千七十話 レンブリアさんとグィヴァの紹介※近況ノートに資料追加


 ヘルメの背中を撫でてから皆に向けて、


「皆も気付いているように、知り合いと、新しい精霊を得た。名は闇雷精霊グィヴァ」

「――まぁ! あ、闇精霊ドアルアルを元に?」

「「「ウォォォン!」」」

「陛下が精霊様を生んだァァ」

「「おぉ」」

「おぉぉ、器の進化といい、新しい精霊も、塊と闇神アーディンの力が宿っていた片目もあったから得ると思っていたが、闇雷とは予想外だ!」

「ンン、にゃおぉ~」


 皆が驚き、ヘルメも驚きつつ離れた。

 も驚く。


 黒猫ロロは肩に乗ったまま前足を上げてグィヴァに挨拶している。


「「えぇ!?」」

「驚きです」

「そして美人だ!」


 テンは浮遊しながら泉の縁際に寄ってきた。


「「「「おぉ」」」」


 その背後には、【魔雷教】の方々もいる。


 オオツキさんと【魔雷教】の方々は手足が震えて土下座。

 平蜘蛛のように両手を床に突いて、お祈りを始めていた。

 イスラム教のサジダにも似ているか。


 アドゥムブラリも驚きながら、


「……闇精霊ドアルアルの復活かと思いきや、闇雷精霊と本契約を果たすとはな。グィヴァは、雷属性の上位精霊か? そして、厳つい四腕の魔族は、新しい仲間なのか?」


 アドゥムブラリがそう聞いてくる。

 振り返りつつ、


「上位精霊か不明だが、ま、精霊だ。そして、厳つい魔族の方は仲間だと思いたいが、知り合いだ。名はレンブリアさん。闇神アーディン様の宿将の一人」


 そう説明すると、「「「おぉ」」」とまた歓声が上がる。


 そのレンブリアさんはバスティアンさんの幻影と話をしていたが、此方に会釈し、闇雷の封泉シャロアルからも出る。


 ドカドカと地響きを起こすように近付いてきた。

 レンブリアさんは、仁王の阿形あぎょうと似ているから、体格的に光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスと合う。

 

 ゼメタスとアドモスは、沸に夜叉の名があるから、仏教系とも合うような予感があった。

 沸騰のフツ。水蒸気、水属性の水繋がりもある。

 似ている漢字に古い「佛」があるが、それにも人でないものや超越者的な意味があるようだからな。


 と、そんなことを考えていると、浮遊しているバスティアンさんの幻影も俺たちに寄ってきた。


 レンブリアさんは、


「――はい、それがしはレンブリアと申す。闇神アーディン様の二十四の宿将の一人でシャロアルの闘柱大宝庫の管理を任されていました。そのシャロアルの闘柱大宝庫では、御使い様に救われたのです」

「「「おぉ」」」

「宿将様……なんということか!」


 オオツキさんたちが吼えるように歓声を発してお祈りを始める。

 闇神アーディン様の眷属も信仰対象か。


 レンブリアさんは、


「皆様方、ありがとうございます。【闇神寺院シャロアルの蓋】に魔力を捧げてくれたと聞きました」


 と発言。

 【魔雷教】の方々は、


「「「ハハァァ!!」」」


 平伏している。

 レンブリアさんは、少し驚きつつバスティアンさんと目を合わせる。

 そして、俺に視線を向けてきた。


 とりあえず、皆に、


「レンブリアさんは、宝物庫を守っていたんだ。その名が闘柱大宝庫。その番人で管理人。その闘柱大宝庫に辿り着くまでの液体世界の旅は怖かった。で、液体世界を抜けて空気と重力を備えた異空間に辿り着いた。そこでは魔魁三王のブカシュナという名の魔人、魔族とレンブリアさんが戦っていた。そこに向かうと、そのブカシュナが俺に狙いを定め襲い掛かってきたんだ。それを返り討ちにした」

「「閣下の大勝利!」」

「おう」

「ブカシュナ……どこかで聞いたな」

「魔魁三王ブカシュナは知っています。魔魁三王は魔傭兵集団が集結した諸侯クラスの戦力を持つ大魔傭兵集団。恐王ノクターか悪神ギュラゼルバンの勢力を渡り歩いている曰く付きの猛者たち、その三人の首魁と師団長には魔人武王ガンジスと争ったことがあるという噂があります」


 バーソロンが貴重な情報を持っていた。


「バーソロン、ありがとう。そのブカシュナのことを魔軍夜行ノ槍業のシュリ師匠も知っていたから、その噂は本当かもな。知名度もそれなりにあると分かる。そして、ブカシュナを倒したことで、魔魁三王の残りとも敵対したことになる」

「ほぉ、恐王ノクターと悪神ギュラゼルバンの勢力を渡り歩くか。俺たちの勢力範囲とちょうど隣接している連中と繋がっているのか。こりゃ面白くなってきたな? 主!」


 アドゥムブラリはやる気MAXか。

 赤茶が混じる金髪がふわりと持ち上がる。

 肩の上を靡く金髪がまた端麗な容姿と凄く合う。野郎の俺だから惚れないが、格好いいアドゥムブラリを見て、素直にすげぇと思ってしまう。

 テンはそんなアドゥムブラリは見ないで、


「器様、魔軍夜行ノ槍業に女性の頭部と両腕の絵柄が刻まれていますね」

「器様、闘柱大宝庫にお師匠様の頭部と両腕が?」

「おう、その通り、シュリ師匠の雷炎槍エフィルマゾルと頭部と両腕を獲得した」

「「なんと!」」

「「おぉ」」

「闇雷精霊といい、闇神アーディン様との縁に主のパワーも増しているし……凄い展開だ」


 アドゥムブラリの語りに皆が頷いた。

 

「闘柱大宝庫には、闇神アーディン様の本格的な祭壇もあったんだ。祭壇には大きな皿があり、闇神アーディン様の神像の片目が自動的にその大きな皿に載ると、神像の片目が溶けて黄金色と灰銀色と漆黒色と紫色に輝く液体に変化。俺にはスープに見えたな。で、その輝く液体を、皿に置いた闇精霊ドアルアルの塊が吸い取ると、後は神懸かった展開となった。魔軍夜行ノ槍業のシュリ師匠の体の一部も取り戻したし、まぁ、なんというか……」

「あぁ、もう一度言うが、本当に凄まじい展開だぞ!」


 アドゥムブラリは先ほどから興奮しまくりか。


「そうだな、行動している最中は必死で夢中だったが、凄いよな。闇神アーディン様の片目が傍にいたんだからな……しかも一緒に訓練したし……」


 ほんとに途方もない。

 死ぬ感覚も味わえた……。

 

「……はい。予想はしていましたが、そこまでの濃密な展開とは予想できず」

「「「はい」」」

「うむ……」


 の言葉の後、皆が頷くように黙った。

 俺の背後にいる闇雷精霊グィヴァとレンブリアさんに注目が集まる。

 そのレンブリアさんとグィヴァに闇雷の封泉シャロアルを見ながら、


「闘柱大宝庫に向かう際のシャロアルの道中も不思議で、潜水艦で水中探検の気分だったんだが、巨大な深海魚モンスターや神意力を有した獅子獣人ラハカーンから襲撃されたんだ。怪物やモンスターの幻影も無数に見えたから、非常に怖かった」

「その獅子獣人ラハカーンは、獅子冥王ラハグカーンですな……」

「レンブリアさんはあの獅子獣人ラハカーンを知っていましたか。闇神アーディン様の神像の片目の光を浴びて溶け、復活してから逃げていったが、神意力を有した強者だった」

「はい。獅子冥王ラハグカーンは瞑界の神の一柱です」


 マジかよ。

 あ、あぁ……。

 だから、魔槍杖バルドークが変な反応を起こしていたのか……。

 アドゥムブラリが、


「……すげぇ、闇神アーディン様も闇神アーディン様だが、主がいるから〝闇雷の封泉シャロアルの封入の儀〟を始めたってことか……」


 皆が頷いていた。

 さて、グィヴァの紹介もあるが、一先ず、

 

「レンブリアさんは闇神アーディン様の命令で所用があるようだ。レンブリアさん、【闇雷の森】に関わる仕事もあるんでしょう?」

「はい、御使い様の言われる通り、【闇雷の森】に結界を張ることも仕事の範疇です」

「やはりそうでしたか」


 バスティアンさんの幻影をチラッと見て、


「急ぎの案件もあると思いますから、先にどうぞ。俺たちも直ぐにここを離れて、一旦【源左サシィの槍斧ヶ丘】かバーヴァイ城に戻りますから」

「はい、ありがとうございます。では皆様、某はこれにてごめん――」


 と「ぬん!」と気合い溢れる声を発して両下腕で手印を組む。

 レンブリアさんの眼前に紫と漆黒の魔力のコントラストが綺麗な大きい魔印がゆらゆらと浮かぶ。


 サシィたちの<魔闘気>にも見えてきた。

 そのレンブリアさんは、白い法螺貝を腰に出現させる。

 バスティアンさんよりも大きい白い法螺貝。

 あの白い法螺貝は闇神アーディン様の眷属の証拠なんだろうか。


 そのレンブリアさんは、頭部に頭襟を被る。

 結袈裟ゆいげさ鈴懸すずかけを胴体に展開させた。

 山伏や天狗の衣装と似ている。

 俺の<血霊兵装隊杖>の光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装とも少し似ている。


 そのレンブリアさんは白い法螺貝を吹いた――。

 ブォォォン、ブォォォォォォォンと、音が響いた。

 

 刹那、レンブリアさんは闇雷の封泉シャロアルを離れた。

 闇神寺院の地下の坂道を一瞬で上がりきり、【闇神寺院シャロアルの蓋】の出入り口から外に出て見えなくなった。


 バスティアンさんは大事な家族で仲間、当然の速さか。

 そして、結界も大事か。

 きっと【闇雷の森】は本来は目立っていい場所ではないんだろう。

 

「――皆、少し歩きつつグィヴァの紹介をしとこう」

 

 グィヴァは皆に会釈して闇雷の封泉シャロアルの外に出る。


「「「「はい!」」」」


 皆は興味津々。

 が、まずは、俺が上がってきた闇雷の封泉シャロアルを見て、


「闇雷の封泉シャロアルなんだが、名の通り瞑界シャロアルの出入り口だった」

「あぁ、そのことはバスティアンの幻影から聞いた」


 アドゥムブラリがそう発言。


「そっか」

「うむ。妾が、『器を御使い様と囃し立て、器の厚意を利用していることは知っているのだぞ! もしなにかあったら――<筆頭従者長選ばれし眷属>たちに代わって妾がお仕置きじゃ!!』と少し怒った口調で言ったら、気まずそうな表情を浮かべておった。そのバスティアンの幻影は妙に生々しかった」


 とが発言。

 

「はは、らしい。では、グィヴァの紹介を、あ、その前に、グィヴァ、この黒猫の名はロロディーヌ。愛称はロロ。神獣で、巨大化が可能。黒豹や馬獅子に黒グリフォン、黒いドラゴンのような姿へと自由に変われる。が、今のように黒猫の姿が基本だ」

「ンン、にゃお~」


 黒猫ロロがグィヴァに挨拶するように鳴いた。


「はい――皆様、初めまして、御使い様のシュウヤ様と本契約を致しました。闇雷を司る精霊グィヴァです。元は闇精霊ドアルアルでしたが、御使い様の<血魔力>と闇神アーディン様の魔力とスキルを色々と浴びた結果、御使い様と本契約を果たしての復活となりました」

「はい、復活と昇華ですね。あ、初めまして、常闇の水精霊ヘルメです!」

「にゃお~」

「よろしく頼む、アドゥムブラリだ」

「私はシュウヤ様の<筆頭従者長選ばれし眷属>の一人、ビュシエと申します。今後ともよろしくお願い致します、闇雷精霊グィヴァ様……」

「初めまして、精霊様、わたしの名はバーソロン。角鬼デラバイン族の出身だったが、今では、シュウヤ陛下の眷属。光魔ルシヴァルの光魔騎士として、バーヴァイ城を預かり持つ立場だ」

「よろしくお願いします! アクセルマギナです」

「よろしくです。わたしはフィナプルスです」

「闇雷精霊様、ゼメタスですぞ、よろしく頼みまする!」

「アドモスです、宜しく頼みまするぅ!」

「ンン」


 そこで黙っている黒狼隊に視線を向ける。


「あ、わ、わたしは、リューリュです!」

「あ、わたしの名はツィクハル!」

「お、俺は、パパスと申します!」

「「「ウォン!」」」


 と、ケン、ヨモギ、コテツの黒い狼もグィヴァに挨拶していた。


「ンン――にゃ~」

「きゃ、あ、ふふ」


 黒猫ロロがグィヴァの肩に乗って頬をペロッと舐めていた。

 

「ふふ、ロロ様と皆様も、改めて、これからよろしくお願いします」

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