千百八話 バーヴァイ城からバードイン城へ
デラバイン族のアチ、リューリュ、パパス、ツィクハルの黒狼隊は健在だ。
その皆と魔傭兵ラジャガ戦団にも語りかけようとすると、
「ンン、にゃおおお~」
「「「ウォン!」」」
右から相棒たちの声が響く。広間の右から、大きい黒猫のロロディーヌを先頭に黒い狼コテツ、ケン、ヨモギが駆け寄ってきた。
とりあえずバーソロンに、
「早速だが、ミジャイを連れて、バードイン城を経由して【バードイン迷宮】に向かいたいと思う」
「はい、魔傭兵ラジャガ戦団のメンバーの救出ですね」
「おぉ、ついにですか陛下!! ありがとうございます!!!」
「「「おぉ」」」
「テーバロンテを滅した陛下自ら動いてくれるとは!」
「あぁ、団長の判断は間違っていなかった!」
「デラバイン族に付いて正解だ!!!」
ミジャイたちは嬉しそうに叫び、ラジャガ戦団のメンバーたちはそれぞれガッツポーズを繰り返して抱き合う。その度にドレッドヘアが激しく揺れていた。
囚われている人員が生きているといいが……。
あの喜びようだと仲間想いなんだな。生死を共に乗り越えた戦友だろうし、普通の家族よりも絆は強いか。と考えてから、バーソロンを見て、
「バーソロンはここを頼む」
「ハッ」
軍服が似合うバーソロンは敬礼してくれた。
そのバーソロンに敬礼を返してから、
「皆に【天凛の月】と【白鯨の血長耳】やセラの情報を伝えておいてくれ」
「はい、光魔騎士グラドにも帰還次第伝えます」
バーソロンの言葉に頷いた。すると、
「極大魔石がたくさんあったぞ! おおぉ、ここがバーヴァイ城の中庭で広間か!」
背後からキスマリの声が響く。自己紹介を終えたか。
キスマリに、ヴィーネ、キサラ、エヴァ、キッカが極大魔石を持っている。
俺に『極大魔石を回収しました』と言うように各自ウィンクをしてくれた。
美人軍団のウィンクは破壊力が高い。
皆、極大魔石を透魔大竜ゲンジーダの胃袋などのアイテムボックスにしまっていた。
さすがに大ホールの一角を占めるほどの極大魔石は回収していないと思うが、まぁ数十と回収しただろう。蜘蛛娘アキも遅れて登場。
「「「「おぉ」」」」
キスマリと蜘蛛娘アキとその部下のアチュードとベベルガに人造蜘蛛兵士たちを見て、デラバイン族と魔傭兵ラジャガ戦団が驚いて歓声を発し、
「二つの眼を失っている六眼四腕の魔族……」
「蜘蛛魔族の新手……」
「蜘蛛魔族ベサンではないぞ……」
「魔族も陛下の部下なのか……」
「当然だろう。セラにも魔族の流入は多い」
アチにパパスたちがそう発言。
ビュシエ以外のヴィーネたちは驚きの声は発していないが、広間の光景を見て目を丸くしていた。そのエヴァ、キスマリ、ヴィーネ、キサラ、ピュリン、キッカと、ビュシエ、蜘蛛娘アキが近付いてくる。
蜘蛛娘アキがアチュードに命令し、そのアチュードが人造蜘蛛兵士たちに指示。
人造蜘蛛兵士たちはベベルガを先頭に一斉に整列していく。
皆との情報共有はまだ完全ではないだろうな。
今後のために、知記憶の王樹キュルハ様に関する秘宝の手掛かりを探すべきか。
<光魔の王笏>の眷属化の儀式の最中にルマルディの過去の記憶は見えたから、あのように記憶を皆と共有が可能となるような血道が進化したらいいんだが、そう都合よくはいかないか?
光魔ルシヴァルの宗主らしい血の記憶術のような作用は今後あるような気がするんだが……。
そして、カリィとレンショウを<従者長>にした時には、カリィとレンショウの過去の記憶は見えなかった。光魔ルシヴァルの精霊樹が存在するサイデイルだから、ルマルディの過去の記憶が見えた?
<
「ンン、にゃァ」
ヴィーネたちは「ふふ」と微笑みながら
そのヴィーネが、アチたちを見て、
「あなた方が、神聖ルシヴァル大帝国の将校たちですね」
「「「はい!」」」
アチたちは敬礼し、
「わたしの名はヴィーネ、光魔ルシヴァルの<
と発言して俺をチラッと見てから、皆に敬礼を返す。
アチたちは敬礼を解いた。
「おぉ」
「陛下が第一の<
パパスがそう発言。
「ウォン!」
黒い狼コテツもヴィーネに挨拶していた。
「ふふ、はい。今後ともよろしく」
「よろしくお願いします!」
ヴィーネは頷いて身を退く。
隣にいるキサラが、
「わたしの名はキサラです。同じく光魔ルシヴァルの<
「「「はい!」」」
キサラは皆を見据えてから頷いて、一歩退く。
エヴァとキッカとキスマリがそれぞれ挨拶していった。
先に自己紹介をし終えたヴィーネとキサラは魔傭兵ラジャガ戦団の皆にも挨拶していく。
その間に、二つのゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡を戦闘型デバイスから取り出して設置。
「ンン――」
そのゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡の端っこに相棒が体を寄せていく。
バーソロンとビュシエが俺に近付き、
「転移可能なマジックアイテムですね」
「シュウヤ様、それがパレデスの鏡なのですか!」
「あ、これは、ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡。パレデスの鏡ではない。そして、このゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡が魔界で使えるか試す」
「「はい」」
二人の返事を聞きながら――。
ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡の片方に魔力を通した。
光を帯びるゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡。
大丈夫そうだ。
その片方のゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡を潜る。
――と、隣に設置したゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡から出られた。
「「おぉ~」」
「――良し! これで魔界セブドラでの転移方法を一つ確保!」
「「おめでとうございます」」
アチたちに魔傭兵ラジャガ戦団の皆と挨拶を終えたヴィーネやキサラたちも寄ってきた。
「ご主人様の予想通りですね」
「おう」
ヴィーネとキサラとハイタッチ。続いてビュシエともハイタッチ。
「やはり、魔界は魔界、セラはセラ、次元が分かれている。そして、傷場と魔の扉が如何に特別なのか分かります」
キサラの言葉に頷いた。
キッカが、
「
皆頷く。
「そうだ。俺たちには、結構貴重だよな」
「はい、盗まれそうになったこともあったと聞いたことは覚えています」
頷く。
バーソロンが、
「魔の扉の鏡の警護はわたしにお任せください」
「分かった」
城主の間にある窓は、何もないから防衛的にマズイか?
<破邪霊樹ノ尾>でシャッター的な物を作るかな?
が、バーソロンの足に体を寄せている
エヴァたちも寄ってくる。
そのエヴァが、
「ん、バーソロン、百足高魔族ハイデアンホザーの囚人がいる場所はどこ?」
「あ、こちらです。アチたちは城主の間に。そして陛下、この魔杖を――魔の扉に挿し、バードイン用のパネルを押せば、魔の扉は起動しますので」
あぁ、魔杖バーソロンか。
回収してくれていたんだな。
その魔杖バーソロンを受け取り、
「了解」
「ん、シュウヤ、わたしは自分ができることをしておく。魔傭兵ラジャガ戦団の仲間を助けてあげてね」
「了解した。グラドが戻ってきたら情報共有を頼む。後……」
「ん、大丈夫。サシィに血文字で挨拶する。ビュシエとも仲良くするから」
「あ、はい、エヴァさん」
「ん、ビュシエ、エヴァでいい。同じ血の姉妹」
「はい、エヴァ……」
ビュシエは微笑みながら仄かに頬を赤くした。エヴァとビュシエは早速通じ合う。エヴァは周りを自然とほんわかとした気分にさせてくれるから凄い。
そのエヴァは俺にも微笑んでくれた。
――俺の気持ちは筒抜けか。エヴァは何かを言うような表情を浮かべてからバーソロンと一緒に広間を歩き始めた。さて、
「では、ロロとメトにミジャイ、城主の間に向かうとしよう。ヴィーネたちはどうする?」
「ご主人様と一緒に行きます」
「はい、シュウヤ様と共に」
「わたしも行きましょう」
ヴィーネ、キサラ、キッカが付いてくるなら万全だ。
「我は、ここで修業をしよう!」
「わたしもここに残って情報を共有し、主様の軍隊に協力したい!」
キスマリと蜘蛛娘アキがそう発言すると、アチュードとベベルガが敬礼。
続いて、人造蜘蛛兵士たちも一斉に敬礼を行う。
「にゃ~」
「にゃァ」
相棒と
キョウカ、ツィクハル、パパス、リューリュなどの将校たちが俺たちに付いてきたいと分かる表情を浮かべているが、
「パパスに皆、キスマリやエヴァにバーソロンもだが、情報共有を頼む」
「「「「はい!」」」」
「承知しました」
「分かりました」
ヴィーネたちとアイコンタクト。
「ご主人様、ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡の片方は回収しないですか?」
「あ、そうだな、回収しとく」
「はい」
「ふふ、帰りは
「それもそうだな。近隣の地形は〝列強魔軍地図〟があるから分かるが、それを見ながら空旅もまたいいかも知れない」
キサラたちとそんな会話をしつつ大ホールの階段を駆け上がる。
城主の間の半透明なドアは開いたままだから、そこを通って、相棒が好きなウィンドーシートの窓を見てから、魔の扉の前まで足早に移動――。
素早く、その魔の扉の下部にある孔に魔杖バーソロンをズニュッと差し込む。
パネルをポチッとな、と押して魔の扉を起動させた。
『お仕置きだべぇ』は起きない。
魔杖バーソロンを抜いて戦闘型デバイスに仕舞う。そして、皆に向け、
「ここを潜ればバードイン城の城主の間だ。悪神ギュラゼルバンの勢力が蹂躙した後か、まだ粘り強く百足魔族デアンホザーなどが悪神ギュラゼルバンの勢力と戦っているかも知れない。どちらにせよ戦闘になるかもだ」
と言いながら皆を見た。
既にヴィーネは翡翠の
キサラはダモアヌンの魔槍を右手に持っている。
キッカも魔剣・月華忌憚を持っていた。
ミジャイは手斧を召喚。大丈夫そうだなと頷き合う。
室内戦を想定し――左手に血魔剣を右手に鋼の柄巻を召喚。
盾代わりに大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>も召喚した。
すると、ヴィーネが、
「室内戦で奇襲もあると予想しているのですか?」
「あぁ、城の損傷が激しい場合も想定している。魔界王子テーバロンテの居城だったから広いと聞いているし、魔槍杖バルドークでもいいと思うが、一応な」
「はい」
「では行こうか」
「にゃご!」
「にゃァ~!」
「「「はい!」」」
そうして魔の扉を潜った、直後――。
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