千七十三話 風獣仙千面筆流の魔力操作

「――おぉ~閣下の足下に雷炎の閃光が走って見えましたぞ!」

「――閣下が学ばれた雷炎槍流は速い!」

 

 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが走り寄ってくる。

 相棒たちも寄ってきた。

 <神剣・三叉法具サラテン>のテンとアドゥムブラリにフィナプルスも一緒だ。


「にゃお~」

「はい~」

「マスターの足下と腰回りの圧縮された空気層の温度が低下し、水蒸気が凝固しながら雷炎を発生させていました! マスターの加速力は金属を高速で衝突させた爆轟ばくごうを活かしたような加速力です。また、電磁力を波動として駆動力にも活かしているようにも見えました!!」


 アクセルマギナらしい言葉だ。魔科学の推進システムを知っているからな。

 同時に仙大筆と仙魔硯箱に墨色の魔力は、やや遅れて俺を追尾してきた。


 ――これはこれで便利だ。


 墨の魔力をマントのように展開させながら雷炎槍エフィルマゾルを掲げた――。

 上下鎌十文字槍から細かな雷炎が迸っている。


 左右の鎌刃の雷と炎は多い、中央の矛はやや稲妻が強い印象を覚える。


 ずっと眺めていられるぐらい渋い穂先だったが、柄を右手の掌の中で回転させた――。

 雷炎槍エフィルマゾルは手の甲の上から前腕と肘窩に移動した。そこで腕を曲げて柄を挟む。雷炎槍エフィルマゾルを一瞬止めてから、右腕を突き出すように二の腕の筋肉を柄に衝突させて、右手の掌に戻した雷炎槍エフィルマゾルの柄を掴む。


「素敵……」

「ふふ」

「はい……」


 そんな言葉を言ってくれたビュシエたちに笑みを送る。

 ――雷炎槍エフィルマゾルの使い心地はいい。

 正直長く使いたくなったが……まぁ、これはシュリ師匠の愛用武器だ。

 仕舞おう。肩の竜頭装甲ハルホンクを意識。

 雷炎槍エフィルマゾルの柄を肩の竜頭に当て瞬時にハルホンクに格納させた。

 

 そして、墨色の魔力と仙大筆と仙魔硯箱は俺の回りを漂い続けている。


 <風獣戯画>と<海獣戯画>の恒久スキルのお陰。

 <仙魔・風獣秘筆画>と<仙魔・海獣連想秘筆画>もか。

 仙大筆などを消すことを意識した途端――。

 目の前に『六壬式』のような細かな方陣が浮かぶ。

 その『六壬式』のような細かな方陣が俺の体と重なると同時に、仙大筆と仙魔硯箱に墨色の魔力が俺の体内に吸い込まれるように『六壬式』のような細かな方陣ごと消えた。

 

 肩の竜頭装甲ハルホンクが吸い込んだ訳ではないってのが……また凄い。


「まぁ、墨の魔力が消えました」

「驚きです」

「あの魔法陣はなんでしょうか」

「……主ノ、深ミガ、マシタ? ゾォイ」

「あぁ」


 ……なんか凄く感動を覚える。

 

 新たな神経の開拓か……。

 初期の頃の<脳脊魔速>を得た時や初めて<古代魔法>の魔法書を読んだ時の感覚に近い。


 同時に<霊魔・開目>の半透明な<魔闘術>系統と<煌魔葉舞>の恒久スキルが<風獣戯画>と<海獣戯画>に影響を及ぼしていると分かる。


 <風獣戯画>と<海獣戯画>への影響なら<霊魔・開目>のほうが強いが。


 そして、<風獣戯画>と<海獣戯画>の基本的なことが理解できたのも嬉しい。

 <風獣・仙大筆穿>は仙大筆用の<刺突>系統スキル。

 <海獣・仙大筆穿>もそうだ。

 <海獣戯画・福神龍鉤蛇ベキカル>と<風獣戯画・福神蹴架トウジョウ>

と<海獣戯画・福神歳刑ディン>は召喚系か。


 更に<仙魔・龍水移>は転移系と理解している。

 

「器に付いていく墨の魔力は面白かったぞ。仙大筆は槍と変わらないからある程度分かってはいたが、墨の魔力も槍武術に応用が可能とは! これが風獣仙千面筆流なのだな」

「墨の魔力は液体のようで、操作が可能なのですよね。無名無礼の魔槍のナナシと関係があるのでしょうか」

「では、墨の魔力は《水流操作ウォーターコントロール》と同じなのですか?」


 と聞いてくる。


「おう、これが風獣仙千面筆流の魔力操作だ。意識すると――」


 目の前に『六壬式』のような細かな方陣が出現――。

 自動的に、そこから仙大筆と仙魔硯箱に墨色の魔力が出る。

 周囲に展開された墨色の魔力はテンが言ったように《水流操作ウォーターコントロール》的に操作が可能――。


「――わっ」

「水のように扱える墨色の魔力は便利そうです」

「おう」


 テンの回りに墨色の魔力を展開させた。

 仙大筆と仙魔硯箱を浮かばせたまま、


「《水流操作ウォーターコントロール》的だな。このように操作が可能だ。この墨色の魔力は、結構な距離まで展開できると分かる」

「仙大筆も自動的に器様と呼応していますし、この墨色の魔力を扱うには、<導魔術>系統の能力も必要そうですね」

「そうだな」


 アキレス師匠から魔技三種を学んでおいて本当に良かった。

 

「魔法陣のような紋様は器の体から出ているのか」


 頷いて、


「おう――」


 仙大筆と仙魔硯箱と墨色の魔力を仕舞うことを意識すると、『六壬式』のような細かな方陣が自然と出現し、先ほどと同じように仙大筆と仙魔硯箱に墨色の魔力は俺の体に取り込まれるように方陣ごと消えた。


「「おぉ」」

「うむ! ダンの贈り物は友の器を強くしたのだな」

「あぁ、そうだ」


 は、自分のことのようにとても嬉しそうな表情を浮かべる。

 俺も嬉しくなった。


「次はグィヴァと連携するスキルも試すかな。が、先に闇烙あんかく・竜龍種々秘叢ひそうを出そう――」

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