千百七話 デラバイン族の将校ノノとキョウカ

 バーソロンの元護衛部隊の面々は面構えがいい。

 右頬に刻まれている炎の紋様は各自の顔立ちに合う形で異なっている。

 個性があっていい。耳も横に長いからエルフのような印象を抱く。

 そして、元護衛部隊の皆を神聖ルシヴァル大帝国の上級将校と一旦は認識したが、デラバイン軍の上級将校と認識したほうがいいだろう。ヘルメ的には神聖ルシヴァル大帝国だと思うが、その上級将校の衣装とはあきらかに異なる戦闘装束を身に着けている一団が魔傭兵ラジャガ戦団。

 団長ミジャイの髪はドレッドヘア。

 双眸は紺碧色鼻筋は高く、イケメン的な中年で筋骨隆々のマッチョ。

 魔傭兵ラジャガ戦団はバイキング的な野郎共で漢の濃度が濃すぎるが、格好良い連中だ。

 そのミジャイが「陛下!」と片膝の頭で床を突く。

 頭を垂れてきた。直ぐに魔傭兵ラジャガ戦団の皆も、


「「「陛下!」」」

 

 と一斉に片膝の頭で床を突く。


「よう、ミジャイと魔傭兵ラジャガ戦団の皆、もう少ししたら魔の扉を用いてメンバーの救出に向かう」

「「おぉ」」


 すると、視界に小さい常闇の水精霊ヘルメが現れる。


『閣下、団長ミジャイを連れて行くのですか?』

『その予定だ。が、まずはデラバイン族の戦力を底上げする』

『はい』


 ヘルメはアチたちの方に向かうように消えた。

 戦闘型デバイスから二つの魔法書を両手に取り出し、


「皆、セラから援軍を連れてきた。正確には軍ではないが、<筆頭従者長選ばれし眷属>が多い。ホールでビュシエと話をしている最中だ。で、バーソロン、この魔法書をノノって女性に渡してくれ」


 バーソロンに二つの魔法書を向ける。

 リューリュたちは歓声を発している。


「あ、そうでした――」


 バーソロンに闇烈連破ダーク・ドイパドード闇猪大炎輪ダーク・キュボバーの魔法書を渡した。バーソロンは両手に持った二つの魔法書を見て頷き、整列しているアチたち将校を見やる、アチ、パパス、リューリュ、ツィクハル、ベイア、キョウカ、ドサチ、ベンの他に数名いる、

 

「ノノ、ツィクハルの背後にいないで此方に来い。陛下からの褒美だ。受けとるがいい」

「は、はい、私なんかに褒美が!?」


 ノノは長い黒髪で赤色が混じる。

 膨らんだ胸にデラバイン族の紋章入りの将校の制服を着ている。

 首と鎖骨と両肩と二の腕を覆うケープ的な羽織物を着ているのはノノだけだ。

 腰に短剣と魔法剣を差している。魔法剣士か魔法剣師でもあるのか?


「そうだ、いいから来なさい。畏まらず、受け取るといい」

「はい――」


 ノノは俺たちに近付いて、

 バーソロンから闇烈連破ダーク・ドイパドード闇猪大炎輪ダーク・キュボバーの魔法書を受け取っていた。


「シュウヤ様とバーソロン様、ありがとうございます!」

「ノノ、これからもがんばってくれ、期待している」

「あ、わたしの名を……非常に嬉しい思いです……ありがとう……ございます……陛下……」

 

 ノノは余程嬉しかったようで泣き始めてしまった。

 アチたちは拍手。嬉しさと照れさが相まって視線が泳ぐが、拍手が止むのを待って……ノノたちに気合いを入れてもらうため、


「ノノ、デラバイン族の将校として気合いを入れろ。その闇属性の紋章魔法も研鑽を続けるんだぞ。そして、これからもデラバイン族の兵士たちを守ってくれると嬉しい」

「はい!」


 胸を張った姿勢が良い。胸ベルトは乳房と乳房の間を通り、張った衣装のお陰で乳房の大きさが分かる。魅惑的な女性だ。

 胸ベルトは、ショルダーバッグのようなポーション入れのバッグ。

 腰のポーションの入れ物は硝子製で仕切られた中に色々な色違いの液体が入った瓶が納まっている。魔剣士か魔剣師でもあり、ポーション使いか、優秀そうだ。

 そのノノからキョウカに顔を向け、


「キョウカ、短槍を使うと聞いている。長柄も扱えるか?」

「あ、はい! 扱えますが……」

「なら、キョウカに、この間入手していたインテリジェンスアイテムでもある魔槍パアンをプレゼントしたい。此方にきてくれ」

「ぷ、ぷれぜんと……」


 頭部を震わせているキョウカ。

 髪形はミドルレンジで、少しソバージュ気味。

 黒が基調で少し艶がある。


「キョウカ! 陛下が直に渡したいと言っているのだ、さっさと来い!」


 バーソロンの言葉には少し怒りがある。

 前にも少し嫉妬していたな。


「は、はい!」


 アチたちの傍にいたキョウカが手をサッと上げてから、足早に俺たちの前にきた。そのまま片膝をつこうとしたから、


「姿勢はそのままでいい」

「は、はい!」


 そのキョウカに戦闘型デバイスのアイテムボックスから魔槍パアンを取り出した。


「これが魔槍パアンだ」

「おぉ……」


『魔槍パアン、このキョウカという女性に渡すが、攻撃はするなよ? そして、同調する際は丁寧に』

『……ワカッタ』


 と魔槍パアンに思念を送り、返事を確認してから、キョウカにプレゼント――キョウカは魔槍パアンを両手で受け取ってくれた。


「――ありがとうございます!」


 魔槍パアンから闇色の茨が少し出るが、キョウカには攻撃をしていない。良し。


 バーソロンは、

 

「キョウカ……陛下の傍に居れば槍武術を学べるだろうから、御側に付け」

「「え……」」


 俺とキョウカはハモる。

 バーソロンは嫉妬して怒っていたと思ったが部下思いなんだな。

 そんな思いでバーソロンを見ていると、バーソロンは微笑んで、


「陛下もよろしいでしょうか。リューリュたちの<従者長>化もまだですが……」

「あぁ、編成にはあまり口を出すつもりはない。バーソロンがデラバイン族の首領であり、女王なんだからな」

「え、じょ、女王……」


 軍人然としたバーソロンがきょどる。そのバーソロンに、


「流れで神聖ルシヴァル大帝国となっているが、バーヴァイ城やバーヴァイ平原などは、デラバイン族たちが住んでいる領地で故郷だからな」

「は、はい、ありがとうございます……では、キョウカをお願いします」

「了解」


 バーソロンからキョウカに視線を向ける。

 胸を張るような姿勢で待機していたキョウカは瞬きを繰り返す。

 そのキョウカに、


「魔槍パアンと同調できれば、柄のどこからでも<パアンの闇茨>が繰り出せるようになるようだ。魔力量に比例してダメージ量も上がると聞いている」

「はい!」

「他にも<闇茨穿>などが使えるようになるようだ。今後、いつか不明だが、槍の稽古の相手を頼むかも知れない」

「おぉ……槍の稽古を……」

「キョウカ、陛下は忙しいから、数百年の間に数回あるかないかと考えておけ!」

「え、は、はい」


 バーソロンさん、えげつない。

 と少し笑ってしまった。さて、

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