千七十四話 闇烙・竜龍種々秘叢の巻物と血龍魔仙族ナギサ・ホツラマ


 ――闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物を出した。

 

「今度は巻物を取り出されたぞぉ~」

「「「おぉ」」」


 魔雷教の方々の一部から歓声が響く。


「書画を横に長く表装して軸に巻いたものですね」

「おぉ、あの書物を巡り、御使い様と眷属様たちは色々と予想されていたが!」


 そのまま他の魔雷教の方が、


「……先ほどの風獣仙千面筆帖と風獣墨法仙帖といい、御使い様だから扱える書画の巻物でしょうか!」


 と聞いてきたから、


「あぁ、そうなる」

「「おぉ」」

「先ほどの筆の扱いは見事だった。御使い様は書道も嗜まれている」


 お爺さんの魔雷教の方がそう語ると、オオツキさんも、


「なるほど、槍の扱いは雲煙飛動の如く。トミオカの言うように、先ほどの宙に浮いていた仙大筆という名の大きい筆と墨の魔力の扱いも妙たるものであった。浮かんでいた魔法の文字は間架結構の細があり、分からなんだが、懸針に垂露などの他、籠写しの技術に、文字を崩したような葦手書きの達人にも見えたからな……」


 と語った。隣にいるお爺さんも、


「わしも、見たことのない文字には驚きを覚えつつも、源左で嗜んだ水墨画だったから嬉しさもあった。勿論、水墨画の動植物は達人の妙たるものであった」

「ラマントーは源左書道ジュドウの門下生でもあったな」

「あぁ。あの巻物も書道と関係したアイテムなのだろうか」

「それは分からぬ。が、あの巻物を御使い様が入手された時は、わしらが闇神アーディン様の啓示を聞いた時でもある。であるからして、闇神アーディン様のお恵みがあるかも知れぬ」

「うむ! 忘れられぬ体験であった。魔雷教の者共、我の祝福を受けし槍使いに懾服せよ、抗うことなく指示に従うべし!」

「「……〝魔雷教の者共、我の祝福を受けし槍使いに懾服せよ、抗うことなく指示に従うべし〟」」


 オオツキさんと魔雷教の方々がハモる。

 書道に対しては日本人が祖先の源左らしい反応だ。


 サシィやダイザブロウに源左の者たちは……。

 仙大筆と仙魔硯箱に<霊魔・開目>を活かした<風獣戯画>と<海獣戯画>と一緒に闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物を見たら驚くだろうな。


 勿論、セラにいる眷属たちも見たら驚くだろう。

 流れからか、魔雷教の方々が片膝で地面を突く。頭を垂れてきた。


 信仰心は大事だと思うが、お年寄りの魔雷教の方に近付いて、


「――皆さん、頭を上げてください」


 元気だと思うが、手を差し向け、


「お年寄りは無理をなさらず……ささ」

「温かい手じゃ、ありがたやありがたや――」


 立ってもらった。

 そのお年寄りは、


「御使い様はお優しい……が、わしらに構わず、次のアイテム、その巻物を試されよ」

「はい、そうさせてもらいます」


 魔雷教のお年寄りから少し離れて皆を見る。


「陛下が倒された地大竜ラアンは血肉の他に、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうと複数の極大魔石を持っていましたね」

 

 バーソロンの言葉に頷きつつ振り返り、皆と少し距離を取る。

 ビュシエたちも頷いていた。


 ゼメタスとアドモスも、


「その関係から、魔雷教の方も言っていたが、地大竜ラアンなどのドラゴンと龍が棲まう可能性があると予想しておられた――」

「――うむ、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物から敵が出現したならば、私たちが!」

「「――おう!」」


 と語り合いながら虹色の魔力が覆っている骨盾をぶつけ合う。

 二人の間に虹色の粉塵のような魔力が舞う。

 その虹色の魔力が発生している不思議な骨盾から波動的な音も響いた。


 すると、アクセルマギナが、


「地大竜ラアンと地亀ドラゴンが現れるなら危険ですが、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物は、『ドラゴ・リリック』と似たアイテムの可能性が高いと予想します。または、先ほどの風獣仙千面筆帖と風獣墨法仙帖のようにマスターの称号やスキルが多重連鎖した幻想修業が可能となる神話ミソロジー級のアイテムが、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物かも知れません」


 と二つ予想してくる。

 アドゥムブラリも、


「あぁ、風獣仙千面筆帖のような展開もありえるのか。または戦闘型デバイスの『ドラゴ・リリック』。あの立体映像の中で動くモンスターなら、取り出してフィギュア化できるし、そうやって取り出した牛白熊の怪物をハルホンクに喰わせて防具服の素材に利用していた。今更だが、主は歩く宝石箱だな」


 なんかどこかで聞いた台詞で笑った。

 アドゥムブラリは続けて、


「ま、ラファエルが扱う複数のモンスターが格納されている魂王の額縁などを実際に見ているのもあるから、その線が濃厚とみた」

「はい」


 アクセルマギナとアドゥムブラリは頷き合う。

 ヘルメも、


「そうですね。魔造家マジックテントなどもあります。更に閣下にはサジハリに預けている高・ハイ・古代竜エンシェントドラゴニアのバルミントがいる。ですから、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物が、ドラゴンや龍を棲まわせることが可能な携帯アイテムなら、貴重なアイテムとなる。そして――」


 アクセルマギナとフィナプルスを見て、


「フィナプルスは魔界四九三書のフィナプルスの夜会の管理者でもある。それは異世界と同じ。更に戦闘型デバイスに棲まう人工知能アクセルマギナも汎用戦闘型として今閣下の傍に居ますからね。わたしも閣下の左目に棲めますし、闇雷精霊グィヴァも右目に棲まえる。ですからわたしは、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物は、中に人族や魔族に精霊などが棲むことが可能なアイテムの場合もあるかと予想しますよ~、ふふ」


 と、楽しそうに期待を込めて予想している。

 皆が「「おぉ」」と感心の声を発した。


 不思議と、その感心の声が皆に伝搬していく。

 そのさまは神懸かり的な現象にも思えた。


 俺と本契約を果たしているヘルメのことを、闇神アーディン様も、普通ではない。とハッキリと語っていたからな……。

 アクセルマギナも俺に敬礼してから――。

 ヘルメにも敬礼して頷いた。


 フィナプルスもヘルメの言葉を聞いて翼を畳みつつ「さすが精霊様……」と懼れを顔色に出して呟いてから一呼吸後……。

 

 俺たちを見て、


「ヘルメ様の予想は的中するかもです。そして、幻想修業が可能ならば、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの世界へと、シュウヤ様が取り込まれてしまう可能性も……少なからずあるかと推測します」

「「「え!?」」」

「ふふ、わたしは魔界四九三書の一つを代表する存在ですからね」


 と胸元に手を当てながら語ってくれた。


 その語り途中で、俺の腰にぶら下がるフィナプルスの夜会と闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物を交互に見ていた。

 闇雷精霊グィヴァも頷いている。

 は、


「妾は、魂王の額縁と似たアイテムだと思う!」

「地大竜ラアンを使役していた魔王ザウバですから、その魔王ザウバが、地大竜ラアンの魂や生命力などを利用して保存していたアイテムが、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物かも知れません」

「貂の予想の可能性もありそうだな。最初の頃に予想したように、闇烙あんかくの名がどういう意味か、闇炎の意味ならたいしたことはないと思うが……」

「素直に、ゼメタスとアドモスが言うようにドラゴンと龍が飛び出てわたしたちを襲ってくる場合も考えられます」


 がそう発言。

 頷いた。


「ふむ」

「魔雷教の面々のため、わたしたちは守りのことを考えて備えましょう」

「はい」

「そうですね」


 テンは頷き合う。

 

「我らは我らにできることを!」


 アドモスは骨盾を掲げて宣言。


「うむ!」


 ゼメタスも続いた。

 そのゼメタスとアドモスは武器を構える。

 笑みを見せるアドゥムブラリが、


「俺たちも戦いとなれば動こう。ここは【闇神寺院シャロアルの蓋】の敷地で【闇雷の森】だ。レンブリアといい、魔王ザウバも【ベルトアン荒涼地帯】と【レムラー峡谷】の勢力のことを言っていた」

「……ナーガ・ロベが率いるベルトアンの遊撃部隊と魔王ベルトアン。更に、レムラーから流れてくるモンスターですね」


 フィナプルスがそう言いながら高度を上げた。

 それを見上げているアドゥムブラリは俺をチラッと見てから、


「あぁ、まだ何かが起きるかも知れないからな」


 と発言。

 俺もだが、皆頷いた。


 テンは細い腕を上げて、神剣の切っ先を合わせた。

 ――剣舞の一部を披露。

 沙神那由他妙技の<御剣導技>の流れかな。

 そのまま華麗に浮遊しながら魔雷教の方々の真上に移動しホバリング。


 下から紐のパンティがダイナミックに見えていると思うが、いいのだろうか。

 ま、指摘はしない。

 ヘルメとグィヴァとビュシエとバーソロンは微動だにしていない。


 フィナプルスは少し高度を下げると、テンの横に並びつつ、【魔雷教団】の方々に、


「皆さん、もう少し下がりましょう」


 アクセルマギナも、斜め上空にいるテンと視線を合わせてから、


「マスターの行動は非常に興味深いと思いますが、モンスターが出現したら、マスターの邪魔になりますからね。皆さんはわたしたちの背後に移動してください」


 と指示を出していた。


「「「はい!」」」

「御使い様、がんばってください~」


 美人のトマトさんから声援を受けて嬉しくなった。

 片手をあげてトマトさんに応える。


 すると、素早い動きでバーソロンとビュシエが視界に入ってきてトマトさんの視線を遮る。

 トマトさんは頭部をズラしながら手を振ってくれた。

 バーソロンとビュシエは、


「陛下、がんばってください!」

「シュウヤ様、わたしの血をお吸いになって……」


 と発言。

 バーソロンとビュシエの嫉妬の行動が可愛い――。

 <血液加速ブラッディアクセル>を発動して、素早くバーソロンを抱きしめた。


「――え! ぁぅ」 


 そのまま耳元で、


「――がんばるさ、光魔騎士のバーソロンも頼む。<筆頭従者長選ばれし眷属>もアドゥムブラリの後になるが、その後も期待しといてくれ」


 バーソロンは耳をピクピクとさせて、コクコクと頷く。

 俺の背中に両手を回そうとしたが、途中で止める。

 俺の肩にキスをするように頭部を預けてきた。

 バーソロンの唇が、俺の首筋に触れる。


「ぁ……へ、陛下の首に、き、きっす……」

 

 微かに声を発しながら体を寄せてきたバーソロンは、


「……は、はぃぃ、き、期待……あん……」


 と喋りつつも、背をビクッと揺らして後方に倒れそうになった。なんとか体勢を立て直したバーソロンだったが、視線が合うと直ぐにしどろもどろとなって、俺の唇を見てからまた「ぁぅ」と体がビクッとしていた。


「大丈夫か?」

「は、はい」


 が、ふるふると頭部が震えているバーソロン。

 髪留めで留められている髪の先が揺れていた。

 顔の炎の模様をこれでもかと煌めかせると頬を朱に染める。

 そのバーソロンは少しフラついていたから、また歩み寄って、細い背を片手で支えながら抱きしめてあげた。

 

「ぁん……」


 とまたイってしまったのか、背中を伸ばしたまま弛緩しかんしてしまう。

 足先に背中も細いから、少し心配になるが……。

 

 ま、元気になってもらおうと、そのままバーソロンを軍服越しに何回もギュッと抱きしめながら同時に魔力を送ってあげた。


 魔力を得る度にバーソロンは細い眉毛を眉間に寄せて、口を噛むような表情を浮かべながら俺に体を押し付けるように預けてきた。

 豊かな乳房の形が分かるほどの密着と圧力で嬉しかった。

 そのバーソロンはビクビクと痙攣しつつ、股間の辺りに自らの腰を押し付けてくる。

 

 嬉しいが、興奮してしまうから自重するように少し体を離した。

 そのバーソロンは少し呆けた表情を浮かべて、


「……陛下」


 と熱い吐息を吐きながら俺を見つめてきた。

 その朱色と黒色の瞳は潤んでいる。

 欲情の心が見え隠れしていた。俺も熱くなるが、ここではさすがに押っ始めることはしない。


 少し落ち着くのを待って、軍服が似合うバーソロンの両肩を持ちながら、


「……落ち着いたかな。皆の前ですまんかった」


 謝ると、バーソロンは高い鼻を横に向けるように視線を一度逸らす。

 と直ぐに俺を悩ましい視線で見てから、


「――とんでもない。気を遣って頂いて、とても嬉しく思います!」


 元気な声でそう言ってくれた。

 頷いてから、素早く横に移動し、ビュシエとの間合いを零とした。

 そのままビュシエの体を抱きしめ、耳元で、


「――ビュシエの血は、あとで吸わせてもらう」

「あぅ、はぃ……」


 喜んだビュシエは体を一瞬震わせながら、両手の力を強めて、ぎこちないが、俺を抱きしめてきた。

 初めて男を抱きしめたような印象を受ける。


 興奮しているのか、長い金色の髪が自然と持ち上がっていた。

 すると、ビュシエは急激に力が抜けたように、内股の姿勢のままお尻を地面に付けてしまった。支えようとしたが間に合わず。


 どうした? と見たら、ビュシエは顔を真っ赤にしている。


 急ぎ、そのビュシエに片手を伸ばし、


「俺のせいだったらごめん」

「あ……ううん、私のせいです。ありがとうございます――」


 とビュシエは俺の手を握ったから、その手を引っ張る。

 立ち上がってもらった。


「おう」


 笑顔を見せるビュシエと離れた。

 リューリュとツィクハルは口を両手で隠すような仕種を取って俺たちを見ていたが、文句はさすがに言えないようだ。


 アドゥムブラリは両手を拡げてやれやれだぜ。

 といった雰囲気を醸し出す。


 冗談で、そんなアドゥムブラリに両手の指を動かしつつ『来いや』といったポーズをしたら、アドゥムブラリは吹き出すように笑いながら偽魔皇の擬三日月を振るい、拒否反応を示す。


 まっとうな反応で安心した。

 このボケは、カルードには繰り出せない。


 笑いつつ、『済まん冗談だ』と言う気持ちを込めて片手を上げた。アドゥムブラリは、また両手を拡げて『やれやれだぜ』的な仕種を取る。


 【魔雷教団】の方々は、その間に後退していた。


 近くにいる皆に向け、


「では、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物に魔力を通す。皆、ドラゴンと龍の出現に備えてくれ」

「了解した」

「分かりました」

「お任せを」

「はい」

「にゃお~」


 グィヴァはヘルメに手を握られるがまま俺の少し後方に移動してきた。

 俺を凝視し続けていたビュシエとバーソロンは、ハッとした表情を浮かべて、俺に笑みを見せてからお辞儀をし、回り込むように相対しながら後退。


 アドゥムブラリは真上で偽魔皇の擬三日月を宙に浮かばせつつ<魔弓魔霊・レポンヌクス>を握っていた。

 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスも気合いを入れて骨剣を見せて、


「閣下ァ、守りはお任せを!」

「承知!」

「「「「はい!」」」」

「わたしも少し後退しておきます」


 パパスとリューリュとツィクハルの黒狼隊も離れた。

 アクセルマギナもスリングスイベルと似た金具と魔線を帯びたチェーンと繋がるP-90と似た魔銃を胸元に回し、その魔銃を両手で持ちながら相対しつつ後退を行う。


 スタンディングポジションのアクセルマギナ。

 上腕三頭筋から橙色の魔力が出ている。

 その魔力は光線のように腕の表面に沿っていた。


 美形だから漆黒のパワードスーツが似合う。

 特殊部隊の隊員に見えてかなり格好いい。


 その背後にいる魔雷教の一部の方は、アクセルマギナの装備を凝視していた。

 

 もう見慣れたと思ったが、魔銃の文化が発展しているからアクセルマギナの魔銃にも興味を抱いたのか。

 否、珍しい魔銃だけではなく……。

 アクセルマギナの腰とお尻と太股の外側広筋は、人の指のような形の金属部位が悩ましく付いているから、一部の野郎たちには刺激が強すぎるか……。

 

 金属部の間に見えている肌と、その太股とお尻の膨らみが魅力的過ぎる。


 それ以外の方は、俺と闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物を交互に見ていた。

 

 アクセルマギナとヘルメとグィヴァにビュシエとバーソロンとアイコンタクト。

 バーソロンは軍隊式の敬礼をしてくれた。

 やや遅れて黒狼隊も同じ敬礼を寄越す。

 俺もラ・ケラーダの挨拶を返した。


 頷いてから、<血道第五・開門>――。

 <血霊兵装隊杖>を体に展開させる。


 「ングゥゥィィ」


 と肩の竜頭装甲ハルホンクも呼応した。


 胸甲と肩の部分がない鈴懸すずかけが渋い光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装となった。

 頭上には血の錫杖が浮かぶ。


 気合いを入れるように<闘気玄装>と<龍神・魔力纏>を連続発動――。

 そして、<霊魔・開目>を意識、発動してから、


「行くぞ――」


 闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物に<血魔力>を込めた。

 巻物の表面に闇炎が彩る魔法陣が出現。


 俺の<血魔力>を防ごうとしてきた。

 闇炎の魔法陣は鍵のようなマークとなっている。

 が、<血魔力>に触れた闇炎の魔法陣は蒸発音を立てて爆発しながら消えた。

 

 続けて闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の表面に静脈と毛細血管のようなモノが浮き彫り状に出現した。


 更に、銀色のルシヴァルの紋章樹の幻影が、その闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の真上に浮かんだ。


 太陽の輝きを放つ万朶ばんだと銀色の枝と葉に花のコントラストが美しい。

 その陽を意味する木洩れ日が美しい幹と枝条には――。


 <筆頭従者長選ばれし眷属>と<従者長>と光魔騎士を意味する系統樹の銀色に輝く花の印があり、血を帯びた万朶からも銀色の葉と銀色の花弁が落ちていく。

 

 根は枝条と対照的に暗い陰。

 が、時折、月虹の輝きが美しいコントラストを生んでいた。

 

 そのルシヴァルの紋章樹の幻影と静脈と毛細血管のような浮き彫りは、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の中へと浸透するように消えていく。

 

 同時に、その闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻かれていた長い紙が斜め上へ伸びて、ゆらゆらと風を孕んだように波を打った。


「ンンン」


 俺の足下にいた黒猫ロロが喉声を鳴らしながら、右前足をその状態で揺れている闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうへと伸ばしていた。『かみをたたいてあそびたいにゃ~』と考えているんだろう。


 黒猫ロロも興奮している闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうが妖怪の一反木綿にも見える。


「ロロ、じゃれるのは禁止な」

「にゃ」

 

 返事をした黒猫ロロさんは俺を見る。

 

 黒い瞳はまん丸い。

 瞳は散大中。

 完全に『獲物を取り逃がさにゃい』という獣の習性だ。

 ネコ科特有のタペータムは面白い。

 

 猫は体の部位で気持ちを表すことが多い。


 瞼をゆっくりと閉じてくれた。

 瞼を閉じて開く行為は、親愛の証し。

 

 毎回だが、嬉しくなる。

 その黒猫ロロは瞳孔が少し細まった。

 落ち着きを取り戻してくれたんだろう。


 撫でたくなったが自重した。

 そんな可愛い黒猫ロロばかり見ては入られない――。


 長い紙の表面には古い寺と千山万水に絡むドラゴンとアジア的な龍の二体と仙女が水墨の東洋画風で描かれてあった。


 烏鷺うろのドラゴンに龍はかなり渋い。


 すると、墨の一部が揺らぎながら墨汁の粒となって長い紙の真上に点々と浮かび始め、それが霧に変化しつつ、その霧が闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの紙の周囲に漂い始めた。


 更に水墨画がこれみよがしに動き始める。

 

 最終的に……水辺の稜線と葦と松と岩場に止まる水鳥などの平仮名と真名の漢字が混じった絵画と方陣となった。


 その魔印と文字が連なって出ると俺の両手と繋がる。

 バラバラに記された葦手書きと異体文字に象形文字と絵画と方陣の組み合わせか?


 その文字と絵画と方陣に両手を合わせてみると、文字と絵画と方陣が動く。


 俺の両手とリンクしているのか――。

 

 一種の方陣の謎々か。

 バラバラだった絵画と方陣と文字を組み合わせていく。

 葦手と葦手を合わせ、絵画と方陣を合わせて文字列を作る。


 これは面白い――。


「ンン」


 足下で俺がパズルを解くのを見守ってくれている黒猫ロロの声が可愛い。


 これはジグソーパズルと立体パズルを合わせたようなモノかな。

 絵画と方陣と文字が変化する度――。

 淡い光と悉曇文字のような墨色の魔力が発生し、周囲に展開された。


 それらの絵画と方陣と文字の形を、意味を合わせるように合わせて、一つの意味が完成した、その途端――。


 和風世界の闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうが色付いていった。


 おぉ――これが正解か。


 一つのパズルを解いて、新たな知見を得られた気分となった。

 

 これはこれで幻想修業なんだろうか――。

 ――黄金比の螺旋模様のパズルもある。

 

 またまた様々な葦手文字と絵画と方陣を合わせていく。

 

 ――非常に面白い。


 連続で正解していく。

 

 すると、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの長い紙の真上に漆黒の炎の鍵穴の紋様がまたまた浮いては、それが一気に分解された。


 鍵が開いたような音が連続的に響く。


「閣下は魔法の鍵の魔法陣を解除なされた!?」

「「おぉ」」

「にゃご~」


 そこから、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の長い紙に沿って、寺の外観と色取り取りの千山万水が顕わとなると、漆黒色のドラゴンと龍が立体的に浮かび上がった。


「「「「おぉぉ」」」」

「にゃおお~」


 俺も含めた皆が立体的な東洋画風の世界とドラゴンと龍を見て歓声をあげた。

 やや遅れて、仙女も、霧の絵を小さい口で吸い込みつつ、立体化――。


 仙女だけ実際の人のような大きさになっている。


 立体的な漆黒の鱗を持つ黒竜と黒龍は、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の紙の幅よりも、少し大きい程度の大きさ。


 二匹は模型にも見えて、そこまで巨大ではない。


「わぁ~」

「素敵~」

「にゃ~」

「竜!」

「龍も!」

「はい~」

「これまた、皆様方が予想していたが、この目で見ると……凄いな」

「おぉ」

「「不思議だ!」」

「立体的な絵とは、まさに……」

「やはり、魂王の額縁と似たようなアイテムか?」


 皆の言葉に頷きながら、


「そうだろうな」


 と発言していると、

 ピコーン※<闇烙・竜龍種々秘叢>※恒久スキル獲得※


 おお、<闇烙・竜龍種々秘叢>の恒久スキルをゲット!

 竜と龍の存在を闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物と目の前から感じた。


 更に、この黒髪の美人な仙女と契約を結んだと理解できた。


 すると、漆黒色のドラゴンと和風の漆黒色の黒龍は仙女を守るように動いた。


 仙女はエメラルド色の瞳で、俺をジッと見たままだ。

 漆黒の鱗が輝くドラゴンと龍も俺を見てくる。


 ドラゴンと言えばバルミントだが……。

 そのバルミントの姿とはそれなりに異なる。漆黒色のドラゴンは二枚翼で、尻尾が長い。

 和風の黒龍は、翼がない。


 その黒龍は光魔武龍イゾルデと龍としての造形だけは似ていた。

 しかし、角や毛などの細かな部位と模様は異なっている。

 使役したと分かるが、どんな龍かは分からない。


 光魔武龍イゾルデの言葉を思い出す。


『……水神アクレシス様や白蛇竜大神イン様に対してなら重に理解できるが、我は上級になり損ないの中級程度の武王龍神。イゾルデと呼び捨てで呼んでくれ。我はそのほうが嬉しいのだ』


 と言っていたから、神界セウロス側の勢力なら上級ではないだろうな。

 中級でもないかも知れない。魔界セブドラ側にも魔龍は存在するから、魔界セブドラなら上級に分類されるかも知れないが……。


 そのドラゴンと龍と仙女は会釈をするように頭部を下げた。

 俺も会釈。


 すると――闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの長い紙の先端が上昇しつつ揺らぐ。

 そのドラゴンと龍と仙女が、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの長い紙の水墨画から離れるように降下して俺に近付いてきた。


 黒髪の仙女とドラゴンと龍の体の一部から闇色の霧が発生している。

 その霧から解れた糸のような魔線が真上の闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの長い紙に浮かんでいる千山万水の世界と繋がっていた。


 スタイルのいい仙女は、テンと少しだけ衣装が似ている。


 長い髪は背中にまで続いていた。

 豊かな胸元が目立つノースリーブ衣装に半透明な羽衣を羽織る。

 片腕と片方の太股が大胆に露出している。

 

 和が基調のドレススタイルだが、あまり見たことのない衣装だ。

 皮膚の所々に龍やドラゴンが持つような鱗があった。


 全身から、覇気のようなモノをビシバシと感じた。


 テンに視線を向ける。

 彼女たちは頭部を振るっていた。


 テンは黒髪の仙女らしき存在のことは『知らない』ということだろう。


 すると、黒髪の美人な仙女は、片膝で床を突く。

 え?


「初めまして、主様――私の名はナギサ・ホツラマ。闇烙の渾名も過去にはありましたが、血龍魔仙族の出身です。そして、現在は、とある理由で、この<闇烙・竜龍種々秘叢>の管理をしている者です」


 俺を主様と呼んだことよりも、ホツラマに血龍魔仙族出身とは驚きだ。

 

 スキルを獲得した刹那の間に、ある程度は理解したが……。

 

 地獄龍山の魔人一族なのか。

 過去、独鈷コユリと、トモンは、


『見渡す限りの荒野、モンスターばかりだったねぇ。暫くモンスターを倒しつつ旅をしたさ。そのまま山がある森林地帯に入った。そこで血龍魔仙族と戦ったのさ。私は戦いに自信があったが……さすがに多勢に無勢。森林地帯を逆に利用して逃げまくった。そうして、荒野に戻ることになり、鬼魔人傷場から玄智の森に再び戻ってきたというわけさ』


『あぁ、魔大竜で有名な地獄火山デス・ロウや無限地獄の山々ではない。地獄龍山はライランの血沼と近い場所にあると聞いた』


 ステータスで、<血龍仙閃>を調べた時にも……。


 ※血龍仙閃※

 ※血龍仙流系統:極位薙ぎ払い系※

 ※龍豪流技術系統:上位薙ぎ払い系※

 ※高能力の下地に、魔界、神界、獄界の多次元世界の神々と通じる戦闘職業の<霊槍・水仙白炎獄師>と豪槍流と龍豪流の槍技術が必須※

 ※魔界セブドラに向かうことなく、地獄龍山に住まう〝災禍を超えし血龍魔仙族〟と言われる血龍魔仙族ホツラマの極位薙ぎ払い系スキルを秘密裏に獲得した者はいない※


 とあったからな。

 過去光魔武龍イゾルデと戦ったことがある一族が、血龍魔仙族ホツラマ。


「……ナギサさん、初めまして。俺の名はシュウヤ、足下にいるのは神獣のロロディーヌ。愛称はロロだ。相棒でもある。その相棒は普段、今のように黒猫だが、神獣として様々な獣系の姿に変身が可能なんだ」

「はい。主様、初見ですが、私は呼び捨てで構いません。シュウヤ様、ロロ様もよろしくです」

「にゃお~」

「ふふ」


 相棒の肉球を見せる挨拶にナギサも瞳にハートマークを作っていた。

 黒猫ロロさんの可愛さは万国共通だな。


「ナギサか。俺も様付けは要らないが、ま、好きなように呼んでくれ」

「はい、シュウヤ様か主様と呼びます!」


 すると、


「ギュロオォォォ」

「ギュリアァァァ」


 闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうに本体がいるだろう漆黒の竜と龍が鳴きながら頭部を下げてくる。


「にゃお~」


 相棒も挨拶していた。

 ナギサは、その龍と竜の二体を触るように片腕を上げて、


「シュウヤ様、この闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスは、『大主様、これからもよろしくお願いします』と挨拶をしたのです」


 大主? 言い方が、イターシャみたいだな。

 テンを見るが、テンの体には白い鼬のイターシャは巻き付いていない。

 視線を黒髪美人のナギサに戻し、


「……大主か、分かった。闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトス、よろしく頼む。この闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の中に棲んでいるんだな。で、俺は、この闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の中に、他にもドラゴンや龍などのモンスターを棲まわせることが可能となったわけか」

「はい、そうです。五匹まで限定ですが。そして、主様は闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうを通して、闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスを使役したことになります」

「それは凄く嬉しいし光栄だ。ベントラーとイトスの同時使役には、自分でも驚いている状況なんだが……だからまだ不慣れなんだ。こんな俺だが、ベントラーとイトスとナギサのためにがんばろうと思う。餌とかは何がいいんだろう……」

「ギュロ~」

「ギュリ~」

 

 二匹は変わった鳴き声だが、可愛さがある。

 ベントラーの双眸は黄緑色が多い。

 イトスの双眸は銀色と焦げ茶色の色違い。

 

 ナギサは、


「ふふ、餌は主様の魔力があれば大概は平気です。が、ベントラーの好みは肉と魚。イトスも同じです。まぁ二匹とも、結構なんでも食べます」

「ンン、にゃお~」

「分かった。相棒と好みが合いそうでよかった」

「はい」

「他にも何かあったら教えてくれ。感覚である程度理解しているが、まだ追いついていない」

「ハッ、主様と闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物には繋がりがあります。そして、巻物の中に入ることもできますし、重量や魔力などの制約があまりないアイテムボックスの役割も果たせます。また、内部の魔素を外から把握することはできませんので、主様がここに隠れることもできます」

「「「おぉ」」」


 皆、歓声的に驚きの声を響かせる。


「龍や竜が棲まい、主の隠蔽も可能でアイテムボックスにもなるとは、かなり優秀だな」


 アドゥムブラリの言葉に頷いた。


「器様はナギサさんも使役した?」


 テンが聞いている。


「そうです。わたしも主様の眷属となりました。これが証拠です」


 ナギサは片腕を晒し、胸元を少し出す。

 乳房の上にルシヴァルの紋章樹の模様が刻まれていた。

 片腕のほうにもルシヴァルの紋章樹の模様がある。


「「おぉ」」

「ですから、主様のもうしつけは、なんでも致します……」


 と、俺を一瞬悩ましい視線で見てから、丁寧に頭を下げてくれた。

 俺も礼を返すように頭を下げた。


「主は、美人のナギサをこき使えて、龍とドラゴンを五匹も飼えるようになったということか!! まったく、けしからん」

「単眼球から大きく出世したアドゥよ、妾も同意じゃ!」

「お、おう」


 と、とアドゥムブラリは握手している。

 なんか笑える。「次から次へと美人を……」とはブツブツと文句を言っているが、内心では、新しい眷属の誕生を喜んでいると分かる。そのと目が合うと、舌を出してべーっとしてきたが、微笑んでからテンの近くに移動していた。


 皆とナギサを見て、


「アイテムボックスとしても使えるなら便利だ。闇速ベルトボックスはエヴァかヴィーネかユイへのお土産にしようかな」


 と発言。

 皆は笑顔。


 魔雷教の方々の一部とフィナプルスとアクセルマギナにテンは近付いてきて、ナギサに挨拶をしていく。


 ナギサは各自一人一人に向けて頭を下げていった。

 闇烙龍イトスと闇烙竜ベントラーも闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物から魔線が繋がったまま少し外に出る。


 今は、完全に外に出た召喚ではない状態だ。

 二匹に外に出ろと指示をして大きさを見たいところだが、ナギサとベントラーとイトスの皆への挨拶が先かな。


 魔雷教の方々は、神前に額突くように両手を地面に付けている。

 ナギサも丁寧な女性のようだから、少し時間がかかるかな。


 ◇◇◇◇


 数十分後、【闇神寺院シャロアルの蓋】の周囲の光が強まり始めた。

 結界が作用したのかな。


 すると、ナギサが、ビュシエとバーソロンに黒狼隊との挨拶と会話を終えて、俺をジッと見てきた。


 そのナギサに、


「ナギサは<闇烙・竜龍種々秘叢>の管理人だが、戦えるのかな」

「はい、ある程度は、棍術と龍竜装甲に龍竜髪の毛を駆使すれば戦えます」


 ナギサは、長柄の棍棒を右手に出した。

 装備も一瞬で鎧姿となった。

 胸元に龍と竜の模様が入ったお洒落な装甲が付いている。

 そして、長い髪の一部を鱗状の模様が目立つ刃物に変えていた。


「「「おぉ」」」

「結構な棍棒使い、槍使いでもあると分かる。しかし、どうして地大竜ラアンの中に?」

「魔王ザウバの仕業です。血龍魔仙族の家族たちと旅をしていましたが、突如、無数のドラゴンと龍に襲撃を受けて負けてしまった。私も地大竜ラアンに飲み込まれそうになったところで、お爺様が持っていたこの、闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの中に逃げられたのです……」

「そうだったか……家族を……」

「……はい」

「「……」」


 皆沈黙。


「そして、地大竜ラアンの中に長く囚われていた。あのまま地大竜ラアンの中で、魔王ザウバと地大竜ラアンの能力や魔力に侵食を受け続けていたら……私たちはどうなっていたか……ですから、私たちは主様に救われたのです。更に、シュウヤ様が、魔王ザウバと地大竜ラアンを倒したのでしょうか」

「おう、俺が魔王ザウバと地大竜ラアンを倒し、地亀ドラゴンを皆で倒した」

「……うぅ、仇を……家族の仇を取ってくれたのですね。ありがとうございます――」


 と、頭を下げるように片膝で地面を突くナギサ。

 闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスも頭を垂れてきた。


「気持ちは分かるが、頭を上げてくれ。では、そのベントラーとイトスを闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物の外に出してみたい。何か制約があれば教えてくれ」

「思念で強く念じるか命じてくだされば、闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスは外に出ます。格納する時も同じ。召喚時は常に闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物を外に出しておくことが条件です。後は破壊や侵食を受けないことぐらいでしょうか。破壊されたことはないのでおそらくですが」

「分かった、では、闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトス、出ろ!」


 闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうの巻物から――。


「ギュロオォォォ」

「ギュリアァァァ」


 と鳴き声を発した大きな闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスが飛び出ていく。

 闇烙竜ベントラーは、二本足で立てるドラゴンで、魔竜王バルドークタイプと分かる。

 闇烙龍イトスは、イゾルデを思い出すような、胴体は巨大な蛇のような印象で、大きい頭にある角は複数ある。小さい腕には宝玉のようなアイテムを持っていた。


「「「「うぉぉぉぉぉ」」」」

「にゃごおお~」


 相棒が闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスに対抗するように大きくなって跳ぶ。

 闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスを追い掛けていく。


 と、闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスは巨大化した神獣ロロディーヌから逃げるように回転しながら俺たちの真上に飛翔してきてゆっくりと降下してくる。


 が、皆がいるから着地はせず、浮遊したままだ。

 二匹は大きい頭部だけを俺に向けて下げつつ、


「ギュロォォ」

「ギュリァァ」


 と先ほどよりは弱い声で何か言ってきたが、理解はできない。

 竜言語魔法と龍言語魔法をマスターしたら理解できるんだろうか。

 ナギサが、


「ベントラーとイトスは、大主様、命令をと言っています」

「そっか。んじゃ、皆と俺を乗せて【バーヴァイ城】まで送ってもらおうかな。道順が分からないなら、相棒が先導してくれる」

「ギュロォォ――」

「ギュリァァ――」


 二匹の体から無数の毛が集まってできた縄が迸った。


「「きゃぁ」」

「「「おぉ」」」


 皆の体に絡まると、一瞬で頭部と背中に皆が乗った。


「ンン――」


 神獣ロロディーヌは少し先を飛翔していた。

 俺が乗ったのは闇烙竜ベントラーの巨大な頭部か。

 

 角が前に複数並んでハンドルとなっている。

 そして、椅子も用意されていた。その椅子に座った。

 右にナギサとヘルメとグィヴァがいる。

 左にバーソロンとビュシエとアドゥムブラリにテン

 アクセルマギナとフィナプルスは前にいる。

 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは闇烙龍イトスのほうか。


「ギュロォォ――」

「ギュリァァ――」


 闇烙竜ベントラーと闇烙龍イトスは宙空を直進――。

 ロロディーヌの背中を追いながら【バーヴァイ城】に向かう。

 

 一先ず、サシィに向け、


『サシィ、闇神アーディン様と色々とあったが、【闇雷の森】での闇神アーディン様繋がりの用事を済ませた。今から皆を連れてバーヴァイ城に戻る』

『分かった。後で詳しく聞かせてほしい』

『おう』


 となりで血文字を見ているグィヴァに、


「バーヴァイ城に付いたら、グィヴァとのスキルも試すとしよう。更に、アドゥムブラリの眷属化もそこで行う」

「はい」

「了解した」

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