千八十話 塔烈中立都市セナアプアに帰還
魔傭兵とデラバイン族の皆が、
「「凄かったァァァ」」
「おぉぉ、血の大眷属!!」
「「アドゥムブラリ様、おめでとうー」」
「俺も陛下の眷属になりたいァァァ」
<
祝福の連呼が大ホールに谺した。
血のダンスに影響を受けたのか、グィヴァに説明していたヘルメが踊りながら「閣下とアドゥムブラリおめでとうございます――」
と言って水を振り撒いていく。
魔傭兵とデラバイン族とアチも楽しそうに拍手拍手の大喝采となった。
グラドと馬魔獣ベイルも楽しそう。
アドゥムブラリは女子に囲まれて、
「アドゥムブラリ様、どのような感じなのでしょう――」
と魔傭兵ラジャガ戦団の女性に聞かれていた。
アドゥムブラリは戦闘用の衣装のまま魔傭兵ラジャガ戦団の女性たちを見る。
凄く嬉しそうな表情だ。
「フハハッ、名は知らぬが、美人な魔傭兵ラジャガ戦団の者か! よーし、見るがいい――」
鼻の下が伸びきった笑顔。
そう言いながら全身から魔力を放出させて浮遊する。
<血魔力>も放出させた。
気が早い。案の定、両手足と黒翼から<血魔力>が垂れ流れていくのみ、<血魔力>の操作は出来ていない。
魔力の質は、魔王級と分かるほどに凄まじいモノがあるが……。
そのアドゥムブラリに、
「処女刃を行うか」
と言うと、アドゥムブラリは苦笑。
頭を掻いてから、黒い翼を窄めるように畳むと斜め下へと降下。
皆から離れた位置に着地。さっと腕を上げて、
「……頼む。<魔心ノ紅玉環>に<血魔力>を得て、光魔騎士としての<血魔力>のコントロールはできていたんだ。だから<血魔力>の操作は余裕かと思っていたんだが……」
数回頷いた。光魔騎士から<
唯一の例だから、新たな知見が得られた。
「<
アドゥムブラリは疑問風に首を傾げつつも頷き、
「……分かったような気がするが、少し難しい」
と発言。するとアクセルマギナが、
「単純には言い切れませんが、マスターの推察はほぼ正解かと」
「おぉ、アクセルマギナがそう言うなら、間違ってはいないってことだ。では、アドゥムブラリ、続きは二階で」
「了解、処女刃だな」
「にゃ~」
肩に
そのまま、アドゥムブラリと皆に、
「処女刃の儀式は城主の間で行う。魔傭兵ラジャガ戦団の仲間の救出は考えているが、戦力拡充を重視して少し遅れることになる。そして、処女刃が終わり次第、ペルネーテがある惑星セラにバーソロンを連れて一旦帰還する。アチたちの眷属化も後回しだ。ビュシエは、先ほども血文字でサシィに連絡していたようだが、今の状況も伝えておいてくれ。では、一旦解散。あ、ゼメタスとアドモスはグルガンヌ地方に一旦戻っていい」
「分かった」
「「「「はい!」」」」
「「「ハッ」」」
「「承知!」」
「はい~♪」
「ウォォォォン、我も処女刃を使うところを見たいぞ!」
アドゥムブラリに視線を向け、
「ケーゼンベルスも処女刃の儀式を見たいようだが」
「……あぁ、いいが、尻の臭いとか嗅がなくていいからな?」
「ウォン! 我をなんだと思っている! 処女刃に興味があるだけだ!」
「了解、ケーゼンベルスだけならいいか。来い――」
「よし! ウォォン!」
アドゥムブラリを追うように階段を上がる魔皇獣咆ケーゼンベルス。
ケン、ヨモギ、コテツは、リューリュ、ツィクハル、パパスの傍にいる。
俺も、相棒を肩に乗せた状態で二階に移動――。
「ンン――」
城の二階に着くと、
前と同じ。最初に魔の扉を用いてここに来た時は斜陽がここら辺を射してたんだよなぁ……窓から外の様子を見る
そんな窓際に自然と足が向いた。
空を見上げて……今は斜陽ではなく、蒼白い光が射している。
真夜だが、青色が濃い時間が長く続いているようにも思える。
まだ〝魔神殺しの蒼き連柱〟の影響は続いているということか。
そして、真夜は完全な真っ暗ではない。
<夜目>の暗視効果とヘルメの精霊眼の
魔界王子テーバロンテの斜陽は、惑星セラで巨大な邪教【テーバロンテの償い】を有し、この魔界セブドラの【バーヴァイ平原】、【ローグバント山脈】の一部、【ケーゼンベルスの魔樹海】の一部、【バードイン城】、【バードイン霊湖】、【バードイン寺院跡】、【バードイン迷宮】など、複数の地域を支配していたからこそ可能だったと予想。
それに加えて、テーバロンテ独自の超大規模な範囲スキルか。
戦略級の<
そして、心象世界といえば、フクロラウドこと、大魔術師ケンダーヴァルが用いていた<
「おーい、主、セラの宇宙のことを思い出しているのか? あ、魔界の空にもセラでいう宇宙のような暗がりはあるぞ。が、まずは処女刃の儀式だろう?」
「ウォォン! 我も早く見たいぞ」
魔皇獣咆ケーゼンベルスも香箱スタイルで見守っている。
「……あぁ、すまん、盥を用意する」
振り返り、<邪王の樹>で盥を作ってアドゥムブラリの足下に置いてから、アイテムボックスから処女刃を取り出し、アドゥムブラリに放った。
処女刃を受け取ったアドゥムブラリは上半身裸となっている。
そのアドゥムブラリは処女刃を見て、
「これを二の腕にか……」
と言いながら二の腕に嵌めた。
「相棒と共に壁のウィンドウ・シートに座って見ておく」
「了解だ。血文字習得のため、痛みを乗り越えてやる!」
「あぁ、がんばれ」
「ウォォン! がんばるのだ」
「にゃお~」
振り向いた
アドゥムブラリは端正な顔立ちの極み。
女性にもてるのはよく分かる。
魔傭兵ラジャガ戦団の一部の女性たちは目がハートだった。
上半身の引き締まった体も、女性たちにはタマランかもな。
処女刃のスイッチを押したアドゥムブラリは、
「痛ッ」
処女刃を嵌めている二の腕から血が流れ落ちていく。
「これが、処女刃の儀式……なんつうか、むちゃくちゃ痛いな」
「痛いが、血の感覚はあるだろう?」
「あぁ、ある。これが本格的な
「え? マジか。偉い速さだ」
「ウォォン! なんと! いきなりか! 盥に血が満ちて、それを両脚から一気に吸い寄せると聞いていたのだが!」
魔皇獣咆ケーゼンベルスはそう発言。
盥の匂いを嗅いでいた。
アドゥムブラリはコクコクと頷いた。
盥に血は溜まっていない。
「……これが<血道第一・開門>!! 処女刃の痛みがしばらく続くと覚悟していたが、あっさりと終わったぜぇ」
と、気合い充分のアドゥムブラリ。
片腕をあげて力瘤を見せてから、その腕を振るった。
「魔王級の素質で、光魔騎士として<血魔力>が体に浸透していたことも大きいか」
少し体を浮かせたアドゥムブラリは頷いた。
処女刃を外して放ってくる。それを受け取ってハルホンクに格納させた。その間にアドゥムブラリは両手を広げながら浮遊。
その両手の掌を見て数回頷いていた。
体から<血魔力>を放出させて、その<血魔力>を吸収していく。
金色の長髪とマントが風を孕んだように持ち上がっていた。
長髪には虹色の魔力が内包されている。
「ウォン! <血魔力>を強く感じる。<
魔皇獣咆ケーゼンベルスが浮遊するアドゥムブラリの尻と背中を見上げるように語る。一方のアドゥムブラリは、黒い翼を拡げ、その美しい黒い翼にも<血魔力>を集結させていた。
「ウォォォンン! 翼の根っこ付近の血が躍動しておる! 血管が皮膚の上にミミズが走るように浮いている!」
魔皇獣咆ケーゼンベルスが吼えるように語る。
尻尾をぶるんぶるんと振り回しては、アドゥムブラリの足に頭部をぶつけて、気持ちを一生懸命に伝えていた。
「<血魔力>系の新しく覚えたスキルだな。試すか?」
「フッ、気が利く主だぜ、頼む」
渋いアドゥムブラリに笑みを送りながら自然と消えていた<血霊兵装隊杖>の血の錫杖を意識――。
その血の錫杖を掴んでから、大ホールの端っこに置きっぱだった<光魔・血霊衛士>を呼び寄せるように操作して一階から外に出しつつ、
「相棒とケーゼンベルス、外に行こうか」
「にゃ~」
「うむ!」
と、二階の窓から跳んだ。
魔皇獣咆ケーゼンベルスも背後からついてくる。
そして、バーソロン、ビュシエ、ヘルメ、グィヴァ、
それぞれバーヴァイ城の違う場所にいた皆は、城から飛び出た俺たちの動きを正確に追跡してくる。
――さすが眷属たちだ。
<導想魔手>を足場にしつつ宙空を上がる。
アドゥムブラリも背後から付いてきた。
下にビュシエたちが見えた。
その近くを迅速に駆け抜けている深紅騎士<光魔・血霊衛士>が格好いい。
自分で自分を操作している感覚はなんとも不思議だ。
それを見ながらバーヴァイ城の庭に着地――。
<光魔・血霊衛士>の一体をアドゥムブラリの足下に移動させた。
「アドゥムブラリ、いいぞ」
「陛下たち、なにを?」
「閣下、いきなり模擬戦? 処女刃の儀式はもう?」
「器とアドゥムブラリ! もう終わったのか!」
「ウォォォン、試して遊ぶのか!」
「おぉ、アドゥムブラリ殿が<血魔力>を!」
グラドの言葉に頷いた。
「そうだ。アドゥムブラリは<血道第一・開門>を獲得した」
「「「「おぉ」」」」
「やはり、サシィとは異なる!」
「「「疾!」」」
「数分か?」
「今までで最速ですね」
「さすが魔王級&光魔騎士」
「あぁ」
「では閣下、もうセナアプアに?」
ヘルメの言葉に頷く。
「あ、その前にアドゥムブラリが試すらしい」
「あ、そういうことですか」
ヘルメの言葉に頷いてから、全員が<血道第一・開門>を獲得したアドゥムブラリを注視。
俺も、そのアドゥムブラリに、
「新スキルを試すがいい」
「おう! いくぜぇ……<魔王・黒翼血刃>――」
アドゥムブラリは両方の黒い翼を伸ばすと横に素早く移動――。
その黒い翼から血刃が射出された。
血刃は血霊衛士と衝突――血霊衛士は吹き飛んで転がってから、片足で地面を突いて立ち上がっていた。
血霊衛士の甲冑は大きく凹んでいる。
「「おぉ」」
「黒い翼から血の刃が一瞬で五発以上は出ていました!」
「はい、陛下の<仙玄樹・紅霞月>並の威力はありそうです」
「マスターの<仙羅・絲刀>にも近い」
「威力は<仙玄樹・紅霞月>に近いでしょう」
と皆が発言しあう。
「主、血霊衛士……結構頑丈だ……」
アドゥムブラリは少しショックを受けている。
新スキルだからか。
が、数が少ない<光魔・血霊衛士>も並ではない。
これを見たヴェロニカの反応が怖いが……。
「……おう、そりゃな。数が少ない<光魔・血霊衛士>だ。俺の防御力に近いはず。たとえが悪いが、今の血霊衛士は元教皇庁八課
「エリート……数が少ないほど個体として強いんだったな。ならば、自信を持てる」
「あぁ、<魔王・黒翼血刃>は十分強い。魔王級の光魔騎士で<
「おう! 次は――」
アドゥムブラリは指先に<血魔力>を集結させる。
素早くその指を動かして、宙空に血文字を作った。
一瞬で、俺の前に、
『これが血文字! 次はビュシエとサシィに――』
と血文字が浮かんだ。
アドゥムブラリは直ぐに血文字をサシィとビュシエに送っていく。
傍にいるビュシエは、
『アドゥムブラリ、おめでとうございます。幼なじみの復活に必要なアイテム探しの件はサシィにも伝えてありますので』
血文字を送っていた。
そして、そのアドゥムブラリの前方の空間に血文字が浮かぶ。
『――アドゥムブラリ殿、<
アドゥムブラリは、そのビュシエの血文字とサシィの血文字を見て、涙を流し、手が震えていた。
アドゥムブラリは涙を拭ってから血文字で、
『……ありがとう。まったく、皆、主もだが、良い家族だぜ……セラの皆にも早く伝えてあげたくなった……が、俺は……』
とサシィと俺とビュシエに血文字を送っていた。
はは、それは俺も同じ。
そして、涙を流すところは単眼球の頃となんにも変わっていない。
なんか、心が温まる。
アドゥムブラリを助けて本当に良かった。感謝だ。
そのアドゥムブラリと皆に、
「ではバーソロン、魔の扉を使うから来てくれ。アクセルマギナも戦闘型デバイスに戻ってくれ。フィナプルスとヘルメとグィヴァはどうする?」
「はい――」
「わたしはシュウヤ様のフィナプルスの夜会に戻ります――」
アクセルマギナは戦闘型デバイスに戻る。
フィナプルスも突進するような飛翔で近寄ってくると、腰のフィナプルスの夜会の書物に吸い込まれて消えた。
ヘルメは、
「勿論、戻ります」
「おう」
「しかし、地下の【幻瞑暗黒回廊】と瞑界シャロアルに、バーヴァイ城の防備が心配ですね」
「ビュシエとケーゼンベルスとグラドがいる」
「「はい」」
「お任せを!」
「ヒヒーン」
「ベイルもがんばるそうだ」
「器、妾たちもここに残る」
「お、いいのか?」
「ふ、直ぐにバーヴァイ城に戻るのだろう?」
「あぁ、そのつもりだ」
「ならば、ここに残って、デラバイン族たちに貢献しよう」
「わたしもです」
「はい、残ります」
「分かった。ありがとう沙羅貂」
バーソロンも続いて、
「ありがとうございます、沙様、羅様、貂様!」
デラバイン族を代表してお礼を言っていた。
ヘルメは、
「沙羅貂は残るのですね。惑星セラにいる眷属たちに魔界セブドラの事象を説明する時、人数が多いほど情報の伝達は早まると思いますが……」
「ふっ、器を愛している<
「はい、わたしたちは愛を十分に得ましたから、器様に眷属たちから愛を受けてもらいましょう」
「そうですね」
と、
そして、
「器、待っている――」
すると、グィヴァは、
「セラに行きます! そして、右目ではなく、最初から外に出ていたほうが、皆さん、ヴィーネさんとユイさんにレベッカさんとエヴァさんと、エヴァさんの師匠のクレインさんと……ミスティさんとペレランドラさんとカットマギーさん、ナミさんとリツさん、ミナルザンさんとペグワースさんとシウさんとディアさんとドロシーさん、レファさん! に挨拶したい!」
と早口気味に名前を挙げていく。
皆は感心しているような表情を浮かべていた。
アドゥムブラリは俺を見て口だけで『キュルハ』とだけ伝えてきた。
そんなことは分かっているというような笑みを送っておく。
そして、グィヴァに向け、
「よく覚えた! が、レファはゴルディーバの里にいるアキレス師匠のお孫さんだ。そのゴルディーバの里にもいつか、戻る予定なんだが……」
と言いながら、
「んじゃ、皆、二階に来い。アドゥムブラリは自由だ」
「おう、主……ありがとうな」
「ハッ、なにしみったれた顔をしてんだ。幼なじみの復活をさっさと片付けてこい。んで、さっさと結婚しろ」
「おうよ、幸せのばくはつ~ってか? あはは」
「ははは」
と笑い合う。
「閣下、アドゥムブラリが爆発したらバーヴァイ城が崩壊します」
「はは、ヘルメ、真面目にツッコまんでくれ」
「は、はい! ふふ」
「使者様、わたしも一緒に戻ります~。そして、ピュリンに変身――」
とイモリザは一瞬で
銀髪のイモリザも可愛いが、金髪のピュリンも可愛らしい。
両腕はセレレの骨筒の効果に<光邪ノ尖骨筒>で自由に形態変化が可能。
マークスマン・ライフルのような形態にも変化が可能。
魔界王子テーバロンテ戦では、イモリザと共に大活躍をしてくれた。
<魔骨魚>と連携可能な<光邪ノ雷連徹甲骨弾>は見事だった。
骨筒のマズルが連続的に火を噴く姿は鮮烈に覚えている。
そのピュリンは、
「使者様と、皆様、イモリザとツアンがお世話になっています」
「にゃ~」
「ふふ、イモリザの時に挨拶してましたが、可愛い~」
ピュリンも
ゴロゴロ音が聞こえてくる。
「きゃ……」
ピュリンの首と顔を舐めている
「よし、二階に行こう――」
「あ、はい――」
そのピュリンの手を掴んで相棒ごと抱き寄せながら跳躍。
<導想魔手>を蹴って宙空を移動し、二階の窓から城主の間に入った。そして、直ぐに相棒とピュリンを降ろし、アイテムボックスから魔の扉を取り出す。
遅れてやってきたバーソロンとヘルメとグィヴァ。
「陛下、その魔杖にはわたしの魔力が必要です」
「あぁ、そうだった。頼む」
「はい」
バーソロンに魔力を込めてもらった。
その魔杖バーソロンを魔の扉の孔に差し込みパネルのボタンを押す。
と、魔の扉からキュィィィンとハードディスクが回るような音が響いた。
続いて稲妻のような音も魔の扉から響くと、その鏡が光った。
光っている魔の扉の鏡の下の極大魔石を嵌める孔に、入手したばかりの極大魔石を複数詰め込んだ。
バーソロンは、魔の扉にささっていた魔杖バーソロンを抜いて、俺に手渡してくる。
その魔杖を
「極大魔石を嵌めるのは、塔烈中立都市セナアプアの地下の魔の扉から魔界に来る時だけで良かったんだっけか」
「はい。しかし、魔傭兵ラジャガ戦団のメンバーを救う際バードイン城を利用するはずですから、このエネルギー源は、そのまま流用できます」
「分かった。じゃ、このままでいいか」
「はい」
そして、塔烈中立都市セナアプアの地下の様子は見えないが、魔の扉の鏡を潜れば、塔烈中立都市セナアプアに一時の帰還だ。
「では潜る。皆、準備はいいな?」
「「「はい!」」」
「にゃおぉ~」
皆と一緒に魔の扉に歩いて潜る。
一瞬で、塔烈中立都市セナアプアの地下世界、地下神殿となった。
下のほうには無数の花々と大小様々な樽が並びまくっている。
『皆、魔界セブドラから帰還した。ヴィーネとユイにレベッカにエヴァも、元気か!』
『ご主人様! 今、今ドコに!!』
『もちつけ、いやおちつけ、今はセナアプアの地下だ。魔の扉の鏡の前だ。それで、祭壇の広間に荷物置き場と花壇のようなモノができているんだが……』
『あ、はい、急ぎ向かいます』
『待った、
『はい!』
『『ちょ!?』』
『ごしゅさまぁぁぁ』
『ご主人様!』
『シュウヤ!』
『ん、シュウヤ、会いたい』
『あぁ、会いたい、トラペゾヘドロンを使うから』
とエヴァに血文字を送る。
レベッカが、
『シュウヤ、嬉しい……帰ってきてくれた、でも、一喝しないと気が済まないんだけど!』
『そうそう、一ヶ月もほっとくなんて! あ、わたしも直ぐに上に行くから!!』
『おう、トラペゾヘドロンを使う』
血文字をユイとレベッカにも送った。
すると、レベッカの血文字が、
『あ、わたしも今上に行くから、シュウヤ、速くきてよ! 女を新しく作ってたら承知しないんだからね!』
『……お、おう』
『シュウヤ……良かった、ここ一ヶ月は緊張を覚えていたが、安心できる』
『シュウヤ、わたしも戻るさね』
『あぁぁ――』
『マスター、魔界って血文字が使えないの?』
『あぁ、そうだ。悪かったな。魔界でも一悶着どころではなくてな』
『うん、魔杖バーソロンとの絡みはどうなった、っていうか、魔塔ゲルハットに戻るのよね!』
『マイロード!!!!』
『うぁぁぁ、シュウヤのばかぁぁぁぁ』
『えっと、総長、生きていて良かったよ、あたいのことは忘れてない?』
『総長……よかった』
と、眩暈がする勢いの血文字の嵐に混乱。
「陛下、眷属たちからの血文字が凄いことになってますね……」
「あぁ。で、もう何回も言ってるから分かってると思うが、後でレザライサという名のエルフにも会ってもらう」
「あ、はい、お任せを。【白鯨の血長耳】の総長様で、セナアプアでは大切な盟友、【血月布武】の名での同盟相手ですね」
「おう」
「……惑星セラの地下、魔の扉での移動は、トラペゾヘドロンとそう変わりませんね」
というピュリンの言葉に頷きつつ、トラペゾヘドロンを取り出した。
その十八面の緑の溝をなぞる。
瞬く間に赤くなった溝の面から閃光が迸る。
「おぉ、それが……」
そして、閃光を発した
「本当に光のゲートが出現しました! 魔の扉とは異なる転移方法、陛下が魔界セブドラで欲しがっていたのにも頷けます」
バーソロンの発言にニコッとしてから、
「だろう? では、ここに潜りたいが、このままだと
思わず笑顔になる。
「「「はい」」」
両手を差し出す。
ヘルメ、グィヴァ、ピュリン、バーソロンは俺の手を握った。
相棒は肩に乗ったまま、
「ご主人様アァァァ――」
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