千百九話 悪業将軍ガイヴァーと激戦
「Gyoaaa――テーバロンテの残党か!?」
重低音の声と共に大太刀の刃が目の前に――。
――<血道第三・開門>を意識。
――<
――<魔闘術の仙極>。
――<闘気玄装>。
――<黒呪強瞑>。
――<水月血闘法>。
などの複数のスキルを一度に発動。
足下に転がる百足魔族デアンホザーの死体に気をつけながら――。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で刃を防ぎつつ左斜め前に出た。
「――フハハ、不意を打ったつもりだが、<無慈悲ノ悪突>を防ぐか!」
大太刀の突きスキルの名前か。
そして、スキルを防いだ俺を見て好敵手が現れたと言うように笑った敵は髑髏の騎士か?
六つの眼窩を擁した銀と漆黒の頭蓋骨。
六つの眼窩には蒼と赤の炎が宿る。
蒼と赤の炎の眼から燻ったような濃い魔力が放出されていた。
頭蓋骨の後頭部と背中と両肩からオーラのような漆黒の魔力を噴出させている。
上半身の中で蠢いている無数のエメラルド色と銀色の魔力が漆黒色の肋骨に絡み付いて胸から真上に放出されていた。
漆黒色の肋骨のようなモノと、エメラルド色と銀色の毛細血管的な魔線と、その魔力は初見だが……。
後頭部と背中と両肩から出ている漆黒色の魔力だけは、魔元帥ラ・ディウスマントルや闇神リヴォグラフが放つ漆黒色の魔力と似ている。
そんな髑髏の騎士の背後には……。
死体が積み重なっており、大広間が拡がっていた。
パルテノン神殿にあるような太い柱と折れた柱は複数ある。折れて倒れた柱が床を潰し下に落下した跡もあって、そこから下の部屋が見えていた。
一方、天井にも大きな孔が空いている。
そこから真夜の不思議な明かりが残骸の多い室内を照らしていた。
吹き抜けに近い構造の穴だらけの天井まで二十メートルはありそうだ。
大広間の右の端にはバルコニーがあったようだが、崩れている。その崩れた先から下の階層と、戦場か戦場跡のような外の光景が見えていた。
魔界王子テーバロンテの勢力と悪神ギュラゼルバンの勢力の戦いがまだ続いているのか。
そしてこの大広間には、破壊されている〝陰大妖魂吸霊具〟と似た灯籠らしきオブジェと、〝バーヴァイの死吸髑髏硝子〟と似た硝子製のオブジェもあった。
更に大広間の奥には、複数の生きている魔素がある。
目の前の髑髏の騎士と同じ種族の部隊か?
その魔素の反応を示した大広間の奥から、
「「「「ガイヴァー様ァ! 新手の魔素が!!」」」」
と図太い声が連続的に響く。
重低音と金属音なども遅れて響いてきた。
積み重なった死体の隙間と柱と柱の間から、その言葉を放った髑髏の騎士たちが見えた。
その髑髏の騎士たちの頭部は皆個性豊かな頭蓋骨。
後頭部と背中と両肩から漆黒の魔力を放出させ、胸からはエメラルド色と銀色の魔力を放出させていた。
体格以外は目の前のガイヴァーと呼ばれている髑髏の騎士とだいたい同じ。
そのガイヴァーは、
「――奇妙な盾を使う……お前は何者だ?」
と聞いてきた。
更に六つの眼窩の蒼と赤の炎から魔法陣が生まれたが、バンッと爆発して消える。魔眼を発動したのか?
蒼と赤の炎の眼は少し縮む。
「……ぬぅ……我の<狂炎眼>が効かぬだと……」
鑑定能力か、麻痺か呪いを掛けようとしたようだ。
「……くっ」
背後からミジャイの声が聞こえた。
ガイヴァーの魔眼をもろに喰らったようだ。
「――ミジャイ、こちらに」
キッカとピュリンにミジャイは背後のどこかに運ばれたと理解。
その位置を把握しつつ、目の前のガイヴァーに、
「ガイヴァー、お前こそ何者だ――」
と返しながら<血魔力>と<生活魔法>の水を足下に撒きつつ背後のヴィーネたちの位置をもう一度把握。
ヴィーネとキサラは右後方。
キッカとピュリンはその奥で、何かの遮蔽物の陰にミジャイを運んだか。
相棒と
ガイヴァーは六つの眼の蒼と赤の炎を強めつつ、
「……我は悪業葉衝軍の将軍の一人、バードイン殲滅部隊長を任せられている悪業将軍ガイヴァー。悪神ギュラゼルバン様の大眷属である」
悪業将軍ガイヴァーか。
戦国武者ではないが、ちゃんと名乗ってくれた。
そのままお辞儀に返答するように、名乗りの礼には礼として、
「俺の名はシュウヤ。光魔ルシヴァル一門を率いている」
「ほぉ……シュウヤか」
『あいぼう』『ほねきし』『てき』『にく』『すこし』『てき』『あめだま』『うまい?』『いっぱい』『なかま』『つおい』『ほねきし』『ぜめ』『あど』『よぶ?』
肩にいる相棒は小さい触手を俺の首に付けたまま、そんな可愛い気持ちを寄越す。
と、触手を引っ込めた
「ンンン、にゃ~」
「ンン――」
と鳴いて、
相棒は黒豹の姿に変身しながら大広間に向かう。
銀灰猫のメトも銀灰虎に変身しながら
新手は相棒たちに任せよう。
『閣下、<精霊珠想>を用いますか? それともわたしも外に出ますか?』
『御使い様、<雷雨剣>や<雷狂蜘蛛>を使いたいです!』
『ヘルメは出てミジャイを頼む。グィヴァは後で頼むかも知れない』
『『はい』』
ヘルメは一瞬で左目から出て背後に移動。
悪業将軍ガイヴァーは、
「……なんだ? 左目から魔法生命体だと? しかし、光魔ルシヴァル一門とは、聞いたことがない」
「そりゃ当然だ。魔界ではぽっと出だからな」
と言いながら横に歩く。
悪業将軍ガイヴァーの蒼の炎の一眼はヘルメの動きを追い、三眼は
残りの眼は俺たちを見据え、
「……お前たちは新米と言いたいのか?」
「似たような感じだ」
と答えると、悪業将軍ガイヴァーは、
「ハッ、からかうな。お前たち光魔ルシヴァル一門は、魔界王子テーバロンテの
と聞いてくる。
魔界王子テーバロンテの枢密顧問官の一派?
バーソロンからそのような部隊が存在するとは聞いていないが、あるかもな。
俺もわざわざ聞いていなかったし、魔界王子テーバロンテが親衛隊の他にそんな隠密部隊を持っていたとしてもおかしくはない。
それに、ここは魔界王子テーバロンテの居城のバードイン城だ。
魔界王子テーバロンテがバーソロン本体と俺がいるバーヴァイ城に乗り込む際、居城に信頼できる軍団を残すのは定石。
そう思考しつつ、笑顔で、
「……正解かもな」
と答えると、悪業将軍ガイヴァーの眼窩に宿る六つの炎が煌めく。
その悪業将軍ガイヴァーは、
「……しかし、我が制圧したバードイン城にわざわざ戻ってくるとはな。そのまま鏡の先の地に留まっていれば、枢密顧問官の一派であろうお前たちは、そこで生き続けることができたであろうに」
その言葉を聞いているヴィーネとキサラが少し体を動かして反応していたが、黙ったままだ。
「閣下は、神聖ルシヴァル大帝国の魔皇帝です!」
「ヘルメならそう言うと思った」
「ふふ」
緊張がほぐれたところで、目の前の悪業将軍ガイヴァーに、
「生き続けることができたか……お前は、俺たちがここで死ぬと言いたいのか?」
と聞きつつ呼吸を整えて後退。
悪業将軍ガイヴァーは、
「理解が早くて助かる。魔界王子テーバロンテの残党すべてを殺し、その魂と魔力を得る。それが我ら部隊の至上命令なのだ。そして、シュウヤは魔界王子テーバロンテの大眷属なのだな?」
「違うが、どの道、俺たちを倒して魂と魔力を得たいんだろう?」
と言いつつ、足下に転がる魔族と百足魔族デアンホザーの死体を踏んで歩く。
足下の百足魔族デアンホザーの死体と髑髏の騎士に他の魔族たちの切断された無数の死体が邪魔すぎる……非常に歩き難い。
「その通り……」
悪業将軍ガイヴァーは一歩前に出た。
すると、大広間で大きな音が響く。
積み重なった死体の一部を焼却処分した
直ぐに
あのまま
そして、大広間の奥にいた髑髏の騎士たちが、自分たちが倒した死体の処理に手こずっていることも幸いだ。
もし、相棒たちの攻撃を凌いで近付いてきたら、ゼメタスとアドモスの出番かな。
ヴィーネたち、ヘルメとグィヴァ、アクセルマギナ、閃光のミレイヴァル、<光魔ノ秘剣・マルア>、リサナ、フィナプルスもいる。
と考えていると、
「……背後の魔法生命体といい、二匹の魔獣も、お前が使役しているのか」
「そうだ」
「……テーバロンテの大眷属にこのような存在がいようとは……しかし、我のバードイン殲滅部隊員を倒すとは許さんぞ! 虫けら共ォ!!」
悪業将軍ガイヴァーが怒りながらハルバードを振るう。
太い足で目の前の床を踏みつけた。
地響きともに床にガイヴァーの大きい足跡が付く。
悪業将軍ガイヴァーの体重は相当に重いらしい。
後頭部と背中と両肩から漆黒の魔力を盛大に噴出させていた。
六つの蒼と赤の炎の眼が大きくなったから、少し怖いが、怒りを助長させようか。
「虫けらが、悪神ギュラゼルバンを倒すことになるかもな?」
と笑いながら話すと、悪業将軍ガイヴァーは、青と赤の炎の眼が破裂しそうな勢いで炎が眼窩から漏れ出て、
「お前たちも悪神ギュラゼルバン様の贄となるがいい!!」
と叫ぶと、肋骨が肥大し、体の内部で蠢いていたエメラルド色と銀色の魔線が噴出していく。そのまま突進してきた。
肥大した漆黒の肋骨は外骨格的だが、エンジン気筒にも見える。
大きな駒のような<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>にハルバードの穂先を向けてくる。
背後のヴィーネたちに向け、
「皆、先ほどと同じく最初は俺が受け持つ――」
「にゃお~」
「にゃァ~」
「「「はい!」」」
「分かりました――」
悪業将軍ガイヴァーは、俺との間合いを詰めるや否や、
「まずは、邪魔な盾を潰す――<悪神・魔獣鬼殺し>――」
と、赤黒い魔力を噴出させているハルバードで<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を突いてきた。
金属音と鈍い重低音が響く。
衝突の影響で<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>は振動したが、壊れることはない。
悪業将軍ガイヴァーは流れるまま両上腕が持つ大太刀を左から右に振るってきた。
大太刀は、胸元からエメラルド色の魔力の供給を受けているように、赤色とエメラルド色の魔力を放っている。
瞬時にその大太刀の間合いを見極めた。
袈裟斬り軌道の大太刀の刃を上に動かした<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で受け流す。
「――速く硬いが、守りだけか!!」
悪業将軍ガイヴァーはそう叫びながら、大太刀とハルバードの連続攻撃を繰り出してきた。
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を盾代わりに悪業将軍ガイヴァーの四腕が持つ大太刀とハルバートの猛攻を防ぎながら、斜め右へ左へと後退――。
合間に、悪業将軍ガイヴァーの大太刀とハルバートの攻撃が重なるタイミングに合わせ、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の大きな駒を活かすように力で押し返そうと狙った。
が、悪業将軍ガイヴァーの力は強い――。
――押し返せず。
同時に悪業将軍ガイヴァーは速度も速い。
俺の<
悪業将軍ガイヴァーは後退を続けている俺を追うように大太刀とハルバードで攻撃を繰り返す。
――足下の百足魔族デアンホザーの死体が邪魔だが――。
バランスは崩さず、左後方に退きながら――。
悪業将軍ガイヴァーの攻撃を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で往なし、その<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の角度を変えて、悪業将軍ガイヴァーを近くで凝視した。
悪業将軍ガイヴァーの真上では、上半身の血管的な無数の線から放出させているエメラルド色と銀色の魔力と、後頭部と背中と両肩から噴出させている漆黒色の魔力が融合している。
それらの魔力が背中側で靡いていた。
その魔力の質が凄まじい。
巨大なオーロラを背負っているように見えた。
<魔闘術の仙極>のような<魔闘術>系統の高度なスキルを重ねているから、電光石火に攻撃が可能なんだろう。
――悪業将軍ガイヴァーの大太刀は赤黒い刃。
――ハルバードの穂先は紅斧刃のように赤い。
そんな悪業将軍ガイヴァーの右にキサラがダモアヌンの魔槍を脇に抱えながら出ると、
「悪業将軍ガイヴァー、お覚悟を――」
と近付いた。
悪業将軍ガイヴァーは「ぬ――」とハルバードをキサラに向けて振るう。
キサラは、
「ふふ」
と笑みを見せながら軽やかに右斜め後ろに移動して悪業将軍ガイヴァーのハルバードの斬撃を避けた。
キサラは悪業将軍ガイヴァーが俺に繰り出した十数合の攻撃から、ある程度の間合いは把握できたんだろう。
そのキサラは、
「天魔女流<刃翔鐘撃>――」
と、右腕が槍となったが如くの<刺突>系のスキルを繰り出した。
悪業将軍ガイヴァーは、
「ぬ!?」
と重低音の声を発し、斜に構えたハルバードの柄でダモアヌンの魔槍の穂先の攻撃を受けると、両上腕の肩と二の腕から漆黒色の魔力を後方へと噴出させた。
そのまま力を込め、大太刀の柄でダモアヌンの魔槍の穂先を斜め左へ弾いた瞬間――。
悪業将軍ガイヴァーの左からキッカが迫った。
「――<血冥・速剣>」
「ふ、甘いわ!」
悪業将軍ガイヴァーは反応。
ハルバードの柄を横に動かした。
魔剣・月華忌憚の刃にその柄を衝突させて<血冥・速剣>を防ぐ。衝突した箇所から火花が散った。
ジリジリと前に出た悪業将軍ガイヴァーは力で魔剣・月華忌憚を押し返す。
キッカは長くつばぜり合いはせず、
「甘いのはお前だ――」
と言って体と魔剣・月華忌憚を引きつつ、左手が持つ鞘を前に突き出す。
俄のベクトルの変化に悪業将軍ガイヴァーは反応できず、
「ぐぉ」
胸に鞘の打撃を喰らうと、三歩程後退。
キッカは引いていた魔剣・月華忌憚で、「<血冥・点剣刃>――」と突きスキルを繰り出す。
血の剣線が宙に生まれた――。
更に、キサラがダモアヌンの魔槍で<刺突>を悪業将軍ガイヴァーの胸元に繰り出した。
悪業将軍ガイヴァーは、
「ぐおぉァァァ」
胸を斬られ、腹が突かれて紫の血飛沫が噴出。
が、その胸からエメラルド色の魔力が噴出。
同時に体勢を直しながら迅速に両上腕の大太刀を下方に振るい、キサラのダモアヌンの魔槍とキッカの月華忌憚を大太刀で掬うように払った。
そして、
「――お前たちの<血魔力>を用いた槍と剣の武術は、吸血神ルグナドの秘宝から獲得したのか?」
と聞きながら後退――。
「そこです!」
魔の扉から右後方に後退していたピュリンの声だ。
骨筒から無数の骨の弾丸が射出されていく。
――無数の骨の弾丸が悪業将軍ガイヴァーに向かった。
悪業将軍ガイヴァーは大太刀とハルバードで卍を宙に描くように振るい回して、骨の弾丸を防ぐ。
が、すべては防げず、一部の骨の弾丸を胴体と足に喰らっていた。
「ぐぁ――」
衝撃で後退した悪業将軍ガイヴァーの全身から漆黒の鋼のような肉片と足の装甲が削れ飛んでいく。
胸元から噴出していたエメラルド色の魔力も一部消える。
悪業将軍ガイヴァーは全身にダメージを喰らいながらも、
ゆらりとした赤い剣閃的な赤い雲のようなモノはゆっくりと宙空を漂う。
次々とピュリンの骨の弾丸が赤い雲のようなモノの中に突入していく。
その赤い雲は粘液のような物質なのか、骨の弾丸は速度がゆっくりになりながら、溶けるように消えてしまった。
後方のピュリンは、
「魔界王子テーバロンテの居城を潰すための将軍なだけはあります」
と言いながら射撃を止めた。
そのピュリンと皆と悪業将軍ガイヴァーの位置を把握しつつ、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を頭上に移動させ、
――<水神の呼び声>。
――<滔天仙正理大綱>。
のスキルと恒久スキルを発動――。
同時に<凍迅>を両足から発動させた。
足下に転がっている百足魔族デアンホザーの死体を<凍迅>で凍らせて破壊しながら床を滑るように悪業将軍ガイヴァー目掛けて前進し――。
前に出たキサラとヴィーネとキッカの連続攻撃の合間を狙い、タイミング良く間合いを詰めて、ムラサメブレード・改で<黒呪仙剣突>を繰り出した。
柄のはばきの放射口から出ているプラズマ染みたブレードからブゥゥゥンと音が響く。
※黒呪仙剣突※
※黒呪咒剣仙流技術系統:上位突き※
※獲得条件に〝黒呪咒剣仙譜〟の理解と魔刃を体と精神に浴びても生きられる体力と剣術熟練度がある程度求められる※
※<黒呪仙剣突>を使えば使うほど速度が上昇※
悪業将軍ガイヴァーは大太刀とハルバードでキサラとキッカとヴィーネの攻撃を防ぎながら、俺のムラサメブレード・改の青緑色のブレードをも大太刀の柄で防ぐ。
柄から火花が散るが、大太刀の柄は溶けない。
刹那、<ルシヴァル紋章樹ノ纏>を発動。
そのまま左手が握る血魔剣で<黒呪仙炎剣>を繰り出した。
逆袈裟斬り――。
※黒呪仙炎剣※
※黒呪咒剣仙流技術系統:上位斬り※
※獲得条件に〝黒呪咒剣仙譜〟の理解と大量の魔刃を体と精神に浴びても生きられる体力と剣術熟練度が高いことが必須※
※黒呪の炎を剣に纏わせる※
悪業将軍ガイヴァーは半身を退く。
ハルバードと大太刀の角度を変えた。
が、<魔闘術>系統の<ルシヴァル紋章樹ノ纏>によって速度が加算された血魔剣の刃は避けることができず、その悪業将軍ガイヴァーの左足の太股を血魔剣が捉え斬った。
切断した悪業将軍ガイヴァーの左足が床に転がる。
「ぬぉぁぁぁ」
と悲鳴を発した悪業将軍ガイヴァーは後退。
追撃に大技を意識したが――。
悪業将軍ガイヴァーは、後頭部と背中から噴出させていた漆黒色の魔力を漆黒色の魔刃の群れに変えて俺たちを攻撃してきた。
急ぎバックステップ――。
パー状態の<導想魔手>と<鬼想魔手>を発動。
続けて、両手首から<鎖>を出して<鎖の念導>で<鎖>製の大きな盾を生成。
パー状態の<導想魔手>と<鬼想魔手>で漆黒色の魔力を漆黒色の魔刃の群れを防ぐ。
が、直ぐに<導想魔手>と<鬼想魔手>は破壊された。
直ぐ背後に展開させていた梵字が光る<鎖>の大きな盾で漆黒色の魔刃の群れを防いでいく。
重低音が連続して響いてきた。
漆黒色の魔刃の群れと<鎖>は相性が良いようだ。
同時に頭上に浮かせていた<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で皆を守るように左右に動かした。
皆にも漆黒色の魔刃の群れが絨毯爆撃の如く飛来してくるが、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が漆黒色の魔刃を防いでいく。
俺にも依然として漆黒色の魔刃が飛来し続けてくる。
その漆黒色の魔刃が梵字が光る<鎖>の大きな盾と何度も衝突し、重低音が響き渡る中……。
両手から血魔剣と鋼の柄巻を消して右手に魔槍杖バルドークを召喚。
「ご主人様、ありがとうございます!」
「宗主様、ありがとう!」
ヴィーネとキッカの言葉が響くと、悪業将軍ガイヴァーの遠距離攻撃が止まった。
悪業将軍ガイヴァーは、
「フッ」
と不気味な笑顔を見せる。
体からエメラルド色の魔力と銀色の魔力を発して切断された左足の切断面を包む。
と、一瞬で再生し新しい左足となった。
先ほど俺が斬った悪業将軍ガイヴァーの左足は、髑髏模様の魔力と眼球のような魔力を放ちながら散って消えた。
「タフですね。ですが、確実に魔力は減っています!」
「はい、前に出ます」
「わたしも!」
ミジャイ以外の皆が遠距離攻撃を繰り出してきた悪業将軍ガイヴァーに一斉攻撃――。
接近戦に応えた悪業将軍ガイヴァーだったが、大太刀とハルバードだけでは皆の攻撃はさすがに受けきれず、体の装甲が一気に削れ散る。
更に、ヴィーネのガドリセスが右上腕を貫いた。
古代邪竜剣ガドリセスの切れ味は抜群、
「ぬごぁぁ――」
更に右足をキッカの魔剣・月華忌憚が捉え斬った。斬られた悪業将軍ガイヴァーは悲鳴を発しながらも冷静に大太刀を消して後退。
「テーバロンテの残党めがァァァ」
奇声のような言葉を発して飛ぶように後退を続ける。
「にゃご」
「にゃァ」
大広間で髑髏の騎士たちを倒しまくっていた黒豹ロロディーヌと銀灰虎フル・メトは、自らの尻尾を追うように横回転してから動きを止めた。
悪業将軍ガイヴァーは、
と、
ヴィーネのガドリセスが貫いた右上腕の傷と、キッカの魔剣・月華忌憚が切断した右足はエメラルド色の魔力に包まれて回復していた。
悪業将軍ガイヴァーは強い。
その間に<鎖>製の大きな盾と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消した。
橙色の魔力を体から発している
一瞬、幻術でも見ている気分となった。
その神獣の
「にゃご!」
と大きな口を開き、口から螺旋した炎を吐いた。
フランべルジュのような螺旋の炎は悪業将軍ガイヴァーに向かう。
「なんだ、その炎は!」
悪業将軍ガイヴァーは跳躍。
螺旋状の炎を受けずに避けた。悪業将軍ガイヴァーの背後にあった柱と床に死体は一瞬で溶ける。
横壁も突き抜けて外の光景が見えた。
悪業将軍ガイヴァーは胸元からエメラルド色の魔力を放出させながら折れた巨大な柱を蹴って反対側の壇に移動していた。
百足魔族デアンホザーの死体をすり潰すように身を捻り転がってから華麗に立ち上がり、追撃の
ヴィーネが放った翡翠の
悪業将軍ガイヴァーは消耗していると思うが、かなりの素早さだ。
それでいて、床を転がっても四腕が持つ武器を離していない。
上腕の二つの手が持つ刃渡りの広い大太刀は刃から赤黒い魔力の魔刃が少し伸びていた。
下腕の手には皆の攻撃を受けてもびくともしない斧槍のハルバード。
その悪業将軍ガイヴァーは前後左右に移動しまくる。
相棒の触手骨剣とヴィーネの翡翠の
切られ分割された光線の矢は爆発し、爆風が頭部を襲う。
が、悪業将軍ガイヴァーの頭部は傷つかない。
と、六つある蒼と赤の眼の炎を縮ませるようにヴィーネを睨む?
「……どういうことだ。そこのダークエルフは魔毒の女神ミセアの眷属でもあるのか?」
と言った直後、
「炯々なりや、伽藍鳥。ひゅうれいや」
超自然的な声音が響く。
<魔嘔>の魔術だ。
「百鬼道ノ七なりや――伽藍鳥。ひゅうれいや、血ノ砂蝉なりや、百鬼血ノ八法。ひゅうれいや」
ダモアヌンの魔槍から血の鴉を幾つも飛ばす――。
黒数珠から黒い煤のような魔力も放出すると、手首を囲う積層型の小円魔法陣を生成し、その魔法陣から黒い煤のペリカンに似た鳥を悪業将軍ガイヴァーに飛ばした。
黒い煤のペリカンに似た鳥は眼を光らせると、一斉に血の蝉を吐く。
悪業将軍ガイヴァーは大太刀の波紋から赤い雲のようなモノを宙空に生み出した。
先ほどのピュリンの骨弾を防いだ魔法的なスキル。
ゆらりとした赤い雲のようなモノは、またゆっくりと宙空を漂うと、血の蝉と衝突し、爆発して相殺。
百鬼血ノ八法の黒い煤のペリカンに似た鳥の一部は赤い雲のようなモノと衝突し相殺されるが、一部は突き抜けて悪業将軍ガイヴァーに向かう。
が、悪業将軍ガイヴァーはハルバードを振るって黒い煤のペリカンに似た鳥をすべて斬り捨てた。そこに、キッカが、
「隙あり――」
更にヴィーネが前進。
「<黒呪鸞鳥剣>――」
月華忌憚の剣閃はハルバードで受けたが、「ぐぁぁ」と悲鳴を発した悪業将軍ガイヴァーはヴィーネの<黒呪鸞鳥剣>の剣舞は防げず、胸を斬られ、腕と足にも深手を負った。
悪業将軍ガイヴァーは逃げるように後退。
同時に、離さず持っていた両上腕の大太刀から複数の赤黒い魔刃をキサラとキッカとヴィーネに飛ばした。
キサラとキッカは追わず退く。
その間を狙うように<鎖>を射出――。
<鎖>はキサラとキッカの間を直進し、悪業将軍ガイヴァーの左下腕に突き刺さった。
「ぐぉ」
<鎖>を悪業将軍ガイヴァーの体に絡ませていく。
そのまま動きの封殺を狙う。
が、悪業将軍ガイヴァーは、
「<悪神・羅刹漠々臓灰>――」
とスキル名を叫ぶと、左下腕と体の一部を爆発させるように消した。
悪業将軍ガイヴァーは周囲にエメラルド色と銀色と漆黒色の血飛沫や骨片や灰を散らしながら<鎖>から逃げる。
更に、
「<悪神・羅刹骨迅群>」
とスキル名を発した。
上半身の漆黒色の肋骨的な骨から無数の骨の刃を生み出す。
視界が漆黒に染まる勢いで大量の骨の刃が飛来してきた。
伸ばしていた<鎖>を消した。
<悪神・羅刹骨迅群>の遠距離攻撃を皆は得物で弾きながら避けるように後退――。
ヘルメは《
<仙魔奇道の心得>を意識。
<龍神・魔力纏>を発動。
<仙魔・
<血道第四・開門>――。
<霊血装・ルシヴァル>を発動。
続けて<血道第五・開門>を意識。
血の
全身から白炎の霧の魔力が噴出。
一瞬で光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装となった。
そのまま背後から押されるような推進力を得て加速しながら左右に横跳びを連続的に実行し、骨の刃を避けまくる。
「前にも増して、白炎の霧の魔力が、閣下に従っている白銀の龍たちのように見えます!」
『ふふ、龍さんたちが凄い!』
ヘルメの声が響く。
「おうよ」
グィヴァの思念には特に返さず、左手に夜王の傘セイヴァルトを召喚し、右手の魔槍杖バルドークを消す。
中棒を押して和傘を開く。
その笠の漆黒の生地で骨の刃を受けた。
骨の刃を吸収――。
弾かれる骨の刃もあった。
そのまま夜王の傘セイヴァルトを持ちながらゆっくりと歩いた。
<
吸収する度に、中棒越しにどんどん魔力を得て、活力が漲ってくる――こりゃいい。
眷属化で血と魔力を消費しまくっていたからな。
「魔力を吸収しているのか……」
悪業将軍ガイヴァーもさすがに気付いた。
<悪神・羅刹骨迅群>を止めた。
悪業将軍ガイヴァーは髑髏の騎士たちを倒しまくって奥に消えた
「……うぬら……」
胸元のエメラルド色の魔力を強める。
悪業将軍ガイヴァーは足下から漆黒の魔力を展開させてきた。
「シュウヤ様に攻撃したことを悔やみなさい――」
「斬る!」
キサラとキッカは<血魔力>を纏って前進。
二人は瞬く間に間合いを詰める。
横に移動しながら《
悪業将軍ガイヴァーの背後を断つ。
キサラのダモアヌンの魔槍の突きが悪業将軍ガイヴァーのハルバードと衝突。
ハルバードは下にずれた。
キッカの月華忌憚の鞘と月華忌憚の連続斬撃は悪業将軍ガイヴァーの大太刀に防がれた。
悪業将軍ガイヴァーはハルバードと大太刀を後退させる。
と、両上腕と下腕がブレる速度で大太刀とハルバードを交差させると、ダモアヌンの魔槍の突きと月華忌憚の斬撃を巧みに防ぎ、俺の《
足下から出していた漆黒の魔力で加速性能を上昇させているようだ。
見事な武術と防御力。
スタイルが異なるが、色合い的に光魔沸夜叉将軍ゼメタス的な雰囲気だ。
が、そろそろ頃合いだ。
――<滔天神働術>を発動。
※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙召喚>に分類※
※戦神イシュルルの加護と<水神の呼び声>の水神アクレシスの強い加護と高水準の霊纏技術系統と<召喚闘法>と<魔力纏>技術系統と<仙魔奇道の心得>が必須※
※水属性系統のスキルと水に纏わるモノが総体的に急上昇し、水場の環境で戦闘能力が高まり、功能の変化を齎す※
※酒を飲むと戦闘能力が向上※
「――ハルホンク、鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を頼む。<血道第五・開門>の<血霊兵装隊杖>と合わせろ」
「ングゥゥィィ!!」
ハルホンクは紫色の魔力を発しつつ、一瞬で、ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装と融合するように鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼の胸甲、腰当、肘当、手甲が装着された。
左手の夜王の傘セイヴァルトを神槍ガンジスに変更。
右手に魔槍杖バルドークを再召喚。
そのまま床を滑るように前進、加速――。
キサラ、キッカの攻撃に合わせて<仙魔・桂馬歩法>を実行。
そして、ピュリンの骨弾にヴィーネの翡翠の
点々とジグザクに前進する歩法から悪業将軍ガイヴァーの側面から近付く。
「消えながら迫るだと――」
光線の矢と骨弾が大太刀に斬られて爆発した刹那――。
「――ぐぁぁ」
悲鳴を発した悪業将軍ガイヴァーだが、六つの蒼と赤の炎の眼は俺を捉えている。
そのまま魔槍杖バルドークで悪業将軍ガイヴァーの頭部を狙う<刺突>。
悪業将軍ガイヴァーはハルバードを上げて<刺突>を防ぐ――。
神槍ガンジスで、中段の<刺突>。
悪業将軍ガイヴァーは大太刀の柄でその<刺突>も防ぐ。
即座に<双豪閃>――。
神槍ガンジスの双月刃の穂先と魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先が、左右から悪業将軍ガイヴァーに向かう。
悪業将軍ガイヴァーは後退し、ハルバードと大太刀で体をブロックするように、左右から挟むような<双豪閃>を防いだ。
即座に両手の武器を消す。
「な!?」
再び両手に神槍ガンジスと魔槍杖バルドークを召喚しながら<水雅・魔連穿>を実行し、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの連続突きで悪業将軍ガイヴァーを押しまくる。
更に、<夜行ノ槍業・壱式>を発動。
左手が握る神槍ガンジスの双月刃が、悪業将軍ガイヴァーの大太刀を握る指を削る。
右手が握る魔槍杖バルドークの穂先が悪業将軍ガイヴァーのハルバードを突く。
続けざまに両手がブレる速度で突きまくる。
六回程突いたところで、悪業将軍ガイヴァーは、
「ぐぁぁ」
両上腕が消し飛び大太刀が右に飛ぶ。
両下腕も傷だらけで、ハルバードの穂先が床に垂れた。
構わず瞬間的な二連<刺突>系から横回転。
流れるような足捌きと連動するように神槍ガンジスを左に傾けて引くと、双月刃が悪業将軍ガイヴァーの胸を斬り――。
右手の魔槍杖バルドークが腹をぶった斬る。
更に横回転して神槍ガンジスの柄を悪業将軍ガイヴァーに衝突させつつ、またも横回転――魔槍杖バルドークの穂先が悪業将軍ガイヴァーの腹の違う場所を斬る。
そこで神槍ガンジスの<龍豪閃>にも似た一閃が悪業将軍ガイヴァーの首を捉えて斬った。
悪業将軍ガイヴァーの頭部が飛ぶ。
よっしゃ――。
が、油断はしない。
即座に<血道第六・開門>を意識。
<血道・九曜龍紋>を意識、発動――。
両手の武器を消すと、<血魔力>が大量に体から噴き上がる。
血の錫杖を右手に生み出す。錫杖の音が響いた。
<血魔力>は龍の群れと化すと、血の錫杖にもそれらの血の龍が絡む。
血の龍は地面ごと空域に浸透し、立体的な九曜紋の魔法陣が俺の周りに展開された。規模を小さくするため出力は抑える。
魔法陣から血の龍が噴き上がった。
刹那――。
<血道第五・開門>の光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装に複数の血の龍が付着。血の龍の装甲を新たに得た。
血の錫杖の穂先も幅広の刃に変化し、血龍偃月刀となる。
血龍偃月刀と化した血の錫杖で<豪閃>――。
下から振るい上げた血龍偃月刀が、悪業将軍ガイヴァーの体を真っ二つ。更に、血龍偃月刀から九つの血の龍の幻影が飛び出ると、悪業将軍ガイヴァーの落下してきた頭部を突き抜けて城の天井も貫く。
悪業将軍ガイヴァーは完全に消滅した。
「「「おぉ~」」」
「やりましたね、ご主人様!」
「お見事!」
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