千八十一話 エヴァとの癒やしのダンス
素早くバーソロンとヘルメにピュリンとグィヴァは斜め後方に退いた。
待っていた皆に向け両手を広げ、
「よ、皆、ただいま――」
と言った直後に、胸に飛び込んできたヴィーネを抱きしめる。
同時に
衣装を一瞬で上着とズボンに変更してくれた。
ヴィーネは背中に両手を回して頭部ごと体を俺に押し付けてくる。気持ちが籠もっていた。
「ご主人様……淋しかったぞ……」と小声で気持ちを伝えてくるヴィーネの吐息と心臓の鼓動が聞こえてくるのが嬉しい。
心が温かくなった。
おっぱいの膨らみも嬉しいが、ヴィーネの心が俺の心に入ってくるような感じがして、嬉しくなると同時に胸辺りがキュンとなる。
そんなヴィーネの背中と銀髪を撫でていると、微かにバニラ系のいい匂いが漂った。
すると、
「パキュゥゥゥ――」
と盛大に鳴いたのは法魔ルピナス。
マンタやエイと似た法魔ルピナスが俺とヴィーネの周りを回る。
「にゃおおおお~、にゃ、にゃぉぉぉ」
ゴロゴロ音も同時に鳴らして、あ、泣いているのか。
「あぅ」
甘噛みを行っていた。
ヴィーネは
「――ロロ様……わたしも会いたかったです」
「ンン、にゃおお」
チッコイ黒猫の相棒とヴィーネは絵になる。
そして、
一心不乱に
【独立地下火山都市デビルズマウンテン】からペルネーテに帰還した時を思い出した。
あの時
ヴィーネが
すると、「パキュゥゥ!」と鳴いた法魔ルピナスが、二つの
その風と魔力の粒子は霧染みた水魔法?
霧的であり浄化魔法のようでもある魔法を俺たちに展開してくれたと分かる。
気持ちいい風を浴びているようでもあって、一気に気分爽快になった。
――レベッカ、ユイ、キサラ、エヴァも抱きついてくる。
やや遅れて「マスター!!」とミスティも抱きついてきてくれた。
「ん、シュウヤの匂い……」
「シュウヤ様の……体……」
「……シュウヤの匂い……この肉付き、完全にシュウヤよね……」「はい……」
「はは、俺にきまってるだろう」
キサラとエヴァとユイは抱きしめを強くしてきた。
レベッカは俺にキスしようと背伸びをしたが、
と、そのレベッカが、
「シュウヤ――」
俺の二の腕と脇腹と腰に体を押し付けてくる。
「シュウヤとロロちゃん……会いたかったよぉぉ」
ユイも淋しかったか……。
「うん、マスターとロロちゃんの匂い~」
「うふふ、はい……ロロ様の匂いは、メトちゃんたちとは少し異なりますね」
「ンン、にゃぉ、にゃ、にゃ、にゃおおお~」
「ん、大好きなろろちゃん~、ちゅっ!」
「あぁ! わたしもロロちゃんにチュッとする!」
「はい、わたしもロロ様の鼻先を!」
「では、今のうちに――」
と
ヴィーネの巨乳の柔らかさは永遠だ。モミモミしたい。
その横からミスティも、また抱きついてきてくれた。
ヴィーネは遠慮してミスティに譲る。
眼鏡が似合う博士的なミスティは、ヴィーネに微笑んでから、もう一度俺に抱きついてくると、右肩に出ていた竜頭装甲を見て、
「……ハルちゃんは魔界セブドラのモンスターとか色々食べたと思うけど……でも、意外とシュウヤの<血魔力>は増えていない。その代わり、より深く洗練されている印象を受けるわ」
と鋭い指摘をしながら少し後退。
ミスティは紙に走り書き。癖は相変わらず。
紙には、
□■□■
<魔闘術>系統の進化が半端ないってことね。
魔杖バーソロンは持っていないようだけど、魔界王子テーバロンテを倒したってこと?
□■□■
と書かれていた。
そんなミスティを見ていると、
「――再びシュウヤ成分を補充よ!」
「はは」
その軽いレベッカの横っ腹を擽ってやった。
「ぁぅ」
弱点は変わらず。
そこにユイが背中から覆い被さるように俺に抱きついてくる。
そのユイが、
「だれか分かる~?」
「分かるにきまってる――」
と、僧帽筋と三角筋を活かす――。
少し体勢を前にしつつユイを背中の筋肉で持ち上げるように、ユイの体をドンッと叩いて、浮かせてから爪先回転でターンしつつ「きゃ」と驚くユイを正面から抱く。
ついでにお尻を鷲づかみ!
「……あっ、もう! でも嬉しい――」
と、唇を奪われた。
ユイの唇を味わうようにディープなキスに移行――。
「あああぁぁ、キス協定を破ったぁぁぁぁ」
そこからレベッカを筆頭に眷属たちのキスの乱舞。
と、そこから皆、抱きつきを強めては――。
かわりばんこにハグとキスに<血魔力>を求めて来た。
「ちょ、キサラが一番長くキスして、おっぱいモミモミも長いんだけど、どういうことよ!」
というレベッカのツッコミが面白いが、そのままエッチなことも多少織り交ぜつつ、思う存分キスにハグを行った。
その後……。
大人しく見ていたクレインとキスマリとカットマギーとディアとキッカとドロシーに、頭を掻きながら笑顔を向けた。
「よう、挨拶が遅れてすまん」
「はは、いいさ」
「「ふふ」」
「盟主を想う気持ちは皆共通」
カットマギーの言葉に皆が頷く。
すると、キッカが、
「あぁ、閣下とキス……正直、凄く羨ましくて、胸が焦げる。そして、わたしも血が欲しい……」
「キッカ――」
とキッカに近付いてハグ。
「あ……」
「<血魔力>を贈るぞ」
「……はい」
即座にキッカに<血魔力>を贈ると、「あぁぁ……宗主の濃い血……こ、これが……あぁぁ……」キッカは恍惚とした表情を浮かべたまま武者震いを起こすように体が震え、その場で乙女座り。
お尻と太股などの足の内側が地面に付いて、両膝の頭を合わせている。
魅惑的なスタイルの座り方だ。
冒険者ギルド長で強者だが、キッカも<
横にいるクレインは『やれやれ』と言うような表情を浮かべている。そのクレインは、
「……宗主、魔界セブドラの任務は完遂か?」
「おう」
「「「おぉ」」」
「ん、その話は少し後!」
「そうだな、エヴァ――」
「ん――」
近付いてきたエヴァへと、逆にコンテンポラリーダンスで間合いを詰めてから、そのエヴァを抱き上げつつ一回転――爪先回転を行いながら――皆から離れて横移動――。
エヴァを楽しませてあげよう。
そのエヴァは俺の胸元に顔を埋めるように抱きしめを強くしてくる。
そして、メリーゴーラウンドではないが――。
エヴァの体を引き上げるように伸ばし――。
背筋を伸ばしたエヴァは「わっ」と少し驚きながらも「ふふ~」と本当に楽しそうな表情を浮かべてくれた。
俺と一緒に回っているエヴァは少女のように笑顔だ。
更に、エヴァの背中を指で撫でながら――二人の間となるように社交ダンスのリフト――。
エヴァの腰と自分の腰を合わせるようにエヴァの背中を片手で押さえつつ――華麗にターン。
フロアダンスから、ボディライズを意識した動きで、背を反らしたエヴァをホールドしつつ、カンブレのようなダンスとなったところで締めた。
ダンスを終えたエヴァに普通に立ってもらう。
紫の瞳を潤ませて、俺をジッと見ながらターンピックが冴えているはずだったが……。
そのエヴァは、
「ん、シュウヤ……嬉しい……そして、魔界でがんばった」
「あぁ」
俺の心を読んだか。
「凄いダンスで、なんか癒やしのダンスよね。エヴァとシュウヤを見ると、何も言えない。悔しい感情もあまりないの、自然と笑顔になる」
「はい」
「そうですね」
「うん」
すると、
「……妬けるねぇ。と同時にわたしも凄く嬉しくなる」
クレインの言葉だ。
エヴァのことを見て母的な表情を浮かべていた。
そのクレインに向け、<
「ちょッ、宗主――」
キッカたちが傍で見ているが、いいさ――。
エヴァの母&師匠の立場をがんばるクレインを抱きしめながら魔力を送る。
「――あんっ、ばか、だけど、ありがとう宗主……」
感じたクレインは体を震わせてから、俺をギュッと抱きしめてくる。「あぁーーー」とレベッカさんが来たから、急ぎクレインを抱きしめながら横移動を繰り返してレベッカを往なす。
クレインの長耳にキスをして「血長耳との連携と地下の掃除をよくがんばってくれた、ありがとう――」と言いながらクレインから離れた。
クレインは「ひゃう――」と言って顔を真っ赤にしたまま、ストンとお尻を地面につけていた。
ペレランドラがシウとディアとドロシーの目を塞ごうとしているが、三人は頭部をずらして俺を見まくっている。
三人に無難に笑顔を向けてから、改めて、
「では、改めて、クレイン、ペグワース、シウ、ディア、ドロシー、キスマリ、カットマギー、ペレランドラ、ミナルザンも、ただいまだ」
「ふふ、あぁ、お帰り」
「にゃァ」
「ニャァァ」
「ニャォォ」
「ワン!」
「グモゥ!」
「メトちゃん、アーレイちゃん、ヒュレミちゃん、リックンちゃん、ランちゃん、トマーちゃんの猫ちゃんたちも燥いでいます。神獣様が親分だと分かっているのですねぇ」
ペレランドラがそう語る。
その言葉に頷きつつ、異界の軍事貴族たちの頭を撫でてから、
「ペレランドラも評議員活動と魔塔ゲルハット内の商業施設など色々と報告があると思うが、一先ずご苦労様と言っておこう」
「ふふ、キッカさんたちの仕事に比べたら、わたしは楽ですから大丈夫です。そして、<血魔力>の技術は向上させているつもりですが、さすがにデスクワークが主ですからね」
と発言、頷きつつ、ディアたちを見る。
「――お兄様、お帰りなさい」
「シュウヤ、お帰りだ。『すべての戦神たち』の作業は順調に進んでいるぞ」
おぉ、【魔金細工組合ペグワース】が作る彫像は楽しみだ。
「おう、見てみたいが、あとでとなる」
「はは、まだまだ見せられるもんではないから、作業場にきても意味はないぞ。ま、一階は広場と出入り口があるから、わしたちの作業はいつでも見られると思うが」
「あぁ、そうだな」
とペグワースに同意しつつ、ディアを見て、
「ディア、魔界と【幻瞑暗黒回廊】について伝えておくことがある。魔界ではバーヴァイ城を拠点にしているんだが、そこに【幻瞑暗黒回廊】があるらしいんだ」
「「「え!」」」
「皆が驚くのも無理はないと思うが、後で詳しく説明しよう」
「主、その魔界セブドラの武勇伝をもっと聞かせてくれ! 魔界王子テーバロンテに、魔杖バーソロンのことが気になる」
キスマリの言葉に頷いた。
チラッとバーソロンを見ると静かに頷いたが、口は閉ざしたままだ。
カットマギーに視線を向けると、
「……盟主、嬉しいぞ。今にしたら一瞬に思えるが、少し長く感じた……が、とにかく帰ってきてくれてよかった! 一応、キッカたちと血長耳たちと協力して、地下の【テーバロンテの償い】の残党は掃討したつもりだが……地下トンネルすべては把握しきれていない。下層も広大、まだ隠れている奴らはいるだろう」
「あぁ」
「ン、にゃ~」
「ん、地下もあるし下層は広い。【テーバロンテの償い】の残党はまだいる」
「あぁ」
「ん――」
エヴァがまた抱きついてくる。
と、
「――はは、面白い甘えた方だし、苛烈だ」
「「ふふ」」
「ンン、にゃおお~」
「あぁぁ~ロロちゃん! でもチャンス~」
「ンン」
レベッカが
「あ~、わたしも抱きたい~」
と、ミスティも
ユイも前足をゲットしては、その爪先と指球を指でモミモミしながら押してワザと爪を出させつつ、掌球をモミモミしている。
「ロロちゃんの頭部の匂いと、肉球ちゃんの匂いも昔のまま……」
ユイは
皆、興奮が少し収まると、エヴァが、
「ん……魔界は大変だった?」
「大変だった。ピュリンたちのお陰で今がある」
そこでピュリンに腕を向ける。
「あ、はい、ありがとうございます!」
「ピュリンちゃん、おひさ~」
「ん、ピュリンちゃん、イモリザとツアンも大活躍?」
「おう。魔界王子テーバロンテ戦に【ケーゼンベルスの魔樹海】でのモンスター退治など、黒狼隊を指揮するツアンがいたから助かったんだ」
「「……」」
皆、ピュリンに笑みを送って、ヘルメにも、
「精霊様も、おかえりなさい」
と発言していくが、隣にいるバーソロンと闇雷精霊グィヴァを見ると……顔色を悪くする。
「……ん、よかった」
「……魔界セブドラに行ったまま数千年戻らないかもと心配した……」
「あぁ、悪い」
「……木枯らしの秋の四十日が過ぎた……」
秋か……。
「でも、これで一安心ね。最初は魔の扉が爆発するかもと用心していたけど」
「魔の扉から魔界セブドラに乗り込んで正解だった」
「やっぱりねぇ、魔界王子テーバロンテ戦と聞いたけど、バーソロンを倒した? で、魔界側で上手くやったようね」
「そのバーソロンなんだが、そこにいるバーソロンが、あの魔杖バーソロンと関係している本人だったりする」
「はい、え!?」
「「「え?」」」
「ぇぇ」
「「ちょ!」」
「――マジなの?」
「マジだ」
バーソロンに視線を向けると、
「はい、デラバイン族のバーソロンです。バーヴァイ城の城主でした。魔界王子テーバロンテにバビロアの蠱物で支配を受けていましたが、陛下に救われたのです。多数のデラバイン族も助かりました。魔界王子テーバロンテの勢力と戦争になりましたが、それを撃破して……そこからは少し長くなりますが……今に至ります」
「「「……」」」
「ち、<血魔力>があるしぃ……ひょっとして、<
レベッカが少しびびった口調でそうバーソロンに聞いていた。
「今は光魔騎士ですが、今後のため、<筆頭従者長>化の約束をしていただきました」
「「えぇ……」」
レベッカとユイはショックを受けたような声を発して俺を睨むが、直ぐに頷き合うと、バーソロンを見た。
すると、いち早く、
「そうなのですね……バーソロン、これからもよろしく。わたしは第一の! <
とヴィーネが挨拶。
「あ、わたしは<
「ん、エヴァ、<
「わたしも<
「光魔騎士バーソロン。わたしは<
と、皆が一通り自己紹介していく。
ヘルメに視線を向けた。
すると、ヴィーネがヘルメを見て、
「精霊様、横にいる女性は……もしかして……」
「はい、闇雷精霊グィヴァ。閣下は、わたしと同じ精霊を使役し、雷属性を得ました。そして、魔界王子テーバロンテを滅し、【バーヴァイ平原】、【バーヴァイ城】を獲得し、そのまま【ケーゼンベルスの魔樹海】に進出して、魔皇獣咆ケーゼンベルスと交渉、使役に成功。更に、【源左サシィの槍斧ヶ丘】に進出し、源左サシィを<
「ンン、にゃお~」
「「「「「ええ!!」」」」」
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