千六十九話 シュリ師匠の演武と【闇神寺院シャロアルの蓋】に帰還
グィヴァは自分の能力を確認するように両腕を稲妻ブレードのような腕剣に変化させていた。そういえば、俺が獲得したスキルに<闇雷想腕>があった。
霊獣四神の青龍は神界系だが、その霊獣四神系の<青龍ノ心得>と<青龍蒼雷腕>に<青龍蒼雷拳・破>とも相性がいいはずだ。
しかし、先ほどの生々しいシュリ師匠と魔人武王ガンジスの戦いは……。
壮絶すぎる。シュリ師匠の師匠は実の母親で……。
その母親リィンカさんが魔人武王ガンジスに殺されていたとは……。
それでいて、梁山泊のような主旨か不明だが、魔城ルグファントに集結していた師匠たちも、その魔人武王ガンジスの軍団、否、弟子たちに敗れ……体が奪われてしまった。
大事な精神、意識、魂の根本は魔軍夜行ノ槍業に移ったか封じられたってことだろう。更に魔界八槍卿たちは超絶に優秀だったから体と装備品が利用され続けた?
何かしらのスキルによって八槍卿の体や装備品を利用すれば、八槍卿が長い人生の間に獲得してきたスキルを体現可能となるように仕組まれたってことかな。
だからこそ、今こうして体が貴重品として残っていたと推測。
しかし、当時はどんなことがあったんだろう。
この魔軍夜行ノ槍業をくれた戦神教団のラビウスさんは、
『イーゾン山脈の古の神々たちが眠る【八峰大墳墓】の中にあったと聞く物。出どころは確かなモノではない。わしがどうしてこれを手に入れたのか? といった話は長くなるから省略するが』
と語っていた。
そして、魔界八怪卿と呼ばれていた師匠たちにはソルフェナトスがいたように軍団がいたはず。その魔城ルグファントにいたであろう軍団は黒魔族シャントルなどの神々や諸侯の軍団と戦っていたようだ。
その軍団も、戦いの最中か個別に魔人武王ガンジスや弟子たちと戦い敗れてしまったんだろうと予測。
魔城ルグファントの戦いを教えてと聞けば、教えてくれるかな。
ま、その魔城ルグファントは〝列強魔軍地図〟に記されている。
そこに行けばシュリ師匠のように他の師匠たちの過去の記憶を見て体感も可能かな。
……さて、シュリ師匠の頭部と両腕を出すか。
雷炎槍エフィルマゾルを久しぶりに握ってみたいだろうし。
と思った瞬間――。
周囲の明るさが変化。
外側の瞑界シャロアルの液体世界は暗いままだが……。
レンブリアさんの足下の床からネオン染みた光が走っていた。
そのレンブリアさんは両下腕で手印を組んでいる。
そして、目の前に黄緑色の魔法地図と半透明なハンドルを浮かばせていた。
ハンドルの中心には闇神アーディン様の印と解る魔印が刻まれていた。
メーカーの意味がありそうで面白い。
そのハンドルを両上腕が握っているから、闘柱大宝庫の移動を、そのハンドルで行っている?
船長のようなレンブリアさんか。
すると、俺の左手の掌にある魔印から
蛸の吸盤を備えた先端から桃色の魔力粒子が少し出ている。
船長レンブリアさんに興味を抱いたらしい。
その吸盤を見ていると、蛸の刺身を思い出した。
醤油と山葵を付けて蛸の刺身を食べたくなってきた……。
酢蛸も美味いんだよなぁ。
あぁ、イカン――【闇神寺院シャロアルの蓋】の液体世界だが……。
先ほどの会話からしても、この闘柱大宝庫は瞑界シャロアルの中を移動可能ということだな。
そして、【幻瞑暗黒回廊】の中を移動できるセンティアの部屋を想起した。
同時にディアと魔法学院ロンベルジュのことも……。
ディアと話をしないとな。
塔烈中立都市セナアプアの魔塔ゲルハットに留まり、シルバーフィタンアスとハウレッツとメトにアグアリッツの看板猫たちと仲良くなって暮らすのもいいとは思うが……。
お兄さんの事件も調べたいはずだからな。
が、問題は魔界セブドラと惑星セラの時間軸の差はどうなっているのかだ。
竜宮城に滞在した浦島太郎になるのはごめんだ。
戻ったら二百年の時間が過ぎていた、という展開は勘弁だからな。
もしそうなった場合、ディアに会うどころではなくなる。
まぁ、一週間か、二週間とかのズレなら許容範囲か。
回収した魔の扉をバーソロンが使おうとしていた時の様子から、惑星セラとの時間のズレはないように思えるが……。
ふと、時間は存在していない説を思い出す。
だからこそ、惑星セラにいる眷属たちに血文字を送れたらなぁ~。
更に吸血神ルグナド様の魔界側とセラ側の<
ビュシエやバーソロンから魔の扉と
ま、二人ともエッチ予定だから、その時に聞こう。
バーソロンも、アドゥムブラリも、<
そんなことを一瞬で思考していると、レンブリアさんは移動を終えたのか、此方を見た。
そのレンブリアさんと話す前に、
「取り戻したシュリ師匠の頭部と両腕を出して、使ってみる」
「はい、頭部と両腕、シュリ師匠は美人さんでした」
『あぁ』と頷きつつ<魔軍夜行ノ槍業>を意識。
続けて<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚。
瞬く間に、書物の魔軍夜行ノ槍業と大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が魔線で繋がった。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を見た闇雷精霊グィヴァは、
「まぁ! 大きな木材、石ですか? 土属性の召喚魔法も扱えるのですね」
と発言しつつ驚きのまま体の一部から放電を起こしていた。
おっぱいさんがプルルンと揺れている。
グレートなおっぱいだ。
非常に宜しい揺れである。南無と拝みたくなった。
と、俺の視線に気付いたグィヴァは頬を真っ赤にして、上半身に胸甲を発生させて黒い雷が表面の生地を細かく行き交うポンチョを羽織った。
ヘルメのように装備、防護服は自由に造れるようだな。
羞恥心があるグィヴァは可愛い。
そのグィヴァを見ながら、
「木材に見えるが多分違う。俺は土属性はない。これは魔軍夜行ノ槍業と関係が深い<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>だ」
「やぎょうのやりわざ・しょうかん・やたかく……」
頷いた。
「八槍卿曰く、この<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>には、他にも使い方があるようだ。そして、召喚系は他にもある。常闇の水精霊ヘルメも召喚みたいなもんだしな。アドモスとゼメタスはもろに召喚、最近は召喚と呼べないかもだが。そのアドモスとゼメタスは光魔沸夜叉将軍に進化して魔界のグルガンヌ地方の南東に小さいながらも領地を持つ。第三の腕にもなるイモリザ、ピュリン、ツアンも召喚ではないが、ま、召喚でもいいか。ミレイヴァルは閃光のミレイヴァルというアイテムから召喚が可能で、今はセナアプアの魔塔ゲルハットにいる。他にも魔界四九三書のフィナプルスの夜会から召喚できるフィナプルスもいる。【闇神寺院シャロアルの蓋】で待っているはずだ。そして
「凄い数の仲間たち!! あ、同じ精霊としては、ヘルメ様とリサナ様が気になります!」
「あぁ、ヘルメもリサナも、闇雷精霊グィヴァに会えばびっくりすると思う。そしてヘルメは凄く喜ぶと思う。リサナはセナアプアだから当面は会えないと思うが」
「はい」
「そして、今は魔軍夜行ノ槍業を試す」
グィヴァは頷いた。
大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を凝視。
その大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を意識して<血魔力>を込めた。
その途端、大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と魔軍夜行ノ槍業の魔線が稲妻の如く拡大し、環状の魔力の間からシュリ師匠の頭部と両腕が出現した。
頭部と両腕は魔線で繋がって半透明な体が生成されていた。
先ほど見たシュリ師匠の過去でも着ていた戦闘用の装束だと分かる。
そのシュリ師匠の両腕を意識しつつ雷炎槍エフィルマゾルを召喚――。
そのシュリ師匠の右手に雷炎槍エフィルマゾルが召喚された。
シュリ師匠は俺を見て微笑みながら、その雷炎槍エフィルマゾルを振るう。
「――ふふ、弟子、ありがと♪」
「はい」
グィヴァは、俺と、頭部と両腕に半透明な体を得ているシュリ師匠を見る。
シュリ師匠は己の両腕と雷炎槍エフィルマゾルを眺める。
やや遅れて半透明な体を見て、満足そうに頷いていた。
「これなら、わたしも戦いに参戦可能。弟子、使ってね」
「はい」
「ふふ、それにしても、ナイスすぎるわよ! お弟子ちゃん!」
「喜んでくれて、俺も凄く嬉しいです」
「もう! 可愛い反応! もうぐちゃぐちゃにしたい!」
え? シュリ師匠は素直な女の感情を出してきた。
それは俺もお願いしたい。
「ふふ、気にしなーい♪ さぁぁて! 闇神アーディンでさえ真似した雷炎槍流歩法の<雷炎縮地>などをお弟子ちゃんに手取り足取り教えながら、雷炎槍エフィルマゾルを試したいところだけど……まずは、お弟子ちゃんに、約束のキッス――」
と、シュリ師匠に唇を奪われた。
驚くほどの速さだった。
今のが闇神アーディン様も真似した雷炎槍流歩法か。
と、真面目に考えてはいられない……。
シュリ師匠の唇が愛しくなるほどに、俺の唇に唾ごと<血魔力>を吸われていく。
『――ふふ、思念会話も使えるとキスしたまま会話が可能♪ アンッ』
シュリ師匠の唇を吸いながら<血魔力>を強めたら、シュリ師匠はキスしたまま感じてくれた。半透明なシュリ師匠の体が揺らぐ。
その半透明なシュリ師匠の体には感触はないが、シュリ師匠の頭部は本物だから、自然と股間の一物が膨らんでしまった。
シュリ師匠は微笑みながら離れる。
『――ふふ♪』
シュリ師匠は雷炎槍エフィルマゾルを振るいながら身を翻した。
雷炎の魔力を身に纏う。周囲の空間が熱を帯びたように仄かに陽炎が発生していく。これはこれで精霊っぽいが、魔族の範疇なんだよな……。
半透明な体も陽炎のようになっていた。
美しい頭部と両腕の皮膚の表面をプロミネンスのような雷炎の魔力が行き交う。雷炎槍エフィルマゾルも呼応しているように雷炎が煌めいた。
と、シュリ師匠は目にも留まらぬ速度で加速――。
半透明な体と頭部と両腕が消えて見える左足の踏み込みから――。
雷炎槍エフィルマゾルを持つ右腕で正拳突きを行うが如く<刺突>らしき突き技を放つ――見事。そして、雷炎槍エフィルマゾルがブレる。
と、再び<刺突>のような稲妻が前方に迸る突き技が前方に決まる。
――紫電の突きに見えた。
風槍流の<刺突>ではないが、洗練された突き技を見て、自然と拱手――。
シュリ師匠は続けざま、紫電一閃的な<豪閃>系の薙ぎ払いを繰り出した。
雷炎の軌跡が宙空を切り裂いたように残っていた。
雷炎の色合いはシュリ師匠の髪色と少し似ている。
シュリ師匠は<魔闘術の仙極>を使ったように頭部と両腕から雷炎の魔力が膨れ上がる。
と、左から右へ流れるように――。
細い体を横回転させた。
<豪閃>系の薙ぎ払いを繰り返して、加速、前進。
が、急に動きを止めた。
更に後退、ステップで魅せる。
そこから、斜め前に出る急加速から――。
今度は左斜め前に出る加速に切り替えた。
狂眼トグマの<縮地>を思い出す。
その電光石火のシュリ師匠は――。
雷炎槍エフィルマゾルの石突の振り上げから穂先の振り下ろしの縦機動の攻撃を繰り出しては――。
斜め右にゆらりと伸びている右腕を少し下げて曲げる。
バレリーナが指先にまで愛しさを表現するような細い手と腕の繊細な動きが非常に美しく、可憐さがあった。更に、細い腕の動きと連動している雷炎槍エフィルマゾルも美しい。
これがシュリ師匠の雷炎槍流の槍武術。
シュリ師匠は、右腕の肘窩に雷炎槍エフィルマゾルの柄を乗せる。
その肘窩を基点に回りに回る雷炎槍エフィルマゾル――。
その回る雷炎槍エフィルマゾルを手首から右手の掌に戻しながら前進していくシュリ師匠は疾い――続けて、斜め横に半身の姿勢で移動して身を捻る。
右斜め前方から攻撃を受けたと想定している?
シュリ師匠は、俺にウィンクしながら雷炎槍エフィルマゾルを背中側に回す。
その背中側で左手に雷炎槍エフィルマゾルを移しながら左腕を振るい上げる。
<豪閃>系統か。左下から右上に向かう逆<豪閃>のようなスキルを繰り出した。
シュリ師匠はコンマ数秒動きを止めた。
と、雷炎槍エフィルマゾルの柄を左手の掌で叩くように雷炎槍エフィルマゾルを手放した。雷炎槍エフィルマゾルの柄は撓ったように宙空を進む――。
と、雷炎槍エフィルマゾルが柱に当たり跳ね返る。
その帰ってきた雷炎槍エフィルマゾルの柄を、前方に伸ばした左足の甲で受けた。
そのまま身を反る。後転しながら雷炎槍エフィルマゾルを右手に移した刹那。
力強い両足の踏み込みから反転を行った。
右腕を突き出す<刺突>――シュリ師匠の一槍の極意を見たような気がする。
右腕ごと雷炎槍エフィルマゾルを突き出したまま動きを止めていた。
身震い――見事だと、自然と拍手。
闇雷精霊グィヴァも拍手していた。
シュリ師匠は低空を飛翔する機動で横回転しながら戻ってきた。
笑顔満面だ。
「素晴らしい槍武術です」
「うん! 雷炎槍流、弟子もわたしの過去を見た時に学んだでしょう?」
「はい。基礎の<刺突>系統の<雷炎穿>と<魔槍技>の<雷炎槍・瞬衝霊刃>を獲得しました」
「ふふ、うんうん、素晴らしいわ。記憶を体感して即座に学ぶんだから。下地があるから当然なんだけど、やはり、愛しいほど素敵な<天賦の魔才>のお陰かしら」
「はい。雷属性を事前に得たことも関係あるかもです」
シュリ師匠はグィヴァを見ながら、
「あぁ、グィヴァちゃんね。精霊か。というか、属性を新たに得るって相当にレアよ? アイテムを利用した属性増やしなら色々とあるけど……」
「ふふ、御使い様が、闇神アーディン様に認められた結果でしょう」
グィヴァがそう発言。
「闇神アーディン様の神像の右目は、本当の闇神アーディン様の右目の魔力が内包されていたようだからな。そのエキスを、闇精霊ドアルアルの塊、闇雷精霊グィヴァごと俺は得たことになる」
「ふふ、はい。あ、その関係で、御使い様の右目に……」
「そうだろうとは思っていた。
と、右の頬の素子を触ってカレウドスコープを起動。
無事に右目の視界は高精細化。
▽マークもあるし、スキャンもできる。
素早くカレウドスコープを終わらせた。
グィヴァは、
「……右目の中にいるときは、右目の横に備わるモノと、小さいモノたちと繋がりを感じましたが……」
「おう、大丈夫なはずだ」
「弟子、もう【闇神寺院シャロアルの蓋】から出られるようだし、わたしは一旦、魔軍夜行ノ槍業に戻るよ」
シュリ師匠が雷炎槍エフィルマゾルを投げてきたから受け取る。
「はい――」
一瞬で、シュリ師匠の半透明な体は消える。
頭部と両腕だけになると、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と魔軍夜行ノ槍業の間の太い魔線の中に吸収された。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消した。
魔軍夜行ノ槍業は振動しながら腰にぶら下がった。
俺たちの様子を見ていたレンブリアさんを見て、
「上から出たら、直ぐに【闇神寺院シャロアルの蓋】ですかね?」
「はい、共に行きます」
「分かりました、行きましょう。グィヴァも」
「はい」
三人で素早く闇雷の封泉シャロアルの液体世界に再突入。
直ぐに海の中に潜ったような感覚となった――。
前に泳ぐように自動的に俺たちは進む。
数秒後――。
「――ボッ、ジュバァ――」
と液体世界から抜け出た。
「「「おぉぉ!!」」」
「「「「閣下!」」」
「にゃおおおお~」
「「シュウヤ様!!」」
「ご帰還された!!!」
「「「おぉ~」」」
「なんか増えてる!!!!」
「「「わぁ~」」」
皆が見えた。無事に【闇雷の森】の【闇神寺院シャロアルの蓋】に戻れたか。
――ふう~と息を吸う。
ここは地下空間的だが、ま、魔界セブドラではあるし、その空気を得ながら、
「よう、皆――」
と言いつつ、泉の闇色の液体の上を滑るように闇雷の封泉シャロアルから出た。
「閣下――」
「ンンン――」
ヘルメが抱きついてくる。
相棒も俺に抱きつくように飛び掛かってくる。そのまま肩に乗ってきた。
そのヘルメが、「あ、え!!」と背後のグィヴァに気付いたようだ。
レンブリアさんもいるんだが、そのレンブリアさんは、まだ背後の闇雷の封泉シャロアルの上にいるようだ。そして、ゴロゴロ音が愛しい
首を嘗められて、耳朶を甘噛みされたが、まぁ許そう。
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