千百四話 ボクの隠し芸
カリィとレンショウを見ながら、
「よし、まずは……敢えて聞くが、いいかな」
「フッ、了解さ」
「はい」
「……光魔ルシヴァルとなれば、光属性と闇属性を持ち、血を好む不死系種族の
カリィとレンショウは僅かに頷いて微笑む。
「眷属化を望む。だいたい、ボクのほうこそ、疎まれる側だったし?」
「当然、俺も<従者長>化を望む! 【天凛の月】だけでなく、光魔ルシヴァル一門に入れるのは嬉しい限りだ」
「そりゃ良かった」
「うんうん、金を集めるだけだったレンショウとボクが、今は【天凛の月】一筋なんだからねぇ……言ってるボクも信じられなイ。けど……本気のマジな【天凛の月】の幹部が、今のボクなんだ……フフフフ、言っててビンビンになってキタァ……」
と、カリィは、語りの途中で左腕を俺に向けながら右腕の前腕に額を当てる。
そのまま体を斜めに傾けるという変なポージングを決めてきた。
体から出ている魔力はゆらりゆらりと揺れるが、恐怖を感じるほど練り込まれている。
体に纏っている<魔闘術>系統の質は極めて高い。
<導魔術>は発動していないが、<導魔術>系統のスキルを使った怪士ノあやかしを操る技術は、俺なんて比べ物にならないほどのレベルの技術だ。
武芸者の構えの一つだと思うが、その変なポージングを決めているカリィに、
「……ビンビンとかは、子供たちの前では禁句な?」
「え、わ、分かったヨ……」
と言ったカリィは姿勢を正すと、真剣な表情を浮かべて目に殺気を込める。
俺も殺気を込めるように<闘気玄装>を強めた。
カリィはそんな俺を見て
カリィの体から魔力を纏う分身体のような幻影が出たような気がした。
更に、カリィの周囲の物が<導魔術>系統の魔力で自然と浮かぶ。
怪士ノあやかしはないが、刀のような魔力の形が幾つも浮かんでいた。
カリィの体から放出されている魔力の質は本気と分かる。
結構マジな戦闘の気配を漂わせてきた。
周囲の空気が冷たくなったような気がした。
次の瞬間、カリィの幻影と刹那の間に戦うイメージを繰り返した。
どの戦闘イメージでもカリィを倒すことに成功したところでイメージを止めた。
レンショウに数人の眷属たちはビビった表情を浮かべていたが、皆に手を上げ、
「大丈夫だ。カリィの袖の裏に刃はない。だろう?」
と発言。
カリィは額の大きい汗の粒を片手で拭いてから、
「フフ、参っタ!
と発言し拱手。俺も拱手した。
カリィは普通のニンマリとした笑顔を浮かべながら、
「……イヒ♪ オシッコちびったヨ。あ、皆ごめん。やっぱりボクの盟主で、総長は、槍使い様ダねぇ。あ、この流れだから敢えて聞くけど……こんな変態のボクを血の家族に迎えいれてくれるのかイ?」
「……あぁ、変態の気質は、個人の範疇に留めてくれたほうが嬉しいが、受け入れよう」
「フフッ、ヤッタ、嬉しイ♪ こんなボクだけど、光魔ルシヴァル一門としてがんばるヨ!」
「おう、了解した」
そこにヘルメとミスティとクナにユイが寄ってきて、
「……まったく、二人とも陽狂が過ぎますよ?」
「精霊様が……ボクを結構理解している!?」
カリィは両手を上げて顔の近くでパーを作るような仕草を取っていた。
「……理解とは言いませんが、二人とも戦闘において、カモフラージュの天才的です。だから少し焦りました。あ、眷属化は賛成です。閣下直属の暗殺部隊【血の挽歌】の部隊を二人に任せましょう。暗殺作戦はカルードに指揮を任せるのもいいかもです」
「……ふふ、精霊様は父さんに指揮させるのが好きなのね」
「はい、カルードはユイを育て上げ、戦場を知る暗殺者で優秀ですから! そして、既に神聖ルシヴァル大帝国の親衛隊隊長ですよ」
自信満々に語る。
ずっと前にも同じことを言っていたから、本当にそうなるかも知れない……。
「……前にも聞いたけど、魔界セブドラのことを聞くと、真実味が増しているからなんとも言えない。そして、【血の挽歌】だけど、精霊様は血獣隊といい、ネーミングセンスがあると思う」
とユイが発言。頷いた。
人の死を悲しみいたむ歌という意味はここでも通じるんだろうか。
エヴァも「ん、精霊様のセンスは斜め上を行く」と真面目な表情で語るから、少し可笑しく思えた。
笑顔で頷くと、エヴァも笑みを見せてくれた。
「うん、わたしなら変な名前にしちゃいそうだし」
レベッカがそう発言。
ヘルメが、
「とにかく、セラと魔界セブドラには、血を分けた兄弟姉妹の強者が必須ですから。眷属化は大賛成です」
と言うと、皆が頷く。
ユイは、
「うん、それはそうね。でも、正直言うと、嫌な部分もある」
「う……ユイちゃんに注意を受けたことはしないヨ……」
「ん、わたしも」
「わたしもね。後、ズボンは緩めのにして。生理現象だと思うけど、ねぇ? 皆」
「あ、そうですね……できれば、わたしも変な物はみたくないので」
「わたしもです、使者様以外のは考えたくもないです~」
「はい、ダモアヌンの魔槍で<
「うん、それは当然よね、女性陣の総意よ? カリィ、理解した? そっち系の話はシュウヤだから大丈夫なだけだからね」
とユイが念を押すと、カリィは女性陣を見て、
「……ウ、了解したヨ……ズボンはなるべく、分かり難いのに変える……」
「うん、それなら大丈夫。カリィの実力は本物だから、血の家族として受け入れる。後、地下トンネル網の戦いに残党狩りなどでは、血文字がないのにわたしたちの行動を読んで、敵の背後を取ってくれたこともあったし、優しいところもあるのは知ってる。そして、意外にクレインもカリィとレンショウを気に入ってるようだし……」
と発言した。
エヴァたちはコクコクと首肯。
そうだったのか。
ミスティは、
「そうね、意外だけど優しいところはある。ゼクスとの模擬戦に、暗器械のミニ鋼鉄矢と、愛用している羽根ペンを魔杖タイプに改造したんだけど、その実験台、ううん受け手をカリィとレンショウは、ミナルザンとキスマリと一緒にやってくれたから、わたしも眷属化は賛成。そして、シウちゃんは怖がっていたけど、カリィとレンショウは、ペグワースたちとも仲がいいわよ」
へぇ。
と、カリィは、
「ウン、ペグワースたちの『すべての戦神たち』の彫像造りを手伝ったと言えるかナ?」
「そうなのか、彫像などの生産スキルがあるとは」
「あ、違う、モデル。<導魔術>で怪士ノあやかしを浮かせて一階を歩いていたら、モデルになってくれと言われたことがあって、最初は断ったんだけど……
カリィの語りにはアンニュイさがあるが、いつものことだからな。
ペグワースの話術に乗ったんだろう。
レンショウも、
「俺もだ。魔鉄扇ハブソールとジムサルの面頬を装備して構えてくれと言われて、少しだけポーズを取ることに協力した」
「そうだったか、二人ともありがとう」
「はい」
「ウン♪」
「あと、ザフバンとフクランのアグアリッツの宿屋でバーテンダーを務めることもあって、混合魔酒のカクテルが結構美味い」
「イヒ♪ ボクの隠し芸の一つかも、暗殺任務で色々と雑務は熟すからね」
「あぁ、魔酒は戦いの友、俺たちには必須ですから」
「ふふ、わたしの用意したクレイントール、バーサルア、トンパルなどの素材を組み合わせて魔酒に利用し、美味しい混合魔酒を造ったのは驚きでした♪」
とクナが褒める。
ルシェルも頷いていた。
「魔酒作りとはなぁ。では、カリィから<従者長>にしよう。少し移動して、ヘルメ、周囲を《
「はい――」
ソファ近くから離れた植物園が硝子越しに見える場所に移動。
カリィと俺は一瞬で《
「ではカリィ、お前を光魔ルシヴァルの<従者長>に誘う!」
「ウン、頼む♪」
「<従者開発>、<光闇ノ奔流>、<光邪ノ使徒>、<大真祖の宗系譜者>が融合している<光魔の王杓>を発動――」
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