千二百九十三話 エトアの故郷とアミラの魔槍具装甲
赤い濃厚な魔力を発しているエメラルドグリーンの岩盤と、その表面に刻まれている扉のような巨大な魔法陣を見て、
「大柄の怪物の心臓部が長い年月を掛けて生化学的堆積と魔法作用が相まっての巨大な魔宝石化、または魔石化、岩盤化、鉱脈化したってことかな」
「たぶん」
「はい」
エトアの返事の直後――。
下のエメラルドグリーンの鉱脈か不明な硬い床が少し輝くと震動が発生。
微細だが……エメラルドグリーンの硬い物体から伝わってきた。
「……鼓動ではないが震動か、赤い魔力に魔法陣といい、エメラルドグリーンの心臓はまだ封印しきれていないようだな」
「引き抜いたら大柄の怪物も復活を遂げてしまう?」
エトアの言葉にエヴァは頷いて、
「ん、その可能性はある。けど、どんなことになるか、このままの放置も危険」
「あぁ、この【古バーヴァイ族の集落跡】を任せることになるだろう三腕の魔族、バリィアン族たちにも関係してくるかも知れないからな」
「ん」
「にゃごぉ」
「にゃご!」
と、相棒と
爪が伸びきって強烈だった。
相棒と
エヴァは、
「んっ」
と、片膝の頭を赤い魔力を発しているエメラルドグリーンの石につけて
「……短槍の引き抜きにもう一度挑戦してみる?」
と聞くエヴァの足に
「……あぁ、挑戦しよう。その前に短槍を扱っていた女性はどうなったんだろう。折檻とか壮絶な過去と悲惨そうな歴史を持つようだが……」
と言いながら短槍を凝視。
魔軍夜行ノ槍業の師匠たちは反応しないから、師匠たちの奥義の槍譜や装備に体でもないってことだろう。
「ん、女性は死んでいるのか生きているのか不明。下の怪物と相討ちで、大柄の怪物を倒しながら倒れた。でも、甲冑と体の一部が短槍の中に吸い込まれて、女性の顔と似た形に柄が変化していたから、まだ生きているのかも知れない」
まだ生きているか……。
「驚きだが、短槍に乗り移って、まだ生きている線が濃厚か」
「ん、過去の記憶の断面から、ちゃんと生きているか分からない」
エヴァの見た記憶は途切れ途切れだったからな。
短槍に残っている魂は欠片か。
「……短槍を使っていた女性は、自らの切り札を使い、己の一部を短槍と融合させることで怪物の封印を強めた?」
と発言したのはエトア。
己を武器に変化できる種族のことを知っているような言い方だった。
頷いてからエヴァに、
「エトアの線だとして、マルアのデュラートの秘剣のような仙妖魔の場合もあるのかな……短槍の記憶で見えた、女性の見た目はどんな印象だった?」
「ん、額に紋章を宿していた、マルアやエトアのように長い黒髪。綺麗な蒼い双眸で鼻はユイ的、でも、耳が長いからエルフ的でもある。そして、その黒髪の方々は、赤色の頭部が左右に割れている四腕の怪物たちと争っていた」
「頭が割れている種族、モンスターと言えば、戦獄ウグラがセラの地下にいたな」
「ん、戦獄ウグラと似ているかも」
「それらのモンスター的な種族との戦争の結果が、ここか」
「ん」
エヴァからエトアに向け、
「エトア、短槍と融合できる魔族を知っているのなら教えてほしい」
エトアは頷いて、
「はいでしゅ、短槍に変化する種族は聞いたことがあります。【グランドベルスの断崖】の隣、名は【魔槍断崖ベルダン】に嘗ては棲んでいたと」
「へぇ、では、そのベルダン族たちの物語の記憶をエヴァは垣間見たのかな」
「ん、たぶん」
皆で頷いた。
「悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様の会話の中に、【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】の取れられた土地の名が、【グランドベルスの断崖】だったな。あ、エトアは【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】の出身と言ってたが、悪夢の女神ヴァーミナ様と顔見知りではないのか」
「ヴァーミナ様は遠くから見たことがある程度でしゅ……黒髪の仙妖魔崩れのわたしなんて……覚えているはずがないでしゅ……あ、わたしの故郷の名は、そのグランドベルスの断崖の近くの【マバペインの丘】と【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】と【悪神デサロビア吸霊山脈】にも重なっている【仙妖闇鬼オウガ・子闇精霊アウサス】です。長くて小さいですから無名に近い。同時に悪夢の女神ヴァーミナ様と悪神デサロビア様の勢力が鎬を削る地域ですので危険な地域でした」
【仙妖闇鬼オウガ・子闇精霊アウサス】とは長すぎる地名だ。
周囲では略称で呼ばれているはず。
「……へぇ、突っ込んだ内容だが、エトアの故郷と<罠鍵解除・極>は取得には関係がある?」
「……はい、仙妖闇鬼オウガ、子闇精霊のアウサスの能力が関係してましゅ」
「仙妖魔の血を引くエトア?」
「はい、引いているはず。武器に変身はできませんが、罠解除が得意です。そして、【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】の白銀の湖で踊っている
<罠鍵解除・極>の時に出る能力は、それか。
『閣下、【赤霊ノ溝】の砦の戦いでは、マルアとエトアは、すれ違いが何回かありましたが、視線を何回か合わせて笑顔を向けていましたよ』
『だろうな。黒髪で仙妖魔がマルア、エトアは仙妖魔の血が流れている【仙妖闇鬼オウガ・子闇精霊アウサス】出身だ』
『はい』
「ん、納得、だからおどおどしてたのね」
「あ、はい……ヴァーミナ様たちは素敵でした。そして、ベラホズマ様とヴィナトロス様の名は、故郷に幾つかの石碑もあり、聞き覚えがありましたが、外にも古い神の名は無数に存在しているので、完全に忘れていました」
「そっか、ベラホズマ様とヴィナトロスのことは内緒にして、いつか、ヴァーミナ様に話しかけてみればいい、案外知っているかも知れないぞ」
「え! はい!」
さて、
「では、両手で短槍を引き抜くとしよう。エヴァ、念の為、エトアを浮かせといてくれ、相棒も
「ん、分かった」
「「にゃ~」」
皆は浮きながら左右の端に移動する。
<血鎖の饗宴>で荒削りに削った地下だから、一部の土や岩に砂などが落ちてきていた。
「引き抜いた直後、下の魔法陣が発動し、心臓のような岩が割れることを想定しておけよ?」
「ん」
「はい!」
「にゃ」
「ンン」
「――では、両手で引き抜いてみる」
<キサラメの抱擁>――。
<戦神グンダルンの昂揚>――。
<破壊神ゲルセルクの心得>――。
を連続発動。
多分抜けるはず――。
両手で掴んで一気に短槍を引っこ抜いた――。
「抜けた!」
「はい!」
「「にゃ~」」
「おう――」
穂先は袋槍で渋い。やや無名無礼の魔槍と似ているか。
短槍の魔力を掌と右前腕から感じながら――。
短槍を戦闘型デバイスに入れた。
右腕を上げて戦闘型デバイスの真上を見ると――。
new:アミラの魔槍具装甲×1
へぇ、アミラの魔装具装甲とは……。
と硬い感覚が消えていたことに気付く。
「ん、シュウヤ、心臓かと思った岩盤のエメラルドグリーンの鉱脈ごと消えて、変な洞穴ができている!」
「わぁ、暗闇の洞穴に、あぁ、光が! モンスターたちがいますよ!!」
エトアの指摘通り、下の洞穴にはモンスターたち頭が左右に割れているモンスターたちがいた。
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