンン、にゃァァァ」
皆が驚いているが、まだ下には敵が多い。
と下のモンスターは割れている頭部からニョキと新しい頭部を誕生させる。割れていた頭部は両肩に移動し、アメフトの肩防具のようなゴツい肩防具と化していた。更に己の四腕を魔剣に変化させると床と壁を蹴って突貫してきた。幅広な洞穴だから対処は楽だ。四剣の動きを見ながら――。
「左右は皆に任せる」
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